• カザミドリSS. 【逆転】

    *こんにちは。少しづつ読者様も減ってまいりましたが、新たに読んでくださっている方もおられるようで、本当にありがとうございます。 その方々のために、今回はショートストーリーを書きました。 ついでに、成長したアユムの姿もご覧ください。    三田駅から港南工業高校へ向かう電車の中。俺は、いつもの様にアユムと向かい合うと、日常の他愛ない会話を楽しんでいた。 「生徒会の仕事って、大変?」 アユムが俺に聞い

  • *最終話*【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-10

     中学生活最後の時期を迎え、カウンセリングルームでの勉強もあとわずかとなった。 日下部くんに、海星学院を辞めると話してもあまり驚かず、どうしてだろうと思っていると、友田さんたちと知り合い、少しずつ変わっていく様子を目の当たりにして、想像したと言った。それほどまでに、僕は変わったんだろうか・・・・ 確かに自分でも感じることはある。 前の様に下ばかりを向いて歩くことが無くなった。 すれ違う人の目が僕を

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-9

     静かな部屋には、二人の鼓動だけが響いている。 「もし俺たちの事で、アユムが何か言われる事があったら、俺が全力で守るから。」 友田さんは、僕を抱きしめながら言ってくれる。 僕たちは、そっと身体を離すと互いの目に宿る憂いを感じ、どちらからともなく口づけを交わした。 目を閉じて友田さんの唇の弾力を感じる。 離れるたびに、 チュ・・・ッ と音がするが、それは熱を帯びた湿った音。 チュッ… その音が二人の

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-8

     恐る恐る僕に摑まり歩くが、きっと頼りない僕の肩では、友田さんを支えきれない。 「あの、すみませんが、浩二さんたちにお願いしてもいいですか?」 友田さんの顔を覗き込んで言うと、少しホッとしたようだった。 「ああ、やっぱりアユムには俺の身体は重すぎるよ。気持ちだけ受け取っとく。」 そう言って浩二さんの方に手を伸ばした。 「アユムくんには、謙ちゃんのシモの世話をお願いするから!」 友田さんの腕を自分の

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-7

     ヒンヤリと冷たい床を這って、桃里くんのやるせない気持ちが伝わってくるが、僕は真っ直ぐに前を向くと、桃里くんの顔を見た。 唇を真一文字に結んで、下を向くその頬には一筋の涙の跡が……。 「どうしてボクじゃダメなんですか?その人の為に、同じ高校へ行くんですか?」 桃里くんは僕の方へ向き直ると言ったけど、眉を下げた顔は今にも泣き出しそう。 「桃里くん・・・ダメとか、そういうんじゃなくて、」 「先輩だけは

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-6

     浩二さんの肩に摑まると、破れたソファーに腰を降ろした友田さんが、その横で立ち尽くす僕の手を握った。 さっき桃里くんが放った言葉をどんな気持ちで聞いたんだろう。 僕は、ギュっとその手を握り返したが、友田さんの顔は見れなかった。 「なんなの、この子。アユムくんの事好きなんだ?!」 茶髪が言って、浩二さんの方を見るが、笑顔はない。 「お前、男がいいの?健全な男子っぽいのに・・・」 「うるさいツ!ボクは

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-5

     僕の目の前を友田さんが桃里くんの腕を引っ張りながら歩いて行く。 突き当たりの階段を下へ降りて行くから、僕も慌てて後を追った。 二人が入って行ったのは、前に浩二さん達に連れ込まれ、友田さんと初めて出会った場所。相変わらず、破れたソファーと机だけの空事務所だった。 は、ぁ… は、ぁ… 階段を走って降りた僕の息があがり、事務所の中で対峙するふたりを前にしても、言葉が出てこない。 「やっぱりお前だったん

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-4

     ほんの1、2秒の沈黙で、今食べた物が戻りそうなほど緊張する僕だった。 「そういう事ですか・・・・・こんにちは。」 挨拶したのは桃里くん。 普通に友田さんの顔を見る。が、「ボクには?」と言って、紅茶を指差した。 「悪いな、コレは俺がアユムにおごった分だから。」 そう言って、僕の食べていたハンバーグのお皿を奥へやると、 「こちらはお下げして宜しいですか?」と桃里くんの食べ終わった皿を手にとった。 「

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-3

     自分の目を疑ったけど、目の前に居るのはさっき別れた桃里くんだった。 「・・・・・・・」言葉も出てこない。 「失礼します。」 そう言って、僕の向かいの椅子を引いて座るから、え?と驚く。 あんなに拒否したのに、桃里くんには伝わっていなかったのか・・・。 「桃里くん!」という僕を無視するように、オーダーを取りに来た店員さんに 「この人と、同じ物ください。」と言った。 少し首を傾げた店員さんは、僕の顔を

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-2

     大きな身体で下を向くから、僕が困らせているような気になる。 困らせているのは桃里くんの方なのに......。 「言い方がきつかったらごめん。・・・でも、時間無いから。」 そう言って店から出ようとした。こんな所で立ち止まっていたら迷惑になるし、桃里くんと話すことも無いんだ。 桃里くんは僕の顔をチラリと見ただけで、何も言わなかった。 というよりは、言えなかったんだと思う。 桃里くんが、僕を好きだと言

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 13-1

     凍えそうな冷たい水で、ざぶざぶと顔を洗った僕は、視線をあげて鏡を見つめる。 そこに見えたブルーの瞳を確認すると、お父さんと血がつながっている事を感じた。 明日から新学期。 結局、友田さんとはあれから会えないままで...。 カフェのバイトの大学生が、田舎へ帰ったきり戻ってこないと言っていた。 それで、急きょ友田さんが駆り出されてしまったんだ。 僕は、三田駅の近くの大型書店で買い物ついでに、カフェへ

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 12-10

     お父さんが来てから1週間が経ち、今日はハワイへ帰ると言う日。 朝からソワソワしている僕に、 「今度はアユムが会いに来てくれると嬉しいな。」と、お父さんが言った。 「うん、いつかお金溜めて行くよ。その時は、僕の弟妹にも会いたいな。」 「もちろん、きっと喜ぶ。・・・待っているからね。」 「・・・うん。」 短い会話の中に、ありったけの愛情を込める。形にして見える訳じゃないけど、互いの幸せを願って放つ言

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 12-9

     頭の中で、さっき言った言葉を思い起こす。が、二人を目の前にすると焦ってしまって、変な事を言ったのかどうか分からなかった。 「え、っと・・・・、何?なんか変だった?!」と聞いてみるが、無言の二人。 友田さんと同じ高校へ行きたいと伝えた筈。 それから・・・・・何言ったっけ? 一人でぐるぐる考える。 「分かったわ。アユにとって、謙さんがどれだけ大事な人なのか!」 お母さんは、そういうと僕の肩に手を置い

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 12-8

     「なんの話?」 キッチンで洗い物を済ませたお母さんが、コタツでくつろぐ僕たちに聞いた。 僕は一瞬固まる。お父さんに言ってしまったけれど、本当はお母さんに話してからの方が良かった。僕の保護者はお母さんなんだから.......。 「え、っと...........高校の話を。」 たどたどしい僕に 「アユムの進路の事を聞いていたんだ。ぼくが聞く事でもないんだけど、一応気になったものだから。」 お父さんは

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 12-7

     朝、洗面所で髭を剃っているお父さんと目があった。まじまじと顔を見る僕に 「どうしたの?そんなに見られたら恥ずかしいよ。」と、笑う。 「やっぱり若い。31歳って、日本じゃアイドルの人がいるくらいなのに……」 つくづく、若くして父親になったんだな、と思って言った。 「ハハハ、アイドルって……。まあ確かに、アユムの友達のお父さんと比べたら、ひよっこだよね⁉」そう言って笑う。 "友達のお父さん"って言わ

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 12-6

     「ただいま~!」 玄関を開けると大きな声で言った。 「「おかえりー。」」 二人がリビングでくつろぎながら迎えてくれる。 そんな二人を見て、入口の所で立ち止まってしまった僕に、「どうしたの?」とお母さんが聞く。 「うん、・・・なんか、家族なんだなって思って!」 「え?」 不思議そうに僕の顔を見るけど、すぐに笑顔になると「そうね、家族ね!」と言った。 もちろん、それはこの状況での事。法的には、お父さ

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 12-5

     薄暗い室内に灯るイルミネーションの様な照明から外れると、壁にもたれ掛かった僕を包み込む友田さんの腕が、腰へと延びてくる。 その手が自然に僕のシャツをたくしあげると、素肌に友田さんの指が触れビクツとなった。冷たい指先が背中を這うと、体中に電気が走るみたいで....。 重なった唇から洩れる息も熱い。 「と、もだ・・さん・・ン」 「・・アユ・・ム・・・・アユ・・」 互いに名前を呼び合うと、僕の足の間に

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 12-4

    僕が、今の状態にあるのが不思議なくらいで、本来の自分はもっと沈んでいたと思う。 暗い湿地帯の様な場所で、日の光を眩しいと感じ、手を伸ばす事もなかった。 そんな僕は、友田さんを知り、浩二さんや茶髪の人や、小金井さん、その周りの人たちと関わるたびに、何かを与えてもらってきた。 ほんの15年ほどの人生を歩んできて、ここが僕のすべてではないと思うけど、ここから何かが始まるような気はする。 前を向いて歩いて

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 12-3

     大音量の中で、1時間が過ぎた。 その間に、浩二さんと茶髪の人は食べ物を注文して、朝ご飯だと言って食べる。 既に、時計の針は3時近いんだけど・・・・・・ 「アユムくんも、何か歌いなよ。」と言われるが、僕は「無理無理。」と首を横に振る。 生まれてこのかた、人前で歌ったのは小学生の音楽の時間だけ。 試験で歌った時、僕の声が小さすぎて、先生に何度もやり直しをさせられた。 あれは、トラウマになった。 以来

  • 【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで 12-2

     ここで浩二さんに捉まるなんて思ってもみなかったけど、僕は友田さんと二人でビルの地下にあるカラオケボックスに連れてこられた。 元旦から営業しているんだな・・・と、ジュースを飲みながら室内を見回す僕に 「謙ちゃんとアユムくんはデート中だったの?」と、浩二さんに聞かれ、ブホツとむせてしまった。 「だっ・・・たって・・・?」おしぼりで拭きながら慌てて聞くが、浩二さんは茶髪の人と二人でにこやかに笑っている

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