• いー君がガイコツに変わった日

    息子の身体が、斎場の焼却炉へとはいっていく。 何とも言えない気持だ……もうこの手で息子を抱きしめる時間は、未来永劫になくなってしまう。 嫁が泣き崩れる、過呼吸でえらいことになった。 嫁のお母さんも完全にダメだ。 僕も当然駄目だけど……ここは踏ん張らなきゃ。そう思って必死に耐えた。 息子が焼かれている時間……僕たちは近くの高級料理屋で参列者の人にご飯をふるまう。 食事代6万9千円……こういう出費は痛

  • 初めての霊柩車……そして肉体とのお別れ

    正直子供のころはあこがれていたんだ。 霊柩車の中ってどうなってるんだろう。どんな感じなんだろう。 いつかは、僕も喪主で乗ることが来るのかな、長男だし……なんてことを考えていた時期があった。 それが……よりによって、自分の子供と一緒かよ。 感想は……まあ、ぶっちゃけタクシーと変わらなかった。 号泣してた嫁が心配だな。そんなことを考え、息子の遺体とともに僕は斎場へ向かう。 とにかく疲れ切っていた。 と

  • たくさんの花とお菓子に囲まれて~最期のお別れ~

    そして告別式が始まった。 なんだろう……お通夜のときと違ってものすごく冷静だった。 泣き崩れる嫁の背中をさすって……そしてぼんやりとお坊さんの読経を聞いていた。 運命って残酷だな…… 正直息子の死をまだ受け入れきれていない。まあ3日で全部飲みこめってのも無理な話だ。 そして…… そして…… 葬儀屋職員さんの『最後のお別れです、もう棺の蓋をあけるのは最後になります』の言葉。 参列者のみんなが、花やお

  • 長い長い……最後の夜

    お通夜が終わった。 お坊さんはもう帰られてしまった。 能登の地元の名士だった叔母の同じ浄土真宗の葬儀は、住職さんが残っていろいろ法話をしてくれたんだけど…… そこがやっぱりいろいろ、檀家じゃないとかあるんだろうな、と思った。 叔母のときは、いろんな寺院からお坊さんが6人くらい来られて一斉に読経されてたもんな。 まあ、規模も経費も天と地の差があるんだから仕方ないんだろうけど。 ちょっとさびしかったけ

  • 初めての喪主……お通夜が始まった

    夕方16時ごろ、少し遅れてセレモニーホールに妻がやってきた。 スタッフの人たちと打ち合わせを行う。 とくに挨拶とかはなく、家族葬なので焼香の順番とかお坊さんが来たら挨拶に行くとか、そんな感じ。 去年の今頃、能登の地元の名士の叔母の葬儀では、大々的に市会議員が葬儀に参列したり、大規模な改装のビデオ上映をしたり……だったが、少し拍子抜けだ。 正直、叔母のようにがんで闘病生活1年間……とかじゃなくて、こ

  • 看板と祭壇と……そして特製の棺と

    息子の亡骸が家から運び出され、セレモニーホールについていた。 僕が母親を連れて到着すると、豪華な通夜と告別式を告げる看板が式場の前に建てられていた。 息子の名前が書かれた看板を見て、現実に引き戻される。 まさかこんな看板を目にする日が来るとは…… 祭壇は家族葬用の小じんまりしたものであったが、それでも十分すぎるほど豪華だった。 実は僕も大学時代……葬儀屋のアルバイトをしたことがある。だから、棺桶の

  • あの子からの電話と、妻を支えられない僕

    嫁のつんざくような悲鳴と、錯乱した喚き声が階下から聞こえたのは、息子がセレモニーホールへと出立する数時間前のことだった。 信じたくことが起こったんだ。 息子の彼女からの……息子をが最後まで想い続けた彼女からの電話が、息子のスマホにかかってきた。 電話をとった嫁は、狂わんばかりにわめき、泣き叫んだ。 娘が代わりに、彼女との応対に回る。 脱力して崩れる嫁、支えられない僕。 息子の死を信じられずに電話し

  • 僕と妻と娘と犬たちと、そして亡骸と

    息子が帰ってきた。冷たくなって。 死んだときの表情と違い、すごく柔和になっていた。 検死のあと、表情を整えてくれたのだろう。 なんか微笑んでいるような……何かをやりきった満足感のような…… その表情だけが僕たちの救いだった。 娘が息子の亡骸にしがみつき、泣いていた。 どう声をかけていいのか……自分の無力さを痛感する。 よその家庭の父親だったら、うまく何か言えたのだろうか。 集まっていた親せき一同が

  • 帰ってこない「おかえりなさい」

    息子を警察で検死して、遺体を返してくれるのは、死んだ翌日の昼過ぎということだった。 午前中、どう過ごしていたか…… 何をしていたっけなぁ。 葬式の準備とか、いろいろバタバタしてたような気がする。 とにかく夫婦ともに、じっとしていたら気が狂いそうだったから。 僕と妻、両家の両親が健在なのも、皮肉な話だ。 まさか書く両親とも、孫が先に逝くなんてだれも思ってなかっただろう。 そして、息子は帰ってきた、ち

  • 終わりの始まり~悪夢の瞬間②~

    警察の事情聴取。 息子の亡骸が、警察署へと運ばれていく。 僕は、茫然自失のまま刑事さんの問いに、夢遊病者のまま答えていた。 お兄ちゃん……死んだよ。 11歳の娘が、泣き崩れた。当たり前だ。とってもお兄ちゃんにかわいがられ、仲良しの妹だ。 ウソだろ……夢だろ、これ。 でも……悪夢は醒めてはくれなかった。 学校から、息子が死にたいと言っていると連絡があったそうだ。 妻は連れて帰りながらも、元気になった

  • 終わりの始まり~悪夢の瞬間①~

    2015年11月20日 18時…… すべてはここから始まった。 おかしいと思った、何をしているのか……と。 息子の部屋のドアに、スポーツバックが引っ掛かっていた。 奇妙なことをしてるなぁ、と思いつつ、帰宅して疲れていたのでそのまま仮眠をとっていた。 「いおり、いおりいいいいいいいいいいいいいっ!」 妻のつんざくような悲鳴。救急車、救急車呼んでええええっ! 僕は意味もわからず跳ね起き、隣室の息子の部