• 慈雨、降りそそぐ 4

    翌朝目を覚ますと、部屋の中のベッドはすべて空だった。 ジョンインは昨夜入浴後すぐ床に着いたことは成功だったと、体を起こして嘆息した。 眠れるだろうかと目を閉じて訝ったが、見事に熟睡した。夢も見なかった。 心身ともに疲弊していたんだなとジョンインは妙にすっきりした気分で納得した。 部屋を出、リビングへ行くとジョンデがいた。 テーブルにつき、朝食とミンソクが淹れたらしいコーヒーを摂りながら、新聞を読ん

  • 慈雨、降りそそぐ 3

    仕事を終えてマンションに戻ると、チャニョルがまだ帰宅していないことをジョンインはそれとなく確認した。 最近気に入りのスニーカーはないようだし、声もしないし、姿も見えない。 たぶん大丈夫。 そう思うと心から安堵し、疲労し、汗をかいた体をもたもたと浴室へ運んだ。 誰も今入っていないと分かると、軽く皮膚に張り付いた衣類を剥ぎ取り、シャワーの前に立った。 顔から湯を浴び、目を閉じると、昼間のことがまざまざ

  • 慈雨、降りそそぐ 2

    口を最後の言葉のかたちに開いたまま、チャニョルが立ち尽くすのをジョンインは黙って見ていた。 笑って、「またまた〜」と言いそうになるのをかろうじて押し留めて。 それはチャニョルの大きな尖った耳の先が、興奮や緊張で色を持つのを幾度も見てきたジョンインには、今、できないことだった。 チャニョルのそれは、ピンク色の粉をかぶったようだった。 目は変わらずらんらんと異様なまでに輝き、泣きそうなのかと勘ぐるほど

  • 慈雨、降りそそぐ 1

    いつからか、見られているな、と、ジョンインは感じてはいた。 でもさすがにこんなことになるとは、まったく予想もしていなかった。 昼下がり。 仕事前のひととき、ジョンインは常通りソファに陣取り眠っていた。 少し暑かった。 両腕を伸ばし、頭上に掲げて仰向けになったジョンインは、唇に心持ち隙間をこさえ、寝息をすうすう規則正しくそこから奏でていた。 メンバーはほとんど仕事に出ており、マンションには数人しかい