• コント45  大友義鎮(よししげ)(後の宗麟)父を見殺しにして手にした家督

     別府分館の義鎮のもとには、刻刻と情報が伝達され、義鎮と月心和尚はこれらの情報の分析に余念がなかった。 「殿、この情報の量をご覧くださりませ。武将にふさわしい人間を自らが選んでおりまする。せいてはいけません。この後は、ご処置をお誤りなく、決断なされてください」 「父、義鑑殿の遺言状を作らねばならぬのう。そして、入田を斬らねばなるまい」 「明日には佐伯殿が、殿をお迎えに参るものと推察されまする。それ

  • コント44    大友義鎮(よししげ)(後の宗麟)邪魔者は消せ

     大友義鑑(よしあき)より4家老を斬れという命を受けた入田親誠(ちかざね)は早速近習の若侍、かまど新助と小田隼人を呼んだ。 「今、夕方、本門を占めた後、小門より入ってくる小佐井、斎藤両名の者を斬れ。殿の仰せぞ、ぬかるな」  かまど新助と小田隼人はうなずいた。上司の命令は絶対である。理由などはいらない。なまじ自分で判断など下すと間違いのもととなる。考えることをやめ、冷静にして着実に上司の命令通りに事

  • コント43   大友義鎮(よししげ)(後の宗麟)不安からの脱出

     義鎮の得体のしれぬ不安を取り除くには、酒が一番の薬であった。  頭の周りに張り詰めていた不安が、時間が経つにつれて薄れてゆき、頭の中心部に隠れていた人間の本性が義鎮を勇気づけ、彼が持つ一面の闘争心を煽り立てるのである。  義鎮の妻は、足利氏の一族である丹後の一色山城守義清の娘であった。  府内大友館に残してきた女が闇の向こうで怪しくうごめき義鎮のからだをとらえはじめた。  義鎮は今夜も女を抱いた

  • コント42  だんだん 子育て作戦カフエタイム 3

     早いもので、水曜会も3回目を迎えて会の空気もなじんで楽しいおしゃべりが弾むようになった。  顔を合わせると1週間の出来事や子どもの変化などの話題で弾んだ。 「早速、鸚鵡返しの戦法を使ってみました」と藤野さんから情報が入った。子どもの変化よりも自分が変わっていくのがとても愉快であったと。  正広君のお母さんからは、親戚巡りと公園デビューのお話があり、親が驚くほどの変化があり、これからは祖父母も積極

  • コント41   大友義鎮(よししげ)(後の宗麟) 不安の青春期

     別府分館の庭は、梅が終わり、桜の木が勢いを増してきた。  大友義鎮(よししげ)は、別府分館の庭より別府湾上に突き出た国東半島の連山を眺めては吐息を漏らす日々が多くなった。 「父、義鑑(よしあき)殿は、わたしを嫌うている。わたしを憎んでいる。わたしを殺そうとしている」と思うのである。  義鎮はここ1年間というもの、この思いに取りつかれていた。  何かをしていないと得体のしれない不安が義鎮を襲い心が

  • コント40  だんだん 子育て作戦カフエタイム 2

     第1回の水曜会ではコーヒーとケーキを提供したが、今回はカレーライスとだんご汁を出すことにした。  朝早くから、千恵と文乃は張り切っていた。健さんも武ちゃんも厨房にやってきてあれやこれやと手伝いをしていた。厨房に入る4人が揃い活気が出た。  前回と同じメンバーが11時前に全員そろった。今回は最初からコーヒーを注文して会を進めた。 「最初に大木先生からこの会を進めていくための基本になる資料を提供して

  • コント39  だんだん 子育て作戦カフエタイム 1

     民生児童委員の野島和子から高村千恵に電話が入った。  野島和子さんからの情報では子育てに悩んでいるお母さんが多くいて、子育てや教育について少人数グループで話し合える場が欲しい。ついては、カフエだんだんを利用する方法を考えてくれないかということであった。 「分かった。リハーサルの時に参加していた、大木 進先生は、咲恵の担任だったのでよく知ってる。生徒指導と進路指導の専門家よ。時田文生先生は咲恵の小

  • コント38   だんだん リハーサルを終えて

     居酒屋&カフエ だんだんのリハーサルを無事終了して、今日は社員全員で反省会。  施設設備の点では何ら問題はなかった。ただ1点、居酒屋とカフエを挟んでの中庭の野外施設について年間通して使用できるようにするのか、季節限定で使用するのかが一工夫いるようである。  源泉かけ流しの足湯をどう考えるか、温度調整の難しさがネックである。 「みなさん、ありがとう。思うより案ずるがだね。うまくいきましたね。そこで

  • コント37   かみつき猿

     昭和23年、終戦後の3年目だったかな。東京のほうから転校生が入ってきた。私が、小学校6年生のときだ。  市立温泉小学校はのんびりと豊かにその日暮をうけいれていた。  終戦後の3年目ということで社会は混乱していたが、町はなぜか何事もなかったように進行していた。そう思うのは私と一部の子どもたちだけだったのかも分からない。  東京からの転校生は、色白でちょっとばかり小柄ではあったがきりりと引き締まった

  • コント36    空 気 銃

     勝は、そっと空気銃を握ってみた。  鉄の重たい冷たさが指先から骨にしみる。外は雪がちらつき南の街にしては珍しく冬らしい一日であった。  裏山の登り口には5年生になる弟の賢を待たせてある。家族の者たちは仕事で誰もいない。  空気銃を持ち出すのなら今だ。ポケットの中では空気銃の弾がじゃらじゃらと気ぜわしく音を立て、勝の心を一層不安にさせた。  「エイッ」構うもんか、その時はその時のことだ。そう決断す

  • コント35    指をなくした友

     12月24日、クリスマスイブの朝であった。  今年、一番の寒さとなり、湯の町にはめずらしく粉雪がちらつき、1945年(昭和20年)の終戦の年は日本全土が厳しい生活を強いられていた。   なんといっても、働き口がない。駅西口、当時は裏駅と呼び、東口の海に面した通りのほうを表駅と呼んでいた。  裏駅から山手の方に歩いて4,5分の所に空き地があり、ドラムカンの中に近くで拾い集めた木片を放り投げ、焚き火

  • コント34   白 い 鳥

     緑の芝生におおいかぶさるように海面が西日を受けて反射し、奴は縁側のとういすに横たわって、小説に読み疲れてうとうとと軽い眠りにはいっていた。  女中は夕飯のしたくに買物に出かけ、妻は外出からまだ帰っていない。小学校三年生になる一人娘が、純白の手のり文鳥に水を与えていた。  眠りの中を純白の文鳥が羽音をたてて、斜めに横切っていくのが、はっと神経にぶつかって、そのつど奴はかすかに目を開けた。  かつて

  • コント33   再 会 2  戻れない

     近頃よく学校現場にいた時の夢を見る。ドッチボールやポートボールを運動場で楽しんでいる自分がいた。子どもたちは元気いっぱいで自分も大きな声で子どもたちに話しかけて走りまわっている。  ボールを受けた瞬間にぱっと目が覚める。楽しい夢だ。もう現実には二度と体験できないことである。汗を流して子どもと共に生活した。知恵をだし創造し専門を生かし子どもと共に成長していく自分を実感できた。  「どうしたというの

  • コント32   再  会 1

     「ヨッチャン」  「タックン」  天神の渡辺通りでの35年ぶりの再会であった。  「ヨッチャン」「タックン」とお互いの名前を呼びあっただけで、二人は小学生の昔まで引き戻された。  手を取り合った瞬間、熱いものがこみあげてお互いの顔が霞んでぼやけて夢の中の出会いではないかと思われた。  藤村芳雄 53歳、野村隆史 53歳、同じ地域の住人で、歩いて5分ほどのお互いの実家から幼稚園、小学校、中学校、高

  • コント31   あの方です

     世の中には自分にそっくりの人が3人はいるものだとよく言われているが、まことその通りである。 「電車でお会いしましたですね。今、お帰りですか。」 「はい。」 「あなた、ほれ、ほれ、名前が出てこない。あの女優さん・・・」 「あの方ですね。」 「そう、あの方です。よく言われるでしょう。」 「ええ。よく言われます。妹です。」 「そうでしょう。笑った時の口元などそっくりです。」 「ごめんなさい。冗談です。

  • コント30    黒ニャー 2

     雨のサーサー降る日に一度だけやってきた子猫の黒ニャーは、あれからまったく姿を見せませんでした。  「黒ニャーはどうしているのかなあ。会いたいなあ。」  私はそんな思いでひょっこりと黒ニャーがやって来るのではないかと思いながら毎日を過ごしていました。  夏が過ぎてコスモスの咲く季節になりました。  私は黒ニャーのことをすっかり忘れて毎日を忙しくすごしていました。  秋の日の午後3時過ぎ、近くのお店

  • コント29   黒ニャー 1

     雨がサーサーと降り始めたお昼頃でした。北側のガラス窓の外で黒い影が動いたような気がしました。確かに黒い影が動いたなと思いながらあまり気にも留めずに新聞を読みつづけていました。  しばらく新聞を読んでいると、今度は「ニャー」という子猫のなきごえが聞こえました。新聞をテーブルの上に置いて,北の廊下に出てガラス窓の外を見ました。  窓の外に真っ黒な子猫が背伸びをしながらガラス窓に前足をかけて「ガリガリ

  • コント28    花に嵐のたとえもあるぞ

     歳をとってくると時々夢を見ていると意識して夢を見、夢ではないと意識しながら夢を見ている時がある。夢と現実が夢の中で交差する。何とも不思議な体験をすることがある。  ある日、ばったりと、仏さまにおあいいたしました。  絵や彫刻にある仏さまのお姿とすこし違っていましたので、最初の数分間は判断がつきませんでした。それでもすぐに、仏さまだなあと思うことができました。 「失礼ですが、あなたは仏さまではござ

  • コント27  時間の問題じゃのう

     「おばさん、いい養子をもろうたのう」  「どこに、ちがうちがう、ありゃあ下宿人じゃ」  「下宿はじめたんか」  「上から順にみんな外に出っていって、部屋があいちしもうて、もったいねじゃねえか」  「そりゃそうじゃ。だけんど時間の問題じゃのう」  「なにが」  「なにがちゅうて、わかるじゃろうが」  「そうじゃのう、それを楽しみにしちょくわ。小石のとうとうよ。明日から豆腐2丁にしておくれの」 「わ

  • コント26  ある商人の急死

     「死にましたってなあ。よんべこそ、わけえしに混じって、酒を飲んじょったちゅうがやっぱり心臓麻痺か何んかで、ほう、脳溢血ですか、誰れがいつころっといくかわからんもんてすなあ」  せまい土地のK町では、一人の商人の急死が、NHKの臨時ニュースよりも早く、各家庭に流され、夜のできごとが朝食時の話題となる。  畑仕事や網仕事に行く賃取り氏も、前田さんの急死の話で持ち切り、町のあちこちで女ごしが三・四人ず

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