• ムノウノ ラクイン

    『だから、この人は普通の人みたいに、障害で一人では何もできないんですよ!』 主治医の言葉を僕は黙って聞いていた。 復職面談のために集まった会社の人、障害者支援の人、そして呼ばれた嫁。 医者がいうんだから、それは事実なんだろう。 実際に重度の障害の僕は、何にも出来ない人間だから。 そうだよ。 そう。子育ても出来なかったんだ……子供を大人にすることが出来なかった。 無能……無能の烙印は、僕にはとっても

  • 僕が選びとりたい、たった1本の道

    今日ツイッターに……彼女なりの考えなんだろうけど、息子が彼女に向けた最後のメールを公開していた。 辛かった。 涙が出た。 頑張ろう。 運命を切り開こう……そう考えたこともある。 でも、もういろいろ疲れている。 頑張ったって、息子は帰ってこない。 一生懸命生きたって、息子は帰ってこない。 物語を始めようと思ったのが、そもそもの間違いだったんだよね。 年金もらうような重度の障害者が……人並みの幸せを求

  • 一周忌を前にして

    いよいよ来週が一周忌だ。 あの悪夢からもう一年になる。 人間残酷なもんで、あれだけの慟哭と苦悶の出来ごとが、1年たてばある程度は冷静に受け止められるようになっている。 家族もまた、日常を取り戻している。 明らかに一人欠けているのに……みんなまるで何事もなかったかのように。 あの時あれだけ泣き叫んだんじゃないのか。 あの時すべてを失った喪失感で、茫然としていたんじゃないのか。 なんでいま、冷静に居ら

  • もうすぐ1年

    もうすぐで息子が逝って1年になる。 もう一生胸を引き裂かれる悲しみに苛まれるのかと思ってた。 いや、確かにものすごく苦しくて悲しい。 でも、人間上手く出来ているもんで、冷静に息子の死を受け入れることも出来ている。 もうどんなに泣いたって、子供は帰ってこないから。 どんなにダダをこねたって、息子が死んだという事実は変わらないから。 我が家も、徐々にだけど、落ち着きを取り戻している。 でも、なんだろう

  • 上目づかいはもう嫌だから

    いー君は、その場の空気を読んでくれるいい子だった。 賢くて優しくて…… でも、ときどき僕の顔を上目づかいで見てたよね。 僕もそう。 重度の発達障害で、人の気持ちが分からないから。 思っている流れと、すぐに違う方向へ行っちゃうから。 迎合しちゃうんだよね。 どうやったら嫌われないか、どうやったら怒られないか。 他人に対して上目遣いで生きてきた。 でもね、もうそれはやめようと思うんだ。 ここはもう君が

  • 君の幼き面影に

    ふと昔の暮らしを思い出し、胸が苦しくなった。 むかしは僕の実家で暮らしていた。 ウチの母親が、いー君をとても可愛がってくれ、お風呂の後はいつも面倒を見てくれていた。 お風呂上がりに童謡を聞きながら遊ぶ、幼きいー君。 可愛かった……本当に可愛かった。 そして何より、いー君は永遠に存在してくれると思い込んでいた。 歳をとって、天寿を迎える僕。 君に全てを託し……よしんば孫に囲まれて幸せに眠りたい。 何

  • 幻のパスポート

    そういえば…… 息子の修学旅行って、生きていたらそろそろだったのかな。 シンガポールだったそうだ。 写真を撮って、手続きして……息子のもとに届いたパスポート。 もうそれは、使われることもなく、我が家に寂しくたたずんでいる。 君が手にしたのは……天国へのパスポートだったよね。 そんなモノ、急いで取得しなくてもよかったのに。 君がもし生きていて…… 海外のものを見聞出来たのなら。 また人生観が少しでも

  • 今年も行かなきゃ

    自死と向き合う僧侶の会の事務局から、今年も年末の法要の申し込みのお手紙が来た。 去年の息子の死から1年……早いな。 前回は、息子が死んでから、たった2週間ぐらいでの出席だったっけ。 まだ実感がわかなくて、ふわふわしてたような気がする。 今年は泣かずにしっかりと、お参りしようと思うんだ。 宗派を乗り越えて法要を営んでくださる有志の僧侶の皆様方の御心には、本当に頭が下がる。 本当にありがたいんだ、こう

  • 退院、時々食中毒

    病院を退院してきて数日。 本来すぐに退院報告を描きたかったんですが、そこから数日食中毒で39度の連日の高熱地獄の日々。 やっぱりうまくはいかないもんです。 原因は10月17日のいー君の誕生日に、退院祝いも兼ねて焼き肉に行ったため。 その生肉に当たったんですよね。 入院が約一カ月。気がつけば周囲はあっという間に秋の気配。 完全に閉鎖病棟で、室温が一定に保たれていた場所で過ごした1カ月。 息子のところ

  • 入院中です

    外出許可をもらって自宅に戻ってきました。 息子のところへ行けると思ったんですが…… 力が足りないのか、運が無いのか、行くことができませんでした。 息子に会うことを許してもらえないのか…… それともまだこの世でなすべきことがあるのか。 やっぱり寿命を待つしか方法はなさそうです。 にほんブログ村

  • 行きかう若者を見つめて

    今日日曜日は、コミックトレジャーというイベントに参加。 まあ、有名な東京のコミケの関西版と言ったところ。 友達のブースに寄生して立たせてもらうんだけど…… 明日もきっと、楽しそうな人々が目の前を行き交うんだろうな。 いー君も出来れば、その中の一人であって欲しかった。 彼女なんかいなくてもいい、オタクと言う人種でもいい。 人生を楽しみ、謳歌して欲しかった。 オタクに傾きつつあるいー君を矯正して、彼女

  • 数百年の連鎖の果てに

    今日実家に帰った時、何とも言えない話を母から聞いた。 弟も大きな企業に勤めているが、そこの社長さんからか経緯は知らないが、社長や代議士からの依頼しか受けない拝み屋さんを紹介してもらったらしい。 本来能登の寒村なんかに出向く人じゃないんだが、弟の顔を見てすぐに能登に弟と、そこの会社の社長さんと同道して向かったそうだ。 ウチの実家は、地相的にも最悪の場所の上に、ご先祖様に色々あったんだと。 だから、こ

  • 本当は潰れそう

    前向きに生きて行こうとしても、どんなに自分に言い聞かせても…… やっぱりいつも思い出すんだ。 悪夢のようなあの日のこと…… そして幸せだった頃、小さな無邪気な息子の笑顔。 子供が死んでもうすぐ1年。でもやっぱり諦めきれない。 もっと自分がしっかりしていれば…… もっと相談してくれるほどの信頼を得られていたなら…… 沢山の後悔。そして色あせることのない、彼の幼いころの笑顔。 どうしてこんなことになっ

  • 君が遺したすべての人への想いに

    ここ数日、ふさぎ込む日々が続いていた。 気持ちを前向きに持って行こうとしていたんだけど、どうしても息子を思い出す。 なぜ死ななければいけなかったのか。 なぜ助けてやることが出来なかったのか。 僕に出来るベストは尽くせたんだろうか…… 去年からの同じ問いが、ぐるぐると頭の中をめぐる。 そんな答え、何回問い返したって変わることが無いのに。 不完全燃焼だって分かってるのに。 でも…… 僕はいい、妻もいい

  • 両手を広げて、笑顔で

    ちょっと最近、こういう考えを持つようになった。 息子とこういう形で別れた……それはとても悲しいこと。 でも、そのことによって…… 自分が死ぬことが怖くなくなった。向こうで子供が待っててくれるから。 妻と死別れることが怖くなくなった。向こうで子供が迎えてくれるから。 飼ってるワンコ達が死ぬのが怖くなくなった。向こうで子供が迎えてくれるから。 そうなんだ…… 向こうで息子が待っててくれるんだ。 最後の

  • やっちゃいけなかったミステイク

    最近考えることが少なくなってきたけど…… 昨日はぼんやり久しぶりに、息子はなぜ死ななければならなかったのかを考えていた。 自死するのは、その人が追い込まれると脳のスイッチが身体を殺すために入る…… とか書いてあったのをふと思い出した。 追い込んだんだろうか……救いの手は差し伸べられなかったんだろうか。 妻を責める気はない。 でも、『あの日』 何の根拠もない『もう大丈夫だろう』と息子を家に一人にした

  • 僕の後ろに君がいるから

    明日はまた、復職のための打ち合わせ。 正直会社は、障害者を障害物としか思ってない。 辛い言葉を平然と投げかけては、崩れた障害者に、ほら崩れた復職は無理だ……の繰り返し。 正直分かり合うことなんかできやしない。 でも僕は前に進まなきゃいけない。 復職できなきゃ、君に申し訳ないんだ。 そうだ、僕の背中には、いー君が立っている。 負けちゃダメなんだよね、君を安心させるためにも、前に進まなきゃ。 僕が進む

  • あの想いは2回はさせられない

    正直、心の傷がひどくリアルじゃ立ち直れないでいる。 ネット界では裏名義の創作アカウントが順調だから、サイトの閲覧数も創作も快調…… ものすごく矛盾した2人の人間がいま、この身体に住んでいる。 リアルの人生が辛い。 正直消えてしまいたくなる、消えたら楽なんだろうな…… でも、だめなんだ。 妻には何にも罪はないんだ…… いー君の時のあんな想い……ダメだ、自分のせいでもう一回はさせられないんだ。 妻は一

  • 能・力・不・足

    木曜日に、会社の上司と、病院の主治医と復職面談があったんだ。 結果から言うと、復職はまた延期になった。 僕のメンタルが安定しきってないこと…… それよりも何よりも…… 僕の障害はどんなにあがいたって健常者に追い付けない、健常者の社会の中で今のままでは、やっていくのが難しい……そう主治医に告げられた。 重度のASDの障害を持つ人が、社会で仕事をしていくのは困難…… それは分かっている。 ほとんどのA

  • 杞憂と笑う周りと、鬼幽に嗤われる僕と

    杞憂…… 馬鹿だね、子供が先に死ぬはずないじゃない。 去年の今頃の僕は、そんなことを当たり前に考えていた。 自分の子供が先に逝く…… そんな心配をする親なんて『普通』はいない。 市井に生きる『普通』の人々の脳内に、そんな考えはありはしないんだろう。 僕もそうだった。 『起こりうる絶対に起きてはならない出来事を、思いつくまま書け』 そんなことを言われたとしても『子供が自死すること』なんて絶対に浮かば

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