• 【27.エピローグ・空の向こうの家への甘い招待状】

    直矢の存在を誰も知らなかった。 私達はあの日、拓海の家で目を覚ましたあと、必死に直矢を探した。  たしかに、私達は直矢を見たのだ、拓海の家で。 それなのに、誰も知らなかった。 動画投稿サイトにも、拓海と直矢の動画は、初めから無かったかのように、無かった。 私も拓海もいつしか、直矢のことを口にしなくなった。 その頃、 「赤ちゃん、できたの。」 と、嬉しそうに言う愛加里さんと会った。 夏休みも終わり、

  • 【26. 空の向こうの家への甘い招待状】

    「帰る? マジで? ここで暮らせば何不自由ないだろ? なんであんな言いなりになる世界に帰りたいんだよ?」 そこに、いつも遊んでるモンスター達が、どこからともなく一匹二匹とあらわれてきた。 直矢はお構いなしに話し続ける。 「アーモンドの催促だろ? 夏帆、渡してやれよ?」 直矢に言われて、その通りにした。 「一つ、条件がある。この国にいる商人達が、俺達を倒す計画を本格的に立ててきてる。商人を倒すのを条

  • 【25.空の向こうの家への甘い招待状】

    私達はお城でどれくらい過ごしただろう。 アーモンドのカードからアーモンドの実を出し、地面に植えると、すぐにアーモンドの樹が生えた。 直矢の言った通り、モンスター達が寄ってきた。私達はモンスター達にアーモンドの実を分け与えた。 荒れ果てていたお城も、念入りに掃除をした。 お城の周りはいつしか、アーモンドの樹でいっぱいになった。 敵としてあらわれてくると思ったモンスター達は、なぜか私達になついている。

  • 【24.空の向こうの家への甘い招待状】

    拓海もロープを掴むと、歯を食いしばったような表情で、地面に降りてきた。 私はそこで、ポロポロと涙をこぼしてしまった。 「拓海、もう帰りたいよ……。」 「そうだよな……ん? 泣いてるのか?」 拓海は困ったような顔になった。 私は涙が止まらず、そのまま下にしゃがんでしまった。 どうしてこんな目に遭うの? 今日……今って、拓海との初めてのデートのようなものじゃん。なのに、なんで……? 直矢は直矢で敵とし

  • 【23.空の向こうの家への甘い招待状】

    「わかったよ、直矢! お前の言う通りにするから、まずは夏帆から助けろよ!」 と、拓海が叫んだ。 「拓海!」 私は反対したかった。だって、直矢は直矢であっても、私達の知ってる直矢じゃないもの! それに、3階からなら落ちたって助かる……かどうかわからないけど、こんな直矢の言うことを聞く拓海でいてほしくない! 「いいから、夏帆は黙ってろ!」 拓海に初めてきつく怒鳴られて、私は口をつぐんでしまった。 「ふ

  • 【22.空の向こうの家への甘い招待状】

    「は!? 何言ってんだよ! あっ!」 拓海がスッポリはまってる枝が、ギシギシと鳴った。 「拓海!」 私は悲鳴を上げそうになった。 「そこから落ちてもいいけど、助かっても重症だぜ? 俺には関係ないけどな。 アーモンドのカードさえ手に入れば、まずはアーモンドの実を出して土に植える。 そしたら雨が降ってくるんだ、この国は。アーモンドの樹はすぐに育つ。 そのアーモンドの実欲しさに、モンスター共がやってくる

  • 【21.空の向こうの家への甘い招待状】

    ドスン! ボスン! 私達は大きな樹木の枝に引っかかった。 葉や枝が顔や体に絡み付く。 「何すんだよ、直矢!!」 横で拓海が怒鳴った。 私は不安定なバランスに気をつけながら、上を見上げた。 窓辺に直矢が立っていた。 「ご苦労さん、ドラゴンを倒してくれて。 俺は元々、隣の国の国王で、この国を乗っ取りたかったから、助かったよ。 今、俺の元々いる国では飢饉がひどくて、何のアイテムも手に入らない。 皆、あち

  • 【20.空の向こうの家への甘い招待状】

    「そうだよな、なんでだろ……。」 拓海の視線は、直矢のいる部屋のほうへ向かった。 「直矢、ずっと変だよな……?」 「うん……。」 「直矢の様子、見に行こうぜ?」 私と拓海は頷き合うと、足音を忍ばせながら部屋を出た。 お城の中も暗かった。 月明かりを頼りに、私達は一歩一歩、歩いた。 拓海のお腹がグーッと鳴った。 「腹減ったなー。」 「私もー。」 思えば、何時間、何も食べてないだろう。不思議と喉は渇か

  • 【19.空の向こうの家への甘い招待状】

    拓海が言った。 「俺、隣の部屋で寝るから、夏帆はここでゆっくり休めよ?」 と、直矢のいる部屋とは反対のほうを指差して言った。 「一人じゃ怖い!」 言って、ハッとなった。 みるみる顔が真っ赤になっていった。 「バカ! 一緒の部屋にいられるかよ!」 「でもでも……。」 一緒の部屋なんて緊張しちゃう! でも、こんなところに一人なんて、もっとイヤ……。 私は俯いてしまった。 そして、ふと思い出した。 こん

  • [18.空の向こうの家への甘い招待状]

    薄れいく景色の中で、遠くに見えたもの、あれは……。 目が覚めた時、私は寝そべってるようだった。 体が痛い。 古びたベッドとテーブル、椅子、いくつかの調度品が見えた。 窓の外は夜のようで、月がスーパームーンのように大きかった。 蝋燭の燭台が見えて、ゆらゆら光ってる。 拓海と目が合った。 「大丈夫か?」 拓海の心配そうな眼差しに、胸がドキンと鳴った。 「う、うん……。私、どうしたの?」 どうやら、拓海

  • [17.空の向こうの家への甘い招待状]

    「えっ……?」 拓海も足を止める。 「味方か敵の判別しろよ……うっ……。」 直矢は頭に手をやり、しゃがみ込んだ。 私は直矢の元へ走った。 「直矢!」 その瞬間、ドラゴンはぶよぶよした2本足のうち、1本を前に出してきた。 ドシン! 地響きが凄い! ドシン! お城が壊れそうな勢いだ。 ドシン! ドシン! 「危ねぇっ!!」 拓海は私と直矢のことを突き飛ばした。 ドラゴンは私達を踏み潰すべく、足を上げ、下

  • [16. 空の向こうの家への甘い招待状]

    「キャー!!」 「なんだよ、おい!」 「わかんねーよ! お前に何か使えるかも! と思って「?」カード使ったらこのざまだ!」 私達はドーンと存在感を放ってるドラゴンを尻目に、お城の外へ向かって走った。 お城の入り口の扉が開かない! 私は、 「剣のカードも出して!」 と、叫んだ。 このシチュエーション……ドラゴンが味方とは思えない。 グリーンのぶよぶよしたドラゴンは、口から蒸気を吐き出しながら、時折、

  • [15.空の向こうの家への甘い招待状]

    お城は黴臭かった。 何の石かわからない石造りの城で、5階建て位の、でも面積はそれ程広くない城だった。 ……綺麗にしたら、中世の可愛い、お城ぽくなりそう……。 と、思ったものの、クモの巣は生えてるわ、変な虫は飛んでるわ、臭いわ、何が出るかわかったもんじゃ……。 そう、何が出るかわかったもんじゃない。これが一番、怖いのだ! 直矢は、 「俺、頭痛い。休むわ。」 と言って、体を横にできる場所をキョロキョロ

  • [14.空の向こうの家への甘い招待状]

    小人はニコニコした顔をしている。 背丈は30cm程で、グリーンのつなぎにグリーンのベレー帽を被っていた。顔は人間の子供のような顔立ちだ。 「あっぶね、踏み潰すとこだったよ。」 直矢が言った。 「……。」 私は絶句していた。 「なあ、君はどこから来たの?」 拓海は小さな子供に聞くように聞いた。 小人はニヤリと笑うと、左手をパーの形で前に出した。 いきなり凄い風が吹き、飛ばされそうになる。 直矢の手か

  • [13.空の向こうの家への甘い招待状]

    私の後ろに拓海がいた。 「っいってー。」 拓海は頭を撫でながら、その場に立ちすくんだ。 「何だ、ここ……。なんで直矢もいるの?」 「拓海!」 私は拓海の声を聞くと、気が緩んで泣きそうになった。 「拓海、ここ、どこ……?」 声が震えた。 「全っ然わからねぇ。おい、直矢!」 目を閉じてる直矢に、拓海が声をかけた。 「う……ん。」 直矢はパカッと目を開けた。ゆっくりと立ち上がり、 「なんだ、お前達? 誰

  • [12.空の向こうの家への甘い招待状]

    拓海は、あ、ヤベッといった顔になった。 「あ、はじめまして……。」 私は簡単に自己紹介をした。胸がドキドキする。 今日から付き合ってます、どうのこうのなんて、言えない。 「拓海の彼女?」 「そうだから! もう行って?」 「デートなら、今日の買い物はやめていいわよ? 明日でもいいし。」 「わかった。わかったから、もう向こう行って?」 拓海のお母さんは小柄で、サラサラのボブヘアで、さすが愛加里さんのお

  • [11.空の向こうの家への甘い招待状]

    私達は顔を見合わせて、目を見開いた。 「ここで待ってて?」 拓海は私をおいて一人で家に入って行った。 私はドキドキしながら、シマトネリコの下で待っていた。 いつまでも拓海は戻ってこない。    時間にしたら5分位かもしれないけど、ずっとドキドキしていた。 強盗? 空き巣? 警察に電話したほうがいいのかも……。 拓海が気になる。  私はスマホを握りしめて、玄関のドアの前まで行った。 中で何が起こって

  • [10.空の向こうの家への甘い招待状]

    やめよ、暗いこと考えるの。 「バスで行こうぜ?」 拓海は私のアイスラテが空になってるのを見て、トレイを持って立ち上がった。 「俺、この前、引っ越しのバイトしてさー、人生初のバイト! 帰ってから、体痛いなんてもんじゃなかった。でも、また来てくれよ! て何度も言われて、マッチョな奴に。俺、向いてるのかなあ。」 拓海は楽しそうだ。 「引っ越し屋が向いてるのか、マッチョな奴に向いてるのか?」 「もう、そん

  • [9.空の向こうの家への甘い招待状]

    「電話、ありがとう! 助かった! あと拓海、ママから電話あって、拓海のこと探してたよ? なんかスーツがどうのこうの。」 「あ、やべっ……。」 「じゃ、またね。」 愛加里さんは、ふわふわキラキラした眩しいものを感じさせながら、再び去って行った。 「いや、スーツって言うのは、親戚の結婚式で着ていくやつで、制服、今新しいの頼んでるとこなんだけど、間に合わないから。」 一生懸命説明してくる拓海が可愛いかっ

  • [8.空の向こうの家への甘い招待状]

    愛加里さんは自分が座ってた席の隣へ、私を座らせた。 「ねえ、拓海の彼女、なんでしょう?」 愛加里さんは小さな声で聞いてきた。 「あ、はい。あの……今日から……。」 「今日!? うわ-、ごめん、本当に本当に、邪魔しちゃったね。ごめんね。」 と、愛加里さんは並んでる拓海のほうを見た。 「じゃあ私は退散するから、あとごゆっくり。」 と、愛加里さんはそそくさと荷物をまとめ始めた。 絶対、サロンでしてるであ

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