田中美知太郎はギリシア哲学が専門の哲学者です。この人は、実のところ、ソクラテスにしか本当の興味を抱かなかった生まれながらの哲学者だった人と言っていいでしょう。プラトンの著作の数多くの名訳があります。剛直な論理の使い手で、西洋哲学を自分のものにするためには、三段論法を本当にしっかりやらなければならない... 続きをみる
おすすめ本のムラゴンブログ
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この歴史には、固有名詞がまるで出てきません。柳田は、ある特別の人物に焦点を当てなくても、歴史を書くことができるという信念のもと、「常人」と柳田が言う普通一般の人々を考察の対象とし、見事に明治から大正にわたる歴史を書き上げました。書中、「日本人は開国以来、軽度の興奮状態にあるのではないか」という言葉は... 続きをみる
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ライシャワーは、もっとも有名で人気のあったアメリカの駐日大使でした。日本人よりも、日本のことをよく知っているのではないかと思われるくらいの日本通でした。この書は、そのライシャワーがどのような立場にも偏らず、ことばの確かな意味で客観的に、日本人についてその良否両面を明確に申し立てた、見識の高い日本人論... 続きをみる
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菊池寛が、同郷の偉人弘法大師の「十住心論」を学んで書いた書物です。菊池は、真言宗弘法大師の特に「即身成仏」の思想に注目します。これは、人間に非常な勇気を与える思想ではないかと感服します。菊池は、「弘法大師の小説も戯曲も書けなかった。しかし書こうと努めたおかげで、弘法大師のことをいろいろ知ることができ... 続きをみる
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本当の著者は山本七平だと言われていますが、名著として名高い日本人論です。ユダヤ人から見た日本人という奇抜な発想がとられています。この書の中で、ベンダサンは日本人の思考法に触れ、パチパチ珠を弾くソロバンになぞらえて、日本人は頭の中に語呂盤を持っていると言っています。論理思考よりも直感的な思考を得意とす... 続きをみる
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失恋の深い心の傷手をどう癒やしたらよいのか。この人間にとって永遠の課題に唯一応えられる書物が本書でしょう。この書は、実際に真剣な恋愛におちいり、その恋に破れた若い女性が書いた手紙をそのまま本にしたものです。ここにあらわされた恋愛感情は誰のこころも打たずにはおかない真率なもので、読む者を強く揺さぶらず... 続きをみる
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子規晩年の四部作の中の一つです。子規は36歳で結核で世を去りましたが、この病気の特徴で、意識は臨終の最後まではっきりとしていました。子規の文体は、その死病に冒されていたと思えないような驚くほど乱れのない、健康そのものの精神を伝えるもので、しかも若年で世を去ったにも関わらず、円熟さえしています。子規に... 続きをみる
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人間の美的感覚として、抽象衝動があることを結論づけた美学史上、画期的な論文です。十九世紀の終わり頃から現代に至るまで、画家たちが次々と抽象絵画を描くようになっていった。その先陣をきるようにして本書は世に問われました。ヴォリンゲルは、広場恐怖症と呼ばれる神経症者の症状に注目し、支点を持たない無際限に広... 続きをみる
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明恵上人は、鎌倉期の旧仏教華厳宗の名僧です。じつに不思議な伝説に富んだ人で、その無邪気極まりない人柄と相俟って、兼好も徒然草の中で、その逸話を取り上げていますし、明恵上人伝記は江戸時代にはベストセラーになっています。屋根裏の蛇が鳥を襲おうとしているのを神通力で分かってしまったり、客と話していて、一昼... 続きをみる
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世界的な指揮者となった小澤征爾が、若い頃ヨーロッパに渡った時のことを自伝風に纏めた本です。オートバイの後に日の丸の旗をなびかせて、ヨーロッパの街を疾走する自分の姿を書いたくだりは、なんとも微笑ましい意気盛んな若い日の小澤の姿があります。爽快な心意気に溢れたこの本は、若い人にはぜひ読んで欲しい一冊です... 続きをみる
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英語で9月の意味するセプテンバーは、本来7を表す数詞です。では何故この名称になったのか、そうした素朴な疑問に本書は丁寧に答えてくれます。また、暦が占いときっても切れない関係にあることを懇切に解説し、占うという行為が正確な暦を作る上で欠かせないものだったということを説き明かしてくれています。著者の平衡... 続きをみる
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河盛好藏はフランス文学者です。この本は、だれしも一度は悩む、人との付き合い方について著者が若い人に向けて書いたものですが、といって、自分の経験をかいつまんで、単なる処世術を書いたというような気楽な本ではありません。人とつきあうという人間にとって退っ引きならない業と真正面から向き合い、では、どうつきあ... 続きをみる
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角川書店が企画した仏教思想シリーズの中の親鸞についての書物です。当時、新進気鋭の学者だった梅原猛が中心になって筆が執られています。論文と対談という形式で構成されていて、仏教の初心者にも読み易い本になっています。学術的に提示される親鸞像と小説として描かれる親鸞像とを繋ぐ橋がないという嘆きが語られ、親鸞... 続きをみる
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菊池寛には「屋上の狂人」といい、知的障害者を扱った作品が多いのですが、この「義民甚兵衛」もそのひとつで、また菊池寛の中で最もよい作品ではないかと思われます。意地の悪い、悪知恵に長けた母親や兄弟から、知的障害の甚兵衛は苛められるのですが、甚兵衛の間抜けな正直さが、知らぬ間にあっと驚くような復讐を母親や... 続きをみる
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名古屋人というものを知るためには格好の本でしょう。名古屋をこよなく愛する名古屋人の屈折した心情がよく書けています。熱烈なドラゴンズファンのタクシー運転手が、客から最近調子のいいドラゴンズを褒められると「あんなもんあかんわ。監督がアホだで。」と喜びを心中に押し隠しながら、素っ気なくそう応えます。名古屋... 続きをみる
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紹介本『絶対悲観主義』
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巻頭に、「別れた妻そうしてまだ見ぬ妻たちへ」と書かれています。異才を放った伊丹十三の半ばどうでもよいと思われる話が、軽妙に語られていきます。女についての毒づき方は、彼の思慕する本当の女らしい女への求愛の方法なのでしょう。伊丹は、やがて女優の宮本信子と結婚し2児をもうけますが、マスコミに追い詰められ、... 続きをみる
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大野晋、大岡信、丸谷才一、井上ひさしといった日本語の達人たちが、雑誌読者の日本語についての質問に、それぞれの個性が丁寧に応えた問答集です。「なす」の本来の正確な言い方は「なすび」、総理大臣が引き続き政権を担当するときなどの「続投」という言葉は野球用語、「結果論」という言葉も野球用語等々。われわれが、... 続きをみる
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宇宙観を一変させたアインシュタインの相対性理論は、しかし、著者によれば、アインシュタインの天才をまたなくとも、見出された理論であったろうと言っています。科学者の理論というものが、どれほどその科学者の世界観を拠り所にして成り立っているものであるかをきれいに説明してくれています。ヒーロー扱いされがちなア... 続きをみる
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星や宇宙のことが知りたいと思う人には、うってつけの本です。二人の科学者が互いの情報をもとに、最新の星や宇宙の情報を提供してくれます。宇宙の卵は、原子よりも小さかったと語られるとき、わたしは思わず息をのみ、物理学によって提供される知見に圧倒されるような思いを抱いたものでした。豊富な写真や図柄も盛り込ま... 続きをみる
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読むと、気持ちが浮き立ち軽くなるような話を集めた本です。週刊文春に連載された好評のシリーズもので、本は十数巻出ています。上前の語り口は軽妙で、上質な現代の小話を聞いているような趣があります。ちょっとした感動を誘うものや、品のいいエスプリの利いたもの、実業家たちの武勇伝等々。読めば、自然と微笑がこぼれ... 続きをみる
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青山は語り難い人です。何もしなかった天才といわれ、古美術の当代きっての目利きで、本の装丁もしていましたが、では何者かといわれると説明のしようがない人です。そこにいるというだけで本人や周りの人が確かな意味を持つという不思議な人でした。彼には数冊の文章がありますが、どれも彼の活眼が光る破格のものです。青... 続きをみる
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自我確立が主題となっている小説です。小説の主人公は若い女性ですが、有名になることも俳優として成功することも、本当の自我を生きることにはならないと知っている女性です。彼女に言わせれば、それはティファニー(貴金属専門店)で朝食を食べることのように滑稽で無理な企てだということになります。自我確立とは何かと... 続きをみる
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女流作家円地文子の名篇です。円地には源氏物語の名訳がありますが、長年、この物語に私淑した円地ならではの目が光っています。物語は、亭主から自分好みの若い妾を探して連れて来いと命じられる妻の話です。主人公の倫はこの夫の理不尽な要求に昔ながらの女として耐えてみせます。長年の心労の末、倫は足に病いを得て伏せ... 続きをみる
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経済学の基本的な考え方を会社という法人を軸にして、論じた本です。この書の中で繰り返される「法人というものは実に不思議なものである」という言葉には、経済学に長く携わってきた人の実感として、経済活動というものの不思議な実態を正確に捉えることがいかに難しいかをよく表しています。著者独自の「組織特殊的人的資... 続きをみる
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大野晋は日本語学者ですが、その所論が学会の大勢からあまりにもかけ離れていたために、一時、学会からつまはじきされていたことがあります。この書は、研究者の著作としては珍しくベストセラーになったもので、日本語を問答方式によって、より深く理解する手助けをしてくれます。読み進むにつれて日本語の年輪が浮き彫りに... 続きをみる
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「俳句の愉しみ」の姉妹編です。俳句は句会や吟行などをおこなって句作するというのが一番ですが、一人しずかに句作してみるというのも、また味のあるものです。どういう句が自分の好みなのか色々と句例を挙げて、読者にも句を選んでもらい自分の目の付け所を確かめてみるという工夫がなされています。読む者も思わず句作し... 続きをみる
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俳句の好きな著者が、みんなを俳句の世界に誘おうと筆を執ったのが本書です。著者は専門の俳人ではありませんが、句作や句会というものがいかに愉しいものであるかを、専門の俳人の家まで出向き、実際に句会を行い自身の体験をまとめました。そうして、できあがった本書はこの日本古来の文芸が、知らぬ間に人と人との間を結... 続きをみる
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錯視現象や色彩の心理テストから筆を起こし、話は、ゲーテの「色彩論」にまで及んでいきます。ニュートン光学に由来する通常の色彩論とは、まるで違う色彩についての論述に、読者は少々戸惑いますが、色彩がいかに豊かな意味合いを担っているものであることに、改めて気付かされることになります。ゲーテの色彩論は、いわば... 続きをみる
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「猫のゆりかご」カート・ヴォネガット・ジュニア ハヤカワ文庫
SF界の文豪カート・ヴォネガット・ジュニアの中でも、もっともよく知られた作品です。水を常温で、氷のように固形化してしまうアイスナインという新物質が開発され、使い方を誤り、世界中の水が固まっていってしまい、人間も塑像のように次々と固まっていくというストーリーです。最後のひとりとなった主人公が、天に向か... 続きをみる
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わたしの記憶があいまいで、この本だったかどうか不確かですが、九才で丁稚奉公から出発した自分の仕事の履歴を語り、一家を構えて仕事をするようになります。夜になると昼間あったことをしずかにかんがえてみる。そうすると本当はこうであったということがはっきりと分かる。松下という人が直に事や物に即して考えることが... 続きをみる
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難解といわれるユングの著作の中でも、ユング心理学の初心者にはもっとも近づきやすい著作です。ユングの学問の骨格がほぼここに出揃っています。一般にフロイトの学問は精神分析学と呼ばれ、ユングのそれは分析心理学と呼ばれます。「一体に、心理療法家は何をしてもいいが、夢を分析することだけはしていけない」というユ... 続きをみる
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経営の神様といわれた松下幸之助は非常な警世家でもあり、世の中に警告を発し続けました。松下政経塾は実業家の片手間仕事ではなく、憂国の心からどうしてもたち上げたかったものです。その松下が、自分の経験を踏まえ世の中のためにという志を抱いて書いたのが本書です。松下は、どんなに忙しいときでもしずかにかんがえる... 続きをみる
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数々の目を見張るような超自然的な出来事が満載された本です。著者のライアル・ワトソンは、アフリカで生まれ育ちました。そのためもあってか、彼の発想は既成の学問の枠をまったく自由にはみ出るものとなりました。原初の人間に却って、本当の偉大な知性を見、未開の人々に文明人の及ばぬ知恵を発見するところなどは、その... 続きをみる
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後藤清一は、松下幸之助から薫陶を受けた三洋電器の実業家です。題名の「こけたら立ちなはれ」は、工場が甚大な災害に遭って、これからどうなってしまうんだろうかと途方に暮れていたとき、松下から言われた一言です。ようやく災害の整理がついたとき、やはり松下から今度は、「立ったら歩きなはれ」と声を掛けられます。実... 続きをみる
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森銑三は、図書館の司書を務めていました。博学多識の人で、特に日本の江戸時代を中心に、多くの優秀な文章を残しています。書中、鎖国の当時、遠く小笠原諸島の鳥島に漂着し、なんとしてでも、故国に帰りたいと祈願する人々の不屈の苦闘を描いた章などは、名篇です。著者は、なんの抵抗もなくその時代の中にスタスタと足を... 続きをみる
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古今にわたる世界中の冤罪事件を集めた短篇集です。時を隔てて出てきた証拠によって、無罪であることがはっきりと証明された数々の事件が、短編小説のように綴られていきます。著者は、別の著作の結びで、「事件というものが起きなければ、悲劇は生まれない。それが二十世紀である。」という有名な言葉を残しています。この... 続きをみる
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「紫文」とは「源氏物語」のことです。この書は、宣長が紫式部は大略こういうことを言いたかったのだということを纏めたものです。有名な「もののあはれを知るこれ肝要なり」という文章が見えます。人生においては、「もののあはれを知る」ことが最も重要なことなのだと言うのです。宣長は、「もののあはれを知る」ことは本... 続きをみる
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頭の働きは悪く、無教養だが大金持ちの町人ジュールダンは、貴族になりたくてしようがありません。貴族の真似をして、じつにさまざまな習い事に手を出します。ついには、娘も貴族でなければ、嫁にやらないと言い出しますが、ジュールダンは、貴族のしたたかさに手もなくやられてしまいます。観客はその有り様に抱腹絶倒しま... 続きをみる
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タルチュフは偽善者の代名詞となった劇中人物です。敬虔な宗教家を装い、金満家のオルゴン氏を夢中にさせてしまいます。他の登場人物たちは、もうすでにタルチュフの正体は、ほとんど見抜いているのですが、オルゴン氏だけは宗教的な高揚さえ、タルチュフに感じています。タルチュフはオルゴン氏一人に対しては、思いのまま... 続きをみる
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マニフェストは俗に宣言、公約を意味しますが、旧来、「マニフェスト」とだけ言えば、この本を指しました。世界中の共産主義者の拠り所となった本です。有名な「世界のすべてのプロレタリアは団結せよ」という表明は、マルクスの個性的な発言というものではありません。読み進むうちに、われわれは何か行動を起こさなければ... 続きをみる
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ルパンシリーズの中でも最も力の入った良い作品でしょう。作者のルブランは、最初モーパッサンのような作家を目指していましたが、作者の頭の中に、自ら創造した怪盗ルパンのイメージがどうしようもなくこびりついて離れず、また、ルパンシリーズの小説が多大な評判をとったこともあって、怪盗ルパンを書き続けました。作中... 続きをみる
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ドイルは本格的な歴史小説も書きましたが、シャーロック・ホームズの名があまりにも大きかったために、その小説はあまり注目されることはありませんでした。晩年には、神秘思想にも凝ったりしています。この作品は、ホームズシリーズの中でももっとも長い、またもっとも良い作品でしょう。小説全体を覆う一種独特の怪奇的な... 続きをみる
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「あした死ぬかもよ」 ディスカバリー社。
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鏡花のグロテスクな怪奇趣味が横溢した書物です。主人公の旅の男はある山の家で、美しい女人と出会います。その女人こそ魔界の主で、自分の色香に迷った男どもを次々と醜いけものに変えてしまいます。きよらかな心を持った主人公だけが、無事人間のまま山を下り、不思議だった経験を人々に語ります。鏡花の他の作品では、「... 続きをみる
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江戸時代に取材した短編小説です。話の主題はたいへん重く、実の兄弟をやむを得ない事の成り行きからあやめてしまい、護送船に乗せられた男の話です。ここでも、やはり鴎外は自分の意見などを陳述していません。ただ、護送船の船頭にこの男は果たして、罪人と言えるのだろうかとお上に問うてみたいと思わせて、物語を終わり... 続きをみる
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鴎外の文章は剛直そのものです。まったく当たり前な文章法に従って書かれているにも関わらず、鴎外の強い個性と文章本来の持っている力強さがにじみ出てきます。この作品は、ある人物のひょんな通癖が巡りめぐって、一族もろともの滅亡にまで発展してしまうという皮肉な悲劇ですが、筆者は、ここになんの説明も加えていませ... 続きをみる
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第二次世界大戦に取材した小説です。自身が一兵卒であった大岡は、復員兵となって日本に戻りますが、その戦争中、アメリカ軍の俘虜となります。その間の経緯については作者自身による別の大きな小説があります。この小説は、極限状態に置かれた人間の話です。作者と思しき兵士が、別の兵士からもらって食べた乾し肉は、人肉... 続きをみる
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遠藤周作は大学に入る前に三浪しています。自分がいかに間抜けであったか、こと細かく書かれていますが、辛辣な苦味はありません。遠藤はここで若い人々に向け、学業が不調であっても、頭が悪くても決して落胆することはない、人生は長いのだから。元に、わたしという見本があるではないかと世話好きなカトリックの神父さん... 続きをみる
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新約聖書のシモンは、洗礼を受けてペテロと名乗りますが、三度キリストを裏切ります。鶏鳴三度の有名な話ですが、遠藤はそのキリストを裏切らざるをえなかった弱い普通の人間であるペテロを思い、その地を訪れ、そのイエスを裏切ったと伝えられている場所に立ち、なんとも言えない深い安らぎを覚えたと言います。日本のカト... 続きをみる
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イギリスのユーモア小説です。少しばかり読み辛い、丸谷才一による翻訳文ですが、イギリスならではの野性的なユーモアや皮肉が、随所に散りばめられたじつに愉快な本です。物語は、気鬱に塞いだ男が家庭医学書を読み耽り、自分はたった一つの病気を除いて、あらゆる病気に罹ってしまったと思い込む所から始まります。世にも... 続きをみる
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豊かな色彩感覚に溢れた美しい小説です。自分が非常な美貌の持ち主であることに自分でも気がつかないような純粋な心情を持った女性と、寡黙だがたくましいアイスランドの美青年の漁夫との恋愛悲劇です。ロチは、さまざまな経緯をへて二人を結びつけますが、物語の最後で、美青年の漁夫をまるで海の女神が嫉妬したかのように... 続きをみる
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宣長が「古事記伝」を執筆する際、研究余録として書かれた随筆集です。内容は国学を中心として、諸事万般に渡るもので、宣長の興味教養や思考の幅がじつに広く、また深いものであったことを窺わせます。書中、尚古主義とは正反対の思考や弁証法的な論法をきれいに叙した文章などが見えます。また、孔子という人物はけっして... 続きをみる
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賢治は謎めいた詩人です。賢治の作品にはまぶしい光が散乱している感がありますが、その光がいったいどこから来ているのかまったくの謎です。また、初期の詩集「春と修羅」に見られるように、自我意識のにごりと格闘せざるを得なかった典型的な近代人であるにもかかわらず、どの近代人にも到達できなかった、いわば、底光り... 続きをみる
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小林秀雄は福田恆存<つねあり>の人物を評して「良心を持った鳥のような人だ」と言っています。ボードレールは滅びゆく貴族階級を範にして自分の生き方にダンディズムを取り入れましたが、福田は日本人的な直感で、これからの時代は俗物的な視点が欠かせないとスノッビズムを創作態度の中に取り入れました。この書は、近代... 続きをみる
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アメリカの作家ヘミングウェイの代表作です。メキシコの海で何日にもわたる格闘の末、小さな釣り船に乗った主人公の老人は巨大なカジキマグロを釣り上げますが、その獲物はサメに襲われて骨だけにされてしまいます。人間の不屈の営みとその報われない空しさを描き、世界から共感を得た名作です。ヘミングウェイはノーベル文... 続きをみる
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福田恆存は現代の作家です。演劇、翻訳、評論など多岐に渡って活躍しました。シェイクスピアの翻訳でもよく知られています。この書はわたしにとっては忘れられない本で、浪人時代の精神的な支柱になったということもあり、このおすすめ本の中に入れました。現実は確かに不平等である。だが、不平等だからと言って不平ばかり... 続きをみる
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日本の現代作家丸谷才一の軽快なエッセーです。これはわたしの好みも入りますが、この人の文章は小説よりも、こうしたエッセーのように軽妙なものの方が、生き生きとした精彩が感じられるように思えてなりません。たいへん博学な人で、博識を元にした知的遊戯の達人と言っていいかもしれません。それでいて、ペダンチックな... 続きをみる
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原文は、とても立派な英文で書かれているそうです。西郷隆盛をはじめとして中江藤樹、二宮尊徳、上杉鷹山、日蓮らの短いけれど、じつに精彩に富んだ評伝集です。誰も内村が書いたように、これらの日本の傑物たちを書けた人はいませんでした。これは内村鑑三自身が代表的日本人だったからに他ならないという理由によるようで... 続きをみる
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サリンジャーはユダヤ人の作家です。日本の禅文化の影響を色濃く受けた人で、巻頭言には白隠の「両手で打って鳴る音を片手で聞け」という禅の公案が掲げられています。サリンジャーは初めから、日本の禅文化に興味を持っていたわけではなく、アメリカで起こった、金持ちの家に生まれ、どこから見ても幸福そうだった青年の自... 続きをみる
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宣長が、大著「古事記伝」を落成した年に書いた初学者のための手引き書です。宣長はここで、暇がないからといって、年を取っているからといって、また、才能がないからといって学問をしないのは、とても残念なことだ。学問は、暇がある人より、ない人の方が却って進むものだし、年を取っていても学問するのになんの差し支え... 続きをみる
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梶井は宮沢賢治と比肩する童話的感性の持ち主だったと言っていいのですが、イマージュの鋭角的な強烈さでは賢治を上回っているように見えます。そうして、それが円満な童話的世界を破る裂け目となります。レモンの鮮烈な味と引き締まった造形美に爆発を見、美しい桜の木の下には動物たちの屍体が埋まっているのだと見る幻視... 続きをみる
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中国の儒教教典五経の筆頭に位置する古典です。中国は不思議なお国柄と言っていいでしょう。「易」は占いの書物ですが、それを聖典として、しかも五経の最初に掲げているのですから。孔子は五十歳になって、はじめて「易」の本当の価値が分かり、これから人生の危機を回避することができるようになるだろうと言っています。... 続きをみる
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当時、見掛けだけ大げさでロマンチックな小説が持てはやされていましたが、スタンダールはそうした小説を憎み、一見平板にさえ見えるような文章を用い、本当のロマンチシズム溢れる小説を書くことに成功しました。スタンダールは、この小説を自分の膝に親類の少女を座らせて、その少女に語るように口述筆記をさせて書いたと... 続きをみる
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スタンダールは時代を越えてはじめて、その本当の価値が分かると言われるほどの普遍精神の持ち主でした。ただ、フランス人は非常に計算好きな国民性を持っていて、スタンダールもこの恋愛論の中で、恋愛を様々なタイプに分析、分類し、これ以外の恋愛というものは有り得ないということを言っています。有り得ないかどうかは... 続きをみる
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親和力は化学用語です。ある物質と他のある物質とが互いに強く引き付け合う化学反応を指します。ゲーテはここで、どうしても互いに引き合って止まない人間同士の恋に例えました。一人は妻のある中年の男、もう一人は、その男を思慕する若い女性です。道ならぬ恋に悩む女性は、ついに絶食して自ら命を絶ちます。男も同じ方法... 続きをみる
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ゲーテの幼少青年期の伝記です。占星術にも決して偏見を持たなかったゲーテは、自身のホロスコープを巻頭に掲げています。「ファウスト」に出てくるノストラダムスといい、ゲーテの実に広い教養の幅を思わせます。また、それらに溺れてしまうような人間でも無論ありません。世界精神と呼ばれるほどの人物の伝記です。われわ... 続きをみる
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タッソーは実在した歴史上の詩人です。ここでは、ゲーテはタッソーに半ば成り代わってこの劇詩を書いている感がありますが、激情家で疑い深い性格の持ち主のタッソーが、まさに、その自身の性格の故に破滅していく物語です。ゲーテのタッソーへの感情移入は並々ならぬものがあって、劇の終わりにタッソーが縄に掛けられる場... 続きをみる
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ゲーテ晩年の著作です。この書には「-あるいは、諦念の人々-」という副題があります。この本を読むキーワードになるような言葉かと思って読んでいますと、はっきりとこの言葉を語るのは、最初に出てくるヤルノという人物だけで、それもほんの少し登場しただけで、後は、最後まで彼の出番はありません。物語は、七十才でハ... 続きをみる
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「初心忘るべからず」や「秘すれば花なり」といったたいへん有名な言葉の載っている世阿弥の芸道指南書です。「美しい『花』がある。『花』の美しさという様なものはない。」「世阿弥の『花』は秘められている、確かに。」という小林秀雄の名文句によっても光を受けました。芸術に少しでも関心のある人なら、座右に置いてお... 続きをみる
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ガリアは今のフランスです。この書は、カエサルが自分のガリアでの戦歴をローマの元老院に宛てて、非常な速さで書いて報告したものです。翻訳文はかなり読みづらく、また、カエサルの時を置かずに進撃して止まない行軍は、読む者に目まいを起こさせるような果てしない単純さを感じさせるものですが、この行軍の成り行きを見... 続きをみる
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トルストイと比べると、ドストエフスキーの方がより現代的な小説家だというのが、一般的な見解となって久しいようですが、人物としては、トルストイの方が遙かに上回っているようです。ト翁という言葉はありますが、ドストエフスキーにはそうした言葉はありません。トルストイには、ドストエフスキーが書いたような芸術とし... 続きをみる
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題名は、ベートーヴェンの有名なヴァイオリンソナタからとられています。トルストイはこの作品でクロイツェル・ソナタを徹底的に批判し、やがて、芸術一般を否定する強烈な思想を確立するに至ります。しかし、この小説で見せるトルストイの芸術家としての稟質は目覚ましく、夫が不倫をした妻をナイフで刺す場面などは、圧倒... 続きをみる
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およそ小説に描かれた女性で、これほどかわいい女は他にいないでしょう。オーレンカは自分の意見というものを持たない人間ですが、誰かを好きでいずにはいられない女です。三度結婚しますが、三度とも相手の意見に従い、愛し切ります。最後に寡婦になりますが、ある少年に心底から愛情を注ぎます。トルストイは、この短編小... 続きをみる
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チェーホフ晩年の作品です。名篇「桜の園」にも通じる象徴的な筆使いが感じられます。三人姉妹は、悲しい運命と俗悪な日常生活に曝されますが、胸の中に宿る小さな倫理的といってもよい希望の火を決して消しません。劇の最後、三人姉妹がそれぞれに、心の底から絞り出したような偽りのない心情を歌うように語る場面は、どこ... 続きをみる
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女優志望の娘ニーナは、名声にあこがれて家を出てある劇団に加わり、男に身をまかせ子どもを産み、やがて、男に捨てられ子どもにも死なれます。絶望したニーナは、自分を気まぐれな漁師に撃たれたかもめのようだと「わたしはかもめ。」と繰り返します。「わたしはかもめ。・・・いいえ、そうじゃないわ。」時を経て、ニーナ... 続きをみる
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ロシアの近代作家チェーホフは医者でもありました。結核を患い44才で亡くなりましたが、その生涯は忍耐に忍耐を重ねた、聖職者のように清潔なものでした。作中のワーニャ叔父さんはどこにでもいるような、さしたる取り柄のない独身の中年男ですが、ある若い美しい夫人に恋をします。ワーニャ叔父さんは結局振られてしまう... 続きをみる
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司馬には、硬軟入り交じった著作が多いのですが、この本はその司馬の中でも、もっとも硬い方の著作に属するでしょう。剛直な筆致で、平安期の巨人空海を描きますが、著者の筆が思うように伸びず難渋しているのが分かります。筆者は、後記でこの伝説に包まれた巨人弘法大師の衣の翻りでもいいから描いてみたかったと言います... 続きをみる
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ロシア戦役当時、筆者の米国従軍記者が、間近に見た乃木将軍の姿を捉えたものです。記者は、乃木をFather Nogiと親しみを込めて呼び、軍人としての賞賛には一顧も顧みず、漢詩を賞められるとニコリとする乃木の姿に、日本人の持っている武士道精神の精華を見たと言います。明治天皇崩御の際、乃木将軍殉死の一報... 続きをみる
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ロシア戦役で最高司令官を務めた乃木希典を描きます。乃木は当時の論文で、「無能論」が書かれるほど戦術家としては取り柄を持たない人でしたが、松陰と同じ師によって教育されたその精神力は巨魁と言ってもいいものでした。有名な二〇三高地への攻撃命令は、まるで明日の馬の準備でもするような口振りで伝えられます。病に... 続きをみる
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歴史小説を得意とした著者が、アメリカについて書いた題名通りのデッサンです。ただ、司馬の眼光は鋭く。この不思議な大国の急所をよく見抜き、秀れた筆致でその暗部も明部も鮮やかに描き出してくれます。「普遍性があり便利なモノやコト、もしくは思想を生みつづける地域は地球上にアメリカ以外ないのではないか。」と著者... 続きをみる
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戦国期の名将、伊達政宗を描きます。司馬のこの短編は、優に他の伊達政宗に関する書物を凌駕しています。題名は、漢詩もよくした政宗の「馬上少年過ぐ、世は平らかにして白髪多し、残躯は天の許すところ、楽しまずんば又如何せん」からとられています。政宗がこの漢詩を詠んだ時、戦国の世は終わり泰平の世が始まっていまし... 続きをみる
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油売りの身から一国の城主にまでなった斎藤道三と稀代の天下人織田信長を描きます。道三の話柄には、多くフィクションが紛れ込んでいる感がありますが、一介の貧民から城主にまで登り詰めた男を描いて、痛快ささえ覚えます。信長については、「信長公記」があるおかげでしょう。写実的な筆致でその人物像を捉えます。戦国時... 続きをみる
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数多い司馬の歴史小説の中でも、もっとも優れた著作と言っていいでしょう。吉田松陰と高杉晋作の二人の傑物を描きます。司馬は、日本は鎌倉時代になって、始めて日本人の顔が見えるようになると言っていますが、法然と親鸞の師弟の繋がりを先駆とする日本の師弟関係、時代は経て、幕末の動乱期になっても健在なまま保持され... 続きをみる
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著者畢生の代表作、小説「楢山節考」です。舞台は、どことも知れないもの深い貧しい山村です。主人公おりんばあさんは、なんでも食いそうな自分の健康できれいな歯が恥ずかしく、石臼にぶつけて自分の歯をガタガタに傷付けたりします。この村は、いつもの食物に事欠くほど貧しいのです。やがて、おりんばあさんが裏山に捨て... 続きをみる
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著者は、アイヌ民族出身の政治家でもあった、アイヌの昔話の収集家でした。本書はアイヌの人々によって口承されてきた昔話を著者が日本語に訳したものです。この昔話の中には、殺されたことで、「もう、悪事を重ねなくても良くなった」と自分を殺害した者に礼を言う悪神の話や我が子を焼いて「おいしい、おいしい」と言って... 続きをみる
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戦後第三の新人と呼ばれた作家の一人、安岡章太郎の代表作です。海辺の施設には、もう何も判別も判断も付かなくなった認知症の主人公の母が入所しています。主人公は母の傍らに付き添い、一夜を明かします。母との思い出を辿っていく中に、主人公は豁然と蒼穹が開けたような大きな心の境地に到達します。志賀直哉の名篇「暗... 続きをみる
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舞台は、どことも知れない海岸近くの僻村です。主人公は、まるで人間用の蟻地獄の巣のような、とある一軒の砂に囲まれた家の中に、ふとした油断から堕ちてしまいます。自力ではどうしても這い上がれないその家の中には、一人の女がいます。村人達は、この女と一緒になって、この村の人間になるなら出してやろうと告げます。... 続きをみる
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日本一の剣豪として知られる宮本武蔵が、その自分の剣術の腕前の拠って来たる所以を書き著したのが本書です。武蔵はここで、「仏法儒道の古語をも借らず」つまり、伝統の力を借りないで、書物を著そうと企てています。こうした試みは、まず無惨な失敗に終わることが通例ですが、武蔵の場合は、少なくともその独創的な思想の... 続きをみる
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「イワン・デニーソヴィッチの一日」ソルジェニーツィン 新潮文庫
ソビエト連邦はすでに崩壊しましたが、この小説はそのソビエト連邦崩壊の立役者となった作家ソルジェニーツィンの処女作です。筆者は、ドストエフスキーとは違い、全くの無実の罪で当時のソ連の強制収容所へ十年間、囚人として監獄生活を送りました。そのために文学者の中には、この小説に「死の家の記録」に引き続くロシア... 続きをみる
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フレンホーフェルという金持ちの老画家の話です。彼は、熱っぽく絵について語り、瞬く間に一枚の見事な絵を描いてしまうような腕を持っていますが、少し風変わりなところがあります。十年来、ある絵に没頭し、それが自分でも傑作かどうか判じかねているのです。ある機会があって、思い切ってその絵を信頼している画家の仲間... 続きをみる
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幾重にも織り巡らされた物語の筋が、最高潮を迎えて、一挙に一点に集中し、破局します。リアリズム作家バルザックの苦り切った顔が見えるようです。バルザックは、自分のすべての作品群を、ダンテが自分の「神曲」をコメディーと呼んだのにあやかり、「人間喜劇」と名付けました。この「幻滅」は、その「人間喜劇」の中でも... 続きをみる
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主人公のバルタザールは、科学の「絶対」に憑かれた男です。妻は足の悪い身体障害者ですが、夫のバルタザールのことを愛しきっています。バルタザールは時折、家族のことを顧みはしますが、科学の実験のために、家のほとんどの財産を蕩尽してしまいます。その間に妻は亡くなってしまいますが、見かねた娘がバルタザールに仕... 続きをみる
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ウジェニーの家は葡萄作りで収入を得ていて、非常な金持ちです。これはウジェニーの父が、本物の守銭奴であるためで、父は、家族全員、召使いにも爪に火をともすような暮らしを強制させます。これほど頑丈な守銭奴の性格の持ち主は、どの小説にも見られないと言っていいでしょう。妻がどうなろうと娘のウジェニーがどうなろ... 続きをみる
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バルザックの中では、比較的短い小説ですが、強い感動を受けずにはいない傑作です。話は、二人の子どもを連れた若く美しい未亡人が誰とも付き合わず、ざくろ屋敷で行い澄ましているところから始まります。なぜ、未亡人は誰とも付き合おうとしないのか。その理由は、読み進むうちに明らかになりますが、物語の末尾は、どの人... 続きをみる
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バルザックは51才で亡くなりましたが、創作意欲は実に逞しく膨大な量の小説を後世に残しました。この「谷間の百合」はそのバルザックの小説の中でも、「ゴリオ爺さん」と並んで、最高傑作と目されるものです。舞踏会で出会った美しいモルソフ伯爵夫人に恋をしてしまった純情な青年フェリックスは、夢がかない夫人とつきあ... 続きをみる
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モーツァルトの父レオポルトは、自分の息子は天才に違いないと、モーツァルトがごく幼い頃から、その手紙を後世のために取って置くように家人たちに命じました。レオポルト亡き後も、その遺訓は守られ、わたしたちは現在、膨大な量のモーツァルトの手紙を読むことができます。けれども、その手紙は、モーツァルトの音楽の大... 続きをみる
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「ドン・ジョバンニ 音楽的エロスについて」キルケゴール 白水uブックス
デンマークの哲学者キルケゴールの秀抜なモーツァルト論です。「音楽的エロスについて」という副題がついています。特に「ドン・ジョヴァンニ」を酷愛した筆者が、「石が語り始めようとする前に、私は語り始めなければならい。」と音楽について正確に語ることの不可能と、またその必然性とを表した有名な言葉で、モーツァル... 続きをみる
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近代科学の祖、デカルトの代表作です。デカルトはパスカルと同時代人で面識もありますが、両者はまるで違った人物です。パスカルはカトリックの天才と言っていい人でしたが、デカルトは方法の天才と言っていいでしょう。デカルトは若年にして、哲学上の大発見をし、その後、長い年月をかけて、その発見をするにはどうしたら... 続きをみる
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作者の中島敦は若年で亡くなりましたが、漢文調の簡潔で力強い文章を得意とし、さまざまな格調の高い小説を残しました。この本に収められている短編は、どれも完成度の高い、何回もの再読に耐える、古典の名に値する名篇です。囚われの身となった「李陵」が、鬱屈を晴らそうと馬で駆けて行く場面は雄渾ささえ感じます。「名... 続きをみる
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ゴッホは画家ですが、弟のテオや友人に宛てて、非常に多くの手紙を残していたことはあまり知られていません。しかも、その多くの手紙は、ゴッホの多くの絵と同じくらいの、またそれ以上の文学的な価値を持ったものだとなると驚きを増す人は多いことでしょう。ゴッホの絵が、誰の真似も追従も不可能な、断固たる芸術的な価値... 続きをみる
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