• 柊の唄 5 (初恋と嫉妬 番外編)

    おねえ様は何かに心を捕らえられてしまったことはありますか? 人を好きになるのは何故なのでしょうか? 授業の終わるのを未だかしらと、何度も腕の時計を見る。 早く時間が過ぎてほしい。 ううん、早くその時間になってほしい。 でも、もう少し待って。 準備がまだ出来てない。 相反する二つの感情。 そんなことを思ったことが、今だかつてあったのだろうか? 終業のチャイムが鳴るのを聞いて心が踊るのと同時に、少し不

  • 柊の唄 4 (初恋と嫉妬 番外編)

    英徳学園に在籍している生徒、関係者で、知らない者は恐らくいない。 類い稀な美貌と高貴な血筋。 『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』 この諺がピタリと填まる人物。 九条家の次女、さつきが友人たちを引き連れて、構内を正門に向かい歩いて行く。 歩く度に、男女の性別とは関係なく、振り向かれ、決まって憧憬の念を抱かせるのだ。 大きなイチョウの木の下に人だかりが出来ていた。 「さつきさん、もしかして、

  • 柊の唄 3 (初恋と嫉妬 番外編)

    妹のさつきが食事のテーブルに付くと、決まって男性の話になる。 「さつき、この前話していた帰国子女の方のことなんだが…」 「お父様、聞いて下さる?」 妹のさつきのお喋りは食事中にしてもあまり嫌な顔をされない。 特に最近はお父様が話を熱心に聞いている有り様だ。 わたくしが経済の話をすると、女なのだからそんな事は考えるなと言われる。 アメリカやヨーロッパでは、女性の仕事での進出が目覚ましいと聞く。 何の

  • 柊の唄 2 (初恋と嫉妬 番外編)

    九条家は伯爵の称号を与えられていた旧華族の出身の名家。 現在の当主の楓の父は伯爵の称号を得ていた祖父の莫大な財産を元に事業を行っていた。 その一つが反物や生地を扱う卸の仕事。 現在は、衣服の大量生産化に伴い安い生地が出回るようになってきた。 良質な生地を扱い、オーダーメイドだけの生産を行う業者だけを取引先としているため、収支のバランスが取れなくなってきている。 細々と行っているのであれば、それだけ

  • 柊の唄 1 (初恋と嫉妬 番外編)

    しんちゃんへ 新年明けましておめでとう。 しんちゃん。 大学生は大人ですか? わたくしは忘れてません。 あなたと過ごした時間が唯一わたくしがありのままでいれたのだと。 ここから見える礼拝堂の十字架とこの部屋の柊の葉と赤い実が重なって、クリスマスツリーに見える。 もう、随分と経ったように感じます。 それでも、毎年ここに来てます。 季節外れのツリーを手の中に二人で作り、明けましておめでとうと挨拶を交わ