• エッセイ 通貨という形而上

    ※この記事は、少し分かりにくいと思いますので、「資本主義経済」というタグの中の「紙幣という形而上」という記事をご覧頂いて、参考にして頂ければ、幸いです。 一時代前は、通貨と言えば、貴金属だった。つまり、通貨は実質を持った価値を持っていた。国が滅んでも、通貨自身が価値を持つ財産だった。 しかし、資本主義経済の到来によって、その巨大な市場は、金が稀少価値を持つが故の財であることが暴かれ、通貨はその本来

  • エッセイ 紙幣考<ドストエフスキーの貨幣感覚>改版

    前に、このブログで一度触れたが、ドストエフスキーの「白痴」の中で、ナスターシャが大金の札束を燃やそうとする場面をよく見てみたい。紙幣が、金銀貨とは、まるで違ったものだということを象徴的に表現している箇所だと思えるのである。 バルザックの時代は金銀貨であり、それは、そのままで実質的な価値を持つ貨幣であった。けれども、紙幣は、その背後にある国もしくは共同体の信用がなくなれば、単なる紙切れとなる貨幣であ

  • エッセイ 結果論の弊害<スポーツ等>

    あるとき、ある高等学校の生徒さんの作文を多く読む機会があった。それを見ると、彼らがいかに<結果>というものに心を蝕まれているかを痛感した。 彼らの作文で、よく出て来るテーマを圧縮してみると、努力→結果という図式である。ほとんど、これ以外は考えようがないというくらい頑固にこの単線の思考を繰り返している。 結果論は本来、野球用語で、元々結果からものを言うという弊害を正そうとして、悪い意味で使われてきた

  • エッセイ 資本主義経済考3 <リニア新幹線>

    運動はどのような運動であれ、それが継続されていれば、内的にソフィストケートされる。資本主義経済という大運動も、その例外ではあるまい。現代の日本では、それが資本主義経済に付随する特徴であった「速さ」として洗練された。 リニア新幹線は、そのもっともシンボリックな表現と言っていいもので、これが、確かに富を増幅させる装置になるかどうかは、今のところ白紙のはずである。大需要→大供給の図式は後乗りとなるからで

  • エッセイ 資本主義経済考2 <人狼と福の神>

    資本主義経済が人狼的な性格を持っていることは、「資本論」が指摘した通りである。産業革命は、まず、自国の下層の人々に刃を剥いた。「女工哀史」はつとに有名だが、現在の日本でも、例えば、トラックの運転手に「雪が降ろうが、台風が来ようが延着は許さない。」と迫るところによく表れている。 だが、資本主義経済のこの人狼的な性格を強調しすぎると、私有財産の否定という極端な思想に走ってしまう。 もっと、よく見てみよ

  • 閑話休題 昔言葉 <人生の墓場>

    一時代前、結婚は人生の墓場という言葉があったが、最近の新入社員の黒づくめのスーツを見ていると、就職は人生の墓場であるかと思ってしまう。 さて、結婚難で、少子高齢化の時代となり、これは、どうした加減の現象かと問いたくなるところである。明治初期の頃、福沢諭吉は、結婚率の割合と米の相場が連動していることが分かったと経済学の成果を言っていたが、こうした現象は、そうした社会学の底辺から考えてみるのがよいかも

  • エッセイ 資本主義経済考 <巨大な社会運動>

    ひとことで、資本主義経済というが、その本性は定義も、ある大まかな分類も不可能な、巨大な世界的現象で、文学上のロマンティシズム運動が定義不可能な大きな運動であるよりも、もっと規模の大きな社会的運動であるということである。 分かっているのは、大規模な需要に対する大規模な供給、それと、なによりも速さを伴わなくては、富を集積できないというのが、この運動の主な特徴ということだけであろう。 共産主義は、そのプ

  • エッセイ 紙幣という形而上 <国際通貨不在の時代>

    雑駁な言い方を、許してもらえれば、マルクスの「資本論」は、通貨が金貨や銀貨であった時代のもの、ケインズの経済論は通貨が金銀から紙幣となる移行時代のものと言えるのではないだろうか。 1978年から、金が通貨の座を奪われ、国際通貨が不在となり、通貨はことごとく価値が相対化された。この価値を保証するのは、今のところ国家と共同体という巨大な法人のみである。国と共同体の信用度によって通貨の価値は決まる。 通

  • エッセイ 労働ということ <死の家の記録>

    ドストエフスキーの「死の家の記録」の中で、廃船解体を命じられる囚人たちの話がある。鮮やかな印象を残す場面で、最初に読んだときにも、よく記憶に残った。 アランも「幸福論」の中で、言及しているが、囚人たちに課せられたのは、どこにでも山のようにある、一文の得にもならない廃材を、廃船を解体して積み上げることである。 作業に当たった囚人たちは、まったくやる気がなく、のろまで、愚鈍で、作者に扮したゴリャンチコ