2016年のムラゴンブログ

  • 「64年、許されぬ痛み・長崎被爆者・永野悦子」

    午前1時から、「ラジオ深夜便」(NHK)〈インタビュー「64年、許されぬ痛み」長崎被爆者・永野悦子〉を聴いた。永野氏は現在80歳、長崎被爆体験の「語り部」として、その悲惨な実態(この世の生き地獄)を中・高校生、若者たちに語り伝えているとのことであったが、タイトルにある「許されぬ痛み」とは何か。昭和20年8月、永野氏が16歳の時、鹿児島に疎開していた9歳の弟、13歳の妹を、長崎に「連れ戻し」に行った

  • 停留所

     地域のミニ・バスに乗った。目的の停留所で降りようと停車ボタンを押す。「次、停車します」というアナウンスが聞こえた。運転手も「はい、次、止まります」と答えた。直後に「バスが止まるまでそのままお待ちください」というアナウンス。私は座席に座ったままバスが止まるのを待った。しかし、である。バスは止まらず、あっという間に停留所を通過した。あわてて声を上げようとしたが、「待てよ!」と思った。歩いて戻れば済む

  • 続・「布財布」譚

     郵便局から速達が届いた。「警察がキャッシュカードを保管しているので受領するように」という内容であった。さっそく所轄の警察署(会計課・遺失物係)に連絡後、赴いた。 窓口で受理番号を告げ、マイナンバーカードを呈示、所定用紙に住所、氏名、電話番号を記入する。担当警察官が件の布財布を持ってきた。「これに間違いないですか」「間違いありません」「それでは、中に入っていたものを確認してください」と言いながら、

  • 「布財布」譚

     落としたものやら、掏られたものやら・・・、愛用の布財布が忽然と消えた。スーパーで買い物をし、自動支払機で精算するときまでは確かにあったのだが・・・。代金は1400円余り、財布から五千円札を挿入して釣り三千円を戻した。他に一万円札が2枚入っていたと思う。そこまでは記憶している。次はコンビニでタバコを買う予定、頭の中で「たしか五百円玉が小銭入れにあった。釣り銭の五百円玉と合わせて1000円になる。そ

  • 「白内障手術」譚

     ほぼ1年前、私は以下のような駄文を綴った。 《私の戦後70年・メガネ》  小学校入学時から私の視力は弱かったが、四年生の頃から黒板の字が見えなくなった。メガネをかけたいと思ったが、恥ずかしくて言い出すことができなかった。クラスの誰ひとりメガネを装用していない。学校の視力検査でも「見えない」ことを隠したい。私は順番がくるまでに検査表の文字列を必死で憶えた。「コ・ナ・ル・カ・ロ・フ・ニ・レ・コ・ヒ」

  • 相模原殺傷事件・容疑者の「目途」

     相模原殺傷事件に対する社会の反応をみると、いわゆる「優生思想」(障害者の存在理由を疑う考え)の是非という問題に囚われすぎているように感じる。しかし、そのことこそが容疑者(犯人)の目途であることを見落としてはならない。「優生思想」は想念の枠内であり、思想・信条の自由という理念で守られている限り、いくら論議したところで結論がでるものではない。大切なことは、容疑者の犯罪(殺人罪)に対してどのように向き

  • 映画「浮草物語」(監督・小津安二郎・1934年)

     戦前の「大衆演劇」を描いた邦画に「浮草物語」(監督小津安二郎・1934年)がある。ユーチューブで観賞できるが、サイレント版であり、全く沈黙の世界である。しかし、場面の随所にはセリフの字幕が挿入されており、不自由はしない。  登場するのは市川喜八(坂本武)一座、信州(?)の田舎町に九年ぶりにやってきた。この町には喜八の隠し子の信吉(三井秀男)が、居酒屋を営む母・かあやん(飯田蝶子)と共に住んでいる

  • 映画「旅役者」(監督・成瀬巳喜男・1940年)

     戦前の邦画「旅役者」(監督成瀬巳喜男・東宝・1940年)をユーチューブで観た。大変おもしろい。田舎町を旅する中村菊五郎(高勢実乗)一座の物語である。一座の当たり狂言は「塩原太助」。馬の役を務めるのは俵六(藤原鶏太)と仙平(柳谷寛)のコンビである。俵六は、馬の脚を演らせたら自分が日本一だと自負している。町に到着すると一行は、リヤカーや人力車に乗って街道を練り歩くが、俵六と仙平は稽古に余念がない。一

  • 家族の絆

     〈次男は大学中退後、十年間家にいた。「よく何もしないでいられるものだ」と感心もしたが、イライラが募った。長男が群馬から来て(次男と)一晩話し合ったことがきっかけで。彼はビル清掃の仕事を始め、七ヶ月が過ぎた。今は「ただ」毎日行ってくれればそれで十分。給料や将来性や世間体、そんなものは何もいらない、いつやめてもよい〉という父親からの投稿(東京新聞朝刊・発言)に感動した。次男の「挫折」を責め立ずに見守

  • 「戦争」で国を守ることはできない

     アメリカ大統領選でドナルド・トランプ候補が勝利した。彼は、駐留にかかわる費用全額を日本が負担しない限り米軍を撤収する由、まことにけっこうな話である。日本全土から米軍がいなくなれば、日本は自力で国を守らなければならない。当然のことである。世界中のどの国も、自分のことは自分で始末するのが常識である。では、どうやって国を守るのか。これもまたあたりまえのことだが、「武力」で守るのは最も未熟で愚か、最悪の

  • メダルは《平等のシンボル》

     前回のロンドン大会では、オリンピックの入賞者が、パラリンピックの終了を待たずに単独で凱旋パレードを行い、図らずもアスリートはじめ関係者の未熟さが露呈された。それを反省してか、今回はオリンピック・パラリンピックの入賞者が合同でパレードを行うらしい。東京都教育委員会のホームページでは、オリンピック・パラリンピックの精神について〈世界中の人々が参加するオリンピックは「オリンピックの精神(オリンピズム)

  • 子育ての「基本」

     子育ての「基本」は、子どもを両手でしっかりと「抱きしめる」ことである。そのとき、大切なことは、抱きしめられる子どもと抱きしめる人(主として親)の双方が、ともに「心地よい」という感覚、感情を共有できるかどうかということである。    最近では、「抱っこ紐」を利用する親をよく見かける。親は両手で子どもを抱きしめなくても、また子どもは親にしがみつかなくても安定している。移動の手段としては、誠に便利かも

  • 自閉症の《本質》

     もし生まれたばかりの乳児を母親から引き離し(隔離し)、何の刺激も与えずに「栄養補給」だけで育てたらどのような結果になるだろうか。そのような実験は許されるはずもないが、アカゲザルなどを対象にした「隔離実験」では、子ザルに様々な異常行動が発生することが報告されている。(「子ザルの異常な社会的行動」(スティーヴンJ.スウオミ、ハリーF.ハーロウ)『障害乳幼児の発達研究』(J.ヘルムート編・黎明書房・昭

  • 自閉症・《負のスパイラル》

     平成15年、文部科学省は「自閉症とは、3歳位までに現れ、1他人との社会的関係の形成の困難さ、2言葉の発達の遅れ、3興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される」と定義した。厚生労働省もホームページで、「自閉症の原因はまだ特定されていませんが、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、生まれつきの脳の機能障害が原因と

  • 参議院の《消滅》

     参院選が終わった。各政党は勝った負けたと騒いでいるが、実は大変な過ちを犯していることに気づいていない。それは、国会における二院制の意味、参議院の役割を全く無視しているという点である。本来の参議院は衆議院を抑制・均衡・補完する機能を持たなければならない。そのためには、参議院議員は「党議」に拘束されない、個人の立場で議論することが要求される。特定の政党に所属している限り、その資格を失うはずだが、現状

  • 喫緊・最大の課題

     人は、その文字が示すように、支え合って生きていく。支えられる方も、支える方も、互いに相手を必要としている。弱者は強者を頼りにするが、強者もまた一人では生きて行けない。弱者があればこそ強者になれるのである。といった関係が人間社会の摂理だと思われるのだが・・・。実際には弱肉強食の原理が優先されているようである。  人は、支え合う相手を失ったとき、どうなるか。心身のバランスが崩れ、落ち着きをなくす。そ

  • 「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《6》

    【第五章 内閣】 ◎草案(修正該当部分) 第七十二条3 内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。 ◎修正案 第七十二条3を削除する。 《解説》 ・修正案においては、国防軍は存在しないので、この規定は不要である。 【第九章 緊急事態】 ◎草案 (緊急事態の宣言) 第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震などによる大規模な自然災害その他

  • 「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《5》

    【第四章 国会】 ◎草案(修正該当部分) 第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。 第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。 ◎修正案 第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。 2 参議院は非政党議員で構成し、衆議院を抑制、均衡化、補完する。 第四十九條 両議院の議員は、国庫から最低賃金の全国平均に相当する額の歳費を受ける

  • 「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《4》

    【第三章 国民の権利及び義務】 ◎草案・1(修正該当部分) 第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民はこれを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び責務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。 第十三条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない

  • 「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《3》

    ◎草案 【第二章 安全保障】 (平和主義) 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。 2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。 (国防軍) 第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。

  • 「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《2》

    《日本国憲法改正草案・自由民主党》修正案・《2》 【第一章 天皇】 ◎草案(修正該当部分)  (天皇) 第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。 (国旗及び国家) 第三条 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。 2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない ◎修正案・1 第一条(現行憲法の条文を適用する) 第

  • 「日本国憲法改正草案・自由民主党」修正案・《1》

    【前文】 ◎草案  日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴いただく国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。 我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。 日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り

  • 天皇および皇族の《人権》

     「国民主権」の民主主義を標榜する日本社会において、参政権をはじめ基本的人権の数々を剥奪されている家族がある。「象徴」という存在の天皇家(皇族)だ。国民は彼らを敬い、親しみを込めて至上の優遇を図っているように見受けられるが、それは虚構に過ぎない。もともと天皇は「絶対君主」であり「神聖にして侵すべからず」という存在であった。敗戦によりその地位は失われ、(意味不明、曖昧模糊とした)「象徴」という立場に

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・41

    【あとがき】 《要約》 ・私自身の遠い昔、小学校の低学年の頃だっただろうか。突然、ほかの子どもたちとの間に大きな距離を感じ始めた時期があった。ふと気がつくと、私は昼休みの校庭で一人きりで、級友たちのどの集団に、どのように近づいていったらよいのか、また数日前まで、私自身、集団の中にどのように収まっていたのか、皆目見当がつかない状態になっているのだった。時間が急に止まったような感じで、どうやったらそれ

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・40

    【統合者としての「私」】 《要約》 ・「今ここ」に支配された「私」を、もっと安定した「私」に引き継がせようとする背後には、統合者としての「私」が隠れているはずである。それは私たちの中にあって不断に活動する一つの「機能」であるに違いない。 ・現代の脳医学は、人格を統合するためのこのような機能の「場」が、人の脳の前頭葉皮質にあることを確認しつつある。前頭葉皮質の中でも前頭前野と呼ばれる領域に、自分自身

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・39

    【「私」から「私」への手紙】 《要約》 ・私たちがいつも使っている言語一般こそは、今の「私」から別の「私」に向けて差し出される手紙まもだ。私たちの視覚や聴覚や触覚は、感覚器官によって入力される外部情報にもとづいているから「今ここ」の世界に支配されやすい。だから、それらの感覚に依存する限り、環境が一変すると、私たちのこころの状態も一変してしまう可能性がある。しかし、言葉は、今この時間やこの空間にない

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・38

    【人間の脳がもつ制約】 《要約》 ・自閉症者が私たちと同じように生きていくことがこのように困難になったのは、彼らに特有な脳の障害が現れたからにほかならない。その制約をもって生きてきたことが、彼らを「自閉症」らしくしてきたのである。 ・障害のない「われわれ」も、脳や認知の仕組みによってもたらされるさまざまな制約のもとで生きている。たとえば、記憶能力に関して非常に大きな制限をもっている。私たちの脳に貯

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・37

    《第9章 自閉症とわれわれ》 【われわれ自身の謎】 《要約》 ・本章では、この本でとりあげてきた諸問題を整理しながら、「われわれ」の側の振る舞い方、コミュニケーションの仕方、内部世界の特徴について考えてみたい。それは、自閉症者の場合と同じように「一風変わった」働きをするものなのかもしれない。 【自閉症が教えること】 ・「自閉症」の本質とは、またそれと比較したときの「われわれ」の本質とは、どのような

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・36

    【パソコン教材】 《要約》 ・パソコンによって制御される教材の基本的な働きは、IF・THENの構造に尽きる。学習者は、「IF右のボタンを押せば、THEN画面の中の車がエンジンの音と共に動き出す」といった仕組みを学びながら、この機械とのつきあい方を理解していくことになる。 ・このわかりやすいルールの世界は、自閉症児のなわばりの新しい領域になるに違いない。また、この教材を動かしながら、学習者と指導者は

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・35

    【個別教育プログラム】 《要約》 ・それは、従来の一斉授業中心の指導形態を改め、一人一人の障害児の実態に合ったプログラムにもとづいて指導をおこなおうとするものである。 ・社会的な発達に重大な障害を持つ自閉症児の教育の目的は、それに適応できるようにすることである。 ・自閉症児に対する個別教育プログラムの必要を早くから唱え、実施してきたのは、米国ノースカロライナ州で始まったTEACCHプログラムである

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・34

    【生活の立て直し】 《要約》 ・自閉症者は、早い時期から社会のさまざまな状況に適応できるように、種々の学習に取り組んでおくことが望ましい。 ・自閉症者を受け入れるにあたって、私たちはどのような準備をしておいたらよいのだろう。また、自閉症者は、どのような順序を経て私たちの世界に入ってくるのだろう。 《感想》 ・自閉症者が社会のさまざまな状況に適応できるようになるために大切なことは、彼みずからが、「自

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・33

    《第8章 自閉症への教育的接近》 《要約》 【謎から係わりへ】 ・自閉症者は、自分にとってわかりやすい小さななわばりの中で生きている。このなわばりを拡げることが教育の仕事ということになる。 【なぜ教育が必要なのか】 ・彼らを彼らの安心できるなわばりの中に住まわせておくだけでもいいのではないか、という根源的な問いかけを投げかけてくる人もいよう。この問かけに対する充分に満足できる答は、実のところ持ち合

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・32

    【関係についての感情】 《要約》 ・ここまで述べてきたのは、一・二人称的な世界で起きる感情である。怒りも、恐れも、慈しみの感情も、「わたし」と「あなた」の間で起きるものである。しかし、感情が分化してくると、当事者の間で起きるもの以外にも多くの感情が発生してくる。 ・嫉妬の感情は、幼児が自分の弟や妹の誕生後にたびたび示すものである。この感情は自閉症児には現れにくい。 ・嫉妬とは、他者と他者の間の関係

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・31

    【顔のない人々】 《要約》 ・ヒトという種は、他の動物にはないいくつかの表情を生み出した。その代表格が、笑顔によって表される感情である。「裸のサル」(角川文庫)の著者として有名なデズモンド・モリスは、笑顔の起源は泣き顔であり、微笑は、怒りや恐れの感情が発展して現れた可能性が大きいと述べている。つまり、相手に恐れも怒りも呼び起こす必要がないことを請け合い、安心させる目的で発生したものである。それは、

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・30

    《第7章 自閉症の感情世界》 【表情の謎】 《要約》 ・彼らの顔からは表情が消失していることが多い。また、彼らは他の人々の表情も捉えていないようである。 ・捉えどころのない自閉症者の表情の裏にはどのような感情が動いているのか、本章では、この問題を考えていきたいと思う。 【闘争か逃走か】 ・闘争か逃走か。この言葉は、野生動物が敵に遭遇したときの二者択一的な行動を意味する。そのとき、守るべきものが命を

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・29

    【M君のスケジュール帳】 《要約》 ・自閉症児が外部世界の動きを壁にかけられた時計やカレンダーと関連させるようになると、こころの中でのそれらの意味は健常者の場合よりもずっと重要なものになるようである。彼らは、それによって現在の時刻を知るばかりでなく、過去から未来へのかなり広い範囲のスケジュールを管理するようになる。 ・M君という22歳の自閉症の青年は、大学で行われる平成4年度の卒業式の日取りについ

  • 自閉症・《負のスパイラル》

     平成15年、文部科学省は「自閉症とは、3歳位までに現れ、1他人との社会的関係の形成の困難さ、2言葉の発達の遅れ、3興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される」と定義した。厚生労働省もホームページで、「自閉症の原因はまだ特定されていませんが、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、生まれつきの脳の機能障害が原因と

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・47

    《第13章 Fくんの場合》(秦野智子) 1.入園時のようす・・・不安定な母子 ・6歳0カ月の時、初めて来園した。すんなりと保育室に入り、母親のひざにすわっていた。しばらくすると黒板に石油会社名を書くようにせがむことをはじめた。書いた後は必ず声にして読ませた。その後、ワゴン車に乗り込み押してもらい廊下をいったり来たりする。その最中も絶えずアメ玉をしゃぶり、言語はなく、時々手を顔の前で振り「アヤヤヤ・

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・46

    《第12章 Eちゃんの場合》(後藤徹男) 1.入園時のようす・・・薬物療法施行中 ・4歳3カ月の時、母親と来園。何をして遊ぶでなく、フラフラと歩き回っていた。トランポリンの上では、されるままで、自分から動こうとする意欲はまったく感じられなかった。発声はあまりなく、無表情で笑い声も聞かれなかった。4月なのに、ひどいしもやけが残っていた。 ◆児童相談所の判定は、「知的障害に基づく言語遅滞、落ち着きがな

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・45

    《第11章 Dくんの場合》(小柴真喜子) 1,入園時のようす・・・表情固く言葉を発しない ・Dくんは非常におとなしい子で、感情表現が乏しく、一定の表情しかみられなかった。・電気のスイッチをつけたり消したり、オルガンの音に興味をもち、オルガンの下にもぐり込んでばかりいた。シーソーブランコを動かしては、腰かける所の下の部分で、キーキーときしむ声を出し、1人で笑って楽しんでいた。まわりの子に関心を示すこ

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・44

    《第10章 Cちゃんの場合》(久我晴代) 1.入園時のようす・・・3日に1度くらいしか声を出さない ・2歳11カ月の時、父母と見学に来る。泣いて入ろうとしない。強引に中につれて入る。父母と面談中も泣いてぐずっていた。給食は1人で好き嫌いなく全部食べた。その後、機嫌がなおったので保育室でボール遊びをした。 ・3歳から週2回通園開始。初めの2,3日間は園庭で遊んでから中へ入る。1カ月間は午前中だけ出席

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・43

    《第9章 Bくんの場合》(荻野俊子) 1.入園時のようす・・・固執傾向と独占欲 ・4歳2カ月月の時、初めて来室した。母親と一緒だったせいか不安も抱かず、いろいろな遊具に興味を示した。興味の対象は次々と移っていく。 ・4歳3カ月から通園開始。朝、帰りの会、給食の時など皆と一緒にいることはほとんどなく、だれもいない部屋や廊下などで好きな本を見たり、おもちゃで遊んでいることが多かった。そこへ他児が行き、

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・42

    《第3部 実践》 《第8章 Aくんの場合》(石田遊子) 1,入園期のようす・・・無反応な対人関係 ・3歳4カ月の時、家庭訪問して対面した。Aくんは私たちには全く無関心、ソファーに よじ登ったり、まわりを歩き回ったり、「リーダーズ・ダイジェスト」の本をめくったりしていた。母親が抱いても、嫌がってすぐ腕の中からすり抜けてしまい、どこかへ行ってしまった。母親が呼んでも姿を見せなくなってしまった。2時間く

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・41

    《8.予防措置》 ・まず、危険防止に配慮しなくてはならない。 ◆不必要な道具は片づけてておく。 ◆道具は金属製のものではなく、木製、プラスチック製のものにする。 ◆子どもが転ぶ可能性のある所には、マットを敷いておく。(階段からの転落に注意する)◆吊り下げる道具はできるだけ床近くまで下ろしておく。 ◆道具がこわれたら、すぐに直しておく。 ・感覚刺激を与えるときは、刺激の与えすぎにいちばん気をつけなけ

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・40

    《7.固有感覚訓練》 ・固有感覚刺激は、身体の各部分の関節を曲げたり伸ばしたりすることで、与えられる。・この訓練も、子どもの反応にしたがって、喜ぶ活動を選べばよい。活動の種類としては、身体各部を曲げる、伸ばす、圧泊する、そうした感覚を統合するといった運動が考えられる。身体各部の屈伸は、「赤ちゃん体操」を参考にするとよい。 ◆赤ちゃん体操 【赤ちゃんを仰向きに寝かせて】①両膝下を持ち上げて、腰を前に

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・39

    C.痛覚 ・たたくということで痛覚の刺激が与えられる。刺激の強さは、保育者自身の力の入れ具合で自由にコントロールできる。ゆうやかな刺激としては、子どもの肩や背中をリズミカルにやさしく叩いてあげればよい。子どもによっては、もっと強い刺激を必要としている場合もある。自傷行為がある場合には、その行為を止めさせようとすることではなく、むしろ自傷行為の刺激より多くの刺激を、その自傷行為のある部分に与えるよう

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・38

    B.圧覚 ・圧覚刺激は、子どもの身体をおしたりもんだりして与えられる。いわゆる指圧やマッサージなどと同じような活動と考えてよい。 ・触覚刺激(こすること)は興奮を高める効果を持つのにたいして、圧覚刺激(おすこと)は興奮を抑える働きがあるといわれる。したがって、圧覚刺激はとくに多動な子どもの場合に奨められる。こすったり触ったりすることと、押したりもんだりすることは、異なる刺激を与えることなのだから、

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・37

    《6.皮膚感覚訓練》 ・刺激を与える場所は、子どもの気に入るところならどこでもよい、ということが原則である。 ・エアーズは触覚刺激を重視しているので、触覚、圧覚、痛覚、振動覚、くすぐり覚、温(冷)覚、水中覚の順に、活動例を紹介する。 ・皮膚感覚を刺激する活動は、スキンシップといわれている行為に含まれていることが多い。母子関係を育てるという意味でも、こうした活動を積極的に取り入れていきたい。 ・日本

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・36

    《5.平衡感覚訓練》 ・平衡感覚に働きかける刺激とは、身体の動きと姿勢に変化を与えるということである。刺激の種類は次の7つに分類される。 ①身体の前後方向への直進加速度 ・ブランコに乗る。電車・バスの前向きの座席に乗る。ジェットコースターに乗る。 ②身体の左右方向への直進加速度 ・電車・バスの横向きの座席に乗る。両足をもってぶらさげ、左右に振ってもらう。いしくらまんじゅうをする。 ③身体の上下方向

  • 『「自閉」をひらく 母子関係の発達障害と感覚統合訓練』(つくも幼児教室編・風媒社・1980年)精読・35

    《4.刺激の与え方》 ・まず感覚診断を行い、子どもの反応を調べる。かなり強い刺激を与えても子どもがかえって喜ぶようならプラス、ちょっとした刺激でも子どもがいやがるようならマイナスの反応といえる。 ・最初はプラスの反応を示した行動から始める。子どもの反応を観察しながら、かなり強い刺激にまで高めていく。 ・マイナスの反応のあった刺激については、ごく弱い刺激から始めて少しずつ慣らしていく。 ・次のことに

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