• 国立(前編)

     研究者の卵、院生は、国立にばかり棲んでいるのではありません。私立にも棲んでいたのであります。   私立大学のキャンパスは、青うございました。ある時、ベンチの上に、私立大学の教員がすわって、あたりの景色を眺めながら休んでいました。   雲間から洩(も)れた月の光がさびしく、キャンパスの上を照していました。どちらを見ても限りない、雲がうねうねと動いているのであります。  なんという淋しい景色だろうと

  • ある寒い夜

    ひどく寒い日でした。 雪も降っており、すっかり暗くなり、もう夜 ―― 冬の夜でした。 この寒さと暗闇の中、一人のあわれな研究者が道を歩いておりました。 研究者はラップトップをもっていました。 ええ、確かにもっていたのです。 でも、古いラップトップは何の役にも立ちませんでした。 それはとても重いコンピュータで、 これまで研究者のお母さんが使っていたものでした。もう大学からは何も支給はされないからです