• 先祖返り×幼なじみ ⑥

    ━━━━━━━━━━埜重さんがどうやってあの稔示様をあそこまで手懐け、否、親しくなったのか、経緯は不明だ。気付いたら仲良くなっていた、と、使用人皆が口を揃える。一応埜重さんと稔示様は幼なじみという事になっているらしいが、噂によれば、埜重さんの母君が稔示様のお父様をたぶらかし、関係を持った際に出来た子供が埜重さんなのではないかという。兄弟となればあれだけ仲が良いのも不思議では無い。が、そうなると、男

  • 先祖返り×幼なじみ ⑤

    一時の後、ようやく気が済んだのか、稔示様は埜重さんを抱き締めたまま彼の肩元に顔を伏せた。先程の怒号とはまるで別人の様な艶っぽい声が、埜重さんの耳元でひっそりと囁かれる。「埜重、早く脱げ…」「ん…分かったから、ちょっと待って、後で」稔示様の手は鴬色の着物の上を滑り、今にも埜重さんの体からそれを剥ぎ取ってしまいそうだ。埜重さんが稔示様の体をやんわり押し退けた事で、二人の間に距離が生まれる。しかし稔示様

  • 先祖返り×幼なじみ ④

    使用人の中でも上位に君臨する老女が、俺に向かってヒステリー気味に叫んだ。はいはいと心の中で返事をしながら稔示様の近くに歩み寄るが、稔示様が退いてくれる気配が全く無くてかなりやりづらい。埃が立ったら立ったでお局さん達に怒鳴られるのだろうし。俺は周りにバレない様に溜め息を吐くと、とりあえず稔示様から離れた位置から掃除を始めた。「失礼します。埜重(のえ)様がいらっしゃいました」俺が床を掃き始めてからすぐ

  • 先祖返り×幼なじみ ③

    この一族は、代々から商売でも家系でもとにかく繁栄を続けて来た。会社を興せば、数年で誰もが名前を知るような大企業になり、子供が出来れば頭脳明晰運動神経抜群容姿端麗。まるで神から一心に愛されているかの様な血筋。一族にとってその神とは、他の誰でもない“稔示様”だ。選択を求められた時、彼が示した方を選べば必ず成功する。彼の助言に従えば、それは必ず幸福へと繋がる。まさに神の成せる技だった。彼の名前でもある“

  • 先祖返り×幼なじみ ②

    (さっきの音は、稔示(ねんじ)様の仕事部屋からかな。嫌だな、俺、今日あの部屋の掃除当番なのに)俺はふぅっと溜め息を吐くと、近くにあった掃除棚から箒と塵取りを持ち出した。先程俺の目の前を足早に去っていた使用人達の後を追うように、ノロノロと足を進める。こんなに部屋数が必要なのかと思いながら、迷路の様な屋敷内を歩く。屋敷の奥、目的の部屋に辿り着いた頃には、何人もの使用人達が青ざめた顔で動き回っていた。「

  • 先祖返り×幼なじみ ①

    三百六十度を緑で囲まれた、どこにでもある様な山。車が危なかしくすれ違える程度の道路は通っているものの、何時間経ってもそこを行き来する人間の姿は確認出来ない。それもそのはずで、この山の一帯は、ある一族の所有物であり、外部の者は立ち入りを禁止されていた。そんな、外の世界から切り離されたこの山中にも、探せばぽつりぽつりと家が建っている。洋館に平屋に別荘の様な邸宅に、と、統一性はないものの、どの家も己の財