• ハルシオン8

    学校の先生たちもどこかよそよそしくなった。 勉強を頑張ってとは誰も言わなくなった。 不登校気味になっていた僕に対してクラスメイトは距離を置いた。 割と親しかった子たちですら、僕を腫れもののように接した。 少し。少し寂しかった。 1月。とうとう僕は申し込んでいたセンター試験を受けなかった。 ただただ自分に対しての怒りと憎しみ、周りと比べての劣等感、焦燥感。 酒に、手を出した。 当時僕は18歳だった。

  • ハルシオン7

    よく言われるようになった。 ちがう。そうじゃない。 僕はこのうちが嫌なんじゃない。 人と関わりたくないんだ。すごく疲れるんだ。 お願いだから一人にしてくれ。お願いだから。 言えなかった。 僕はますます母と、家族と距離を置くようになった。 「授業の出席日数が危ういから、病気ならその旨の診断書をもって学校へきて」 僕は母とともに内科へ行った。 「学校へ提出しなければならないので診断書を書いてもらってい

  • ハルシオン6

    11月。眠剤を1錠処方されるようになって少し眠れるようになった。 やっとだった。向精神薬も処方された。 ただ、日中の眠気と倦怠感がさらに強まり、人と関わりたくなくなっていた。 親友と談笑、そんなこともすっかりご無沙汰になっていた。 一人の時間が一番楽だった。同時に、むなしかった。 一週間もすると眠剤の効果が感じられなくなってしまった。 薬を何回も変えた。また、なかなか眠れない日々が始まった。 この

  • ハルシオン5

    確かに。本当に僕は怠けすぎていた。 何もしていないのだから。クラスメイトが学校に行って、予備校に行って、家に帰って、勉強している間も、僕は何もしていなかったのだから。 そして僕は母を避けるようになった。 食欲も減り、眠ることもできず、僕は一日中頭の中が空っぽだった。 すごく悲しかった。すごく悔しかった。すごく寂しかった。すごくむかついた。 でもそれらの感情の矛先が、何であるかがわからなかった。 泣

  • ハルシオン4

    本当に急に。(心にぽっかり穴が開く) この言い回しは適切ではないかもしれないが、こんな感じだった。 何かが足りない。 映画もドラマも読書も。まったく興味がなくなってしまった。 それらを楽しむ心がふっと抜け落ちてしまったような、そんな感覚だった。 僕はうまく笑えなくなった。 九月になると学校が始まった。受験生である僕たち高校三年生は午前中の四時間で授業が終わる。たいていの人がそこから自習や予備校へ行

  • ハルシオン3

    眠れない。というのは想定外に辛かった。 体も心も疲れ切ってぐったり眠ってリセットしたいと思っても、 床に就くと頭が冴えきってどんどん緊張してくる。 早く眠らなければ。眠らなければ。眠らなければ。 朝になるのが怖くなった。明るい場所にいるのが落ち着かなくなった。 関節も痛み出した。微熱も続いている。 僕は近所の形成外科へ行った。 「ヘルニアかもしれないね。検査をしてみよう。」 医者が言った。血液を採

  • ハルシオン2

    七月下旬、学校は夏休みに入った。 それでも僕は学校に通い続けた。自習室で勉強し、わからないことがあれば先生に聞く。 ついでに学校主催の夏期講習にも参加した。予備校には通っていなかったが、ハイレベルな授業が受けられた。模擬試験もたくさん受けた。すべてが順調だったんだ。 八月。とても暑かった。それでも僕は学校へ通い続けた。 先生たちは君なら絶対大丈夫、と背中を押してくれた。 両親も僕の成績が順調に伸び

  • ハルシオン

    どうしてだろう。わからないんだ、いつからだろう。 全てが狂ってしまったのか。僕が悪いのか。 いつからだろう、本当に地獄だった。 あがいてもあがいても抜け出せなかったんだ。 僕の頭の中にはいつもアリジゴクにはまるアリの映像が浮かんだ。 僕は明らかにアリなのに。外側から自分を客観視しているような。 そんな気分だった。 朝、いや違うもう昼過ぎか。 目が覚めると遮光カーテンの外に太陽がかんかんと昇っていた