「高彬解体新書」~巻の六
「本当に・・・。少将さまもお酒がお強くないのですから、良い所で切り上げて来られたら良いのですわ」 「まぁ、ねぇ・・」 几帳を動かしたり円座を敷いたり──── パタパタと動き回りながらの小萩の言葉に、あたしは曖昧に頷いた。 格子の隙間からは、まだ梅雨前だと言うのにすでに初夏を思わせるような夜風が入り込... 続きをみる
「本当に・・・。少将さまもお酒がお強くないのですから、良い所で切り上げて来られたら良いのですわ」 「まぁ、ねぇ・・」 几帳を動かしたり円座を敷いたり──── パタパタと動き回りながらの小萩の言葉に、あたしは曖昧に頷いた。 格子の隙間からは、まだ梅雨前だと言うのにすでに初夏を思わせるような夜風が入り込... 続きをみる
「ただいま」 玄関の開く音とそれに続く高彬の声に、あたしはハッと顔を上げた。 ヤダ、いつの間にか寝ちゃってたんだ・・・ 慌てて髪を直す。 リビングのテーブルの上には、何皿かの料理。 志乃さんに教わりながら少しずつ料理の腕前を上げ、結婚5年目になった今では、何とか「夕飯」としての体をなす程度には作れる... 続きをみる
「・・・ねぇ。出ないで、大丈夫、・・・なの?・・・さっきから・・鳴ってるけど・・」 荒い呼吸の中、なんとか息を整えながらつかえつかえ言うと、高彬の動きが止まった。 一瞬、考えるような素振りの後、サイドテーブルに手を伸ばすと着信音が鳴り続ける携帯を手に取った。 薄暗い部屋の中で見る画面は眩しいのか、目... 続きをみる
今上帝から女御さまへのお文を携えていた私は、やはり常とは違う気持ちで慌てていたのでしょう。 渡殿の角を曲がったところで、裳裾に足を取られ 「あっ」 と声が出た時には、見事に滑ってしまい─── と思ったのも束の間、私は誰かの手に支えられていました。 「大丈夫でしたか?」 声のした方に顔を向けると、そこ... 続きをみる
「あら、ずいぶんと早いお目覚めね。いつもぎりぎりに起きてくるあなたが珍しいこと」 「うふふ。だって今日、私、高彬さまの朝のお召し物を御着付けする日なんですもの」 「あなた、昨日も御着付けを担当していなかった?さてはズルしてるわね」 「してないわよ。昨日は小式部さんが風邪をひいてしまって、代わりにお願... 続きをみる
「では、お休みなさいませ、高彬さま」 「ばばやは?ばばやは一緒に寝ないの?」 「もう高彬さまは5歳になられましたでしょう。一人で寝ることに慣れなければなりません」 「でも・・、ぼく、怖いよ。ばばや、一緒に寝ようよ」 そう言うと、ばばやはメッと怖い顔をした。 「高彬さまは男の子でしょう?」 「・・・」... 続きをみる
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