E,霧の狐道のムラゴンブログ

  • 潮騒の夏 その153

    潮騒の夏 その153 それで、洋子ちゃんは話を続けた。 「 やまてつのこと、本当よ! あそこ、もともと、“民宿やまふじ”だったんだ。 やまふじの大女将のご主人、板前さんだったんだけど、病気で亡くなってしまって、板前さんが居なくなってしまって困ってたんだ。 それで、大女将が亡くなったご主人の友人の伝手... 続きをみる

  • 霧の狐道274

    俺は、妹のニコニコした顔を見ながら思った。 “ 俺は、完全に失敗した。 妹に期待したのが間違っていた。 こんなものを見たら、あの女の子は一緒に遊ぼうなんて言い出すんじゃ ないか・・・。 タダでさえ遊びたがっていたのに・・・。” 俺は、キティちゃんの袋を持ち、コックリさんの紙をベッドに広げたまま、途方... 続きをみる

  • 霧の狐道273

    俺は、沙織に言った。 「 これ、コックリさん?」 「 それは、表よ。 裏に、おまじないが書いてあるでしょ! こっちの方が、お守りなの。」 「 俺は、まともなお守りって言ったんだぞ!」 「 だって、キツネのお守りって言ってたじゃん。 友達にキツネのお守りちょうだいって言ったら、コックリさんの紙の裏 に... 続きをみる

  • 霧の狐道272

    電話をして3時間ほどで、妹の沙織がやって来た。 沙織は、不服そうな顔をして俺に言った。 「 ここ、メッチャ遠い!」 「 ああ、ご苦労ご苦労。 はい、出して、出して。」 沙織はポケットから小さな赤い布袋を出して俺に渡した。 「 ほらっ!」 「 なんじゃ、こりゃ?」 お守りの布袋の表は、キティちゃんが歩... 続きをみる

  • 霧の狐道271

    「 あ~、もう分かりました。 沙織様、どうかお守りを持って来て下さい。」 「 お願いしますは?」 「 あ、お願いします。」 「 布袋にキツネがポイントね。」 「 ああ。」 「 分かったわ。」 「 じゃ、よろしく!」 “ ガチャ!” 俺は急いで電話を切った。 これ以上話すと、沙織のヤツ、何を言い出すか... 続きをみる

  • 霧の狐道270

    「 沙織に電話したんだよっ! 親には言うなよ、カッコ悪いからな。 あのな、お守りを持って来てくれ。」 「 お守り?」 「 ああ、お守りだ。」 「 どうしたの?」 「 失くしてしまった。」 「 今まで、お守りなんて気休めだって言って、持ったこと無かったのに、 信じられな~い。 お守りなんて、持っていた... 続きをみる

  • 霧の狐道269

    俺はジタバタしながら、ナースステーションの前にある赤電話に行った。 そして、チャリンチャリンとお金を入れ、自宅に電話を掛ける。 “ トウルルルル、トウルルルル、トウルルルル・・・・。” 呼び出し音は鳴っているが、なかなか人が出ない。 「 遅いぞ、早く電話を取れっ!」 “ ガチャ。” ようやく、受話器... 続きをみる

  • 霧の狐道268

    俺はヤッパリ山本爺を触らないでおこうと思った。 “ 苦しいんだろな・・・・・。 う~~~~ん、よし!” 俺は山本爺にお守りを貸してあげることに決めた。 盗って行ったとは思いたくない。 “ 貸してあげるけど、早めに返してネ!” 俺は盛り上がった布団に声を出さずに言った。 そして、山本爺の代わりに自分で... 続きをみる

  • 霧の狐道267

    俺は困った。 「 あっ!」 俺は思わず声を出して、その口を手で覆った。 “ 今の声、聞こえたかな・・・?” 俺は声を山本爺に聞かれたくなかった。 山本爺に動きは無い。 “ 山本爺が小物入れの前に立っていたんだ・・・・。” 俺は山本爺のベッドを見た。 “ 怪しい・・・・。” 山本爺は布団を被って動かな... 続きをみる

  • 霧の狐道266

    山本爺は膨れた布団の中でジッとしている。 眼の端には入院手続きの書類が見える。 “ ま、いいか・・・・。 取り敢えず、書類を書いてしまおう。” 俺は“よっこらしょ!”っとベッドに座り直した。 そして、ボールペンを取るため引き出しを開けた。 “ あれっ、無い・・・。” 俺の引き出しから、由紀ちゃんのお... 続きをみる

  • 霧の狐道265

    その姿は扉の陰に一瞬で消えた。 車椅子はゴロゴロ進み、ナースステーションに到着した。 俺は井上さんから入院に関する書類を受け取り、軽く説明を受ける。 「 じゃ、これに必要事項を記入しておいてね!」 「 うん。」 相槌を打ち、受け取った書類を膝に乗せて、再び病室に出発だ。 井上さんに車椅子を押されて病... 続きをみる

  • 霧の狐道264

    お守り2 今日も午前中、主治医の狸小路の診察を受けた。 俺は看護婦の井上さんに車椅子を押されてタヌキの所に行った。 鎖骨固定帯の調整と足の湿布が主な治療だ。 治療をしながら、タヌキが言った。 「 昨日、夜に電話を掛けたんですけど、手術はダメだって言われました。 でも、安心して下さい。 必ず、説得して... 続きをみる

  • 霧の狐道263

    面会の終わった山本爺の小物入れの上には、大きな果物カゴが置いてあった。 俺は素直に、それがスゴイナァと思って言った。 「 う~ん、果物、いっぱいだ!!」 山本爺はチラッと俺を見ると、布団から片足を下ろして体を支え、左手を伸ばして、果物カゴからリンゴを一つ取り出した。 “ あ、俺にくれるのかな・・・。... 続きをみる

  • 霧の狐道262

    面会人は大学生風の男二人で、山本爺にノートを見せていた。 山本爺はベッドの布団から眼だけを出しながら、何かモゴモゴ言っている。 布団で口が隠れているから、山本爺の声はくぐもって聞き取れない。 大学生風の男二人のうちの一人が山本爺に言った。 「 先生、この数式は、モジュラー関数を使って解けばいいんです... 続きをみる

  • 霧の狐道261

    俺は諦めて窓の正面を見る。 川の向こうの太い道には、多くの自動車が元気にせわしなく走っている。 “ あれと比べりゃ、駐車場の自動車は、しばしの休憩ってとこか・・・。 そうだよな、この敷地の外は普通の生活があるんだよな。 俺もどっちかと言うと休憩か・・・。 それに・・・、ずっと休憩ってイヤだな。 長い... 続きをみる

  • 霧の狐道260

    入院した次の日に、看護婦さんに病院の中を案内してもらったとき、玄関は一箇所で人の流れはそこに集約されると看護婦さんが言っていた。 怪しい人が入って来ないように、門衛さんと玄関の案内で眼を光らせていると言う話だった。 もっとも、案内されたときに見た玄関の外の景色は、玄関口の大きなガラス越しにチラッと見... 続きをみる

  • 霧の狐道259

    俺は窓にオデコをくっ付けて、窓の真下を見ようとした。 でも、建物の真下は、窓を開けて乗り出さないと見えない。 ちょうど真下は見えなかったが、病院の建物に沿って遥か下に、建物に垂直に駐車場の白い線が付けてあり、その白い線の間に自動車が建物の方に頭を向けて何台も止まっていた。 利用者が外来か職員かは分か... 続きをみる

  • 霧の狐道258

    談話室の窓からは、暖かい日差しが差し込み足元を照らしている。 窓の外に眼を遣ると、遠くの山並みが見える。 背の高いマンションが山の中腹から裾まで段々と降りてきている。 “ 落ちて行ったって言ったよな・・・。” 俺は四角い窓に車椅子の車輪を転がして近付いた。 窓枠から見える風景は山並みから徐々に下がっ... 続きをみる

  • 霧の狐道257

    俺の疑問を他所に龍平の話は続いている。 「 そやろ・・・・。 ホンマ、あれ無かったらヤバかったかも知れんわ。 お、あ・・・、わい、いいこと思い付いた! 昨日、考えながら寝てしまったんやけど・・・。 わい、ちょっと行って来るわ。 また、後でな。」 「 おい、龍平、何処に行くんだ?」 「 ハハハ、あと、... 続きをみる

  • 霧の狐道256

    龍平が、来なかったことを気にしていると思ったので俺は言った。 「 昨日、状況を聞いても、どうしていいか思いつかないし・・・・。 だから、仕方ないし、後はお互い寝るだけだよ。 それに、山本爺、朝、ちゃんと自分のベッドにいただろ。 山本爺、大丈夫だったんだよ。 いつもと変わんないよ。 まあ、微熱が朝ちょ... 続きをみる

  • 霧の狐道255

    「 誰か来た?」 「 うん、そうや。 エレベーターに近付いてみると、下から上に何かが上がって来るんや。 で、“これってヤバイぞ”って感じがしたんで、5階の談話室に大急ぎで飛び込 んで、扉の隙間からそっと覗いてたら・・・・。 誰やと思う?」 「 誰?」 「 エレベーターの扉が開いて、出て来たヤツは黒い... 続きをみる

  • 霧の狐道254

    「 後ろの山本さんは・・・・?」 「 そう、それで黒い影の後ろにいた山本さんなんやけど・・。 柵の角まで行って、躊躇してる感じやったけど、結局、屋上の方に降りて来た わ。」 「 そうかァ。」 「 それで、山本さんは女の子と向かい合わせになって立ってたんやけど、あれ は、何かの相談かなァ~。 声とか聞... 続きをみる

  • 霧の狐道253

    龍平と俺の目玉が、龍平の丸を挟んで向かい合う。 接近した顔のアップが目の前にある。 「 プッ!」 龍平が、俺の寄り眼に我慢出来ずに吹き出した。 「 勝った!」 「 何、すんねん!」 「 穴があったら、覗くのが人の常。」 「 で、寄り眼は何やねん?」 「 関西では、“笑わしてナンボ”って言うんだろ?」... 続きをみる

  • 霧の狐道252

    他の患者さんが扉から入って来かけて立ち止まり、変な顔を一瞬した後、クルッと向きを変えて出て行った。 「 おまえなァ~、変なことをさせるなよなァ~。 人格、疑われるやろ~。」 「 勝手に踊ったのは、おまえだろ。」 「 そら、まあな・・・・。 それでやな・・・・。」 龍平は右手を上下に振って俺を呼んだ。... 続きをみる

  • 霧の狐道251

    俺はベッドから足を下ろしながら言った。 「 わかった、散歩に行こう。」 龍平はニヤッと笑って言った。 「 ああ、天気はいいぞ。」 俺は車椅子に乗り、龍平が車椅子の後ろを押して病室を出た。 俺と龍平は部屋を出るとき、山本爺の方を見ないようにしていた。 でも、山本爺は眼だけで俺たちの動きを追っていたのは... 続きをみる

  • 霧の狐道250

    俺は山本爺の声の調子を聞いて思った。 “ あ、山本爺、結構、大丈夫なんだ・・・。 と言うことは、龍平も大丈夫ってことだな・・・。” しばらくして、ピッと言う音がして、看護婦さんが山本爺に言った。 「 あ、ちょっと熱があるね。 先生に言っとくわ。」 看護婦さんはそう言い放つと、呆気無く病室から出て行っ... 続きをみる

  • 霧の狐道249

    トイレで用を足しながら、俺は思った。 “ ここは病院なんだ。 誰もが、生きて退院出来るとは限らんのだ。” トイレを出ると、通路は静かで田中爺はもういなかった。 田中爺の体操は無事終了したようだ。 俺はトイレから病室に戻るとき、もう一度、遠くにあるベッドを見た。 ベッドは一つ、ポツンと寂しそうに、そこ... 続きをみる

  • 霧の狐道248

    田中爺は、俺の視線が自分を通り越していることに気が付いて後ろを向いた。 そして、向こうを向いたまま言った。 「 ああ、一人、いってしもたんやな・・。」 「 いってしもたって・・・?」 「 ここは病院やで。 あれは、もう、ベッドが必要無くなったんや。 明け方まだ暗かったんやけど、ワシがトイレに行きとう... 続きをみる

  • 霧の狐道247

    10月18日(日) 報告 “ 朝だ、あさだァ~よォ~、朝日がのぼォるゥ~♪” 次の日、俺は田中爺の例の歌声で眼が覚めた。 遅くまで起きていたから、かなり眠い。 俺は山本爺のベッドを見た。 ベッドは人の形に膨れている。 少し動いたような気がした。 “ あ、山本爺、大丈夫・か・な・・?” 俺はひと安心し... 続きをみる

  • 霧の狐道246

    看護婦さんがトイレの外から言った。 「 もう、出た?」 俺は、一応、形をつけた。 「 あ、いっぱい出た。」 「 じゃ、病室に帰って、寝るのよ。」 「 うん・・・。」 俺はごそごそとトイレから出る。 看護婦さんが車椅子の後ろに回り込みながら言った。 「 消灯後は、ウロウロしないの!」 「 うん・・・。... 続きをみる

  • 霧の狐道245

    俺は看護婦さんに連れられ、通路をトイレに進む。 俺は通路を進みながら、車椅子を後ろで押している看護婦さんにちょっと訊いてみた。 「 あの~、さっき誰かエレベーターで上に上がって行かなかったですか?」 「 さっきって、今のさっき?」 「 そう、俺たちが通路を来た、ちょっと前・・・。」 「 う~ん、奥の... 続きをみる

  • 霧の狐道244

    龍平は一人でエレベーターに進み、壁にある上マークのボタンを押した。 そして、振り返って、俺に向かって右手の親指を立ててニコッとした。 俺も右手の親指を立て、それに答えて頷いた。 看護婦さんは、“オヤスミの挨拶”が終わったと判断して俺に言った。 「 じゃ、行くわよ!」 「 うん。」 俺は諦めて病室に戻... 続きをみる

  • 霧の狐道243

    俺たちは、そっとナースステーションの前を通過しようとした。 そのとき、突然、声が響いた。 「 コラッ! あんた達、何してるの!」 当直の若い看護婦さんが、ナースステーションの扉から首を出した。 龍平がそれを見て言った。 「 しまった、見つかった。」 「 あ、龍平、こんな夜中に何をしてるの? もう、患... 続きをみる

  • 霧の狐道242

    俺は龍平に車椅子を後ろから押され、通路をドンドン進む。 車椅子の車輪が回転しながらカラカラと鳴る。 閉じられた病室の扉が後ろに流れて行く。 俺と龍平は非常灯の薄暗い明かりの中を、真っ直ぐな通路を疾走した。 通路の突き当たりにエレベーターがあるのだ。 遠くにエレベーターの階の表示が光っている。 階の表... 続きをみる

  • 霧の狐道241

    龍平はベッドからサッサと降りて扉に向かった。 俺は体を思うように動かせず、ベッドでモタモタしていた。 「 遅い!」 扉を半分開けて俺を待っていた龍平が、痺れを切らして様子を見に通路に出て行った。 俺は痛みをこらえながら、大急ぎで車椅子に乗った。 そして、龍平が開けた扉の隙間から、必死で通路に出ようと... 続きをみる

  • 霧の狐道240

    俺は山本爺のベッドを見た。 山本爺の体はベッドにあることが、布団の膨らみから分かる。 「 山本爺、どうなったのかな?」 「 布団、捲って見よか。」 「 ちょっと、怖いな。」 「 そうやな、白目剥いてたりして・・・。」 「 それって、スゴク怖いな。」 「 そやな、止めとこか。」 俺たちは布団を放置する... 続きをみる

  • 霧の狐道239

    その声に女の子はこちらをゆっくり見る。 “ ちょっと、ヤバイかな・・・。” 俺と龍平は少し体を引いて低くした。 でも、女の子はすぐに首を回して、病室の扉の方に顔の向きを変える。 そして、そのまま扉に向かって、黒い影と半透明な山本爺を後ろに従え進んで行った。 “ 出て行きそうだな・・・。” 扉が“ギッ... 続きをみる

  • 霧の狐道238

    俺と龍平は布団から眼だけを出して女の子を見詰める。 女の子は白い顔をこちらに向け、俺の眼を見て言った。 「 でも、明日は特別な日、必ず遊べるわ。 ふふふ・・・。」 俺は由紀ちゃんのお守りをギュッと握った。 女の子は向きを変え、田中爺のベッドに進んだ。 「 寝てる・・。」 そして、次に山本爺のベッドに... 続きをみる

  • 霧の狐道237

    龍平は布団から眼を出して、扉の方を見始めた。 “ てんてんてん、てんてんてん、てんてんてん。” 音が近付いて来る。 扉の前で音が止まる。 扉がス~ッと開いた。 赤い着物の女の子が音も無く入って来る。 左手には赤い鞠を持っている。 俺と龍平はジッとしていた。 「 ごくん。」 龍平の生唾を飲む音が聞こえ... 続きをみる

  • 霧の狐道236

    龍平が俺に顔を近付けて言った。 「 それより、音がするで・・。」 耳を澄ますと、遠くから鞠をつく音が、田中爺のいびきの途切れ途切れの隙間に、小さく聞こえて来る。 “ てんてんてん、てんてんてん、てんてんてん。” 俺は龍平に言った。 「 来た・・・。」 「 そうらしいな・・。」 俺は由紀ちゃんのお守り... 続きをみる

  • 霧の狐道235

    俺はちょっと壁を見てから龍平に言った。 「 玄関からじゃないんだけど・・・。」 「 玄関でなかったら、どっから来るんだよ?」 「 壁から出て来る・・・。」 「 えっ、そいつ等って、壁に住んでるんか?」 「 いや、壁の向こうの何処か遠いところ・・・。」 「 遠いところから飛んで来るんか?」 「 お経と... 続きをみる

  • 霧の狐道234

    俺が眼を覚ましたことに気付いた龍平が、俺の方に向き直って言った。 「 なんちゅういびきや。 ホント寝られん。 貴志、おまえ、よく寝られるなァ~。」 「 いや、その・・・・。」 俺は、ずっと寝ていたのか寝ていないのか、どうもよく分からなかったので返事のしようが無い。 俺は試しにお揚げ婆さんとヘビ次郎に... 続きをみる

  • 霧の狐道233

    §13 夜 「 もうすぐだ!」 龍平の声が耳元で聞こえた。 「 おい、起きろ! 2時になるぞ!」 俺は眼を開けた。 暗い天井が見える。 でも、俺はまだ眼を開けたまま、ぼ~っとしていた。 これが夢か現実か明確ではなかったからだ。 “ 俺、起きたのかな・・・? 龍平に呼ばれて眼が開いたから、ホントに起き... 続きをみる

  • 霧の狐道232

    俺はお守りの角度を変えて見たが、どうしても暗い中では図柄は見えない。 “ あれっ、さっきのって夢かな?? そう言えば、昨日、お揚げ婆さんがレム睡眠中に現れるって言ってたな・・。 さっき目覚めたように思うんだけど、今、目覚めたからさっきのは夢の中で 目覚めた夢だったのかな。 じゃ、今、目覚めたこれも夢... 続きをみる

  • 霧の狐道231

    俺はお守りを右手で持って目の前でもう一度見る。 お守りには、鍵を咥えた金色のキツネがチョコンと座っている。 “ このキツネ、なかなかスゴイヤツなのかな・・・・。 由紀ちゃん、気が利くな、ムフフフフ。” 俺は、お守りを持って来てくれた由紀ちゃんに感謝した。 “ このお守りあれば安心ってかァ~! ふっ、... 続きをみる

  • 霧の狐道230

    お揚げ婆さんが立ち上がりながら赤い円に向かって叫んだ。 「 こりゃ、ヘビ次郎、何処へ行くのじゃ!」 返事は無い。 「 もう・・・・・。 言うことを聞かんヤツじゃ!」 そして、振り返って俺に言った。 「 また、来るからの!」 「 もう、来なくていいぞ~。」 お揚げ婆さんは不満そうに俺を睨んだ。 「 く... 続きをみる

  • 霧の狐道229

    俺は、お守りをヒラヒラした。 「 バカ言ってんじゃないよ。 そんなもの怖い訳が無い。」 「 そうかなぁ~。」 俺は、さらにお守りをお揚げ婆さんの方に突き出してヒラヒラした。 お揚げ婆さんは、身を引きながら突然言った。 「 おっ、そうじゃ。 ちょっと急用を思い出した。」 「 急用って何だよう?」 「 ... 続きをみる

  • 霧の狐道228

    でも、お揚げ婆さんは、昨日のように俺に近付いて来ない。 “ おかしいな・・・・。 何か、昨日と様子が違うのは訳があるんだ・・・。” やはり、お揚げ婆さんは壁に張り付いたままで話をしている。 「 今日こそ酷い眼に遭わせてやるからのっ!」 そう言っている声の調子も、カラ元気っぽい。 それで、俺はお揚げ婆... 続きをみる

  • 霧の狐道227

    ヘビ次郎は、お揚げ婆さんを乗せたまま、チョロチョロ赤い舌を見せている。 こちらを静かに見詰める眼がチョット怖い。 でも、俺は気を取り直し、お揚げ婆さんに訊いて見た。 「 ガマ太郎は、どうしたんだ?」 「 今日は、お休みをとって家で寝ておるんじゃ。 代わりにヘビ次郎じゃ。」 「 およっ・・・・!?」 ... 続きをみる

  • 霧の狐道226

    そして、龍平は向こうを向いてしまった。 “ 参ったなァ~。” モロ、熟睡状態だ。 『 おんばあさらえんそわ・・・・、おんばあさらえんそわ・・・・。』 俺は龍平を諦めてベッドの右横の白い壁を見た。 レーザーポインターみたいな赤い点は、段々大きくなって丸い円になる。 『 おんばあさらえんそわ・・・・、お... 続きをみる

  • 霧の狐道225

    俺は、ハッと眼が開いた。 天井のスクリーンは映画が終了して真っ暗だった。 俺は少し汗をかいていた。 “ いつのまにか寝ていたのか・・・。” 俺は、天井を見ながらため息をついた。 「 ハァ~・・・・。 ん・・・・・・? んん・・・・・・? んんん・・・・・・? んんんん・・・・・・!」 俺の頭の中に変... 続きをみる

  • 霧の狐道224

    川風に由紀ちゃんの髪が流されてサラサラと顔に掛かっている。 俺は満たされた気分でハンバーガーの残りを頬張る。 “ う~ん、いい雰囲気だなァ。” そして、しばらく歩いていると足音が後ろから近付いて来た。 “ あれっ、何だ?” なんだか、複数の足音だ。 俺は“誰かな?”って思って振り向く。 “ うわっ!... 続きをみる

  • 霧の狐道223

    狸小路も女の子もお揚げ婆さんも、そう簡単には諦めないだろう。 狸小路と女の子とお揚げ婆さんは、俺に“諦めろ!”と三人並んでVサインをして見せる。 黒い影はその前で右へ左へ、ヘラヘラと揺れている。 “ くそ~っ、いい加減にしろよなァ~。 碌でもないイメージしか浮かんで来ない! そうだ、もっと楽しいこと... 続きをみる

  • 霧の狐道222

    龍平は、眼を瞑って向こう向きになった。 俺は後ろを向いた隆平に言った。 「 まだ、お揚げ婆さんの話があるんだけど・・・。」 龍平は向こうを向いたままだ。 返事も無い。 もう、寝てしまったように見える。 “ おまえ、瞬間睡眠か・・・。” 俺は龍平と喋るのを諦めて、布団を首まで引っ張って仰向けになった。... 続きをみる

  • 霧の狐道221

    俺は龍平に同意を求めた。 「 大丈夫だよな・・?」 「 どうかなァ、手術、ヘタだけど・・、するのは好きだよ・・・。」 「 ヘタだけど、するのは好きって!? 龍平、クビにしろよ、そんなヤツ!」 「 そんな力は、まだ無いがな。」 「 ああ、もう、どうしたらいいんだ・・・・。 ああ、不幸だ、不幸が雨の様に... 続きをみる

  • 霧の狐道220

    「 女の子より狸小路の方が怖いかも知れへんで。」 「 どうして?」 「 抱き合わせ人事って知ってるか?」 「 知らないけど・・・・。」 「 A病院に優秀な外科医がいる。 B病院はそいつを引き抜こうとする。 引き抜くには多額の現金がA病院と外科医に必要だが、それ以外にも引き受 けなければならないことも... 続きをみる

  • 霧の狐道219

    「 それに女の子からお守りなんて貰って、ええなァ~。」 「 ああ、由紀ちゃんか。」 「 吉沢由紀やろ。」 「 龍平、よく覚えてるなァ~。 俺、一回、名前言っただけなのに・・・。」 「 当たり前やろ、毎日、勉強してんにゃから。 それに、幼馴染ってええなァ。 憧れるなァ~、そんなの。」 「 そうか、憧れ... 続きをみる

  • 霧の狐道218

    俺は、マズイことを聞いたかなと思って話を変えた。 「 えっと・・・・、ここ大きい病院だな。」 「 ああ、そうやろ。 親父があちこちで経営してる。 チェーン店みたいなモンや。 親父は外科が専門なんやけど、最近は医学よりも経済学や。」 「 一人っ子だったら、医者になるの?」 「 そうやな、医者やな。」 ... 続きをみる

  • 霧の狐道217

    俺は、まだ、眠くないので龍平に話し掛けた。 「 龍平、田中さんから聞いたんだけど、この病院の院長の子?」 「 ああ、そうやで。」 「 それって、お金持ち?」 「 ああ、金はあるな。」 「 いいなァ~。」 「 お金があっても、いいとは限らんで。」 「 どうして? 俺なんて、ズ~ッと貧乏だよ。 食べ物だ... 続きをみる

  • 霧の狐道216

    俺と龍平は、ベッドに二人並んだ。 左が龍平で俺は右だ。 俺は右の白い壁を見ながら思った。 “ お揚げ婆さんに接近してるけどなぁ・・・・。 でも、単に夢だったかも知れないし・・・。 いくらなんでも、カエルに跨って出て来るなんて、マンガの世界だろ。 やっぱ、ありゃ夢だな・・・・。 夢だったら、全然影響無... 続きをみる

  • 霧の狐道215

    消灯2 消灯を過ぎ、看護婦さんの見回りが終わったころ、龍平が病室に忍び込んで来た。 黒い上下のジャージを着て、黒っぽいスヌーピーの枕を持っている。 「 よっ!」 龍平は右手を挙げて挨拶した。 「 看護婦に見つからないように黒尽くめで来たんや。 どや、見えへんやろ。」 龍平は枕を持ったまま、病室の白い... 続きをみる

  • 霧の狐道214

    それで、俺と田中爺が果物カゴを見たのだ。 すると、山本爺が既にカゴからリンゴを取って齧っていた。 “ シャリシャリシャリ。” 俺は驚いて言った。 「 わっ、もう、食ってる!!」 山本爺は無表情なまま、クルッと向きを変えてベッドに戻り、布団を被った。 “ シャリシャリシャリ。” 俺は盛り上がった山本爺... 続きをみる

  • 霧の狐道213

    田中爺が横のベッドから俺に声を掛けた。 「 よっ、色男! いい物、貰ったやん。 憎いねぇ~、女の子から貰うなんて! それも、みんなに分からないように、そっと貰って。 あれは、おまえの女か?」 龍平はそれを聞いてアハハと笑った。 俺は田中爺を困った顔で見た。 “ 田中爺よ、それが小学生に言う言葉か・・... 続きをみる

  • 霧の狐道212

    俺は由紀ちゃんの後ろ姿を見ながら、お守りを握った。 由紀ちゃんの温もりが残っているような気がした。 龍平が俺に言った。 「 カワイイ子やん。」 「 クラスの子だよ。 俺の隣の家に住んでるんだ。」 「 で、風呂の件ってなんや?」 「 いや、覗いたって疑われて・・・。」 「 風呂を?」 「 そう。」 「... 続きをみる

  • 霧の狐道211

    俺は由紀ちゃんの婆さんに以前会ったことがある。 うちの婆さんも強烈だが、由紀ちゃんの婆さんも、また、ちょっと異質な強烈さがある。 「 あの神社のだろ。」 「 そうよ、私の家の氏神様よ。」 故郷にある唯一の神社のお守りだ。 “ これ、効きそうだな・・・。” 俺は有難く頂いた。 「 ありがと・・。」 「... 続きをみる

  • 霧の狐道210

    俺は話をもとに戻して由紀ちゃんに言った。 「 それで、何?」 「 あ・・・・。」 由紀ちゃんは、ポケットをゴソゴソした。 そして、俺に言った。 「 あの、これ・・・。」 由紀ちゃんは、小さなお守りを差し出した。 俺はお守りを受け取って見た。 赤地に金色の宝玉と稲穂の模様が入っている。 裏を返すと鍵を... 続きをみる

  • 霧の狐道209

    気を利かせて引っ込んでいた龍平が窓際からこっちに来て、夜の打ち合わせの話をしようとしたとき、病室の扉が開いた。 そして、扉の影から由紀ちゃんが現れた。 俺はムフフフフと嬉しかった。 でも、ここは喜んでいることを悟られないようにしなければならない。 俺は平静を装って由紀ちゃんに言った。 「 あれっ、も... 続きをみる

  • 霧の狐道208

    俺は静かになったクラスの連中に言った。 「 今日は、ありがと。 早く良くなるから、また、遊ぼうぜ!」 クラスの男どもは頷いた。 男どもの後ろには、クラスの女の子三人がこちらを見ている。 由紀ちゃんもその内の一人だ。 話はしていないが、男どもの後ろで俺の言葉に頷いていた。 山下先生が話を打ち切って言っ... 続きをみる

  • 霧の狐道207

    「 あ、先生、パソコンのウイルスはどうなりました?」 「 ああ、あれか。 最後まで行く前に駆除出来たみたいで、中ボスの辺りで突然プシュッと消えて しまったよ。 ま、それほど凶悪なものでは無かったと言うことだろな。」 「 それは、良かったですね。」 「 ああ、やはりウイルス駆除ソフトモグモグ7は値段が... 続きをみる

  • 霧の狐道206

    龍平と俺が話をしていると、通路の方からガヤガヤと話し声が近付いて来た。 複数の足音も聞こえて、俺は病室の入り口を見た。 “ ドタドタドタ・・・。” 担任の山下先生の声が聞こえる。 「 ここだ、ここだ!」 どうやら、クラスの連中がお見舞いに来てくれたようだ。 賑やかな塊は病室にゾロゾロ入って来た。 扉... 続きをみる

  • 霧の狐道205

    お守り1 午後4時ごろ、龍平が病室にやってきた。 「 おい、貴志、相談や。」 「 何だよ?」 「 今日、おまえのベッドで寝かせろよ。」 「 じゃ、俺は何処で寝るんだよ?」 「 だから、一緒に寝るんやがな。」 「 どうして?」 「 女の子と黒い影が見たいんや。」 「 俺は見たくない。 龍平がここで寝て... 続きをみる

  • 霧の狐道204

    俺は不信感でいっぱいだった。 “ 人が相談してるのに・・・。” 俺は不満な顔をしてトメさんを見た。 トメさんの後ろにある大きな木から、風に吹かれて落ち葉が散っている。 そして、そのうちの一枚がトメさんの頭に乗っかった。 トメさんは、それを手で払い除けもせず眼だけで上を見た。 「 あら、落ち葉だね。 ... 続きをみる

  • 霧の狐道203

    「 あんたも見えるんだね。 私には分かるよ。 たぶん、龍平にも見えていると思うんだけどね。」 「 トメさんって、龍平も知っているの?」 「 ああ、小さい頃から知っているよ。 あの子は、こう言う方面は鋭いよ。 青み掛かった白い光が、あの子の体の残像に見えたことがあるんだ。 そう言う人は同類だね。」 「... 続きをみる

  • 霧の狐道202

    トメさんは箒を掃く手を止めて、こちらにやって来た。 「 ふふふ、ようやく呼んでくれたね! わたしゃ、いつ呼んでくれるのかと待っていたんだよ。」 「 ちょっとの間、この子見ていてくれる。 この子、神谷貴志君って言うの。 直ぐに戻ってくるから・・・・。」 「 ああ、いいよ。」 「 じゃ、お願いね。」 井... 続きをみる

  • 霧の狐道201

    俺は落ち葉を掃いている初老のおばさんを見た。 「 おばさんも同じだね。」 「 そう・・・。」 おばさんはチラチラこちらを見ている。 俺はそれを不審に思って井上さんに言った。 「 掃除のおばさんが、こっちを見てるよ。」 「 あの人は、昔から病院の掃除をしてくれているトメさんよ。」 「 トメさん・・・?... 続きをみる

  • 霧の狐道200

    憩いの広場 昼に痛み止めを飲み、痛みが和らいだ。 まだ、肩と足に痛みはあるが、痛み止めが効いて動きが楽になるのは有り難い。 昼食が終わると、看護婦の井上さんが車椅子で病院内を案内してあげようと言うので、俺はご好意に甘えることにした。 俺は車椅子に乗り、井上さんに押されて病院内のあちこちをウロついた。... 続きをみる

  • 霧の狐道199

    「 主治医が手術をしたがっているから、手術を勧める電話があっても承知しち ゃダメだよ。」 「 ああ、分かった、分かった。」 「 何だか、不安だなァ~。」 「 大丈夫だって、手術しないって言えばいいんだろ!」 「 そう、そう、ようやくホッとした。」 「 あ、それから病院まで送ってくれた人に礼を言ってお... 続きをみる

  • 霧の狐道198

    受話器を置く音がした。 “ ガチャ!” 待ち受け音楽が始まった。 “ 寂しさにぃ~、負けたァ~♪ いいえっ、世間に負けたァ~♪” 「 ああ、また、この音楽かァ・・・。」 “ この町を、追われたァ~♪ いっそ、死のうと思ったァ~♪” 「 何か、気分が暗くなって来たぞ・・・。」 “ ちか~らの限り生きた... 続きをみる

  • 霧の狐道197

    家に電話を掛けると母親が出て来た。 「 もしもし、貴志だけど、狸小路から電話はあったか?」 「 えっ、タヌキから電話があるの?」 「 違う、違う、主治医だよ。」 「 うん・・・・? 貴志の主治医は、タヌキ?」 「 違う違う、人間人間! とにかく、騙されて手術すると言っちゃダメだよ。」 「 貴志、私は... 続きをみる

  • 霧の狐道196

    俺はベッドに座って左肩を処置され、イデデデデと叫びながら、所謂“天使の羽根”を装着した。 そして、タヌキはニヤニヤしながら言った。 「 後の予定については、ご両親と相談しますから心配しなくていいですよ。 じゃ、今日は、こんなもんで終了!」 やはり、まだ、ぜ~んぜん手術を諦めていないことが分かる。 ま... 続きをみる

  • 霧の狐道195

    俺は速攻で、両親に手術はダメと念を押しておいた方が良さそうだと思った。 俺が疑念の眼で見ていると、タヌキは突然左手で右の腕を掻き始めた。 “ ポリポリポリポリ。” 俺は右の腕を見た。 “ 蚤でもいるのかな?” 特に蚤が隠れるほど毛むくじゃらではない。 タヌキは俺が右手を見ているのを見て、ニコッと笑っ... 続きをみる

  • 霧の狐道194

    主治医の狸小路は、妙にニコニコして俺の顔を見た。 “ タヌキだ、こいつは絶対タヌキに違いない!” 俺は確信した。 “ この場を何とか脱出しなければ・・・・。” 俺は慌てて言った。 「 えっと、あの、手術は怖いですからダメです。 僕は生命力が強い方ですから、サロンパスを貼って置けば治ると思います、ハ ... 続きをみる

  • 霧の狐道193

    俺は主治医の顔を見た。 “ どうも、胡散臭いな・・・・。” 主治医の狸小路は、妙にニコニコして俺の顔を見てから、ボールペンでレントゲン写真を指しながら説明を始めた。 「 えっと、ここの骨、ホラちょっとヒビがいってますね。 ホラ、ここから、ここに、こう来て、こう来ると・・・。 これは、手術の方が良いで... 続きをみる

  • 霧の狐道192

    エレベーターは二階に止まり、俺は通路を看護婦の井上さんに連れられて外科の診察室に移動する。 いくつかの診察室の扉を通過し、主治医の診察室に到着した。 井上さんが扉の前で言った。 「 ここよ。」 井上さんが扉を開いて、車椅子を中に押し入れる。 診察室の中には、机に向こうを向いて座っている小柄で丸っこい... 続きをみる

  • 霧の狐道191

    俺はチラッと井上さんを見た。 井上さんは俺がベッドを見ているのが分かっている。 でも、それについての話は出て来ない。 “ 当然だよな・・。” 俺たちはエレベーターに一直線に進む。 エレベーターの前で井上さんは言った。 「 2階まで行くわ。」 俺は扉の上にある階の表示を見る。 エレベーターは1階に止ま... 続きをみる

  • 霧の狐道190

    病室を出て通路を移動する。 キュルキュルキュルと車椅子の車輪の音がする。 少し錆びているようだ。 通路の移動途中、俺はキョロキョロと辺りを見回す。 そして、入院患者の何人かと擦れ違う。 顔色はあまり良くない。 “ ヤッパ、元気、無いよな・・。” ついでに扉の開いている病室も覗いて行く。 左側の大部屋... 続きをみる

  • 霧の狐道189

    俺は部屋から出て行く田中爺の後ろ姿を見ながら思った。 “ あのベッド・・、生きては退院できないのか・・・・。” 俺は曰く付きのベッドを見た。 “ ホント、あのベッドじゃなくて良かった。” 曰く付きのベッドを見ると、自然と隣のベッドの山本爺が眼に入る。 山本爺は相変わらず布団から眼だけを出してこちらを... 続きをみる

  • 霧の狐道188

    俺は不安になって田中爺に聞いた。 「 俺のベッドは大丈夫?」 「 ああ、大丈夫。」 「 俺が入って来たときは空いていたけど・・・。」 「 アハハハハハ、怖がっとるな。 心配せんでええ。 おまえのベッドを使っていたヤツは、おまえが入って来る二日前に出て行き よったがな。」 「 そうか、良かった・・・。... 続きをみる

  • 霧の狐道187

    俺はひとまず昨日のことは伏せて、しらばっくれて訊いてみた。 「 どう、変なん?」 「 そやな・・・。 まあ、同じ部屋になったのも何かの縁かも知れへんな・・・。」 「 だから、どう、変なん?」 「 うん、よっしゃ。 ちょっと、待ちや・・・・。」 田中爺は通路の方に行って外をキョロキョロ見てから、人がい... 続きをみる

  • 霧の狐道186

    俺は田中爺に訊いた。 「 今、龍平ってのが入ってきたけど、誰? 入院患者?」 「 あ、龍平な。 あれは、入院患者や無いで。 龍平はな、この病院の院長の息子や。 この病院の院長、やり手でな。 コンビニみたいに、あっちこっちに病院作って、大儲けやがな。 あの龍平は、院長の息子やがな。 この病院に、よ~来... 続きをみる

  • 霧の狐道185

    俺はその子供に言った。 「 山本さんは、昨日の夜、俺がその女の子を連れて来たと言ったけど。」 「 ふふ、どうもそうらしいな。」 「 どうしたもんかと・・、考えてるんだけど・・・。」 「 うん、まあ、それは、ええわ。」 「 まあ、それは、ええわって、かなりヤバイような気もしてるんだけど・・・。」 「 ... 続きをみる

  • 霧の狐道184

    布団から眼だけを出している山本爺の声がした。 「 龍平・・・。」 山本爺が手招きをして子供を呼んでいる。 子供が山本爺に近付くと、山本爺はもっと近くに寄れと手で合図した。 子供は少し屈んでベッドの山本爺に顔を近付けた。 二人で、何かゴニョゴニョ話をしている。 何を言っているのか、ここまで聞こえて来な... 続きをみる

  • 霧の狐道183

    朝早くからウルサイなあと思いながらも、俺は田中爺の歌をボンヤリ聴いていた。 “ スタスタスタ・・・・。” 田中爺の歌が途切れた。 「 あれ・・・、誰か、来たのかな?」 田中爺と誰かの話し声が通路から聞こえる。 「 爺ちゃん、いつも元気やなァ~。」 「 お、龍平、オハヨウサン。」 「 ちょっと、山本さ... 続きをみる

  • 霧の狐道182

    10月17日(土)のこと 次の日、妙に朝早くから歌声がして、俺は眼が開いた。 明るい日差しが病室に差し込んで、昨日の夜中の出来事が嘘のようだ。 “ なんか、のどか・だ・け・ど・・・。” 俺は首を起こして左手の窓を見た。 カーテンが引かれた窓からは、朝日に照らされた灰色の隣の棟が見える。 どう見ても、... 続きをみる

  • 霧の狐道181

    俺は女の子が言った言葉を思い出していた。 “ 確か『この病院で、ずっと遊べるね』って言ってたぞ。 この病院で、ずっと遊べる。 退院、無し? この病院で・・・・・。 ずっと遊べる・・・・。 連れて行く・・・・。 俺もってか!? うわっ、大変だ。 遊びたくない。 これはお揚げ婆さんどころではないぞ・・・... 続きをみる

  • 霧の狐道180

    話の途中で、山本爺はまた布団を被った。 「 あの、あそこの空いたベッドから出て来たのは、何ですか?」 「 ・・・・・・・。」 布団を被ったままの山本爺から返事は無かった。 田中爺のいびきは、まだ響いている。 “ ぐごごごごごごぉ~、ぐごごごごごごぉ~。 ぐごっ・・・・・・。” 田中爺のいびきが突然止... 続きをみる

  • 霧の狐道179

    看護婦さんが走り去ると辺りは一旦静かになった。 耳を澄ます俺に鞠の音がまた聞こえ始めた。 “ えっ!?” 鞠の音が、再度、鳴り始めたのだ。 “ てんてんてん、てんてんてん、てんてんてん・・・・・・。” そして、鞠の音が遠ざかって行く。 “ てんてんてん、てんてんてん、てんてんてん・・・・・・。” 俺... 続きをみる

  • 霧の狐道178

    鞠の音は同じ所で鳴っている。 “ 動かないな?” 音が消えてしまう気配も無い。 “ てんてんてん、てんてん!” てんてんで、音が途切れた。 俺は耳を澄ませた。 “ ・・・?” 暗い病室に、心臓のリズムのモニター音が通路から流れ込んで来る。 “ 行ってしまったのかな?” 鞠の音はこの病室から少し奥に行... 続きをみる

  • 霧の狐道177

    俺の頭の思考回路がピタッと停止した。 病室の扉が、す~っと開いて、女の子と黒い影は出て行く。 “ ギッ、バタン!” 扉が閉まった。 その瞬間、俺の頭の思考回路が動き始めた。 “ ずっと、って・・・・・・・・・・・・。 ゲッ、ヤ、ヤ、ヤバッ!” 俺の頭の中を何個もの“ずっと”がグルグル回転する。 俺は... 続きをみる

  • 霧の狐道176

    女の子が顔の向きを右前にフッと変え、遠くを見る目付きになる。 “ どこを見ているんだろ?” その瞬間、横顔に微かな微笑が浮かんだ。 “ 笑ったぞ・・・・。” 俺は、それを見てヤバイと思った。 “ 俺を思い出して、こっちを向くかも・・・。 何か、俺、攻撃されるのか・・。” 俺は少しビビッて体を硬くした... 続きをみる

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