ショートショートのムラゴンブログ

  • 【twitterショート140字×3】ネタの使い回し大作戦

    「セブンイレブンのロゴ、見たことある?」 「数字の7にELEVENだろ」 「ELEVENの最後のNが小文字なのはナ~ゼだ?」 「あ、ホントだ。ELEVEnになってる。なんでなんで?」 「セブンイレブンの社長がひどい痔持ちで、少しでも『オシリのヂが小さくなりますように』って」 女の子ひとりなんて決めら... 続きをみる

  • ニョロウィルス、東へ

    「とうとうウチの社でも出たな」 総務課の高橋さんがサージカルマスクで覆った顎をしゃくった。 黄色テープのクロスで通路が遮断され、防護服に身を包んだ男たちがそこかしこに消毒液を噴霧している。 「ニョロか?」 マスクでくぐもった声の僕が尋ねると高橋さんは無言でうなずいた。 ヤバいな。終息したと思っていた... 続きをみる

  • キャベ人

    (2009年12月28日初出) (2010年12月3日「バカ言わシアター」で朗読していただきました) 僕はキャベツが好きだ。 塩コショウだけで炒めたキャベツも最高。 シャキシャキの千切りにオタフクソースをからめても美味。 ロールキャベツに、ポトフに、鍋に、お好み焼きに、サラダに、ピクルスに。 恐るべ... 続きをみる

  • 鏡の精は電気ウサギの夢を見るか?

    城の最上階、妃の間の一番奥の壁。青いビロードをめくると丸鏡が現れます。 「鏡よ鏡、この王国で一番美しいのはだぁれ」 「はい、それはもうお后様でございます」 毎日毎日、朝な夕な、お后様は鏡に問いかけます。鏡の答えはいつも同じです。 ところがある日のこと、お后様が問いかけると、 「あ、えっと、そりゃもう... 続きをみる

  • 【ゴルゴル13絶体絶命・後編】

    単行本150冊を超える不死身のスーパースナイパー、ゴルゴル13。彼の身に、未だかつてこんな絶体絶命の危機があったろうか。 空港ロビーを歩くゴルゴル13を偶然見つけた殺し屋が拳銃を発砲、偶然だからこそ防ぎようもなかったのだ。 いかに敏捷なゴルゴルといえども、銃弾を避けることなど不可能である。 今、無防... 続きをみる

  • て果の作競スマスリク

    競作に参加してくださった皆さん、応援してくださった皆さんへ (矢菱虎犇) 2010-12-26 07:04:33 ついにクリスマスも終わってしまいました。 競作に参加してくださった皆さん、応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。 思い起こせば1ヶ月前、競作ブログ企画を立ち上げたときに... 続きをみる

  • ラジャラジャマハラジャ

    電車が郊外へと進むにしたがって、窓の外はビル街から住宅地、そして田園風景へと変化してゆく。 平日の昼下がり、車内は人もまばらだ。 新聞の競馬欄に何やら書き込む労務者、メールに夢中の若い女、文庫本を読む年配の男。何の変哲もない日常。 規則的な走行音、吊り広告の軋む音、ふくらはぎに伝わる暖房の熱、ああ、... 続きをみる

  • 今日のお昼はカレーですか

    熱海の海岸でずぶ濡れの男が発見された。 熱海警察に保護されたその青年は日本語が話せなかったし、世界のどの言語も解さなかった。 ピアノマンの再来か?というわけで、楽器を与えてみたが反応なし。 日本中、このミステリアスな男の話題でもちきりとなった。 何といってもこの男、イケメンというか、とにかく容貌が少... 続きをみる

  • 犬以下

    群馬の伯母から電話があった。伯父がしばらく入院することになったので、飼い犬を譲りたいと言う。 妻も娘も大賛成だったので譲り受けることにした。 数日後、業者が犬を運んできた。 なんだ、この犬? 僕よりもはるかに大きい肉のカタマリ、全身皮が弛んでいる。荒い息を吐き、玄関ポーチを涎で点々と濡らす。 「お祖... 続きをみる

  • お幸せなあの人に今年一番幸せだったことをインタビュー

    「どうでした?今年」 「幸せな一年でしたねぇ」 「そんな幸せな一年を過ごした矢菱さんの今年一番幸せだったことをおしえてください」 「え~!一番?そうだなぁ、正月に占ってもらったんですよ。そしたら占い師が今年は幸せな一年になりますよって。あれが一番幸せだったなぁ」 「わ~!お幸せな方」 (最後まで読ん... 続きをみる

  • 肉まんデラックス

    りんさんの「肉まん事件簿」を読んで、僕も肉まんのお話を書きましたぁ。 この季節、ちょっと小腹が空いてコンビニに行ったら、やっぱり僕は肉まんだな。 アッツアツの肉まんをヤケドしないようにお手玉みたいにポンポンしながら、ホフホフ頬ばる。 皮はフワフワほのかに甘く、そのうち甘辛い具がジュワッと出てくるコン... 続きをみる

  • トラビシアン料理をあなたに

    あ、降り出した。 粉雪がチラチラと舞いはじめた。まいったなぁ。 来週はクリスマスイブだっていうのに、彼女と食事の約束をとりつけたというのに。店が決まらない。 僕はもう2時間近く表参道周辺を探し回っている。めぼしい店は予約でいっぱい。そりゃそうだよなぁ。 ♪キンコンカンコン♪どこからか優しいメロディが... 続きをみる

  • ホーリー・ナイト

    某チェーン店本社ビルを直人は見上げる。 ハンチングにもトレンチコートにも粉雪がまとわりつく。直人の手で飛び出しナイフが冷たく光る。 虎の穴の刺客たちの反則には反則で応えてきた。それが俺の生き方だ。 ちびっこから笑顔を奪ったこの店を俺は許さない。 子どもたちの青ざめた顔がよぎる。ナイフの柄を握る拳に力... 続きをみる

  • サイレント・ナイト

    直人の赤いスポーツカーがちびっこハウスの前に土ぼこりをあげて停まる。 子どもたちがスポーツカーに駆け寄る。そしてスポーツカーの後ろに山盛りになった唐揚げを見て嬌声をあげる。 今宵はクリスマス。直人はハウスの子どもたちのために、新進某チェーン店の唐揚げスペシャルを注文したのだ。 直人は若月先生やルリ子... 続きをみる

  • フェイント昔話「ゾウのおんがえし」

    昔々ある山里に、若い男がひとりで暮らしておりました。 男は、山で薪を切り、町に運んで売って細々と暮らしを立てておりました。 初めて山里に雪が降りつもった日のことです。 男がいつものように薪を背負って町まで向かっておりますと、目の前でゾウがドウと倒れたではありませんか。 駆け寄ると、ゾウの背中には密猟... 続きをみる

  • # ショートショート
  • 出口のない部屋

    いやなんか変だとは目が覚めたときからうすうす感じていたんだけど、 この部屋、出口がないじゃないか。 安ホテルの配置はいつもと一緒、頑丈そうな窓、ごわごわしたベッド、スタンド、湯沸かしポット、テレビ。 ユニットバス&トイレ前の狭い通路の向こう、いつもならドアがありそうな辺りをじっと見る。 だが、突き当... 続きをみる

  • ギリギリモザイク

    例えばの話である。 『絶倫受験生/真夜中のレッスン』という日活映画を見に行ったとしよう。 女優①は、下宿の管理人、熟れ熟れの未亡人おばちゃん。女優②は、その娘でいかにも遊びまくってる感じのイケイケお姉さん。 女優③は、新人看板女優演ずるところの、主人公のお目当て、いかにも優等生タイプのピチピチ高校生... 続きをみる

  • なんて素敵にエンバーミング

    明日、夫が帰って来る! ああ、待ち遠しい。夫の端正な顔立ちや長い指先を思い出して私は思わずため息をついた。大好きよ、あなた。ずっと、ずっと。 三ヶ月前、興信所の調査で夫の浮気を知った。ソバージュの若い娘の肩を抱いてホテルに入る写真を、夫に突きつけた。 「半年以上、この女と関係しているでしょう?ごまか... 続きをみる

  • 最高級のプレゼント

    地元じゃ人気のイタリアン・レストラン『Malinteso』の予約席。 洒落たクロスに載った手作りキャンドルの灯火が、シックなドレスをまとった奈々子を最高に演出してくれる。 華奢な指先をグラスネックに絡ませて赤ワインをたしなむ奈々子はもうすっかり大人の女だ。 今宵、奈々子の20回めの誕生日。 彼女に初... 続きをみる

  • 鉄道関係者は電車に飛びこまない

    「なぁ、すまない。ミンチだ。T駅。すぐ来られるか?」 非番の日、昼食後うとうとしていると、村上さんから連絡が入った。 飛びこみか。しかも非番の僕にまで召集がかかるってことは。 「イヤなら断ってもいいぞ。ヒドイらしい」 「大丈夫っすよ。T駅ですね。今から行きます」 「お、助かるわ。じゃ駅で待ってっから... 続きをみる

  • あなたも泣ける、母からの手紙

    問屋奉公していた息子の元に、はるか遠い故郷で暮らす母親から何年ぶりかで手紙が届きました。 旦那から手紙を受けとるやいなや、息子は路傍で封を開けました。 しばし手紙を見つめ、みるみる大粒の涙を目にためると泣き出しました。 「おいおい、いかがなされた」 道端で泣きじゃくる姿を見るに見かねて、お侍が声をか... 続きをみる

  • ケンカしないで上手に分けなさい

    「あ、兄ちゃんのほうがおっきいや、俺もこっちがいい!」 「おまえのぶんにはイチゴがのってるだろ」 「じゃ替えてよう」 「いやだ!俺もこっちがいいんだ」 一郎と二郎が今日も兄弟ゲンカをおっぱじめました。母さんが腹を立てます。 「うるさい!ケーキくらいケンカせずに食え。ケンカするくらいならこうしてやる!... 続きをみる

  • ねぇこれって何のタマゴ?

    アパートの駐車場でタマゴを拾った。 窓辺にそっと置く。 ウズラのタマゴくらいの小さなタマゴで真っ白、カタチが実にいい。タマゴ型の原型ってくらい。 小鳥のタマゴかな?それとも爬虫類の?何がかえるんだろう? ワクワクしながら、編みカゴにシュレッダー屑を入れて真ん中にそっと置いた。 三日もすると、タマゴが... 続きをみる

  • 最後の一葉&夏彦のバカ

    最後の一葉 「当時、この界隈は美術学校の生徒やら絵描きやらがたくさん下宿しておった。ほら、その煉瓦塀の向こうのアパート。画家志望の娘二人が暮らしておった」 「ひとりの娘が病気だったのでは?」 「うむ。危なかった。だが、問題は貧しさのあまり彼女が生きる気力を失っていたことじゃ。わしは何とか生きる力を与... 続きをみる

  • クマに襲われたとき読む話

    クマだ!クマが出た! 岩場をこっちに向かってくる黒い影は、まちがいない、ツキノワグマだわ。 午前中、登山中に見かけたクマにちがいない。後ずさりして逃げたのだが、私たちを追いかけてきていたのだ。 私は沢の岩場で飯ごう炊さんの真っ最中。おまけにタカシは下流に川魚を釣りに出かけている。 どうする?私。 そ... 続きをみる

  • おのれのリングで散れ

    「ねぇ、刑事さん、刑事さんは勤めて長いの?」 隣から大泉滉そっくりの祈祷師に声をかけられた蟹江敬三そっくりの男は眠っているふりをした。 「刑事さんくらいの年だと、『太陽にほえろ!』とかの刑事ドラマに憧れて、その仕事を選んだんだろうねぇ」 刑事は不愉快そうに寝返りを打つふりをして窓側を向いた。 「やっ... 続きをみる

  • 【R指定】すりこみ(宇能鴻一郎風)

    「わぁ、見て見て!カルガモの親子。お母さんの後ろに子ガモがくっついてヨチヨチ。かぁわぁい~い!」 あたし、感激してるふりしてヒロシ君の腕、つかんじゃったんです。 「よ、陽子ちゃん、カルガモはね、タマゴから孵って最初に見た動くものをお母さんだと思ってしまうんだよ。イギリスのローレンツが紹介して有名にな... 続きをみる

  • 君はアブラメシが好きか?

    (とっても美味しそうなイラストは、たまからのママさんの『描きたてのイラスト』より。ママさん、ありがとうございます!) 君はアブラメシが好きか? 僕の言うアブラメシってのは、白米が天ぷら油でギトギトになってしまっているドンブリもののことだ。 代表的なのは、天丼。天ぷらを箸でつまんだら、その下のコメが油... 続きをみる

  • 『ラーメン背水の陣』

    おや?ここ、ラーメン屋さんになったんだ。ちょっくら食って帰るか。え?『ラーメン背水の陣』?インパクトあるなぁ。 「らっしゃい!おひとりで?」 ああ、ヨッパライひとり。大将、とりあえずビール。 カウンタ席が数席だけ、大将ひとりのこじんまりした店だ。しかも客は俺ひとり。 開店早々週末の夜にこのザマじゃ、... 続きをみる

  • ふしぎめがね

    ワ~イワ~イ!もぐらさんにお願いして、「さとる文庫」で朗読してもらいました。 嬉しくって再開前にトップにあげました。(2010年11月7日矢菱虎犇) (2008年11月11日初出) (2010年10月27日リライト) (2010年11月7日「さとる文庫」で朗読していただきました) ふしぎめがねを買っ... 続きをみる

  • マクロスコープ

    液晶プロジェクタに映し出された精子をポインタで指しながら、先生が説明する。 「女性の体に準備されている卵子になる細胞は400万、その中から500個ほどだけが卵子に成長し、毎月排卵されるのです。そして、男性が一度の射精で放出する精子の数は、約3億匹。その中で子宮に到達できるのは5000匹ほど。そして卵... 続きをみる

  • 死ぬほど美味い

    金曜日が待ち遠しい。 金曜だけ、自転車通勤の帰りにコンビニに寄って、サントリープレミアム350ミリリットル缶を飲んでもいいというきまりを作っている。 一週間お疲れさまと自分をねぎらい、ビールとつまみをコンビニの駐車場で飲み食いする、ささやかな幸せ。 先週、『紀文の明太子マヨネーズinしたらば』105... 続きをみる

  • 今日のクスリ

    (2010年9月15日初出) (2010年10月24日「さとる文庫」で朗読していただきました) 頭が重い・・・ 体がだるい・・・ クスリだ。クスリが効いてないんだ。 こんなじゃ仕事にもならない。 上司に外出を申し出て、行きつけの薬局へ行った。。 「おや、いかがです?昨日のクスリは」 薬局のオヤジが愛... 続きをみる

  • 父さんは僕にすぐ手伝わせようとする

    からイヤだ。 車をガレージに入れると、エンジンをかけたまま僕の部屋にやってきた。 「おい、ちょっと手伝ってくれないか?」 何だよ、父さん、いきなり。入るときにはノックくらいしろよ。あわててパソコンの画面を閉じる。 「もう遅いから明日にしてよ」 見上げて僕はギョッとした。髪の毛は額にベッタリ張りついて... 続きをみる

  • 川棚温泉異聞

    昭和七年五月、下関の奥座敷川棚温泉に鉄鉢を手にした乞食坊主が現れた。滞在二日にして湯と景観に惚れ込んだ僧は、此の地を終の住処と決めた。 当時の川棚温泉は、湯治客が宿で自炊、下駄を鳴らして大衆浴場へと通う昔ながらの湯治場であった。しかし大正三年に山陰本線が開通して以来、観光客が湯治客を上回っていく。週... 続きをみる

  • Choose me!

    「失礼します」 社長室に入ると、社長は窓際に立って都内ビル群を眺めていた。 「ああ、高杉君。急に呼びだてしてすまん。座りたまえ」 革張りの応接チェアに促されて座る。何だろう、急に。 「君はあっちのほうはどうかね?つまり結婚のことだが。いい人はおらんのかね?」 「いやぁ、僕は仕事一筋、そっちのほうは疎... 続きをみる

  • 【twitterショート140字×5】奇跡の救出劇がここにも!

    チリ落盤事故、救出が難航しているニュースを見ていた息子が私にせがむ。「ママ、国際救助隊に電話してよう。サンダーバードのジェットモグラじゃなきゃ助けられないよう」終に真実を話さなくてはならない時が来た。「タカシ、よく聞くのよ。サンダーバードはね、紐のついた人形しか助けられないのよ」 地下避難所に大統領... 続きをみる

  • 鍋の中

    「土曜の晩、私の家で鍋パーティーをしましょう。先生、こう見えて料理、得意なんだから」 森岡先生が産休の間、僕たちの担任をしてくださったリンサイの先生はお別れ式のあとで僕たちに言った。 急な話だったので、先生の家に集まったのはクラスの十人ほどだった。 「たくさん作ったから、しっかり食べてね」 先生がリ... 続きをみる

  • オーシャンブルー

    近所のホームセンターで外来アサガオの苗を見つけた。オーシャンブルー? 添えられた写真の、その名に相応しい、紺碧の海のような青が僕を魅了した。ひと株だけ購入し、早速プランタへ。 大切に育てて一週間、大切にしなくてもぐんぐん育つことがわかった。 とにかく成長が早い。毎朝目に見えるほどの伸びに驚かされた。... 続きをみる

  • 危ないからやめなさい

    「危ないからやめなさい」 母さんが目を吊り上げて言う。 「スキージャンプなんてお願いだからやめてちょうだいよね。母さん、絶対にイヤよ」 矛先が父さんに向かった。 「あなたがジャンプ台なんか連れて行くから」 父さんが新聞に頭を隠した。 夏休み、大倉山ジャンプ競技場を父さんと見に行った。 ジャンプ台を見... 続きをみる

  • 天の神様に聞いてみればすぐわかります

    やっと捕まえたぞ、賽銭泥棒。いやぁまさか女とはねぇ。 ここ数年、毎年のように賽銭泥棒にやられてた。前回の被害額なんて10万越えだ。あんたの仕業か?違う? ま、嘘つきはナントヤラ、信じる気などないな。 参拝者の皆様が祈願成就を祈念して奉ったお賽銭をくすねようなんて、まさに神をも畏れぬ不届き者だな。 昔... 続きをみる

  • 死ぬまでにしておきたいいくつかのこと

    いかん、いかん。 つい『NHKおはよう日本』の鈴木菜穂子アナに見とれて出勤時間が遅れてしまった。 慌てて自転車にまたがり市道に出た途端、ドッカ~ン! 乗用車が真横から突っ込んできた。僕は、漫画のようにピュ~と空を飛んだ。アスファルトを見下ろしながら落ちたら痛いよなぁと他人事のように思った。 案の定、... 続きをみる

  • 1000円札あげます

    いつもより1時間遅いだけで、駅はずいぶん空いていた。 今日は約束の10時、得意先に直接うかがうため、いつもは慌ただしい朝の時間をゆっくりできた。 得意先は勤務している会社よりもさらに数駅先にあるので定期は使えない。僕は切符売り場に急いだ。料金表を見上げて確認する。380円。 財布を開いて青くなった。... 続きをみる

  • コスモス

    小春日和の日溜まりで、薄紅のコスモスの花が自ら光を放ち風に揺れている。 縁側には私の幼い日々のアルバムが広げたまま置かれている。先程まで母がながめていたのだ。 母が庭先でひとつ咳をした。 明日嫁いでいく私は、母親への感謝の手紙を書く筆を止めた。 「母さん、大丈夫?」 「ああ。ミチコ、今、話をしてもい... 続きをみる

  • The Lady Vanishes(バリカン超特急)

    女を殺した。 女の名前は板東里香、理髪店のバイト娘、二年前から関係している。 「バリカンでクルーカットにしてくれ。超特急で頼む」 「バリカン超特急、かしこまりました」 鏡越しに見つめ合って笑った。ほんとに超特急で散髪は終わり、会計の際、釣り銭と一緒にメアドを渡された。 その日以来、父娘ほど年の差のあ... 続きをみる

  • 改造人間の憂鬱

    (2010年10月5日初出) (2010年10月8日「ばか言わシアター」で朗読していただきました) 5日にアップして8日に朗読って・・・信じられない速さにおったまげちゃいましたぁ!できたてホヤホヤで湯気が出てる文章の朗読なんてホント予想だにしませんでした。素敵なサプライズ、ありがとうございました。 ... 続きをみる

  • 【久しぶりのtwitterショート140字×3】無人島サバイバル!

    満員電車、上司の叱責、妻の小言、反抗期の息子・・・・・・夢にうなされて目を覚ますと無人島だった。そうだ、客船が沈没、浮輪にしがみついて漂流、昨日僕はこの島に漂着したのだった。そのとき、汽笛の音に顔を上げると船影が見えた。僕は大声を上げかけてやめた。もうちょっとこのままでいっかぁ。 僕ひとり、無人島漂... 続きをみる

  • 紅茶箱祝祭

    何年ぶりかで生まれ育った家に帰った。これまで戻る機会はあっても、なかなか家の近所を出歩く機会はなかった。 夏の昼下がり、ふと思い立って僕は玄関裏を出て数軒先まで歩いてみた。ブロック塀に仕切られた視界の向こうに草原が見えた。 昔のままだ。廃れた炭鉱のボタ山があった場所で、その一画だけ荒れ放題になってい... 続きをみる

  • 彼岸婆々

    今週末もまた、私は順子とともに旧萌谷村の老婆を訪ねた。 編入合併で消えゆく地元村落に残る民間伝承の研究が私たちの卒論テーマ。だが肝心のフィールドワークが遅々として進まない。 老婆の話は今日もとりとめがない。病気の話、息子の自慢、近所の悪口。私たちはゲッソリした顔を見合わせる。やめちゃうか、この婆さん... 続きをみる

  • まだなのはあなただけなんですよ

    困るなぁ、困るんですよ、実際。あなたみたいな人が一人でもいると。 どうしてみんなと同じことできないんだろうな。協調性ないなぁ。職場で言われるでしょ、空気読めないって。 ほらまた。そうやって反論しようとする。楽しいですか?人と違うことをするのがそんなに。 そうすることで、あなたの大切なご家族やご親戚が... 続きをみる

  • わたしと小鳥とすずと

    先生、みすゞちゃんのことで相談があります。 みすゞちゃんが学校を休んでいるのは、カゼをこじらせたんじゃありません。 クラスでいじめられていたんです。 うわぐつをかくされたり、教科書をやぶられたり、たいそう服をトイレに投げ込まれたり。 あたしはみすゞちゃんを助けてあげたかったのですが、こわくてできませ... 続きをみる

  • 喋るな!!

    「午前7時をお知らせしまうま~♪オ~イ、ご主人様ぁ、起きろぉ~♪」 目覚まし時計が喋る。僕はふとんの中から手を伸ばして、目覚まし時計を止める。時計の文字盤にはアイドルユニットAKB48のメンバーの一人の笑顔。 頭をボリボリ掻きながら、ふとんを出ると冷蔵庫へ。 「おっはよう♪ヒロ君。えっとぉ、昨晩のピ... 続きをみる

  • 人魚人【140字×3】

    オークションに人魚が出品されていたんで、とりあえず落札した。 出品者の写真には中央に縦線、明らかに北欧美女の写真と鱈の写真の合成である。 数日後、スチロールのトロ箱が届いた。中には女性一体と魚一匹。 説明書によると、女の中身が魚で、魚の中身が女らしい。さて、どっちを食べようか? 悩んでいると美女が目... 続きをみる

  • 新種登場!チクワムシの悲劇

    丹沢の山奥でチクワムシが発見されて大騒ぎになった。 第一発見者の地元爺さん、ぶったまげた。だって山路にチクワが転がってたんで拾ったら新種生物だったんだもの。 そりゃもう色も形もチクワそっくり。 研究者が調べてみると、どうやら環形動物の一種。ミミズやヒルなどの仲間ってんだけど、そのどれよりもチクワに似... 続きをみる

  • 新種登場!カマボコウオの悪夢

    ビクトリア湖畔の都市ムワンザの長老は輝きを失った黄色い目を私に向けた。 「ドミノ倒しはささいな欲から始まった。在来種ではない魚を食いたいと思いついた、たった一人のバカのせいでな」 長老がバケツの中の黒い魚を手づかみで取り出した。木炭の棒のような魚が身をよじらせ、牙を剥いた。 「それがこのカマボコウオ... 続きをみる

  • 九月二十九日は招き猫の日

    お店の店先やらレジやらに招き猫ってのが置いてあります。この招き猫、アメリカでも人気があって、小判のかわりに$なんぞを抱えておるそうです。あちらでは日本の手招きはシッシッの動作なものですから、アメリカ猫の手は裏向きのカモ~ンな訳です。 「おい、招き猫ってのは宇佐神宮で作ってるのかい?裏っ側にメイド・イ... 続きをみる

  • 格付けダービー

    部長夫人宅のダイニング、テーブルにはできたてのスイーツが並んでいる。 次長夫人、副部長夫人、課長夫人、そして私の五人で試食会が始まる。 今年転勤してきた部長の奥さん、部長より十五歳も年下とかで私と同い年。趣味のお菓子作りがなかなかの腕前とかで、週一回部下夫人が集まってお菓子作り教室が開かれるようにな... 続きをみる

  • ねねねねねね

    アナ「さあ、いよいよ新体操最後の演技です。どちらが勝つでしょうね?解説のイヤミさんとバカボンのパパ」 岡「おフランスが勝つざんす」 益「日本チームの優勝なのだ」 わ アナ「さあリボン演技が始まりました!」 われわれわれわれ アナ「まずはゆっくりとウェーブです。日本チーム四人、笑顔で声援を送っています... 続きをみる

  • しゃべる猫

    「お帰りなさい、あなた」 午後9時過ぎ、やっとこさ仕事を終えて帰宅すると美代が迎えてくれた。ん?まあいいか。 着替えを済ませて、美代と夕食をとった。 食事を済ませると、美代が身をすり寄せて甘えてきた。膝の上にチョコンと乗る。 僕は美代の体を優しく撫でた。美代が目を細める。 「忙しいんですのね」 「あ... 続きをみる

  • マイムマイム

    公園で犬の散歩中、「お手!」なんて命令するもんだから、犬が人間の手を拾ってきた。 変色した右手首は警察に届けられ、辺り一帯を捜索してみてビックリ。 右手の腕と上半身が出てくるわ、 左腕も頭部も出てくるわ、 誰がどう考えてもバラバラ殺人ってんで大騒ぎ。 報道を見てさらに通報が次々と。 同市内焼却処理場... 続きをみる

  • サトルの失踪

    午後のファミレス、いつものようにいちばん奥の座席、両手で頬杖、手元にはコーヒーと文庫本、でもホントは読んでなんかいない。 私は日がな一日マンウォッチングをしている。男性二人が入店、絵に描いたような新聞記者と学生。なんだか深刻そうだぞ、この二人。 「君、どうして園山サトルの失踪事件に興味を?」 「実は... 続きをみる

  • ウーパールーパー

    小3の九月、クラスに女の子が転校してきた。 僕は恥ずかしくてうつむいていたけど、メキシコから来たって聞こえて顔を上げた。 全然メキシコじゃなかった。 大きな潤んだ瞳、小麦色の肌の娘をイメージするじゃないか。ソンブレロは被ってないにしても。 でも転校生は、日本人より色白で丸顔でつぶらな目だった。後で知... 続きをみる

  • 月のウサギのおくりもの

    ♪うさぎ、うさぎ♪何見てはねる♪十五夜お月さま♪見てはねる♪ 今日は十五夜、お月見です。 ママがお団子を三宝に盛って縁側にお供えし、ススキも生けてくれました。 兄の翼君と妹の美輝ちゃんは空を見上げました。 「お月さま見えないねぇ」 「お月見できないよ」 空は厚い雲に覆われています。 「残念ねぇ。でも... 続きをみる

  • 五百円玉貯金で四十万円貯めました

    五百円玉貯金を毎日続けると二年間で三十六万五千円を貯金できる。 五百円玉なんて日々財布を出入りしているから、手に入れても使わなければいいだけだ。 それはわかっているけれど、こつこつ貯め続ける継続こそが難点だ。 『三十万円貯まる貯金箱』なんてのをひとつ買ってみようか。 そんな話を交際中の可奈子にすると... 続きをみる

  • 上級公務員管理職任用試験解説

    例年どおり、上級公務員管理職任用試験の会場はセンター第1研修室でした。 受付を済ませてさっそく会場へ。もう殆どの受験者が来ています。 「やぁやぁ、どうもどうも」 「お変わりなく?そりゃよかった」 皆一様に腰が低く丁重です。そうです。もう戦いは始まっているのです。 私も負けていられません。知り合いが多... 続きをみる

  • マツおばあちゃんのあの頃

    モルタルアパートに挟まれた小さな児童公園のブランコに、老婆が腰掛けていた。 夏の終わりの午後、先程まで砂遊びをしていた兄弟も姿が見えない。 ブランコを揺らすとキィ、キィとかすかに軋む音がした。 「おばあちゃん」 顔を上げると、目の前に男の子が立っていた。 賢一? 一瞬、マツはわが子かと見紛った。 賢... 続きをみる

  • もっときつ~く抱きしめて

    (ヴァッキーノさんの最後は笑顔で抱きしめて を元ネタにして勝手に書きましたぁ) 新婚初夜。僕は妻頼子を初めて抱いた。 「アア・・・賢一さんもっと・・・もっと抱いて!」 華奢な裸体を抱きしめる。 「お願い、もっと強く」 腕に力をさらに込める。 「アア・・・そうよ、素敵だわ!アア!」 溺れたような恍惚の... 続きをみる

  • 代用がいっぱい

    ただの治療が始まりだった。 朽ちた血管を人工血管に交換する手術を受けたのだ。病は見事に完治した。 そのうち、機能が衰えた内臓を人工内臓に次々と交換した。 体内あちこち、人工部品にするたびにすこぶる調子がよくなった。 それで妻と相談し、再び仕事に出るようになった。 働き始めると、手足の筋力の衰えが気に... 続きをみる

  • ゾンビがクルリと

    講義の後でついつい居眠りしたらしい。目が覚めると僕以外講堂に誰もいない。どうやら由美も帰ってしまったようだ。 窓の外を見ると雨がざんざん降っていた。 由美の薄情者め! 傘の準備なんかしてなかったし、傘立てに一本の傘もなかった。 出口で雨を見上げていると、目の前に空色のギンガムチェックがサッと広がった... 続きをみる

  • 映画少年、小倉へ

    初秋の休日早朝、僕は30分ほど自転車をこいでT駅に向かった。 駅にはすでに高校の映画仲間のIが待っていた。 最寄りの数駅を避け遠いT駅を選んだのは無人駅だからだ。 僕たち二人は切符を買わずに一両編成のクモハ42に乗り込んだ。 車内には行商の婆さんとわずかばかりの客、プンと魚の臭いがした。 別の無人駅... 続きをみる

  • ハッサンの箱

    アラビアンナイトを引くまでもなく、エジプト人は話好きな民である。前任者に雇われていたハッサンもまた例外ではなかった。ふらりと我々の営業所に現れ、請われるまでもなく事の顛末を話した。 ルクソール近郊の駐車場で武装集団に前任者と共に誘拐された。身代金交渉が拗ると、まずハッサンの左手首を蛮刀で切り落とした... 続きをみる

  • 月男

    古いジャズバーの店内を蜂蜜色の照明と甘美な『ブルームーン』のメロディが満たしていた。 「隣に座っても?」 カウンタ席でひとりグラスを傾けていた僕に、老紳士が話し掛けた。 僕がガラ空きのカウンタ席を見渡すと、老紳士が小さく笑った。 「お邪魔かな?」 かぶりを振って隣の席を促した。 老紳士がマスターに飲... 続きをみる

  • 黄金人生の黄金比

    「草井、まだか?」 「もうちょいです、ボス」 俺は腕時計を覗く。金庫の開錠に取り掛かってもう15分。 ダイヤルに接続したパソコンのキーボードの上で草井の指が踊る。 プ~ また屁をかましやがった。ひどい臭いだ。 モニタに数字や記号が流れていく。見ているだけで頭痛がしてきた。 俺は根っから数字嫌いだ。そ... 続きをみる

  • 河童を探して

    岡山駅の待ち合わせ場所に行くと、妹尾さんが先に来ていた。 「トラやんさん、久しぶり。こちら、モロQさん。二人は初対面だよね?」 モロQさんは銀縁に七三分け、シャイな感じの人だ。掲示板での豪放な印象とは大違いだ。 「ごめんなさ~い。遅くなりましたぁ」 ラムダさんとピコリさんがやって来た。娘ほど若い女性... 続きをみる

  • そっくりビール

    (2009年9月13日初出) (2010年9月10日「ばか言わシアター」で朗読していただきました) CM明け、スタジオ観覧者全員が元気よく拍手。 「さあ、今年度の『利きビール王座決定戦』もいよいよ大詰め!勝利の栄冠は誰の手に?」 決勝戦を競い合った僕たち5名全員をスポットライトが次々となめていく。 ... 続きをみる

  • げっそりビール

    (2009年9月14日初出) (2010年9月10日「ばか言わシアター」で朗読していただきました) 「さあ、今年度の『利きビール王座決定戦』もいよいよ大詰め!勝利の栄冠は誰の手に?」 決勝戦を競い合った僕たち5名全員をスポットライトが次々となめていく。 10種のビールの銘柄が次々と発表され、5名全員... 続きをみる

  • ダイヤモンドは永遠に

    「3、2、1、ハイ!」 僕の目を覆っていた両手が放れる。百合の鈴みたいな笑い声。 振り返ると、全裸の百合が僕の胸に飛びこんできた。僕たちはまたベッドに倒れ込む。 百合の肌の温もりを確かめるように、肩から腰へと撫で下ろした。 僕の胸に頬ずりをする。髪の毛がくすぐったい。 「ありがとう」 「ん?」 「コ... 続きをみる

  • 幽霊電話

    深夜、枕元の電話のけたたましいベルの音で目を覚ました。 「もしもし、誰?こんな夜中に?」 ・・・無言。 「ちょっとあんた、いたずら電話か?切るぞ、バカ」 受話器から身も凍るか細い声。 「うらめしや~」 「はぁ?もっと大きい声で!」 「うらめしや~~」 「うらめしや?それで、あんた誰?」 「あの、幽霊... 続きをみる

  • タバコはあなたの健康を害するおそれがあります

    「あ、一服していい?」 駱駝先輩がタバコの箱を小鉢の傍にポンと置いた。七星と僕は青ざめた。 「先輩、まだタバコやめてないんすか?」「体に悪いっすよ」 先輩が笑った。 「やな時代になっちまったなぁ!タバコも自由に喫えねぇなんてな。昔の居酒屋はモウモウと煙ってたもんだ。今じゃ喫煙コーナーすら撤去されちま... 続きをみる

  • 22世紀少年

    1学期三者懇談の日。 教室の扉が開いて、ケンイチ君とケンイチ君の母さんが出てきた。 廊下に出た途端、母さんはケンイチ君の頭をポカリ。かわいそうに、ケンイチ君、成績悪いもんなぁ。 次は僕の順番だ。入れ替わりに教室に入り、担任の二宮先生の前に座った。通知表を受け取ってソロリソロリ開く。 ああ、またオール... 続きをみる

  • 【これが物質転送機だ!】twitterショート140字×3

    「物質転送機、ついに完成じゃ」 「おめでとうございます、博士。まさかまたコーヒーと牛乳を送ってコーヒー牛乳は作りませんよね?」 「あたりまえだ。送る側のポッドに、薄力粉・ベーキングパウダー・卵・牛乳・砂糖・塩とフライパンに入れてだなぁ」 「博士、あんたやっぱり間違ってる。前よりひどい」 「ついに物質... 続きをみる

  • 死んで当然、死んだも同然

    外回りから会社に戻ってパソコンをONすると、自動的にメールが開いた。 『只今、爆弾が作動しました。30分後に爆発します。椅子から立ち上がってもパソコンを止めても爆発するので気をつけてね。A子』 A子、君がなぜ?君は僕の恋人じゃないか!自動で次のメールが開いた。 『この浮気者。U子を部屋に連れ込んでる... 続きをみる

  • 残暑

    盆休みの前の週に高校の同窓会なんかやるもんだから、同期で出席したのは地元の草臥れた連中数名だけだった。記録的猛暑のさなか、冷房の効きが悪くて会場は茹るようだ。関西の大学に通って以来、地元にいるくせに関西弁の抜けないMが僕に尋ねた。 「くっそ暑ぅおまんなぁ。S死んでもうたの、知っとりま?」 もちろん知... 続きをみる

  • 【恐怖の恐怖症】twitterショート140字×3

    「出勤すると心臓はドキドキ、汗はダラダラ、呼吸が苦しくなる。新入社員の頃はなんともなかったのに」「最近調子が悪くなったと?」「ええ、係長、課長、次長、部長と出世に従って、年々悪化していく」「な~るほど、あの病気だ」「え?病名がわかる?治りますか?先生!」「それ、高所恐怖症ですよ」 「そうです。恐怖症... 続きをみる

  • ようこそ、漫画ワールドへ

    目覚めるといきなり、僕の目に『ジリリリリ』という文字が飛びこんだ。 勉強部屋いっぱいにベタ塗りの太文字が躍り、枕元の目覚ましが空中で揺れている。 停止を押すと、小さな『カチ』の文字。すべての文字がすっと消えた。 (え?今のはいったい?) 窓を開ける。『ガラガラ』の文字が現れ、消える。『チュン、チュン... 続きをみる

  • 女王陛下の00T

    秘密諜報【競作】指令:「薔薇の蕾」の謎を追え! エージェントTの報告 「トラビス君、冥土の土産に教えてやろう。この装置は地球温暖化マシーンだ。仕組みを説明すると長くなるからこちらの資料を後で読みたまえ。ま、つまりこの装置が作動すれば地球は終わりなのだよ」 「地球が温暖化すると問題でも?」 ブロフェル... 続きをみる

  • チェ・ジウの涙、あるいは柴犬の欠伸

    「ユジン、君が助けたのはミニョンじゃない、チュンサンだ!チュンサンはもういないんだ。お願いだ、忘れてくれ、僕のために」 「ごめんなさい、サンヒョク。忘れたくても忘れられないの。この目がチュンサンの顔を覚えているの。心がチュンサンの言葉を覚えているの」 ピアノソロの哀調を帯びた旋律に弦の響きが重なる。... 続きをみる

  • アンドロメダにあこがれて

    「こちら宇宙警察特殊犯捜査係。着陸艇は惑星上空に到達、着陸許可願います」 許可申請の間にも、艇は惑星の厚い雲を突き破った。 メインモニタいっぱいに、怪獣が惑星居住地を襲撃する光景が映し出さる。 巨大ウーパールーパーみたいなそいつは通信タワーをグニャリとなぎ倒す。 「うっひゃ~!怪獣映画そのまんまじゃ... 続きをみる

  • クラッシュダウン

    ネクタイを緩めて座ると、恵美が肩叩きしてくれた。気持ちよくて僕は目を閉じた。 「疲れちゃったでしょ。今コーヒー淹れてるから」 「ありがとう」 僕と恵美。肩叩きもサマになるくらい年が離れている。親子と言ってもいいほどだ。 前々から恵美が僕に特別な感情を持ってるんじゃないかとは思っていた。 でも、残業の... 続きをみる

  • お相撲さんのお尻みたいな

    今晩は当墓所へお足運びありがとうございます。 日もとっぷりと暮れましてご覧の供養塔も黒々とした影となってまいりました。 こちらの塔、当墓所で無縁仏となられた御仏の墓石を積み上げてできております。 ハイ、皆様、合掌。 ・・・ ありがとうございました。 この墓所に大勢のお客様方をお迎えして早二年。御存知... 続きをみる

  • 夏休みの自由研究

    夏休み自由研究、発表会の日。 入道雲がまだあんなに湧き立っている。ああ、あの向こうに行ってしまいたい。 順番が最悪だった。前の子が恐竜の歯の化石を抱えて拍手の中を意気揚々席に戻る。そして僕の番。 化石標本箱を手に教卓に向かう。おざなりな拍手。 一礼して僕は発表原稿に目を落とす。だめだ。インパクトがな... 続きをみる

  • コーカサスのヒドイわ!

    赤々と燃える暖炉の傍、編み物をしていたお母さんの膝掛けを引っ張って、幼い兄弟がお話をせがみます。 「コーカサスのお話、お願い!」「オネガァイ!」 「おやおや、またかい。あのお話が好きなんだねぇ。いいとも、よくお聞き」 何年も前の話。コーカサスの領主様にお仕えするグルシャという娘がおりました。 突然戦... 続きをみる

  • 天才ペンシル~!!

    イヤまったく、今日は模擬試験だよ。夏休み中だってのによ~。 ま、模試の準備に関しては僕の場合大丈夫、これさえあれば。 チャラララッチャラ~!天才ペンシル~! このシャーペンには小型コンピュータが仕込まれてるんだ。内蔵カメラで問題を読み取って勝手に答えを書いちゃうんだよ。ドラえもんのひみつ道具かよっな... 続きをみる

  • 【アンドロイド妻】twitterショート140字×3

    苦節三十年、ついにアンドロイドが完成した。 僕は早速、妻を研究室に呼んだ。 「まあ、私にそっくり!」 「理想の女性型アンドロイドを設計したら、自然と君にそっくりになってしまった」 顔を綻ばせて妻はアンドロイドを観察した。 「本当、瓜二つ。でも実物より胸だけ大きいのはなぜかしら?」 (バシ!) 妻が突... 続きをみる

  • ロングヘア

    アキ。 ロングヘアを掻き上げて眩しそうに微笑む仕草が目に浮かぶ。どこに行っちゃったんだ、アキ。 連絡がとれなくなって一週間。電話はいつも圏外、アパートに戻った形跡もない。 そうだ。最近、野崎先輩と親しげに話していたっけ。先輩なら何か知っているかもしれない。 意を決して野崎先輩のアパートのドアを叩いた... 続きをみる

  • へべれけSTARWARS

    ウィ~ッ やっちゃったな~、こう遅くまで飲んじゃうと田舎にゃタクシー1台いねぇもんな~ やっとこさダンダの地蔵サマかぁ。ここはひとつお参りして マンマンチャ、ア! っとぉ~、この辺りは家一軒ねぇ、田圃ばっかだなぁ~ ウィ~ッと おんや?向こうから青っちろい光が近づいて・・・ヒ、ヒトダマァ? って何だ... 続きをみる

  • ダッチワイフ

    女性型ロボットのネットレンタルサービスを知ってから、いつか借りようと思っていた。毎週、新作が出るたび、レビューやサンプル動画を参考に物色した。 そしてついに、これぞというロボット、R69号が発売された。 望みどおりの容姿!服装や髪形まで細かくカスタマイズしてレンタルカートに入れた。 一週間ほどでR6... 続きをみる

  • twitterショート140字×3【こんなロボットは嫌だ】

    【1号ロボ】 僕、昭太。未来に生まれてよかったなぁ! だって僕専用のロボットを買ってもらったんだよ。 最新電子頭脳搭載のすっげ~高性能ロボなんだぜ。 「おい、ロボ太、夏休みの宿題やっとけよ!」 「アイヨ!ガッテンショウチノスケ!」 ほ~ら、やってる、やってる。 ・・・おい、ロボ太!なんで電卓使ってる... 続きをみる

  • 『余命』競作参加ショート『余命12分』

    (瓢箪から駒、冗談から競作。ヴァッキーノさんがりんさんへのコメントに書かれていた『余命』競作企画に、勝手に参加しちゃう矢菱虎犇であった) リーン!リーン! 深夜。調子の悪い目覚ましが勝手に鳴り始め目を覚ますことがよくある。 だから最初、時計かと思ったのだが電話のベルだった。受話器を手にとる。 「アレ... 続きをみる

  • おめでとう、ふたりのトラビシ

    『ハッピー商店街恒例、ビッグサマー福引抽選会』の補助券が10枚貯まったんで、福引に挑戦した。 矢菱虎犇人生ウン十年、こういった抽選やら懸賞やらで当たった試しがない。 『空くじなし』と書いてあるにはあるが、後ろに積まれた大量のポケットティッシュはハズレに等しい。 1等は3D液晶テレビ。その他にもWii... 続きをみる

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