ショートショートのムラゴンブログ

  • 3D映画

    ふと気がつくと古い映画館の前に立っていました。 飲みすぎちゃったかなぁ・・・とんと記憶がありません。 よくまだこんな場末の映画館が残っていたものです。 何の映画でしょう? 『3D映画』・・・ああ、今流行りの。はたして上映できる設備がここにあるんでしょうか。 『3D映画』・・・手描きの影付き文字でそれ... 続きをみる

  • 今宵の花は

    玄関ドアから家に入った途端、ケンタとハルが大はしゃぎで飛びついてきました。 「パパ!お帰りなさい!」「おかえりなちゃい!」 台所ではママがお野菜を刻んでいます。 「ただいま。ママ、今日は早かったんだね。夕食作るの、手伝おうか?」 パパがママのほっぺにキスしました。 「お帰りなさい。大丈夫、もう大体で... 続きをみる

  • ミッドナイト・コール

    午前2時37分。 けたたましく電話が鳴り始め、慌てて俺は受話器をとった。 町の総合病院から輸血用血液の供給要請だ。赤血球製剤・凍結血漿・・・俺は書きとった血液型や数量を繰り返して読みあげた。受話器を置くとパソコンの麻雀ソフトを終了し、保冷庫に直行した。 5パックも・・・こんな深夜に。交通事故か? 注... 続きをみる

  • ネタつながり

    『春夏冬中』のプレートをひっくり返し、エントランスの灯を落とすと、ヤスは店内に戻った。 レジでは、ハチマキ締めた大将が電卓を叩いて今日の売り上げ計算に奮闘している。 ヤスは黙って、白い和帽子を脱ぐと丁寧にたたんで懐に納めた。やがて大将が顔を上げた。 「おう、ヤス、まだいたのかい?ご苦労さん。今日はも... 続きをみる

  • 回転寿司モダンタイムス

    軽くタッチすると自動ドアが開いた。ラッシャイマセ~!威勢のいい店員たちの声。 明るい照明に、ステンレスの床壁が鈍く光っている。広い店内をグルリと巡るベルトコンベアの上を、色とりどりの寿司を載せた皿が流れていく。 ゴクリ!まさに食のメリーゴーラウンド!どんなネタを?どんな順序で?この瞬間こそが最高の瞬... 続きをみる

  • 鯨馬鹿

    オシエロ君・オネダリちゃん「博士~!モロダ博士~!」 モロダ博士「よお、ちんちんかもかものお二人さん、今日の珍問愚問は何じゃね?」 オシエロ「マッコウクジラの名前の由来を教えてください」 博士「おやおや、何ともまあ一般児童クラスの質問、真っ向勝負で来たものだな。まあよい。マッコウクジラから抹香みたい... 続きをみる

  • テイルズテイル

    恋をすると僕の周りを小犬が走り回っているみたいな気がする アレをちぎれるくらい振りまくってさ、これは僕のそんな話 ミチコは陰気で垢染みていて、好きでもなんでもなかった あの頃は彼女に母親がいないことなど思いも及ばなかった 僕が教室に入ると、黒板に大きなアイアイガサの落書き 大慌てで黒板消しつかんで僕... 続きをみる

  • マグネシアの石

    いつからだろう?俺が同僚の山崎を憎むようになったのは。 月例定例会の時に、俺の出した企画案にケチをつけた時か? 社の歓迎会幹事を務めた俺の進行にダメ出しをした時か? そのたびに俺のハラワタは煮えくり返り、憤怒の夜を過ごした。 奴の言うことが全部理不尽って訳じゃない。だが、皆の見ている前で、いかにも丁... 続きをみる

  • テレパシンの効能

    「奢ってくれるって?すまんなぁニイさん。じゃ、マスター、ジン=ロック! それじゃ、あんたに俺の話をしてやるよ。信じられんだろうがな。 相手の心の声が聞こえる『テレパシン』って薬、あれ作ったの、実はこの俺さ。 そんな男が、なんで場末の安酒場でクダ巻いてるかって? そう、その話だよ」 「俺は大学ん時から... 続きをみる

  • 校長先生色辞

    「学舎の立つ飛雁ヶ丘の桜の蕾ほころぶ、この良き日、未来へと飛びたつ六十九名の飛雁ヶ丘高校卒業生諸君、ご卒業おめでとうございます。保護者の皆様、ご子息ご令嬢のご卒業を心よりお祝い申し上げます。 合唱部諸君のわが校校歌ハミングをバックに、本日の式辞を述べたいと思います。 なんと、この紙を御覧ください! ... 続きをみる

  • 巨船ローランド号の最期

    ローランド号船長「博士、この船が沈没するだと?・・・間違いない?」 博士「ええ、あと2時間ほどで」 船長「何を根拠に?」 博士「マヤ文明がどうたら、太陽黒点がこうたら・・・」 船長「さっぱりわからん!とにかく沈むんだな!」 副船長「知らせますか?乗客に」 船長「待て。パニックが起きたら元の子もない。... 続きをみる

  • WhiteDayDream

    ビクッと全身を震わせて目を開けた。眩しい光が僕の目を射る。 各駅停車の古びた客車がガタゴトギシギシと僕の肩を揺らしている。 窓を背にロングシートに腰掛けて、僕はついつい微睡んでいたようだ。 眠っている間も両手でしっかりと握っていたクッキーの白い包みを見つめた。えっと、これは・・・? 明季の屈託のない... 続きをみる

  • チン助のおかげです。

    一人息子のサトルが「弟がほしい」としきりに言うもんですから、弟を作ることにしたんですよ。 今の時代、何でも作れちゃいますからね。 デデゴスティーニでしたっけ?アレ、申し込んじゃったんですよ。 毎週、部品付きのマガジンが送られてくる・・・創刊号だけ通常価格の半額でそそられちゃう、アレ。 タイタニック号... 続きをみる

  • ファイナルアンサー?

    「テ、テレフォンを・・・」 最終問題、挑戦者は最後のライフラインを使う。画面が電話先に切り替わる。 マンションの玄関に、黒ずくめのサングラスの男が一人。挑戦者が早口で問題を読みあげる。 男はニヤリと笑い、口を開きかけ・・・ ミモ「はい、時間切れ。友だちはお一人きり?お洒落なマンションだねぇ」 挑戦者... 続きをみる

  • 恐怖のネズミーランド

    千年の後の世を霊力により旅してきたという女祈祷師を招き、話を聞きました。 私はまず本朝の行く末を尋ねました。 女、悲しげに首を振ります。 「未来に、貴人はおりませんでした。皆、貧民のごとき体格に落ちぶれ果てております。装束も安価で薄っぺらの湯煮黒と申す着物ばかり」 よかった、十二単を重ねて着飾れる、... 続きをみる

  • # ショートショート
  • ドウモVSコウモ

    みら~いみらい、あるところにお爺さんとお婆さんがおりました。 山に柴刈に出掛けたお爺さんは、柴刈機に巻き込まれてバラバラになっちゃいました。 川に洗濯に出掛けたお婆さんは、洗濯機に落っこちてグチャグチャになっちゃいました。 でも、大丈夫。お爺さんはメカ爺さん、お婆さんはメカ婆さんだったのです。未来だ... 続きをみる

  • タナカシゲルのハッピーエンド

    約束した時間に喫茶店に入ると、奥の席で斉木さんが手を挙げた。 席に着くと同時にウェートレスがブレンドコーヒーをテーブルに並べた。さすがは斉木さん。 「田中さん、見つかりましたよ、相手。野崎三郎さんって人です。お金持ちになれるって聞いて涙流して喜んでいましたよ。いいんですか、本当に?」 「もちろん。僕... 続きをみる

  • 矛盾じゃよ。」

    オシエロ・オネダリ「博士、モロダ博士!」 モロダ博士「おお!オシエロ君にオネダリちゃんじゃないかね!久しぶりじゃのう。今日も今日とて自己解決を放棄して、他力本願の質問責めかね?」 オシエロ「アッハハハァ!博士は相変わらず辛辣だなぁ!」 オネダリ「博士、問題です。どんな盾でも突きとおす鋭い矛と、どんな... 続きをみる

  • シロアリ

    「ウッヘェ~!なんじゃこりゃぁ!!」「ヒィィィ!」 クリーニング店の店長さんも奥さんも床下をのぞいて恐怖の形相に変わりました。楳図かずおの漫画みたいな。無理もありません。目の前で無数のシロアリが蠢いていたのですから。 私はデジカメで記録しました。白い小虫たちがウジャウジャと逃げまどいます。 「ヒィィ... 続きをみる

  • うさぎ

    ハンスはこめかみを押さえてもう一度溜め息をついた。 休日にまで自宅に仕事を持ち帰らなければならない多忙を嘆いて。そして、局内に来月支給予定だったブーツが発注した半分も揃わないことを呪って。もう一度、業者に掛け合ってみるか。 書斎のドアをノックする音にふり向くと、リタはすでに中だった。仕事に没頭してい... 続きをみる

  • となりのテレビ

    まったく隣の住人、よくもあれだけテレビを見るものだ。 安普請の賃貸住宅は隣の生活音が筒抜けで、テレビの音が日がな一日聞こえてくる。 僕はデジタル、隣はアナログ、数秒の時間差でテレビが輪唱することも多い。 時おり、テレビを見て笑っている声も聞こえる。どうやら年配夫婦の二人暮らし。 ワッハッハッハッ、オ... 続きをみる

  • 深夜、モルグで

    ア・・・また! 俺は胸を右手で押さえて、壁によりかかった。激しい動悸の波が襲う。じっと痛みに耐える。 今月、3回目だ。もともと心臓がよくないが気になる頻度だ。また診てもらうか? やっと動悸が収まり落ち着く。俺は深夜の巡回を再開した。 監察医務局の死体安置室。通称、モルグ。ガラス越しに解剖室が見える。... 続きをみる

  • 残照

    遠くからサイレンの音 夕暮れの空気を悲しみに染める 郊外電車の中 一駅ごとに乗客はまばらになり 吊り広告と客の頭が、けだるく揺れる 一様に沈黙し、互いの存在を消し合う群れ 携帯をいじくりまわす女 死んで腐った魚の目の男 どんな哺乳類よりも感情のない顔 緩んだネクタイも汗染みたシャツも何もかも 緩みき... 続きをみる

  • コンビニ姉さん

    僕の乳首をもてあそびながら、ナナコはイタズラっぽくクスクス笑う。 「セブン=イレブンのマークがELEVEnになってる理由?雑学クイズね、それ・・・確か、ただのSEVEN-ELEVENじゃ、商標登録できなかったからじゃ?」 「ブ、ブ~残念!社長がヒドイ痔だったから!お尻のヂが小さくなるようにって願いを... 続きをみる

  • ひなまつり

    「ねぇ、ママ、どうしてうちはお雛様がいないの?」 桃花がつぶらな瞳でママに質問しました。 「うちにはそんな余裕がなくて・・・お雛様まで手が回らないの・・・ごめんなさい」 桃花はママのお膝にそっと頭を乗せました。 「ううん、桃花、パパとママさえいてくれたらいい」 ママは桃花の頭を優しく撫でました。 「... 続きをみる

  • トリュフ

    左右から豊満な美女がしなだれかかった。頬に密着した髪がくすぐったい。 店の美女軍団が僕のソファに大集合、ロジャー・ムーアのボンドみたいにモテモテだ。 「あたしのトリュフ、食べてぇ~ん」 別の女がお皿に盛った白トリュフを摘んで僕の口に入れる。モグモグ・・・ 「いやん、あたしの黒トリュフだって美味しいわ... 続きをみる

  • キャビア

    ホタルブクロ型のブラケットの、オレンジの淡い光だけの薄暗い部屋。 僕と先生は、ソファにゆったりと腰掛けていた。 「先生、世界三大珍味と言われても僕は納得できないな。塩辛くてボソボソしてて美味しくないですよ、アレ」 「キム君、君の食べたのは新鮮なベルーガかね?」 「黒いトビッコみたいなやつでしたけど・... 続きをみる

  • 『女たち』2

    「桃子、ホントに此処にくるのか」 藤村桔梗が早朝午前八時の墓地で、愛妻の桃子に問う。 彼女はその問いに答える代わりに、ふんわりと頬を動かし瞳に力を籠め桔梗を見つめた。その顔を見て、桔梗はもう何も聞くまいと思った。 こういう顔をする時は何も答えてくれないことを、誰よりも知っている桔梗である。 それぞれ... 続きをみる

  • 『女たち』1

    京極菖。藤村桔梗。京極愛介。椿慎一郎。十文字岳。そして高倉竜平。 六人の男たちは、そこに立つ。 モデル雑誌から抜け出たような男たち。 しかし彼らが魅力的に見えるのは、単に姿形のせいばかりではない。 そこは六年前、京極葦朗が両親を殺(あや)めた場所。今では廃墟と化したかのような、古びた一軒の空き家の前... 続きをみる

  • フォアグラ

    ひび割れたリノリウムの床に、高窓から午後の陽射しが降り注いでいる。 遠くから、ドアを開閉する音や廊下をカツカツ歩く音が響いてくる。まるで休日の学校のようだ。 古びたベンチに、僕と先生は並んで腰掛けていた。 「・・・それで、君は食べたことあるかね?」 「いえ。先生は?」 「うむ。甘くてコクがあって、世... 続きをみる

  • プレゼント大作戦

    O・ヘンリーの『賢者の贈り物』を御存知だろうか? もうちょい賢いプレゼントってのはこうかもね。 ・・・ 1ドル87セントですって~! 有り金がこれじゃあ、銀のリングどころか、イカリングさえ買えないわ! クリスマスだっていうのに、ジムにプレゼントできないじゃないのよ~! ああ、笠地蔵、カネもってこ~い... 続きをみる

  • 寿老亭ラーメンの謎

    最近、関西で次々出店しているラーメンチェーン店『寿老亭』。大変な人気である。 僕の町にも先週オープン。友だちが行ってきたらしい。 イヤ~、開店したばかりとはいえ1時間待ちだよ。やっと店に入ってビックリ、店員の声がバカデカいんだよ。 いらっしゃいませ!お冷やお待ち!ご注文はお決まりでしょうか! ラーメ... 続きをみる

  • ど根性爺さん

    (2009年5月8日初出) (2010年2月26日「トッシー・ほったまのバカだなぁ~♪って言われたい」で朗読していただきました) 自転車をコキコキこいで、日本一周しているスンゴイ爺さんがいる・・・! そんな情報がまずネットで話題になった。 はじめは自転車好きの集まる掲示板でカキコが始まり、やがて2c... 続きをみる

  • お持ち帰りセクシーロボ

    黒髪のボブヘアに天使の輪、知的で清楚な顔立ち。 シャム猫のようにしなやかな細身に不釣り合いな胸の膨らみ。 サテンのコスチュームがピッチリと全身を包み、肉体の陰翳を隈なく露わにする。 もうこれは女性そのもの。否!女性以上!その名もセクシーロボ!! 「博士、これがセクシーロボですか?」 「クサヤ君、あい... 続きをみる

  • キャメロン弁当

    会社の近くのホカ弁に久しぶりに入った。今年になって初めてかな? 「いらっしゃいませ!」 新しいバイトの娘、カッワイイ!さて、ナニ弁にするかなぁ、ええっと~・・・ え?『期間限定キャメロン弁当』? メニュー最初にデカデカ紹介されていた。 それ、いったい何? 「今年空前の大ヒットをしているキャメロン弁当... 続きをみる

  • 甕の中

    「爺さん、ポンコツ爺さん!」 頭を叩くと爺さんが目を覚ました。 「ああ、すまん、すまん」 「それで?甚右衛門は?」 「誰じゃ、それは?」 「爺さんが話していた庄屋の甚右衛門じゃないか。仕事一筋の甚右衛門が傾城の女房を娶った話!」 「ほほう、それで?」 「それでじゃないよ!爺さんが話したんだよ!その女... 続きをみる

  • な~んだ、その話~

    僕はただ、ネットオークションで綾波レイを落札しただけなんだ。 僕はどこにでもいる学生で、趣味といったら、サークルのロッククライミング。 それとエヴァンゲリヲンのフィギュア。 プラグスーツ姿の綾波のフィギュアに一目惚れして高額落札した。 手元に届いて、僕の判断は間違いじゃなかったって確信した。 造形も... 続きをみる

  • 男たちの合体

    「虎蟲博士、お久しぶりです」 「おお!君はドリアン博士の策略で、三日間、口から脱糞、ウォシュレットでうがいをしていたクサヤ君じゃないかね!」 「その話はもう忘れてください。ところで虎蟲博士、またまた発明をされたとか・・・」 「おっとなかなか口が臭い、もとい、耳が早いね。見たいかね?」 「ぜひ!」 「... 続きをみる

  • 未来新聞

    都心のホテルのスイートルームに五人の男女が集められた。皆が皆、テレビでちょくちょくお目にかかる霊能力者である。 「一体だれが私たちを集めたのかしら?」 「じゃ、君も依頼主を知らないわけだ」 「我々の能力で何をさせるつもりかな?」 「我々の能力を競わせて茶化すお遊びなら願い下げだ」 「いったい誰の仕業... 続きをみる

  • 『一族』4 最終話

    高倉竜平は意味もなく、同じ階にある待合いコーナーにいた。もう昼になる。病院の食事は早いと分かっている。 ただ歯を磨き顔を洗って意識がしっかりしてくると、戻り難くなってしまったのだ。 それでも漸く気持ちを切り替え、病室へと向かう。途中、ナースステーションで容態を聞こうと思ったが、詳しい話は医師でないと... 続きをみる

  • 『一族』3

    「教えて下さい、社長が何と言ったかを」 しかしどんなに待っても、ゆみ乃は口を開かなかった。仕方なく、こちらが折れてしまう。 「いつものように、俺と結婚しろと言われましたか」 頷くだろうと思って告げた言葉に、ゆみ乃は否定の意味をこめ一度だけ首を振る。 今度動揺したのは竜平の方だった。 「じゃ、何を言わ... 続きをみる

  • オキ・サキ様

    世界屈指の科学者と医学者を有する偉大な王国がありました。 王様はお妃様をこよなく愛し、幸せに暮らしておりました。 ある日のことです。 観劇におひとりで出掛けられたお妃様が事故に遭われたのです。 高覧の貴賓席が落下して真っ逆様。 急を聞いて病院へ駆けつけた王様、お妃様を見てビックリです。なんと体が真っ... 続きをみる

  • 『一族』2

    結局、肺炎を起こしていたゆみ乃は、そのまま高倉の車で運ばれ入院することとなった。 連絡すると、流石に慌てた社長は会社の方はいいからゆみ乃に付き添ってくれと言う。 正直、困った。 看護師に渡された入院の手引きには、男の自分にはどうにもならない内容のものもある。 「困ったな」 言葉にもなっていない呟きで... 続きをみる

  • A子さんの残念

    え~、この世の中、残念な人ってぇのがありまして、これからお話いたします、A子さんなんて、その代表みたいな方ですな。 もうA子さんなんて名前をつけられた時点で、残念であります。 A子さんのお父さん、お忙しい方でして、日本全国に出張にお出掛けであります。A子さんのお母さん、出張先の新大阪までお電話をいた... 続きをみる

  • 『一族』1

    今、何て言ったの。 京極ゆみ乃は、父から出た言葉を正確に理解できなかったように思った。 「高倉と結婚するかって言ったんだ。いいぞ~、こいつなら喜んで嫁にやる」 そう言うと、父は高倉竜平の背を目一杯広げた掌でパンッと叩いた――。 ゆみ乃、高校一年の冬が最初だった。 高倉竜平は、父の経営する会社で父の特... 続きをみる

  • バレンタイン誘拐事件

    犯人「ぼじぼじ(もしもし)・・・ (注:犯人の声は、ニュースとかのインタビューの『音声変えてあります』の低く野太い声。ずっとそれで書くのは大変なので、以後、読んだ人が頭の中で音声変換しちゃってください) お宅、御手洗さんちだな?お宅のお祖父ちゃん、御手洗牙郎さんを誘拐したぞ」 御手洗芳香の母「エ!お... 続きをみる

  • バレンタイン二題

    チョコ1 「ドリアン博士、今度の発明はなんですか?」 「よくぞ聞いてくれたねクサヤ君。そりゃそうと君、まさか昨日、チョコをもらったりしてはいないだろうな?」 「ハハハ、今年もダメでした。博士は?」 「ダメに決まっておる!そこで発明したのがこれじゃ!!ジャジャ~ン!チョコレート爆破スイッチ!」 「チョ... 続きをみる

  • ああ人生に涙あり

    5時に仕事が退けたので、近所の健康サウナに寄った。 今日も今日とて、サウナ室に常連オヤジたちが集っている。 職種はいろいろらしいのだが、この連中、すこぶる仲がいい。 そして室内テレビでは『水戸黄門』。 平日の夕方、チャンネルは必ず黄門様。高校野球や大相撲がない限り。 どこがそんなに面白いのやら、僕に... 続きをみる

  • そんなに簡単な話じゃあない

    白い部屋に入ると、狛犬みたいに向き合ったテレビが並んでいた。 (あの間をうまく通り抜けることができたら、きっと次の部屋に行けるはずだ) 漠然とそう思いながら、一歩また一歩。 対のテレビから同じニュースが流れていた。 「悪い奴らが全部溶けちゃう薬を作りました。この薬を溶かした水を飲んだらシュワシュワ消... 続きをみる

  • 登場人物詳解

    登場人物詳解のまえがき みんな知ってると思うけど、僕ってさあ、冒険小説が好きじゃない?いろいろ読んじゃったりするんだけど、訳わかんなくお節介な本ってあるんだよね。 例えば『ノーチラス号の冒険シリーズ』。各巻頭に影絵姿の登場人物紹介があるんだけど、お話に立ち入ってるから、読んじゃうと興味半減!そんなの... 続きをみる

  • 蜘蛛の糸あるいは冷たかったり熱かったり地獄

    極寒地獄・・・って言うんでしょうか。 カンジダは身も凍る世界に閉じ込められていました。 周りの仲間たちもみんな、あまりの冷たさに悶え苦しんでいます。 悪いことしてバチがあたったのでしょうか。 それにしても寒い。地獄の責め苦にいつまで耐え続けねばならないのでしょう。 薄暗い世界に突然光が射し込みました... 続きをみる

  • ナベ説教

    ここはナベ専門店。寒さ身に沁む今宵、二階座敷まで満席、大盛況です。 そんな一室で、ナベを囲み酒酌み交わしていたお客さまが激しく言い合い始めました。 「社長がワンマンなんだよ!」「社への忠誠ってのはないのか!」 「先輩は厳しすぎる!」「後輩のくせに生意気だ!」 同じ会社の客4名のようですが、えらい剣幕... 続きをみる

  • グルグルさんに聞いてみよう

    うちの社に採用された男、今まで見たことのないタイプだった。 モジャモジャ頭、無精髭、よれよれジーンズ。机の上にはアニメのフィギュアや妖しいラバランプがずらり。しかも給料は一切受け取らないって話だ。 名はケンサクとかいうらしいが、ボクらはグルグルさんと呼ぶようになった。 グルグルさん、ただの変人じゃな... 続きをみる

  • そんなカレーならやめちゃえば!

    最近見つけたカレーの店に一人で行ってみた。 『蛾眉山』・・・厳めしい店名だ。店員の大半はインド人。こいつは本格的な店らしい。 お冷やを置いた店員が愛想笑い浮かべたまま立っているので、こっちから聞く。 「メニューは?」 「ありませんよ」 「ないって・・・どうやって頼むの?」 「食べたいカレーを言ってい... 続きをみる

  • ブラジル

    映画の世界に没頭していたはずが、ふと我に返ってしまうことがある。 地元では上映してなくて、ずいぶん離れた町の映画館まで出かけたことをふと思い出す。 いずれ映画は終わり、長い時間をかけて家に帰る現実に溜め息をついてしまう。 映画の世界が現実ではないってことも寂しい。 帰る道のりこそが現実だということも... 続きをみる

  • オニが来た

    むかぁしむかし、ある村にヘイちゃんという若者がおりました。 ヘイちゃんはおっ母と二人きりで貧しい生活をしておりましたが、おっ母が死んでしまってからというもの、ひとりぼっちでした。 そんなヘイちゃんを、神様がかわいそうに思ったからでしょうか? 年の暮れせまったある朝、ヘイちゃんの家の前に、お米やお餅な... 続きをみる

  • しゃべるカイロ

    何を買うでもなく立ち寄ったドラッグストア、使い捨てカイロひとつ買う気になったのは、それが喋るカイロだったからである。 「あら、社長さん、あったまらない?」 ワゴンに山積みのカイロのひとつが僕を誘った。 「え?喋るんだ、カイロのくせに」 「くせにって何よ!失礼しちゃう!買ってってヨ」 使い捨てカイロな... 続きをみる

  • 矢菱虎犇危機一発

    スペクターの刺客レッド・グラントが逃走用に手配したトラックを強奪した俺、矢菱虎犇は、国境へと向かった。 睡眠薬で朦朧としたタチアナが、荷台いっぱいの花に囲まれて眠っている。 ヘリコプターの爆音が近づいてくる。畜生、もう追いつかれたか! トラックの進路を妨害して、手榴弾を次々と投下、車は火煙と爆音に包... 続きをみる

  • 寄生虫

    再び診察室に入ると、ドクターが深刻な顔でパソコンのMRI画像に睨んでいた。 画面上では、僕の脳味噌がカラフルに画像処理されている。やはりどこか悪いのだろうか。 「自覚症状はありましたか?」 「いえ・・・妻が『最近、変わったわね』と。会社の同僚も前と様子が違うって言うんですが。自分ではまったく。どこか... 続きをみる

  • にぎにぎがえし

    平日午前のコンビニのバイト中。 いつものように、あの人がやってくる。 店内に入った途端、店の中は花が咲いたみたいに明るくなったの。 すらりとした長身、ロマンスグレイの豊かな髪を撫でつけた紳士。 いぶし銀っていうのかしら?最近のチャラ男にはない。昭和の香り・・・ リチャード・ギア!! そうだ、リチャー... 続きをみる

  • ミッドナイトおにやらい

    鬼はぁ外ぉ~! 福はぁ内ぃ~! ママ「ケンタ、もう豆は6つ食べた?」 ケンタ「うん、もっと食べたいなぁ!」 パパ「アッハッハ、食いしん坊だなぁ!豆は年の数だけ食べるもんだ、食べたら早く寝なさい」 ケンタ「え~、まだ眠くないよう!パパ、どうして節分には豆をまくの?」 パパ「昔の人も一年に一度くらい食べ... 続きをみる

  • 念には念を入れました。

    今回、『念』で書いてみました。下の空白部分をじっと見つめていると、『念』が伝わるようになっています。 シュン君、今日はシュン君にビックリする話があるんだ! ネットで知ったんだけど、本当に『念』を送ることができるんだって。 『念』ってのは、思ったことを直接心に語りかけるテレパシーみたいなアレ。 意外と... 続きをみる

  • にぎにぎ

    取引先を回ってから会社に遅出の午前。 出勤時の習慣のままに、コンビニに立ち寄り、温かい缶コーヒーとスポーツ新聞を手にした。 「お客様、どうぞ」 いつものオバチャン店員じゃない涼しい声が呼ぶ。 言われるままに若い娘に商品を手渡す。 娘が商品を受け取り、レジを打つ。 美しい娘だ。清純派っていうんだろうか... 続きをみる

  • 字限爆弾

    2010年1月12日、『文章塾のゆりかご』投稿未遂に終わった痛恨の駄文です。 『塞翁が馬』をお題に、800字限定の文章を書きました。 いやはや人生何がおこるやら。人間万事・・・ 登場人物 赤西泰造(51) 爆弾処理班チーフ。妻子あり。長年、プロ中のプロとして仕事一筋、にもかかわらず、先日爆弾解雇され... 続きをみる

  • ズンドコのカメ

    (2009年1月7日初出) (2010年1月22日「トッシー・ほったまのバカだなぁ~♪って言われたい」で朗読していただきました) 百年に一度できるという涸れ川を道にして、我々「世界不気味発見」取材スタッフは、四輪駆動車で川を遡った。 そして、幸運にも、幻の原始部族ズンドコ族に遭遇した。 我々スタッフ... 続きをみる

  • サルまわし

    研究室の真ん中に僕の作ったタイムマシンが鎮座していた。 飼育係のヨネダさんが、チンパンジーのラミーちゃんにヘルメットを被せている。 準備を見守りながら、僕は会長に話しかけた。 「ついに研究成果をお見せできる日が来ました。人間で試す前、最終チェックの動物実験です。過去に送りますか?未来に送りますか?あ... 続きをみる

  • ミツバチ

    (2009年4月文章塾に投稿した文章です) 全ての始まりはミツバチだった。 世界中で大量のミツバチが忽然と消える不可解な現象が発生したのだ。 ロシアのイワン・コチャナイネン博士が危機を訴えた。 「ミツバチ、宇宙人ノ地球探査機デスニコフ。ミツバチ、人類ノ様子、偵察続ケテマスフスキー。ソノ使命終了シタノ... 続きをみる

  • ワインの品格

    「Aだ。Aのワインが高級ワインだ。」と、青年。 「Bだ。Bにきまっている!」と、中年親爺。 テーブルに置かれた二本のボトルは白い紙筒で覆われている。 そのどちらかが、一本88万円の極上ワインであり、もう一方が一本1850円の安物ワインなのだ。 「Bのワインには洗練された気品がある。芳醇だ。Aとは大違... 続きをみる

  • お願いの海

    惑星アガペの夜。 僕ひとり乗り込んだ惑星探査機は制御不能に陥り、惑星の暗黒の海へと落下していく。 ブースターの全力噴射はなんの効果もなかった。数分後に墜落する。 惑星は、生命の存在を示唆する信号を発していた。その調査のために雇われたのが僕だ。 だが、惑星は海が広がるばかり。海といっても、青透明のゲル... 続きをみる

  • 老人K

    高齢者介護製品の新作発表会アリーナで、ひと際注目を集めているブースがあった。 『高齢者用パワードスーツ新世代!』の電飾パネルが派手に輝いている。 「お集まりの皆さん、柳下製作所が世界に先駆けて開発したパワードスーツを今日、ご披露できますことを光栄に思います!」雇われ女子アナが滑舌よく語りかける。 気... 続きをみる

  • そりゃあやっぱりNGでしょう

    彼女との出会いはホテル最上階、夜景を楽しめるラウンジバーだった。 「お暇ですか?ちょっとお話いいですか?」と誘うと、彼女は、 「ごめんなさい。ひとりでいたいので」と断った。さらに誘うと、 「しつこいですよ。よそに行ってください」と睨む。 ダメか・・・ 「はい、カット~!」と僕。その瞬間、僕以外彼女は... 続きをみる

  • いつものとおり

    定刻どおり起床して、御飯、味噌汁、目玉焼きの朝食を食べる。 私はいつもどおりを愛している。 髪を切りに行く。無口な店の主人が「いつもどおりで?」とだけ声を掛ける。一時間後、先月と同じ髪形に戻る。 行きつけのお好み焼き屋に入る。女将が「いつもので?」と声を掛ける。キムチ入りスペシャルが運ばれる。 いつ... 続きをみる

  • アツアツ神社

    「ヒロシ君、行こうよ、初詣。近くにかわいい神社があるんだ」 って、サトミちゃんが言うから、行ってみることにした。おそろいのマフラーを巻いて、手をつないで。 お正月も終わった日曜の午後。石段の両わきに昨日の雪がガチガチになって残っている。 サトミちゃんの言ったとおり、ちっぽけな神社だ。朱塗りが真新しく... 続きをみる

  • メカ=レプリカントス・ビギンズ

    最初に疑問に思ったのは、日曜の午後、趣味のサントラCDをプレイヤーにかけた時だった。 『続・夕陽のガンマン』のコヨーテの遠吠えのようなリフが鳴る・・・ あれ?違うぞ、コレ。 シンセで安直に再現された薄っぺらな演奏。でも、聴き覚えがある! これはたしか・・・『アンサンブル・ブチとスクリーンランドオーケ... 続きをみる

  • メカ=レプリカントス・リベンジ

    茫然自失の僕は駅へと向かい、いつもの通勤電車に乗った。 妻から三行半を突きつけられて追い出され、自然に会社に足が向かうというのも悲しい習性のなせる業だ。 いや! きっと僕はレプリカントスの前に出社して、僕こそ本物であることを同僚や上司に訴えたかったのだ。 会社の仲間なら、僕とあのデクノボウを正しく評... 続きをみる

  • メカ=レプリカントス

    意識がゆっくりと戻る。無影灯の眩しい光が目を射た。 白い実験室、手術台の上、僕は四肢を革バンドで縛り上げられていた。 光の洪水を遮るように、老博士が僕の顔を覗き込む。 「こ~んなに早く計画を見破るとはね~。おかげで君が一番じゃよ~。贋物ロボット、レプリカントスの町内第一号は君じゃよ~」 「レプリカン... 続きをみる

  • チョウチョがひらり

    最近のマイブームは朝刊の星占いだ。 『ムッシュー鴨志田の今日の運勢』ってやつ。 毎朝、占いが掲載された中ページをガバリと開く。 さてさて、今日の僕はどんな一日を過ごすんだろう? まるで僕の今日を見透かしたようによく当たるのだ。 金運アップと書かれた日に、それを思い出して帰宅途中にパチンコ屋に寄ると、... 続きをみる

  • 兄王子の上下半分ものがたり

    昔々、ハフハフ王国という国がありました。 年をとって重い病気になった王様は、枕元に兄王子と弟王子を呼びました。 「わしはもう長くない。わしが死んだ後は、兄弟で仲よく国を治めるのじゃ。国の全ては兄弟二人で半分こにするものとする。上半分と下半分に真っ二つに分けるのじゃ。兄王子、お前は上がよいか下がよいか... 続きをみる

  • 新春企画!オヤヂことわざクイズ全5問!

    あけましておめでとうございます さぁ、新春恒例企画、「オヤヂことわざクイズ」が今年もやってまいりましたぁ! 今年は大盤ブルマ~全5問の福袋!はたして答えが見抜けますかな? (やり方がわからない人は、去年の「親爺諺三題」を直下に再アップしていますので参考にしてくださいな) それでは早速行ってみよう! ... 続きをみる

  • 親爺諺三題

    あけましておめでとうございます。 このお目出度き元旦に、まことにオメデタイ親爺諺を三題。 果たして、途中で親父諺が見抜けますかな? (例題) 「コーチ、もう私、立てません!これ以上バレーはできません、コーチ!」 「何を言っているんだ、立てっ立つんだっ、谷水!」 ・・・というわけで、このお話からできた... 続きをみる

  • 戦え!トラやん(大晦日危機一髮の巻・後編)

    来年につづかない!! 今年中にケリをつけてやる!! そう叫んだトラやん、いそいそと全裸に! 「な、何をする気だ?まさか」 青ざめる鬼塚! 「ジョワッ」ブボボボボボボボ!! 全裸のトラやんは肛門よりガスを大噴射、ウルトラマンのごとく空間飛行、鬼塚へと一直線! 頭頂で黄金水の蒟蒻ゼリーを撃破、粉砕!黄金... 続きをみる

  • 戦え!トラやん(大晦日危機一髮の巻・前編)

    トラやんが目を覚ますと、居住棟にただひとり。 鬼塚は? トラやんは眠る前の状況を思い出した。ここは地球から800キロ離れた宇宙空間。狭い円筒型の宇宙船内部。 もう一人の宇宙飛行士、鬼塚の姿がない。 鬼塚が作ってくれた年越しそばを食ったあと、急に眠くなって・・・ ア!見っけ!! モニタに鬼塚の姿!実験... 続きをみる

  • ニュー〇〇〇パラダイス

    (子供の声は『プライバシー保護のため音声変えてあります』の高い声) (お祖父ちゃんの声は『プライバシー保護のため音声変えてあります』の低い声) (文中のPは、放送規制のP音) 子供「お祖父ちゃん、どうして昔の番組は口にモザイクなの?」 テレビでは、懐かしい『シャーロック・ホームズの冒険』が放送中です... 続きをみる

  • 『修羅界、その後』2

    京極愛介が菖と桔梗を招いたのは、二人が本土に渡ってくると聞いたからだ。 島を出てまで二人が来るのは、葦朗と未央の話だろうと見当がつく。 「澪。俺、間違ってるか。このまま、二人には彼女を会わせるべきじゃないかな」 少しだけ不安げに、澪に対し問いかける。 「いいと思うよ。特に菖は、いつかは知らなくちゃな... 続きをみる

  • 『修羅界、その後』1

    その知らせは、京極菖を慟哭させた。 大学の執務室にあって、思わず席を立ってしまうくらい。彼は窓際に移動し窓を見上げる。 「桔梗。他に方法はなかったんだろうか」 菖の言葉には、ただ独りの男の悲しみを含んでいるように映った。 少なくとも、藤村桔梗にはそう見えた。 「覚悟をして家を出たようです。両親を殺め... 続きをみる

  • 『修羅界』2

    「未央。お前ってさ、この世にいない存在だろ」 そだね、と屈託無く笑う未央に、俺は何もできなかった。 狂った両親の罪は大き過ぎて、償いきれるものじゃない。 「こんな傍系の親戚である京極なんて、今更菖に太刀打ちできる力なんか何も持ってないのに」 「ママがまた何かしたの」 澪を誘拐してきた時も、暫くはこの... 続きをみる

  • 『修羅界』1

    『修羅界』1 「愛介が入籍したんだって」 そうか、と一言だけが零れた、父の口から。 休学していた愛介も、無事に復学したらしい。いっこ下だったが二年下になったということか。 良かったな、京極の当主が物分かりのいい奴で。 否、違うか。 我が家くらいの弱小傍系など、端から相手にされていなかったということだ... 続きをみる

  • ママがサンタにキッスした

    つるさんのプログの X'mas 短編競作企画 の作品を読ませていただいて、とっても楽しそうだったので、初参加させていただきました。 ブラック・クリスマスですけど、能天気な曲とのコントラストってことで・・・。 過去クリスマスショート・ショートも引っ張りだしてアップしております。 「ワオ!プレゼントだ!... 続きをみる

  • 今年もサンタがやってくる

    (2008年11月27日初出。2009年12月24日再アップ) 朝食の食卓で、顔を紅潮させて息子が私に聞いた。 「ねえ、パパ、今年もサンタさん、来てくれるよね?」 息子の声さえキンキン頭に響く。 疲れているのだ。 「パパ、サンタさん、僕にもプレゼントもってきてくれるよね?」 うるさい・・・ 私は、何... 続きをみる

  • おばあちゃんのクリスマス

    (2008年12月7日初出。2009年12月24日再アップ) ピロロロロ・・・ピロロロロ・・・カチャ 「ハイ、田中シヅですがの」 「あ、田中シヅさんですか?こちら水前寺町立病院外科医、野々村ですぅ。田中シヅさん、年齢77歳、ひとり住まい、携帯あり、自宅から数100メートルに農協のATMあり、性格はい... 続きをみる

  • 飛べなくなった男

    「ケント君、すごいやんか!なんでサイコロ、右手に入っとんの、わかるん?」 「え・・・ヒロ君、見えんのん?手の中のサイコロの、黒い四角の影、見えんのん?」 最初に僕のチカラに気づいたのは、僕じゃなくて、うちに遊びに来てたヒロ君だった。 僕にとって透けて見えるのはあたりまえ、ヒロ君に言われるまで気がつか... 続きをみる

  • ワンランク上の旅

    「じゃ、ボックスのランクを決めましょうか」 「ランクがあるんですか?夢にも?」 店員は笑顔でうなずくとフロアの展示コーナーに僕を案内した。 ステージには三つのボックスが並んでいた。大人が横になって納まりそうな長方形の箱。 ファーストクラス・・・ 自然木、それも桧の一枚板に全面手彫りの最高級ボックス。... 続きをみる

  • 旋回舞踊~降りそそげ神の恵み~

    舞台上で位置についた8人の男たちが一斉に黒マントを脱いだ。 真っ白なロングスカート姿となった男たちは自らの肩を抱くように両腕をクロスする。 そしてネイの旋律に合わせて体を回転させ始めた。 次第に白いスカートが波打ち、ゆっくりと広がり、そして円を描き出す。 クロスしていた腕は解き放たれ、右掌は天に左掌... 続きをみる

  • バベルタワー構築と解体

    世界に散らばっていた人類が一人また一人と集った。 彼らはまず、広大な平野に基礎を建造した。 そして持ち寄った建築資材を並べた。 基礎の上に柱を立てて巨大な塔の建設を始めたのだ。 彼らは楽しく歌をうたい、心ひとつにして塔を築いていった。 柱に柱をつなぎ、高く、高く。 聳え立つ塔は、やがて天を突くばかり... 続きをみる

  • ストレンジャー・ザン・パラノイア

    クライアントは約束の時間どおりにやってきました。 30代半ばの男性会社員。これまでに5回カウンセリングをおこなっています。 仮にSさんとしておきましょう。 Sさんは無言でカウンセリングルームのソファに腰を下ろしました。 「どいつもこいつも・・・油断できない・・・」 Sさんが唸るように言いました。 「... 続きをみる

  • 世界の中心で愛を叫んだけど

    チャペル前の噴水広場で、ウェディングドレスのマユミがブーケトス。 ブーケが青空にスローモーションで舞う。参列の独身女性の歓声が上がる。 参列者が再び、花嫁に視線を戻したとき、花嫁はその場に崩れるように倒れた。 フロックコート姿の新郎の僕は、マユミを抱きかかえる。 「マユミ!しっかりするんだ!」 「カ... 続きをみる

  • 金の斧

    (2008年11月25日初出) (2009年12月11日「ばか言わシアター」で朗読していただきました) 父「おい、タカシ、座りなさい」 タカシ「なんだい、父さん」 父「いいから、座りなさい。タカシ、また、母さんに嘘をついたそうじゃないか」 タカシ「嘘なんかついてないよ」 父「それが嘘だというのだ。嘘... 続きをみる

  • 無食の人

    「びっくりチャレンジTV、さぁ続いてのチャレンジャー、カムイン!」 「東京都杉並区から来ました。若穂珠九郎、五十六歳、無食です」 「ニャホ・タマクロウさんですね?タマクロウさんのびっくりチャレンジは?」 「無食」 「・・・皆さ~ん、タマクロウさんのムショクって、実は食べないムショクなんですよ~!ずっ... 続きをみる

  • 原子力潜水艦浮上せず

    「水深200・・・400・・・500・・・」 コーン・・・コーン・・・ 規則正しいソナー音に混じって、潜水艦の外殻が水圧に軋む不吉な音が艦内を満たした。 司令塔直下、作戦司令区画にいる全員が蒼白となってガバチョフ艦長を見つめた。 艦長は機関室長をマイクで呼び出す。 「推進装置回復の見込みは?」 「反... 続きをみる

  • 猟奇!これが大量殺戮現場だ

    自宅の電話がけたたましく鳴った時にはもう日付が変わろうとしていた。 「警部、もうこんな夜中に・・・すみません・・・すぐに来てください」 ジミーの声がいつになく上擦っている。ただならぬ事件だと察しがついたので、私は場所を確認すると現場へ急行した。 現場は閉鎖された工場の地下だった。 工場の入口では警官... 続きをみる

  • # CD&QR音源付きプロが教える朗読心に届く語りのコツ50改訂版
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