ショートショートのムラゴンブログ

  • 受験生、最後の悪アガキ

    センター試験三日前っ。 っつうのに、焦るばっかり。ちっとも勉強が手につかない。 ああ、救いの神よ・・・ と、その瞬間。後ろの押し入れがガラガラっと開いて男が闖入した。 な、なんなんだコイツ?まさか神様? いやいや、こんな風采のあがらない中年男、神様じゃねえだろ。 「なんだ素っ頓狂な顔して。いや~それ... 続きをみる

  • はつもうで大作戦

    え~あけましておめでとうございます。 とうにお正月過ぎておりますが、今年もこんな調子でゆっくりのんびり参ります。 ある年の師走のことでございます。 その年の国営放送朝ドラのヒロインを務め、大ブレークした超天然娘がおりまして、 その娘、ラジオの深夜放送で思いつきでこんなことを喋ったんです。 「日本全国... 続きをみる

  • 「カレシレシピ」4 act2

    カテゴリー;Novel act2 結局、夕方まで講義を受けた後、羽仁のバイト先で待ち合わせをすることになった。 三階の外の風景が見える席に漣は座っている。後ろ姿がかっこいいって言うかな~ と思いつつ羽仁は近づいていった。何て声をかけよう。お待たせ。お待たせしました。お待たせ致しました。う~ん、難しい... 続きをみる

  • 「カレシレシピ」4 act1

    カテゴリー;Novel act1 「ねえ、友菜」 と声をかけ、学食の向かいに座る友人に少々愚痴ってみることにする。彼女はお昼のミートスパをフォークにクルクルと巻きながら、何?って感じの視線をくれる。 「つきあう前と、その後って何が違うんだと思う?」 彼女の顔がフォークを咥えたところで止まり、もぐもぐ... 続きをみる

  • クリスマスプレゼント

    「サンタさんだよね?本物のサンタクロース」 イブの深夜、うちの窓辺にオジイサンが立ってたんだ。 赤い服に赤い帽子、白いおヒゲ。ボクの質問にまぶしいくらいに笑ってうなずいた。 まちがいない。いたんだ。本当に。 ジェーンにひどいこと言っちゃった。 「サンタなんているわけねーじゃん。ボクんちだけ来ないサン... 続きをみる

  • 「カレシレシピ」3

    カテゴリー;Novel 羽仁は笑顔を浮かべ、結城漣の待つ店内に続く扉を開けた。 しかし、そこに彼の姿はなく、怪訝な顔をする羽仁に気付いたマスターが人差し指で上を指す。 「お母さんと羽琉ちゃんが来たんだよ」 お客様のオーダーを作る合間に、そう小声で教えてくれた。 どうして母と妹が? 否、それより彼はど... 続きをみる

  • 「カレシレシピ」2

    カテゴリー;Novel 彼氏いない歴二十年の羽仁に、初めてモテ期がやってきたかと思ったけれど、なかなか上手くは運ばない。 あの子供会のハロウィンパーティで彼、結城漣の手品は子どもたちに受けに受けた。もっともっと、と強請られて、少し照れながら手品を披露。そしてそれは、ネタが尽きた~ と彼が音を上げるま... 続きをみる

  • 「カレシレシピ」1

    カテゴリー;Novel 「ごめんなさい」 咄嗟に出た言葉に、目の前の人は度胆を抜かれたような表情を見せる。 何故なら、今夜はハロウィンの催しの為、羽仁は魔女の姿だったから。大き目の籠に子ども達に配るキャンディーやチョコを大量に入れ、長めの箒を持っていた。そして、少しだけ気を抜いた刹那、その箒で彼の頭... 続きをみる

  • 自己犠牲株式会社

    衝撃でつんのめって、前の座席にぶつかった。 事故か? 視界全体が右に傾く。お、落ちる・・・ ボクを含め数名の乗客は本能的にバスの左へと移動した。 ギシギシ軋みながら、さらに傾ぐ。 女性客の悲鳴。 山越えの路線バス、ガードレールを突き破ったその先は崖、つまり奈落の底だ。 全員が右壁へ貼り付く。 ギシ・... 続きをみる

  • 『梢の秋』 完結

    前回からの続きです。『甦生の夏』 注意・この物語はフィクションです。登場する人物・事柄は全て架空のものです。 閑話休題 『梢の秋』 秋だ。 木花衣娜(このはな いな)と景(けい)は秋生まれ。だから結婚式は秋を選んだ。 毎年、挙式した日と入籍した日、そして互いの誕生日にお祝いをする。贅沢するわけじゃな... 続きをみる

  • 『甦生の夏』

    前回からの続きです。『えにしの絲』 注意・この物語はフィクションです。登場する人物・事柄は全て架空のものです。 閑話休題 『甦生の夏』 母が逝った時、家族全員在宅していたのに誰も気づくことがなかった――。 二世帯住宅とはいえ、一階の小さな和室に敷いた布団の中で母は冷たくなっていた。 正直、もし郵便物... 続きをみる

  • 『えにしの絲』

    前回からの続きです。『忘れ形見』 注意・この物語はフィクションです。登場する人物・事柄は全て架空のものです。 閑話休題 『えにしの絲』 「美夜珠(みやず)、そろそろ結婚しようよ」 神田倭(やまと)は、もう何百回言ったか分からないプロポーズを幼馴染の木花美夜珠に告げる。そして返ってくる、いつもの返事。... 続きをみる

  • 『忘れ形見』

    前回からの続きです。 『手記 八月一五日』 注意・この物語はフィクションです。登場する人物・事柄は全て架空のものです。 閑話休題 『忘れ形見』 母方の祖母の一周忌があるというので、久しぶりに足を運ぶ。 新幹線に乗るのも久しぶりだが、それより母が亡くなってからというものめっきり足が遠のいていた。祖母が... 続きをみる

  • 『手記 八月一五日』

    注意・この物語はフィクションです。登場する人物・事柄は全て架空のものです。 閑話休題 『手記 八月一五日』 終戦記念日っていうから、「おめでとう」って言う日なんでしょ。 屈託なく、長男の一人息子である孫がそんな言葉を発した。思わず息が止まるかと思った。 一三日から一五日、毎年決まっているお盆という行... 続きをみる

  • 世界でひとつのバレンタイン

    私の両掌には、ハート形チョコレート。 キラキラのラッピングに太陽光が反射して眩しい。 意中の彼は、ジョージ・コワルスキー。 超イケメンで女ったらしの宇宙飛行士。ライバルは多い。 でも、こんなロマンチックなチョコの渡し方ができるのは世界でひとり、私だけ。 きっと私、彼のハートを射止めることができるはず... 続きをみる

  • # ショートショート
  • ゴーストライター

    「取材じゃあないのかね?」 写真一葉をテーブルに置くと、沖土鉢の愛想笑いが消えた。 取材用にホテルの一室に設けられた応接室の空気が一気に冷えていく。 俺の目の前に座っているのは、沖土鉢巡(おきどばちめぐる)。今、超売れっ子の天才音楽家。 彼が楽曲を発表するたびに飛ぶように売れ、彼の音楽を耳にしない日... 続きをみる

  • いわゆるショートショートの禁じ手

    なんてこった・・・ついに、ついにやっちまったのか! 先月末、隣国が防空識別圏を新たに設定した。 それは、自国を守るために設定した警戒範囲という、従来の防空識別圏を逸脱していた。 他国の民間機にまでフライトプランの提出を求め、応じない場合は敵対者と見なすという暴挙であった。 しかし、しかしまさか、わず... 続きをみる

  • 普段はめったに買わない文芸誌ですが、星新一の初期作が掲載され、SF作家小川一水の読み切りが掲載されていたので購入。一通り読んだので古紙回収に出そうかと思ったけどせっかくなので、気に入った部分のみを電子書籍化。小学校の国語の教科書で初めて読んで以来、大ファンの星新一が同人誌に掲載した作品で、以前購入し... 続きをみる

  • ミクロの決死圏ザ・リアル

    「処置、完了。そちらから確認できますか?」 ナノマシンを操る真田からの通信を待つまでもなかった。 巨大モニターには、患者患部のCTスキャン映像がリアルタイムで映し出されていたからだ。 「モチロンだよ。聞こえないかね?称賛の声が」 ヘッドフォンから聞こえてくるのは、プロジェクトリーダーの駒井博士の声、... 続きをみる

  • 女骨ラーメンの真相

    「コレ・・・この写真のコレって、お宅のソコだよな?」 刑事が店の厨房で煮立っている大型寸胴鍋を指さす。 「ええ。うちに間違いありません」 「じゃ、このtwitterに投稿された写真は本物なんだな?」 「ええ。本物は本物なんですが・・・」 実際の厨房同様、問題の写真も大鍋が煮立っていた。 違いはひとつ... 続きをみる

  • 美人妻、夜な夜なの激しすぎるアレ

    診察室に現れた、その患者は・・・なんと言うか、すこぶるつきの美女だった。 派手ではないが、品のいい端正な顔立ち。 豊満ではないが、惚れ惚れとする体のライン。 「あの、アタシ・・・アレが激しいんです。それで、あの、夫が疲れちゃって・・・」 ゴクリ。 私は喉が鳴るのを気取られぬように咳払いした。 「困っ... 続きをみる

  • 標的

    子どもの頃から標的が得意だった。 赤い輪の中の赤丸の、そのど真ん中へ。近所の誰よりも上手く当てることができた。 得意である以上に、『標的を狙う』という行為そのものがボクに喜びを与えた。 標的を狙い始めると、周囲のざわめきが消えていく。あらゆる雑念が消えていく。 今がいつだとか、ここがどこかとか、自分... 続きをみる

  • 出るんですよ、その宿

    宿の主が酌を勧めながら頻りに尋ねるので、ボクはそう答えた。 主は息をのみ、間を置いて破顔する。 「またまたあ、お客さん、ご冗談」 「イヤ、ホントだよ。出るんだって、その宿」 この辺りの、鄙びた湯の町の風情が好きで、毎年骨休めに訪れている。 例年、ここよりさらに上流の別の旅館に投宿していたのだが、昨年... 続きをみる

  • メイキング・オブ・・・

    体重計に載って両足を揃える。 大型モニタに体重と体脂肪率が表示され、数値が推移グラフに即座に反映される。 ニヤリ。 急降下していく折れ線グラフが、目標数値の赤いボーダーラインを下回っている。 アスレチック・ルームの全身鏡に引き締まった己が肉体を映し、椴松円楽(とどまつえんがく)は惚れ惚れと眺めた。 ... 続きをみる

  • ヒッチコック大作戦

    休日の昼下がり、約束どおりの時間に古田はやって来た。 古田とボクは中学時代からの旧い仲で、性格も専門も進路も違っていたが、互いに映画好きだったこともあって不思議とウマが合った。 ひとしきり昔話や映画の話題に花を咲かせているうちに夜は更け、ボクはボクの秘密を彼に明かしたくてたまらなくなった。 それで、... 続きをみる

  • 恐怖!これが金縛りだ

    金沢の鄙びた一軒家でひっそり暮らすようになって一週間。 この季節ともなれば、寝室まで虫の声が聞こえてくる。 軒下で鳴く虫までいて、枕元で鳴いていると錯覚するほどうるさいのが常である。 ところが。 今夜に限って、虫の声がまったく聞こえない。 訝しく思いつつも、日中の疲れからウトウトし始めた、その時。 ... 続きをみる

  • イプシロン、侵略の手口

    日頃から訪問販売の類は一切お断りしているボクだが、興味半分に玄関を開けてみた。 「は?さっき、なんとおっしゃいました?」 「いやだから、ウ、チュ、ウ、ジ、ン、宇宙人なんですよ」 聞きまちがいじゃない。宇宙人だって?愛想よく笑う、この小柄なオッサンが? 「どちらの?」 「一応、イプシロン星人なんですけ... 続きをみる

  • 粘土でピカッチ殺人事件

    会社の一室で五人の男性が殺害されるという、凄惨な殺人事件が起きた。 害者はいずれもその会社の重役、エアダクトから室内に送られた青酸ガスによる中毒死である。 そして何よりこの現場が異様なのは、彼らが共同で粘土作品創作中に絶命していたことだった。 通報後ただちに現場に駆けつけた警部、そして探偵桶津香具郎... 続きをみる

  • マンボウ№5

    未来。 永久機関同様、絶対不可能と言われていたタイムマシンが完成した。 時間旅行理論を生み出し、自らマシンの開発をも成し遂げたのは、日本人、万城目博士である。 「博士、コングラチュレーション!」 「イヤ~ありがと、ありがと」 万城目博士が白いヒゲを指先でしごいた。 記者会見場は、世界各国の記者で溢れ... 続きをみる

  • エウロパ

    木星第2衛星エウロパ。 厚さ数キロに及ぶ氷に覆われた球体、その表面には引っ掻き傷状の水路が無数に走っている。 実際に探査艇を降り立つと、そこは流氷の海を再氷結させた、氷のグランド・キャニオンであった。 漆黒の空には木星が悠然と浮かび、縞帯の対流まで鮮明に見てとれる。 「気をつけろ。ペースト状の氷海部... 続きをみる

  • ペルセウス座流星群の夜

    「ア、流れ星!!ネ、今見えたよね!」と由里子ちゃん。 「う、うん・・・」とボク。 ううっ、また見逃してしまいました。 由里子ちゃんの指さす彼方には、とっくにカケラもありません。 ペルセウス座流星群がたくさん見られるはずの、8月某日真夜中。 それなのに、それなのに~っ。 畜生、絶対見てやっからな。北東... 続きをみる

  • 妖精ハンター

    いや本当、本当。本当に見たんだって。 岡山の杉林で。本物の妖精を、この目で。 ボクは元々妖精が見えるタチでさ。生まれ故郷のウェールズの森でも妖精を幾度も見たことがあるんだ。 写真に撮ったことだって数回ある。でも、バッチリ写したつもりでもさ、いざ写真見たらトンボやアゲハにすり変わってて。ホ~ント不思議... 続きをみる

  • 絶叫館

    雷の閃きに、断崖絶壁に建つ妖しげな洋館の影が浮かびあがった。 館の大広間中央、糸の切れた操り人形のように横たわるメイド姿の若い女性の骸。 それを取り囲むようにして、三人の容疑者。そして、名探偵桶津香具郎(おけつ・かぐろう)の姿があった。 「桶津くん、で?犯人はわかったのかね?」 館の主である、伯爵が... 続きをみる

  • 宝くじ1等2億円、当たっちゃいました

    あ、当たってる? 当たってるよね?コレって。 何度も何度も番号を確かめる。 「どうしたの?ノゾミ」 うろたえているアタシに同僚が声をかける。 「ウッソ~!!当たってるじゃないの、1等!」 その声に、SSの看護師たちがわらわらとアタシを取り囲む。 ドリームジャンボ宝くじ、1等2億円。それが今、アタシの... 続きをみる

  • タイムマシンの行方

    「ついに、ついに完成したぞ」 野々村は、今しがた完成したばかりのタイムマシンを見上げて、瞳を潤ませた。 研究室中央に鎮座している、ゾウほどの大きさの巨大マシン。 それはどこからどう見ても蚊遣豚に似ていた。 西暦2222年。今、人類初のタイムマシンが野々村の手によって作り出されたのだ。 長く長く、苦し... 続きをみる

  • ウイルスの日

    ゴトゴト・・・カタンッ。 自販機みたいな音を立てて、円筒形の容器が排出口から吐き出された。 缶ジュースほどの大きさだが透明な樹脂でできており、無色透明な液体で満たされている。 貼り付けられたラベルには、『検査薬』の文字。 個室シェルターの壁面スピーカーから無機質な合成音声が漏れ出す。 『検査薬は届き... 続きをみる

  • 学校にまにあわない

    未来。 太陽エネルギーが宇宙から運ばれることで、エネルギー問題が解決した。 電気自動車の運転操縦が全自動化され、交通事故も限りなくゼロに近づいた。 クローン技術の進歩によって人口減少に歯止めがかかり、経済ももちなおした。 21世紀のさまざまな宿題がきれいに片づいた、そんな明るい未来。 そんな未来に何... 続きをみる

  • パパはウルトラマン

    「ねえパパ~、ウルトラマンショー連れてってよう」と、朝ごはんのときにタカシ。 「ゴメンゴメン。パパ、今日もお仕事なんだ」と、私。 「タカシ、無理言っちゃダメでしょ」と、台所からママ。 今日は、こどもの日。こんな日にも働かなくちゃならないなんて。 「ウルトラマン、お休みの間だけでしょ。連れてってよう」... 続きをみる

  • 悪魔の契約

    「つまり、つまり貴方は、悪魔の存在自体信じていない、そうおっしゃるのですね?」 「ああ。悪魔どころか、神の存在すら信じちゃいない」 悪魔は絶句した。 悪魔、と言ったものの、それは本人がそう名乗っているだけ。 どう見ても外回りの営業マンにしか見えない。 紺の背広、七三分けに銀縁眼鏡。全然悪魔っぽくない... 続きをみる

  • ひいええええええっ 素っ頓狂な叫び声をあげながら、嘉平さんが川土手の蕎麦の屋台に駆け込んでまいります。 「一体全体どうなすったんです」 店じまいを始めていた蕎麦屋の爺さん、声をかけます。 嘉平さん、ハアハアゼイゼイ荒い息をととのえながら、 「で、出たんだよ。その、アレが」 「アレじゃあわかりませんや... 続きをみる

  • 大魔術の夜

    小屋は今日も大入り満員だった。 客席に一礼。大魔術ショーのはじまり、はじまり。 まずはツカミから。 颯爽とシルクハットをとって白ウサギを出して見せる。 どよめき、そして拍手。 よしよし、反応がいいぞ。 いくつかマジックを披露したあと、小テーブルの上のシルクハットへ。 ウサギがまだ入っていることを客に... 続きをみる

  • 嗅いじゃいたい、噛んじゃいたい

    彼女のこと、好きかって? もちろんですよ。ボクたち、愛しあってるんですから。 ゆくゆくは一緒に暮らしたいなあって。 そりゃもう彼女も同じ気持ちですよ。 あたりまえじゃないですか。ボクが彼女をいちばん愛してるんですから。 今朝? ええ、会いましたよ。 ふふん、すっぴんで油断してる彼女なんて、ボクしか見... 続きをみる

  • 雪山ジェラシー

    そうなんです。 タカシとあたし、雪山で遭難してしまったんです。 登山ルートから外れた山小屋を見つけたものの、食料はおろか暖房もありません。 外は猛吹雪、ここで救助を待つしかありません。 タカシが抱いてくれてるけれど、体温は徐々に奪われて・・・ するとタカシがポツリ。 「あ~ボンカレー食いて~」 「こ... 続きをみる

  • カツ丼ハーフ殺人事件

    ガイ者は、応接間のクリスタル灰皿で後頭部を叩き割られて絶命していた。 ガイ者の名は、権藤三郎。悪徳商法で荒稼ぎしていた権藤に怨みを抱く者は多かった。 灰皿から指紋は検出されなかった。 唯一の手がかりは、権藤が手にしていた、高崎屋のお品書きである。 高崎屋といえば、地元では有名なカツ丼専門店だ。 その... 続きをみる

  • おじいさんと魔法のランプ

    とある老人施設の一室、おじいさんがベッドに腰掛けています。 おじいさんは、なにげなく頭を上げ、サイドテーブルに目をやります。 「なんじゃ、コレは?」 一輪挿しのとなりに、金色のランプが置いてあるのを見つけます。 “コレを磨いたら、なんでもアレをかなえてくれるアレが出てくるんじゃないか?” そう思いは... 続きをみる

  • どちら似?

    好物のスクランブルエッグをかき混ぜている最中に携帯が鳴った。最悪のタイミング。 「いいお嬢さんよ。会ってみたら」 叔母からだ。 「ボクはまだ正採用にもなってないんだよ。つまり社会人の卵・・・」 「社会人は社会人でしょ。もったいないわよ、とにかく写真だけでも」 今どき、見合いだなんて。 程なくして、叔... 続きをみる

  • お天気屋

    職場で事務仕事をやっていると、来客があった。 なんなんだよう、まったく。来るなら来るで、ひとこと電話くらいしといてくれよ。 応接室のソファに座っていた来客は、なんとなく怪しい男だった。 スタジャンに野球帽にサングラス。正体を隠しているような風情だ。 ボクを見ても黙っているのでボクのほうから尋ねた。 ... 続きをみる

  • 時間よ、止~まれ

    田舎道を軽トラで走ってK町に着いた。買い出しはいつもK町で済ませている。 道路を行き来しているはずの車が走行車線で止まっている。様子が変だ。 車の間をぬいながら止まった車の中を覗くと、どの車にも人が乗ったまま動かない。 何やってんだ、こいつら。 いつもの店の駐車場に車を止め、店内へ。 店の前に数人が... 続きをみる

  • 忘れちゃいたい

    たとえば仕事とか、恋愛とか・・・ 生きるか死ぬかの大問題にぶちあたったと感じて・・・ ああでもないこうでもないと悩みに悩んで・・・ 一生懸命くだした、納得済みの結論だったはずなのに・・・ 月日が経ってみれば、実に浅はかだったと気がついて・・・情けなくて情けなくて・・・ 全部忘れちゃいたい! ・・・な... 続きをみる

  • ロボット?

    平日の午後、さすがに風呂屋に客は少なかった。 サウナ室に入る。先客はなかったが、ボクの後ろからもうひとり入ってきた。 テレビの前にボクが座る。少し離れた位置で男が胡座をかいた。 ボクは12分計を見上げた。 この時計の長針が一周して同じ数字になる12分後がちょうどいい頃合いなのだ。 テレビでは、ロボッ... 続きをみる

  • 天国の階段

    10時59分、目を閉じたまま陸橋の階段を上ると天国の階段につながる・・・ そんな都市伝説が、小学生のころに囁かれていたっけ。 テンゴクの語呂合わせからして、子供っぽい怪談のひとつにすぎない。 それに、地方都市とは名ばかりの田舎町、都市伝説なんて言葉すらマユツバな感じだ。 歓迎会が二次会でお開きになっ... 続きをみる

  • 世界史のひと

    「どうだ?明日の歴検。期待してるぞ、満点」と、先生が肩を叩く。 「イヤイヤ~満点なんてとてもとても」 などと謙遜しつつ、ボクは狙う気まんまんだった。 なにせ、先生が作ってくれた過去問、まあ間違えても1問か2問。直近の模試は満点をとっているのだから。 歴史能力検定世界史。ついに明日が検定日だ。 どの教... 続きをみる

  • 誓いのホームラン

    9回裏、1点差のビファインド、ワンナウト一塁の場面で、オレに打順が回ってきた。 ベンチのサインはもちろん、手堅く送りバント。 クライマックスシリーズへの生き残りをかけた大一番である。 しかもオレの後ろには、リーグ最多のホームランバッターが控えている。 オレにバント以外の選択肢などないのはわかっていた... 続きをみる

  • 変化

    「・・・で・・・なんだったかなあ?」 夜、眠ろうと目を閉じると、今朝から気になっていたことがまた気になった。 久しぶりの自転車通勤、職場近くの、車じゃ通らない路地。 ゆるやかな傾斜を上る途中、整地された空き地にずらりとソーラーパネルが並んでるじゃないか。 家数軒分ほどの空き地に、家の屋根に貼り付いて... 続きをみる

  • ソメイヨシノ

    「あ~あ今度ココ来るときは彼女と来たいなあ」 「彼女できてから言えよな」 ボクと友人Kは、ぶつくさ言いながら桜のトンネルを仰ぎ見た。 今まさに見頃。枝々がしなるほど群れて咲き誇っている。どの木も、どの枝も。 「なあ、聞いたことあるか?『桜の樹の下には屍体が埋まっている』って」 Kは笑った。 「なんだ... 続きをみる

  • えいぷりるふ~る

    目が覚めると、見知らぬ部屋の見知らぬベッド。 見慣れたボクの下宿じゃないのだけは確かだけど・・・ここ、どこ? 棚にクマちゃんなんかが腰掛けてて・・・女性の部屋っぽい。 おまけにキッチンからはカチャカチャ料理する音。さらに女のハミング。 この状況は・・・やっぱりアレだよなあ。 えっと昨夜は送別会で・・... 続きをみる

  • 青汁

    嫌なものを轢いてしまった。 フロントガラスを打つ大粒の雨で、道路に倒れた緑色のそいつに気がつくのが遅れたのだ。 慌ててブレーキを踏みこんだが無駄だった。 グシャリとタイヤで押し潰す感触が、尻まで伝わり怖気が走った。 しかも、轢かれる瞬間、そいつは顔をあげて私を見つめたのだ。 あの、見開かれた、絶望的... 続きをみる

  • ゆるキャラ

    「さあ、チビッコのみんな~、おっきな声でパチモンを呼んでね~。せ~のおっ」 お姉さんの声に合わせてチビッコたち、パチモン、パチモンの大合唱。 「じゃ、お願いしますよ」スタッフが背中を叩いて合図。 オレはずんぐりした体を揺すりながらステージへ向かう。チビッコの興奮が最高潮に達する。 歓声が落ち着いたと... 続きをみる

  • オナニーさん

    昼休み・生徒相談室 「矢菱くん、先生はね、叱ろうってわけじゃないの。第二次性徴期の男子がソレに夢中になってもなんの不思議もないわ。むしろ健全な発達よ。だから、決して罪悪感はもってほしくないの、アレに」 「先生、はっきり言ってください、オナニーと!!罪悪感?馬鹿馬鹿しい。ボクはオナニーに誇りをもってま... 続きをみる

  • 花かげの下、彼女の全身が淡い薄紅に染めあげられていた。 そのとき彼女は、時間を止めるおまじないを唱えていたんだと思う。 小学校の卒業文集で、『将来の夢』に『不老不死』と書いた彼女だから。 満開の桜と、十四歳の少女が、時間をとどめたいと願ってもなんの不思議もない。 それまで一度として口をきいたことのな... 続きをみる

  • 百発百中

    ミッドタウンの高級オフィスビル、その最上階。 スナイパーXは、時間どおりに現れた。 依頼人がふと目を上げると、重役室の壁に寄りかかって煙草を燻らせていたのだ。 「ど、どうやってここまで?」 「・・・・・・」 鍛え上げられた筋肉が、高級スーツの下で盛り上がっている。 剃刀のような目を依頼人に向けて、や... 続きをみる

  • ロボ納豆

    「ゴ主人様、ナンナリトオ命ジクダサイ」 「ふむ、今日はおまえに納豆を作ってもらいたい。納豆は納豆でも、魯山人納豆だ。頼むぞ」 「オ安イ御用デゴザイマス」 近未来。いろいろ技術が進歩して便利になったが、なんといっても主婦ロボットには重宝している。 私が指図すると、家事全般、快くこなしてくれる。 まさに... 続きをみる

  • タバター

    「田端さん、田端バタ子さん」 耳元で名前を呼ばれて目が覚めた。 げっ。だれ?なんでわたしの部屋に? 体を起こすと、クラッとめまいが。ウ~、頭もガンガンする。 コタツの上には、コンビニで買った缶チューハイが二本、三本、四本。 ひとりでこんだけ飲んじゃったのか。うう、気分悪い。 昨日、わたしは失恋した。... 続きをみる

  • いれか絵

    また来てしまった。 町の美術館で最近、気になる絵がある。 先日、ある企画展の鑑賞ついでに立ち寄った際、常設展示室でその絵を発見した。 以来、ことあるごとに立ち寄って、絵の前に立ってしまう。 難しい絵でもなんでもない。ある人物の肖像画。 よくぞここまでと感心するほどリアルな筆致で描かれた上半身。 私と... 続きをみる

  • iPSサイボーグ

    「ちょっと、山本部長、ちょっと」 廊下ですれちがいざま、常務が呼びとめた。 招き入れられるままに、ミーティング室へ。 「君ィ、君んとこの部署の、山中くん。どう?彼」 「どうって、よくやってくれてますよ。めだたないけど」 『めだたないけど』の一言に、常務がニンマリ。 「どうだ?伊集院くんに比べて」 伊... 続きをみる

  • 人酒

    「なあ中杉、もう一軒行こ、もう一軒!」 木村先輩に誘われて入った店は、洒落たショットバーだった。 客はボクたちだけ。薄暗い店内にピアノジャズが流れている。 ナベサダみたいなマスターが厨房の奥から出てきて、コースターを並べた。 「木村さん、珍しい酒が入ったんですよ。試してみませんか」 もちろん飲んでみ... 続きをみる

  • 行列のできる店

    タクシーを降りると、『カヴァレロ・ビアンコ』の前に行列ができています。 よかった。タカシが予約とっててくれて。 並んだ客たちの羨望の視線を浴びながら店の奥へと案内されて、ちょっぴり優越感に浸っちゃいました。 オーダーはいつもと同じ。 ゴルゴンゾーラチーズをカリカリに焦がしたピッツァ、クワットロフォル... 続きをみる

  • 登山者にもの申す

    ルート傍らの岩場に腰を下ろし、ペットボトルの水をゴクリ。 甘露、甘露。 疲れた全身に染みわたる。 山の上で飲むだけで水がこんなにも美味しい。山頂で淹れるコーヒーは最高だろうな。 すこんと澄んだ空気に、キビタキのさえずりが響く。 ああ、のどかだなあ。 平日齷齪働いて、どうして休日までわざわざ山登りに?... 続きをみる

  • 人工多能性ピース

    「おかえりなさい。amazonから届いてたわよ。ナニ買ったの?」 お、やっと届いたか。 部屋着に着替えると、早速リビングでダンボール箱を開いた。 ミカン箱ほどの箱の底に、ビニールでシールされたジグソーパズルのピースがひとつ。 「あいかわらず大仰な梱包だなあ」 ビニルを破り、指先でピースをつまんで妻の... 続きをみる

  • パレードの行方

    鼓笛隊の音が近づいてきた! 父さんにせがんで肩車をしてもらう。 見物のオトナたちの頭の向こうに、目にも鮮やかな鼓笛隊が迫ってくるのが見える。 赤いコスチュームに金色のひも飾り。銀のバトンがキラキラ光る。 バトンのお姉さん、きっとボクのほうを見て微笑んでる! きれいなお姉さんの笑顔も太陽みたいで、ボク... 続きをみる

  • アルゴさん

    「じゃあもう一回説明してくれ。アルゴってのは、SF映画なのか?」 もう一回?これで、何度めだ? しかたなく、オレはまた説明を繰り返す。 「アルゴってのは、SF映画の題名です。架空の映画企画をでっちあげたのです」 「SFってのが架空映画のことか?」 「架空ですけど、そっちが架空なんじゃなくて、映画の企... 続きをみる

  • 3Dプリンタ大作戦

    辺境の無人惑星ポカポカ。 高台に立ち、果てしない橙色の荒れ地を眺め、探検隊隊長は落胆の吐息を漏らした。 恒星探査船が火の玉となって消滅する寸前、隊員6名、全員が脱出に成功した。 そして救難艇は、直近の、この惑星に着陸したのだが。 樹脂粉と金属粉ばかりの堆積した、草木も生えぬ不毛の惑星であろうとは。 ... 続きをみる

  • クシャミ

    ヘキシッ ズズッ ケンのヤツ、またクシャミ。電車の乗客たちが気の毒そうに笑う。かっちょわる~。 「ねー、ケン、レディーの前だろ、いちお。遠慮してよね」とアタシ。 ケンが鼻をクシクシこする。 「しかただいだどぉ。出ぼど腫でぼど、とこどきだわずだ・・・ヘキシッ」 まったく。 ケンとアタシは、高校の同級生... 続きをみる

  • 透明人間

    公園のベンチで弁当を広げていると、男が近づいてきた。 ニコニコしながら手を振って。 知らない男だ。 公園のベンチで弁当を広げているときに干渉されるのは愉快じゃないな、なんて思っていると、 「公園のベンチで弁当を広げているときに干渉されるのは愉快じゃないな、なんて思ってんでしょ?」 なんて言いながら、... 続きをみる

  • ホワイトデー

    わたし、もうやめることにしたんです。 世界征服計画。 秘密組織は今日で解散です。日常生活に戻るつもりです。 今日はどんな服でお出かけしようかな? 今日の晩ごはんは何にしようかな? 明日の宿題、かたづくかな?なんて。 そんな毎日だって、けっこうスリリングかもしれません、きっと。 わたしの二重生活もおし... 続きをみる

  • ひゃくまんえん

    朝早いというのに、金田さんちの家族四人、神妙な顔でダイニングに集合しています。 家族会議でしょうか? あ。テーブルの真ん中、四人の視線が集まっているのは、百万円の札束! 父「文章を読んでる人のために状況説明すると、息子のタカシが新聞受けに放りこまれた百万円を見つけちゃって、も~大変・・・」 タカシ「... 続きをみる

  • フリーズドライ

    お昼休み、いつものように田所は会社ビルの屋上で弁当を広げる。 フタを開けると、湯気が立って鼻をくすぐる。 炊きたてのごはんのにおい、フライパンで炒ったばかりのウィンナーのかおり。 目にあざやかな黄色のオムレツには、ケチャップでハートマーク。 田所は思わず喉を鳴らして笑ってしまった。 さすがにこれじゃ... 続きをみる

  • 遠距離のこころえ

    後輩のミカが二人でランチしたいなんてどうゆう風の吹き回し?と思ったら、案の定、恋愛相談だった。しかも遠距離。 近所のファミレス、奥のソファ席に落ち着いて話を聞いた。 よくある遠距離の悩み。 連絡をくれない彼の気持ちが離れていってんじゃないか、浮気してんじゃないか・・・。 打ち明けながら、ミカは今にも... 続きをみる

  • 山小屋

    山小屋には先客があった。 「あなたも吹雪の中で遭難を?」 「ええ。どうぞ奥へ。あなた、通信手段はお持ちですか?」 ボクが首をふると、男は落胆した。 「猛吹雪の中、この山小屋を発見したボクらはラッキーだ。だが、状況はかなり厳しい」 男の話では、山小屋には食料はおろか、薪もストーブもなく、毛布すらない。... 続きをみる

  • 星降る夜

    「あ、また!流れ星!」 「え、どこどこ?もう!」 タカシくん、またあらぬ方向を見てキョロキョロ。 流れ星ってアッという間だからそう簡単に一緒に見ることできないんだよな。 あたしが夜空を指さしていると、ア! 「見えた!」 「見えた!」 タカシくんとあたしは、同時に声をあげました。そして、大急ぎで星に願... 続きをみる

  • ゆきおんな

    まっこと不思議な体験であった。夢であったかうつつであったか。今ではようわからぬ。 夜明けとともに吹雪がやんで、日が高くなると、渡し守が小屋に戻ってきた。 渡し守の介抱で、じきに正気をとりもどしたわしは、かたわらの茂作の顔をのぞきこんだ。 茂作は・・・全身氷となって死んでおった。 雪女の白い息を吹きつ... 続きをみる

  • お獅子ライダー

    意識が戻ると、ボクは戦闘員に抱えられて桟橋の上を運ばれとった。 こいつら、ジョッカーの戦闘員や。ボクはジョッカーに誘拐されたんや。 身代金目当てってことはないやろな。きっと改造人間にされてまうんや! 夢や。これは夢なんや。お正月ボケで、夢見とんのや!! ボクを抱えた戦闘員が遅れる。 「イー!」 先輩... 続きをみる

  • 25世紀少年

    テレビをつけると、こんな真っ昼間っからアニメ。 『25世紀少年』?何だソレ。 こんな時間に地方局で放送してんだから再放送にはまちがいないか。 学校休んで家にひとり。風邪ひいた娘を残して仕事行っちゃうなんてオニだな、うちの親。 にしてもアニメなんて見てる場合じゃないなあ。 黒ずくめの時空警察に追われる... 続きをみる

  • 消えたチョコレート

    バレンタインデー前日。 カオリちゃんの自宅では、家族全員、居間に集まってなにやらもめています。 そうです。 カオリちゃんが憧れの先輩に贈るために手作りしていたチョコが消えてしまったのです。 犯人はいったい・・・。 カオリちゃんのお父さんが家族を見回して、言いました。 「チョコレートを盗んだ犯人は・・... 続きをみる

  • 『ヒトに・・・・・・』

    「もう一度聞くが、君たちは未来から来たというのは本当か?」 取調官の小林が問うた。 パイプ椅子にお行儀よく腰掛けたふたりが、素直にうなずいた。『ふたり』と呼んでいいものかどうか。 「どのくらい未来だって?」 「六百万年だブー」 六百万・・・途方もない未来すぎてイメージできない。 「六百万年後、人類は... 続きをみる

  • リバーシブル

    オヤ?なんだか暗くてなまあたたかい場所に閉じこめられて・・・ ボクってだれ?なにがあったんだっけ? 思い出しました、思い出しました。ボクは子ぶた三兄弟の長男です。 オオカミにワラの家を吹き飛ばされてペロリと食われちゃったんでした。 アア困ったなあ・・・と思っていたら、上から何やら落ちてくるぞ。 ドス... 続きをみる

  • 針供養

    意識が戻ると、俺は拷問台に張りつけられている。 手足は革ベルトできつく締めあげられ、少しでも動かすとギリギリ痛む。 窓のない密室が風俗店のような妖しい照明に浮かび上がっている。 「約束したよね」 妻の声。氷のように冷たい声。 「針千本呑むんだったよね?」 針千本? そう言えば、指切りげんまんしたよう... 続きをみる

  • ハンカチ

    「キミに涙は似合わないよ。このハンカチを使いなさい」 通勤電車内で涙を流していた私に、ハンカチを差し出したのは阿部寛そっくりの紳士だった。 どぎまぎしてハンカチを受けとると、苦み走った笑みを浮かべ電車を降りていった。 ほんの一瞬のできごと。お礼を言う間もなかった。 ハンカチを頬に押し当てると、さわや... 続きをみる

  • 幸福の猫

    夜ネットを見ていて、変な記事を見つけた。 朝起きたときに猫を撫でながらある呪文を唱えると、その日必ず幸福なことが起きるのだそうだ。 まさか。一笑に伏したつもりだった。 だが翌朝、目が覚めると目の前にうちの飼い猫が丸くなっていた。 ものはためし。 ボクは猫を抱きかかえてパソコンに向かい、サイトを呼び出... 続きをみる

  • 得体のしれないもの

    「ねぇ、コレ、何だと思う?」と、ボク。 「オレもちょっと気になってたんだ」と、同僚。 新しくなった病棟の出入り口横にスチールのシューズロッカーが並んでいた。 病棟に勤務する職員、見舞い客、外来者、皆そこで靴を履き替えなくてはならない。 朝な夕なロッカーを利用するたびに、『コレ』が気になっていた。 ロ... 続きをみる

  • 近藤は愛妻家?

    「あたし、シャワー浴びてきていいかしら」 ワインに頬を染めた陽子ちゃんが浴室に入っていきました。 あはあはっ、この展開、昨晩思い描いたそのまんま、夢みたいです。 今朝早く、妻が旅行に出掛けていきました。 「留守の間、飲みすぎちゃダメよ」 「わかってるって」 「長袖はタンスの上から三段め・・・」 「お... 続きをみる

  • ママさんの翼

    ママさんがひとりでやっていたスナックは、駅裏の飲み屋街から外れたテナントビルの片隅にあった。盆暮れのかきいれどきですら、客はボクひとりという店だった。 ドアを開くと、店内にはいつもジェーン・バーキンが流れていた。壁には『時計じかけのオレンジ』のオリジナルポスターと、マリー・ラフォレの白黒ポスターが貼... 続きをみる

  • 警告

    病気ってヤツはある日突然違和感を覚えることから始まるもんだ。 カランカラン。 おや?今、頭の中で乾いた音がしたような。 元々頭はすっからかんだけど、こんな音、以前はしていなかったよなあ。 でも、微かになら、以前からもしていたような気もするし・・・。 空き缶にコガネムシを入れて振ったみたいにガサゴソ。... 続きをみる

  • スナック野郎

    やっめられない、とまらない~♪ つって、スナック菓子のことじゃないんです。ボクの浮気グセ。 もちろん妻はいるんですけどネ。愛されてますよ、トーゼン。 でもさ~やっぱ浮気は男の本性っすよ、甲斐性っすよ、スナック菓子っすよ~。 三度三度のごはんをちゃんと食べてても、小腹が空くときってあんじゃないっすか。... 続きをみる

  • ネズミ

    エ~、また体重減ってるじゃん。どうしちゃったんだ、ボク。 10日くらい前から、毎日0.5キロくらいずつだが確実に減っている。 ちゃんと食べているのに。どこか具合でも悪いんだろうか。 思いあたることと言えば、今週末の水泳大会。 ボクは、優勝候補の名門校でメドレーリレーのアンカーなのだ。 授業が終わって... 続きをみる

  • たまごやき

    ヤッホー!お昼休みだあ。 弁当箱のフタをパッカーン。 これだよ、これこれ。 えっと今日のおかずは・・・ たまごやき、ウィンナー、エビよせフライ・・・このへん鉄板だよなあ。 焼き鮭、アスパラベーコン、キュウリちくわ、茄子の辛子漬け・・・最高だあ。 いつもどおりの味をいつもどおりに楽しむ、それがボクの究... 続きをみる

  • 振袖の怪

    明暦三年正月十八日、本郷丸山本妙寺において三施主による大施餓鬼が一種異様な雰囲気の中でとりおこなわれようとしていた。 それもその筈、本堂前の祭壇では護摩が焚かれ、読経とともに住職がかざしたのは一枚の振袖。 畦織の紫縮緬を荒磯と菊の模様に染め上げて桔梗の縫紋を施した、なんとも艶やかな振袖である。 振袖... 続きをみる

  • 「先生、妻はどうしてこんなことに」 医者に問いかけ、隣に座る妻を見つめた。 「ちゃんとお医者様に説明して」と、妻の口が動くが声にはならない。 ボクは医者に説明した。 「かれこれ十五年前。あの朝、急に声が出なくなったんです。 前日まではフツーに喋ってました。なんの徴候もありません。 まったくフツーでし... 続きをみる

  • ドーナツの穴

    客足が遠のいたのを潮時に、店に入るとレジで彼女に声をかけた。 「あの、注文いいですか?」 ボクはひとつのドーナツを指さした。 「コレ。コレの穴のとこだけ、ひとつ」 彼女、しばし停止。 「うけたわまりました」 おもむろに彼女はドーナツをトングでつまみあげ小袋に手際よく収めた。 「いや、ドーナツじゃなく... 続きをみる

  • LOOPER!

    最悪の目覚めだった。二日酔いの頭がガンガンする。 畜生。床に転がったウォッカのビンを拾いあげて残りを胃に流し込んだ。 昨晩楽しんだ女の姿はもうとうになかった。 鏡に映った全裸のオレを見つめる。 引き締まった筋肉質の身体がたるみ始めている。頭髪も後退しはじめているような・・・ 「やばいぞ、このまんまじ... 続きをみる

  • # 人権啓発
  • # ハヅキ朗読メソッド