ショートショートのムラゴンブログ

  • イプシロン、侵略の手口

    日頃から訪問販売の類は一切お断りしているボクだが、興味半分に玄関を開けてみた。 「は?さっき、なんとおっしゃいました?」 「いやだから、ウ、チュ、ウ、ジ、ン、宇宙人なんですよ」 聞きまちがいじゃない。宇宙人だって?愛想よく笑う、この小柄なオッサンが? 「どちらの?」 「一応、イプシロン星人なんですけ... 続きをみる

  • 粘土でピカッチ殺人事件

    会社の一室で五人の男性が殺害されるという、凄惨な殺人事件が起きた。 害者はいずれもその会社の重役、エアダクトから室内に送られた青酸ガスによる中毒死である。 そして何よりこの現場が異様なのは、彼らが共同で粘土作品創作中に絶命していたことだった。 通報後ただちに現場に駆けつけた警部、そして探偵桶津香具郎... 続きをみる

  • マンボウ№5

    未来。 永久機関同様、絶対不可能と言われていたタイムマシンが完成した。 時間旅行理論を生み出し、自らマシンの開発をも成し遂げたのは、日本人、万城目博士である。 「博士、コングラチュレーション!」 「イヤ~ありがと、ありがと」 万城目博士が白いヒゲを指先でしごいた。 記者会見場は、世界各国の記者で溢れ... 続きをみる

  • エウロパ

    木星第2衛星エウロパ。 厚さ数キロに及ぶ氷に覆われた球体、その表面には引っ掻き傷状の水路が無数に走っている。 実際に探査艇を降り立つと、そこは流氷の海を再氷結させた、氷のグランド・キャニオンであった。 漆黒の空には木星が悠然と浮かび、縞帯の対流まで鮮明に見てとれる。 「気をつけろ。ペースト状の氷海部... 続きをみる

  • ペルセウス座流星群の夜

    「ア、流れ星!!ネ、今見えたよね!」と由里子ちゃん。 「う、うん・・・」とボク。 ううっ、また見逃してしまいました。 由里子ちゃんの指さす彼方には、とっくにカケラもありません。 ペルセウス座流星群がたくさん見られるはずの、8月某日真夜中。 それなのに、それなのに~っ。 畜生、絶対見てやっからな。北東... 続きをみる

  • 妖精ハンター

    いや本当、本当。本当に見たんだって。 岡山の杉林で。本物の妖精を、この目で。 ボクは元々妖精が見えるタチでさ。生まれ故郷のウェールズの森でも妖精を幾度も見たことがあるんだ。 写真に撮ったことだって数回ある。でも、バッチリ写したつもりでもさ、いざ写真見たらトンボやアゲハにすり変わってて。ホ~ント不思議... 続きをみる

  • 絶叫館

    雷の閃きに、断崖絶壁に建つ妖しげな洋館の影が浮かびあがった。 館の大広間中央、糸の切れた操り人形のように横たわるメイド姿の若い女性の骸。 それを取り囲むようにして、三人の容疑者。そして、名探偵桶津香具郎(おけつ・かぐろう)の姿があった。 「桶津くん、で?犯人はわかったのかね?」 館の主である、伯爵が... 続きをみる

  • 宝くじ1等2億円、当たっちゃいました

    あ、当たってる? 当たってるよね?コレって。 何度も何度も番号を確かめる。 「どうしたの?ノゾミ」 うろたえているアタシに同僚が声をかける。 「ウッソ~!!当たってるじゃないの、1等!」 その声に、SSの看護師たちがわらわらとアタシを取り囲む。 ドリームジャンボ宝くじ、1等2億円。それが今、アタシの... 続きをみる

  • タイムマシンの行方

    「ついに、ついに完成したぞ」 野々村は、今しがた完成したばかりのタイムマシンを見上げて、瞳を潤ませた。 研究室中央に鎮座している、ゾウほどの大きさの巨大マシン。 それはどこからどう見ても蚊遣豚に似ていた。 西暦2222年。今、人類初のタイムマシンが野々村の手によって作り出されたのだ。 長く長く、苦し... 続きをみる

  • ウイルスの日

    ゴトゴト・・・カタンッ。 自販機みたいな音を立てて、円筒形の容器が排出口から吐き出された。 缶ジュースほどの大きさだが透明な樹脂でできており、無色透明な液体で満たされている。 貼り付けられたラベルには、『検査薬』の文字。 個室シェルターの壁面スピーカーから無機質な合成音声が漏れ出す。 『検査薬は届き... 続きをみる

  • 学校にまにあわない

    未来。 太陽エネルギーが宇宙から運ばれることで、エネルギー問題が解決した。 電気自動車の運転操縦が全自動化され、交通事故も限りなくゼロに近づいた。 クローン技術の進歩によって人口減少に歯止めがかかり、経済ももちなおした。 21世紀のさまざまな宿題がきれいに片づいた、そんな明るい未来。 そんな未来に何... 続きをみる

  • パパはウルトラマン

    「ねえパパ~、ウルトラマンショー連れてってよう」と、朝ごはんのときにタカシ。 「ゴメンゴメン。パパ、今日もお仕事なんだ」と、私。 「タカシ、無理言っちゃダメでしょ」と、台所からママ。 今日は、こどもの日。こんな日にも働かなくちゃならないなんて。 「ウルトラマン、お休みの間だけでしょ。連れてってよう」... 続きをみる

  • 悪魔の契約

    「つまり、つまり貴方は、悪魔の存在自体信じていない、そうおっしゃるのですね?」 「ああ。悪魔どころか、神の存在すら信じちゃいない」 悪魔は絶句した。 悪魔、と言ったものの、それは本人がそう名乗っているだけ。 どう見ても外回りの営業マンにしか見えない。 紺の背広、七三分けに銀縁眼鏡。全然悪魔っぽくない... 続きをみる

  • ひいええええええっ 素っ頓狂な叫び声をあげながら、嘉平さんが川土手の蕎麦の屋台に駆け込んでまいります。 「一体全体どうなすったんです」 店じまいを始めていた蕎麦屋の爺さん、声をかけます。 嘉平さん、ハアハアゼイゼイ荒い息をととのえながら、 「で、出たんだよ。その、アレが」 「アレじゃあわかりませんや... 続きをみる

  • 大魔術の夜

    小屋は今日も大入り満員だった。 客席に一礼。大魔術ショーのはじまり、はじまり。 まずはツカミから。 颯爽とシルクハットをとって白ウサギを出して見せる。 どよめき、そして拍手。 よしよし、反応がいいぞ。 いくつかマジックを披露したあと、小テーブルの上のシルクハットへ。 ウサギがまだ入っていることを客に... 続きをみる

  • # ショートショート
  • 嗅いじゃいたい、噛んじゃいたい

    彼女のこと、好きかって? もちろんですよ。ボクたち、愛しあってるんですから。 ゆくゆくは一緒に暮らしたいなあって。 そりゃもう彼女も同じ気持ちですよ。 あたりまえじゃないですか。ボクが彼女をいちばん愛してるんですから。 今朝? ええ、会いましたよ。 ふふん、すっぴんで油断してる彼女なんて、ボクしか見... 続きをみる

  • 雪山ジェラシー

    そうなんです。 タカシとあたし、雪山で遭難してしまったんです。 登山ルートから外れた山小屋を見つけたものの、食料はおろか暖房もありません。 外は猛吹雪、ここで救助を待つしかありません。 タカシが抱いてくれてるけれど、体温は徐々に奪われて・・・ するとタカシがポツリ。 「あ~ボンカレー食いて~」 「こ... 続きをみる

  • カツ丼ハーフ殺人事件

    ガイ者は、応接間のクリスタル灰皿で後頭部を叩き割られて絶命していた。 ガイ者の名は、権藤三郎。悪徳商法で荒稼ぎしていた権藤に怨みを抱く者は多かった。 灰皿から指紋は検出されなかった。 唯一の手がかりは、権藤が手にしていた、高崎屋のお品書きである。 高崎屋といえば、地元では有名なカツ丼専門店だ。 その... 続きをみる

  • おじいさんと魔法のランプ

    とある老人施設の一室、おじいさんがベッドに腰掛けています。 おじいさんは、なにげなく頭を上げ、サイドテーブルに目をやります。 「なんじゃ、コレは?」 一輪挿しのとなりに、金色のランプが置いてあるのを見つけます。 “コレを磨いたら、なんでもアレをかなえてくれるアレが出てくるんじゃないか?” そう思いは... 続きをみる

  • どちら似?

    好物のスクランブルエッグをかき混ぜている最中に携帯が鳴った。最悪のタイミング。 「いいお嬢さんよ。会ってみたら」 叔母からだ。 「ボクはまだ正採用にもなってないんだよ。つまり社会人の卵・・・」 「社会人は社会人でしょ。もったいないわよ、とにかく写真だけでも」 今どき、見合いだなんて。 程なくして、叔... 続きをみる

  • お天気屋

    職場で事務仕事をやっていると、来客があった。 なんなんだよう、まったく。来るなら来るで、ひとこと電話くらいしといてくれよ。 応接室のソファに座っていた来客は、なんとなく怪しい男だった。 スタジャンに野球帽にサングラス。正体を隠しているような風情だ。 ボクを見ても黙っているのでボクのほうから尋ねた。 ... 続きをみる

  • 時間よ、止~まれ

    田舎道を軽トラで走ってK町に着いた。買い出しはいつもK町で済ませている。 道路を行き来しているはずの車が走行車線で止まっている。様子が変だ。 車の間をぬいながら止まった車の中を覗くと、どの車にも人が乗ったまま動かない。 何やってんだ、こいつら。 いつもの店の駐車場に車を止め、店内へ。 店の前に数人が... 続きをみる

  • 忘れちゃいたい

    たとえば仕事とか、恋愛とか・・・ 生きるか死ぬかの大問題にぶちあたったと感じて・・・ ああでもないこうでもないと悩みに悩んで・・・ 一生懸命くだした、納得済みの結論だったはずなのに・・・ 月日が経ってみれば、実に浅はかだったと気がついて・・・情けなくて情けなくて・・・ 全部忘れちゃいたい! ・・・な... 続きをみる

  • ロボット?

    平日の午後、さすがに風呂屋に客は少なかった。 サウナ室に入る。先客はなかったが、ボクの後ろからもうひとり入ってきた。 テレビの前にボクが座る。少し離れた位置で男が胡座をかいた。 ボクは12分計を見上げた。 この時計の長針が一周して同じ数字になる12分後がちょうどいい頃合いなのだ。 テレビでは、ロボッ... 続きをみる

  • 天国の階段

    10時59分、目を閉じたまま陸橋の階段を上ると天国の階段につながる・・・ そんな都市伝説が、小学生のころに囁かれていたっけ。 テンゴクの語呂合わせからして、子供っぽい怪談のひとつにすぎない。 それに、地方都市とは名ばかりの田舎町、都市伝説なんて言葉すらマユツバな感じだ。 歓迎会が二次会でお開きになっ... 続きをみる

  • 世界史のひと

    「どうだ?明日の歴検。期待してるぞ、満点」と、先生が肩を叩く。 「イヤイヤ~満点なんてとてもとても」 などと謙遜しつつ、ボクは狙う気まんまんだった。 なにせ、先生が作ってくれた過去問、まあ間違えても1問か2問。直近の模試は満点をとっているのだから。 歴史能力検定世界史。ついに明日が検定日だ。 どの教... 続きをみる

  • 誓いのホームラン

    9回裏、1点差のビファインド、ワンナウト一塁の場面で、オレに打順が回ってきた。 ベンチのサインはもちろん、手堅く送りバント。 クライマックスシリーズへの生き残りをかけた大一番である。 しかもオレの後ろには、リーグ最多のホームランバッターが控えている。 オレにバント以外の選択肢などないのはわかっていた... 続きをみる

  • 変化

    「・・・で・・・なんだったかなあ?」 夜、眠ろうと目を閉じると、今朝から気になっていたことがまた気になった。 久しぶりの自転車通勤、職場近くの、車じゃ通らない路地。 ゆるやかな傾斜を上る途中、整地された空き地にずらりとソーラーパネルが並んでるじゃないか。 家数軒分ほどの空き地に、家の屋根に貼り付いて... 続きをみる

  • ソメイヨシノ

    「あ~あ今度ココ来るときは彼女と来たいなあ」 「彼女できてから言えよな」 ボクと友人Kは、ぶつくさ言いながら桜のトンネルを仰ぎ見た。 今まさに見頃。枝々がしなるほど群れて咲き誇っている。どの木も、どの枝も。 「なあ、聞いたことあるか?『桜の樹の下には屍体が埋まっている』って」 Kは笑った。 「なんだ... 続きをみる

  • えいぷりるふ~る

    目が覚めると、見知らぬ部屋の見知らぬベッド。 見慣れたボクの下宿じゃないのだけは確かだけど・・・ここ、どこ? 棚にクマちゃんなんかが腰掛けてて・・・女性の部屋っぽい。 おまけにキッチンからはカチャカチャ料理する音。さらに女のハミング。 この状況は・・・やっぱりアレだよなあ。 えっと昨夜は送別会で・・... 続きをみる

  • 青汁

    嫌なものを轢いてしまった。 フロントガラスを打つ大粒の雨で、道路に倒れた緑色のそいつに気がつくのが遅れたのだ。 慌ててブレーキを踏みこんだが無駄だった。 グシャリとタイヤで押し潰す感触が、尻まで伝わり怖気が走った。 しかも、轢かれる瞬間、そいつは顔をあげて私を見つめたのだ。 あの、見開かれた、絶望的... 続きをみる

  • ゆるキャラ

    「さあ、チビッコのみんな~、おっきな声でパチモンを呼んでね~。せ~のおっ」 お姉さんの声に合わせてチビッコたち、パチモン、パチモンの大合唱。 「じゃ、お願いしますよ」スタッフが背中を叩いて合図。 オレはずんぐりした体を揺すりながらステージへ向かう。チビッコの興奮が最高潮に達する。 歓声が落ち着いたと... 続きをみる

  • オナニーさん

    昼休み・生徒相談室 「矢菱くん、先生はね、叱ろうってわけじゃないの。第二次性徴期の男子がソレに夢中になってもなんの不思議もないわ。むしろ健全な発達よ。だから、決して罪悪感はもってほしくないの、アレに」 「先生、はっきり言ってください、オナニーと!!罪悪感?馬鹿馬鹿しい。ボクはオナニーに誇りをもってま... 続きをみる

  • 花かげの下、彼女の全身が淡い薄紅に染めあげられていた。 そのとき彼女は、時間を止めるおまじないを唱えていたんだと思う。 小学校の卒業文集で、『将来の夢』に『不老不死』と書いた彼女だから。 満開の桜と、十四歳の少女が、時間をとどめたいと願ってもなんの不思議もない。 それまで一度として口をきいたことのな... 続きをみる

  • 百発百中

    ミッドタウンの高級オフィスビル、その最上階。 スナイパーXは、時間どおりに現れた。 依頼人がふと目を上げると、重役室の壁に寄りかかって煙草を燻らせていたのだ。 「ど、どうやってここまで?」 「・・・・・・」 鍛え上げられた筋肉が、高級スーツの下で盛り上がっている。 剃刀のような目を依頼人に向けて、や... 続きをみる

  • ロボ納豆

    「ゴ主人様、ナンナリトオ命ジクダサイ」 「ふむ、今日はおまえに納豆を作ってもらいたい。納豆は納豆でも、魯山人納豆だ。頼むぞ」 「オ安イ御用デゴザイマス」 近未来。いろいろ技術が進歩して便利になったが、なんといっても主婦ロボットには重宝している。 私が指図すると、家事全般、快くこなしてくれる。 まさに... 続きをみる

  • タバター

    「田端さん、田端バタ子さん」 耳元で名前を呼ばれて目が覚めた。 げっ。だれ?なんでわたしの部屋に? 体を起こすと、クラッとめまいが。ウ~、頭もガンガンする。 コタツの上には、コンビニで買った缶チューハイが二本、三本、四本。 ひとりでこんだけ飲んじゃったのか。うう、気分悪い。 昨日、わたしは失恋した。... 続きをみる

  • いれか絵

    また来てしまった。 町の美術館で最近、気になる絵がある。 先日、ある企画展の鑑賞ついでに立ち寄った際、常設展示室でその絵を発見した。 以来、ことあるごとに立ち寄って、絵の前に立ってしまう。 難しい絵でもなんでもない。ある人物の肖像画。 よくぞここまでと感心するほどリアルな筆致で描かれた上半身。 私と... 続きをみる

  • iPSサイボーグ

    「ちょっと、山本部長、ちょっと」 廊下ですれちがいざま、常務が呼びとめた。 招き入れられるままに、ミーティング室へ。 「君ィ、君んとこの部署の、山中くん。どう?彼」 「どうって、よくやってくれてますよ。めだたないけど」 『めだたないけど』の一言に、常務がニンマリ。 「どうだ?伊集院くんに比べて」 伊... 続きをみる

  • 人酒

    「なあ中杉、もう一軒行こ、もう一軒!」 木村先輩に誘われて入った店は、洒落たショットバーだった。 客はボクたちだけ。薄暗い店内にピアノジャズが流れている。 ナベサダみたいなマスターが厨房の奥から出てきて、コースターを並べた。 「木村さん、珍しい酒が入ったんですよ。試してみませんか」 もちろん飲んでみ... 続きをみる

  • 行列のできる店

    タクシーを降りると、『カヴァレロ・ビアンコ』の前に行列ができています。 よかった。タカシが予約とっててくれて。 並んだ客たちの羨望の視線を浴びながら店の奥へと案内されて、ちょっぴり優越感に浸っちゃいました。 オーダーはいつもと同じ。 ゴルゴンゾーラチーズをカリカリに焦がしたピッツァ、クワットロフォル... 続きをみる

  • 登山者にもの申す

    ルート傍らの岩場に腰を下ろし、ペットボトルの水をゴクリ。 甘露、甘露。 疲れた全身に染みわたる。 山の上で飲むだけで水がこんなにも美味しい。山頂で淹れるコーヒーは最高だろうな。 すこんと澄んだ空気に、キビタキのさえずりが響く。 ああ、のどかだなあ。 平日齷齪働いて、どうして休日までわざわざ山登りに?... 続きをみる

  • 人工多能性ピース

    「おかえりなさい。amazonから届いてたわよ。ナニ買ったの?」 お、やっと届いたか。 部屋着に着替えると、早速リビングでダンボール箱を開いた。 ミカン箱ほどの箱の底に、ビニールでシールされたジグソーパズルのピースがひとつ。 「あいかわらず大仰な梱包だなあ」 ビニルを破り、指先でピースをつまんで妻の... 続きをみる

  • パレードの行方

    鼓笛隊の音が近づいてきた! 父さんにせがんで肩車をしてもらう。 見物のオトナたちの頭の向こうに、目にも鮮やかな鼓笛隊が迫ってくるのが見える。 赤いコスチュームに金色のひも飾り。銀のバトンがキラキラ光る。 バトンのお姉さん、きっとボクのほうを見て微笑んでる! きれいなお姉さんの笑顔も太陽みたいで、ボク... 続きをみる

  • アルゴさん

    「じゃあもう一回説明してくれ。アルゴってのは、SF映画なのか?」 もう一回?これで、何度めだ? しかたなく、オレはまた説明を繰り返す。 「アルゴってのは、SF映画の題名です。架空の映画企画をでっちあげたのです」 「SFってのが架空映画のことか?」 「架空ですけど、そっちが架空なんじゃなくて、映画の企... 続きをみる

  • 3Dプリンタ大作戦

    辺境の無人惑星ポカポカ。 高台に立ち、果てしない橙色の荒れ地を眺め、探検隊隊長は落胆の吐息を漏らした。 恒星探査船が火の玉となって消滅する寸前、隊員6名、全員が脱出に成功した。 そして救難艇は、直近の、この惑星に着陸したのだが。 樹脂粉と金属粉ばかりの堆積した、草木も生えぬ不毛の惑星であろうとは。 ... 続きをみる

  • クシャミ

    ヘキシッ ズズッ ケンのヤツ、またクシャミ。電車の乗客たちが気の毒そうに笑う。かっちょわる~。 「ねー、ケン、レディーの前だろ、いちお。遠慮してよね」とアタシ。 ケンが鼻をクシクシこする。 「しかただいだどぉ。出ぼど腫でぼど、とこどきだわずだ・・・ヘキシッ」 まったく。 ケンとアタシは、高校の同級生... 続きをみる

  • 透明人間

    公園のベンチで弁当を広げていると、男が近づいてきた。 ニコニコしながら手を振って。 知らない男だ。 公園のベンチで弁当を広げているときに干渉されるのは愉快じゃないな、なんて思っていると、 「公園のベンチで弁当を広げているときに干渉されるのは愉快じゃないな、なんて思ってんでしょ?」 なんて言いながら、... 続きをみる

  • ホワイトデー

    わたし、もうやめることにしたんです。 世界征服計画。 秘密組織は今日で解散です。日常生活に戻るつもりです。 今日はどんな服でお出かけしようかな? 今日の晩ごはんは何にしようかな? 明日の宿題、かたづくかな?なんて。 そんな毎日だって、けっこうスリリングかもしれません、きっと。 わたしの二重生活もおし... 続きをみる

  • ひゃくまんえん

    朝早いというのに、金田さんちの家族四人、神妙な顔でダイニングに集合しています。 家族会議でしょうか? あ。テーブルの真ん中、四人の視線が集まっているのは、百万円の札束! 父「文章を読んでる人のために状況説明すると、息子のタカシが新聞受けに放りこまれた百万円を見つけちゃって、も~大変・・・」 タカシ「... 続きをみる

  • フリーズドライ

    お昼休み、いつものように田所は会社ビルの屋上で弁当を広げる。 フタを開けると、湯気が立って鼻をくすぐる。 炊きたてのごはんのにおい、フライパンで炒ったばかりのウィンナーのかおり。 目にあざやかな黄色のオムレツには、ケチャップでハートマーク。 田所は思わず喉を鳴らして笑ってしまった。 さすがにこれじゃ... 続きをみる

  • 遠距離のこころえ

    後輩のミカが二人でランチしたいなんてどうゆう風の吹き回し?と思ったら、案の定、恋愛相談だった。しかも遠距離。 近所のファミレス、奥のソファ席に落ち着いて話を聞いた。 よくある遠距離の悩み。 連絡をくれない彼の気持ちが離れていってんじゃないか、浮気してんじゃないか・・・。 打ち明けながら、ミカは今にも... 続きをみる

  • 山小屋

    山小屋には先客があった。 「あなたも吹雪の中で遭難を?」 「ええ。どうぞ奥へ。あなた、通信手段はお持ちですか?」 ボクが首をふると、男は落胆した。 「猛吹雪の中、この山小屋を発見したボクらはラッキーだ。だが、状況はかなり厳しい」 男の話では、山小屋には食料はおろか、薪もストーブもなく、毛布すらない。... 続きをみる

  • 星降る夜

    「あ、また!流れ星!」 「え、どこどこ?もう!」 タカシくん、またあらぬ方向を見てキョロキョロ。 流れ星ってアッという間だからそう簡単に一緒に見ることできないんだよな。 あたしが夜空を指さしていると、ア! 「見えた!」 「見えた!」 タカシくんとあたしは、同時に声をあげました。そして、大急ぎで星に願... 続きをみる

  • ゆきおんな

    まっこと不思議な体験であった。夢であったかうつつであったか。今ではようわからぬ。 夜明けとともに吹雪がやんで、日が高くなると、渡し守が小屋に戻ってきた。 渡し守の介抱で、じきに正気をとりもどしたわしは、かたわらの茂作の顔をのぞきこんだ。 茂作は・・・全身氷となって死んでおった。 雪女の白い息を吹きつ... 続きをみる

  • お獅子ライダー

    意識が戻ると、ボクは戦闘員に抱えられて桟橋の上を運ばれとった。 こいつら、ジョッカーの戦闘員や。ボクはジョッカーに誘拐されたんや。 身代金目当てってことはないやろな。きっと改造人間にされてまうんや! 夢や。これは夢なんや。お正月ボケで、夢見とんのや!! ボクを抱えた戦闘員が遅れる。 「イー!」 先輩... 続きをみる

  • 25世紀少年

    テレビをつけると、こんな真っ昼間っからアニメ。 『25世紀少年』?何だソレ。 こんな時間に地方局で放送してんだから再放送にはまちがいないか。 学校休んで家にひとり。風邪ひいた娘を残して仕事行っちゃうなんてオニだな、うちの親。 にしてもアニメなんて見てる場合じゃないなあ。 黒ずくめの時空警察に追われる... 続きをみる

  • 消えたチョコレート

    バレンタインデー前日。 カオリちゃんの自宅では、家族全員、居間に集まってなにやらもめています。 そうです。 カオリちゃんが憧れの先輩に贈るために手作りしていたチョコが消えてしまったのです。 犯人はいったい・・・。 カオリちゃんのお父さんが家族を見回して、言いました。 「チョコレートを盗んだ犯人は・・... 続きをみる

  • 『ヒトに・・・・・・』

    「もう一度聞くが、君たちは未来から来たというのは本当か?」 取調官の小林が問うた。 パイプ椅子にお行儀よく腰掛けたふたりが、素直にうなずいた。『ふたり』と呼んでいいものかどうか。 「どのくらい未来だって?」 「六百万年だブー」 六百万・・・途方もない未来すぎてイメージできない。 「六百万年後、人類は... 続きをみる

  • リバーシブル

    オヤ?なんだか暗くてなまあたたかい場所に閉じこめられて・・・ ボクってだれ?なにがあったんだっけ? 思い出しました、思い出しました。ボクは子ぶた三兄弟の長男です。 オオカミにワラの家を吹き飛ばされてペロリと食われちゃったんでした。 アア困ったなあ・・・と思っていたら、上から何やら落ちてくるぞ。 ドス... 続きをみる

  • 針供養

    意識が戻ると、俺は拷問台に張りつけられている。 手足は革ベルトできつく締めあげられ、少しでも動かすとギリギリ痛む。 窓のない密室が風俗店のような妖しい照明に浮かび上がっている。 「約束したよね」 妻の声。氷のように冷たい声。 「針千本呑むんだったよね?」 針千本? そう言えば、指切りげんまんしたよう... 続きをみる

  • ハンカチ

    「キミに涙は似合わないよ。このハンカチを使いなさい」 通勤電車内で涙を流していた私に、ハンカチを差し出したのは阿部寛そっくりの紳士だった。 どぎまぎしてハンカチを受けとると、苦み走った笑みを浮かべ電車を降りていった。 ほんの一瞬のできごと。お礼を言う間もなかった。 ハンカチを頬に押し当てると、さわや... 続きをみる

  • 幸福の猫

    夜ネットを見ていて、変な記事を見つけた。 朝起きたときに猫を撫でながらある呪文を唱えると、その日必ず幸福なことが起きるのだそうだ。 まさか。一笑に伏したつもりだった。 だが翌朝、目が覚めると目の前にうちの飼い猫が丸くなっていた。 ものはためし。 ボクは猫を抱きかかえてパソコンに向かい、サイトを呼び出... 続きをみる

  • 得体のしれないもの

    「ねぇ、コレ、何だと思う?」と、ボク。 「オレもちょっと気になってたんだ」と、同僚。 新しくなった病棟の出入り口横にスチールのシューズロッカーが並んでいた。 病棟に勤務する職員、見舞い客、外来者、皆そこで靴を履き替えなくてはならない。 朝な夕なロッカーを利用するたびに、『コレ』が気になっていた。 ロ... 続きをみる

  • 近藤は愛妻家?

    「あたし、シャワー浴びてきていいかしら」 ワインに頬を染めた陽子ちゃんが浴室に入っていきました。 あはあはっ、この展開、昨晩思い描いたそのまんま、夢みたいです。 今朝早く、妻が旅行に出掛けていきました。 「留守の間、飲みすぎちゃダメよ」 「わかってるって」 「長袖はタンスの上から三段め・・・」 「お... 続きをみる

  • ママさんの翼

    ママさんがひとりでやっていたスナックは、駅裏の飲み屋街から外れたテナントビルの片隅にあった。盆暮れのかきいれどきですら、客はボクひとりという店だった。 ドアを開くと、店内にはいつもジェーン・バーキンが流れていた。壁には『時計じかけのオレンジ』のオリジナルポスターと、マリー・ラフォレの白黒ポスターが貼... 続きをみる

  • 警告

    病気ってヤツはある日突然違和感を覚えることから始まるもんだ。 カランカラン。 おや?今、頭の中で乾いた音がしたような。 元々頭はすっからかんだけど、こんな音、以前はしていなかったよなあ。 でも、微かになら、以前からもしていたような気もするし・・・。 空き缶にコガネムシを入れて振ったみたいにガサゴソ。... 続きをみる

  • スナック野郎

    やっめられない、とまらない~♪ つって、スナック菓子のことじゃないんです。ボクの浮気グセ。 もちろん妻はいるんですけどネ。愛されてますよ、トーゼン。 でもさ~やっぱ浮気は男の本性っすよ、甲斐性っすよ、スナック菓子っすよ~。 三度三度のごはんをちゃんと食べてても、小腹が空くときってあんじゃないっすか。... 続きをみる

  • ネズミ

    エ~、また体重減ってるじゃん。どうしちゃったんだ、ボク。 10日くらい前から、毎日0.5キロくらいずつだが確実に減っている。 ちゃんと食べているのに。どこか具合でも悪いんだろうか。 思いあたることと言えば、今週末の水泳大会。 ボクは、優勝候補の名門校でメドレーリレーのアンカーなのだ。 授業が終わって... 続きをみる

  • たまごやき

    ヤッホー!お昼休みだあ。 弁当箱のフタをパッカーン。 これだよ、これこれ。 えっと今日のおかずは・・・ たまごやき、ウィンナー、エビよせフライ・・・このへん鉄板だよなあ。 焼き鮭、アスパラベーコン、キュウリちくわ、茄子の辛子漬け・・・最高だあ。 いつもどおりの味をいつもどおりに楽しむ、それがボクの究... 続きをみる

  • 振袖の怪

    明暦三年正月十八日、本郷丸山本妙寺において三施主による大施餓鬼が一種異様な雰囲気の中でとりおこなわれようとしていた。 それもその筈、本堂前の祭壇では護摩が焚かれ、読経とともに住職がかざしたのは一枚の振袖。 畦織の紫縮緬を荒磯と菊の模様に染め上げて桔梗の縫紋を施した、なんとも艶やかな振袖である。 振袖... 続きをみる

  • 「先生、妻はどうしてこんなことに」 医者に問いかけ、隣に座る妻を見つめた。 「ちゃんとお医者様に説明して」と、妻の口が動くが声にはならない。 ボクは医者に説明した。 「かれこれ十五年前。あの朝、急に声が出なくなったんです。 前日まではフツーに喋ってました。なんの徴候もありません。 まったくフツーでし... 続きをみる

  • ドーナツの穴

    客足が遠のいたのを潮時に、店に入るとレジで彼女に声をかけた。 「あの、注文いいですか?」 ボクはひとつのドーナツを指さした。 「コレ。コレの穴のとこだけ、ひとつ」 彼女、しばし停止。 「うけたわまりました」 おもむろに彼女はドーナツをトングでつまみあげ小袋に手際よく収めた。 「いや、ドーナツじゃなく... 続きをみる

  • LOOPER!

    最悪の目覚めだった。二日酔いの頭がガンガンする。 畜生。床に転がったウォッカのビンを拾いあげて残りを胃に流し込んだ。 昨晩楽しんだ女の姿はもうとうになかった。 鏡に映った全裸のオレを見つめる。 引き締まった筋肉質の身体がたるみ始めている。頭髪も後退しはじめているような・・・ 「やばいぞ、このまんまじ... 続きをみる

  • エトピリカ

    「小さい二人は返してやろう。だが上の二人はわれわれがいただく」 「そんな理不尽な!四人ともうちの子どもたちだ。四人とも返すのがスジだ」 「それはそっちの理屈だろう」 プツッ・・・ツーツーツー 父親が受話器を置く。警部が部下に確認する。 「逆探知はとれたか?・・・時間が足りない?畜生!」 警部は苛立ち... 続きをみる

  • 鏡開き

    首都上空に、巨大円盤が出現した! 空を見上げた若者たちが叫ぶ。 「な、なんなんだコイツは!鏡餅にそっくりじゃん!」 それを聞いた年寄りたちは笑った。 「何を言うとるか、コイツのどこが鏡餅じゃ。日本古来の鏡餅は、こんなウ○コのような形ではないわ!」 それを聞いた若者が早速キレた。 「ジジイ、何言ってん... 続きをみる

  • 七草ルーレット

    「生徒諸君、あけましておめでとう」 「先生、まだ冬休みですよ。なんで登校させたんですか。まさか、お年玉?」 「ハ×5、正月早々冗談はヨシコさんだよ。薄給の公務員に金銭をせびってはいか~ん。今日呼んだのは他でもない。諸君に七草粥をふるまいます」 「七草粥~?野草入りのお粥でしょ?みんな、帰ろ~」 「ジ... 続きをみる

  • おみくじを引こう!

    石段をのぼっていくと、社が見えてきた。 子どもの頃から、初詣はここと決めている。 出店ひとつ立つわけでもない小さな社だが、ここの佇まいが好きだ。 ポケットから硬貨数枚を取り出して賽銭箱に投じ二礼二拍、掌を合わせた。 こうして祈っていると心の奥まで澄みわたり、静謐な気分に満たされるから不思議なものだ。... 続きをみる

  • お年玉

    「お父さ~ん、お、と、し、だ、ま!」 笑顔でお年玉をねだる娘。可愛さにほだされて私はポチ袋を渡す。 「なあ、いいかげん大人になってくれないか」 今年も言ってはみたものの、まったく効果なし。 クリスマスと正月をさんざん楽しんだ娘は今年もまた、冷凍睡眠カプセルへと戻っていく。 死のうと思っていた。 こと... 続きをみる

  • アンドロイドは初夢を見るか?(2013)

    あけましておめでとうございます。 え~昔、江戸は神田に虎蟲というカラクリ師がおりまして、アンドロイドとなかよく暮らしておりました。 さて、元旦の夜のことです。 「これ、メカ吉」 メカ吉ってぇのはアンドロイドの名前でございます。 「ヘイ、旦那様、御用デスカ?」 「お前、夢を見たことがあるかい?」 「イ... 続きをみる

  • 『笠地蔵』

    ややむかし。 いろいろあっておじいさん、雪の中、笠を手にとぼとぼ家路についておりました。 と、目の前に例のごとく、六地蔵が。 「こりゃあなんとも、さぶかろうなあ。そうじゃ、この笠をかぶりなされい」 お地蔵様に降りかかった雪を払い、笠をかぶせようとした、その時。 おじいさんの頭に、『笠地蔵』の話がよみ... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第十夜)

    こんな夢を見た。 瀕死の庄太郎が戻ってきた。 豚に誘われるままについて行った先は崖の上だったそうだ。 そこで幾万の裸女の群れに襲われたのだという。 鼻を鳴らして迫る牝豚を自慢のステッキで退けること七日六晩。 精根尽き果て杖先を舐められてしまった。 ほ~ら豚と女、置換するとこんなにエロい。 (青空文庫... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第九夜)

    こんな夢を見た。 ざわざわ胸騒ぎが治まらない。 なんだ、俺のベルトに紐が結わえてあるじゃないか。 俺の浮気癖が治るようにと、妻がお百度参りをしたせいだ。 通勤電車内を見渡すと、みんな紐がついている。 みんな一緒なら安心だ。どう?今夜も飲みに・・・。 途端、ベルトの紐をグイと引かれた。 (青空文庫・夏... 続きをみる

  • ダイブツマン最終回

    作務を辞し、安念は叉手当胸にて庫裏へと向かった。庫裏の陰、時同じく掛塔する同夏、談念は待っていた。 互いに一瞥合掌、剃頭を低頭。眉目秀麗なる安念、皆を惹きつけてやまぬのはうわべだけではない。 「安念先輩、僕は人間じゃないんだ。ダイブツマンなんだ。たまげただろう?」 「うぅん、談念が人間だろうと人間じ... 続きをみる

  • アナタ

    1956年、日本初の南極観測隊を乗せた「宗谷」が出航した。翌年、南極大陸に上陸した彼らは昭和基地の建設に取り掛かる。 そして2月。西堀副隊長以下11名の越冬隊員を残して「宗谷」は日本に向けて離岸する。 越冬は熾烈を極めた。最低気温45度、最大風速61メートル。 不用意に棟を数歩離れただけで遭難してし... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第八夜)

    こんな夢を見た。 床屋に入ると、四角の白い部屋だった。 「すみません。時計が止まってまして」 親爺が髪を切るがいっこうに短くならない。 そういえば往来のパナマ帽の男も金魚売りもぴたりと動かない。 どうやら止まったのは時間のほうらしい。 時間などもう気にする必要がないと思うと無性に嬉しい。 (青空文庫... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第七夜)

    こんな夢を見た。 巨大宇宙船に乗っている。 果てしない空間を航行しているが、いったいどこへ行くともいつ着くとも皆目わからない。 異星人ばかりの船に俺の居場所などなく、憂鬱のあまり宇宙に身を投げた。 宇宙を漂っていると腹の虫が鳴いた。 俺自身が宇宙船の腹の虫だったのかもしれない。 (青空文庫・夏目漱石... 続きをみる

  • 風船

    放たれた風船は、一斉にふわりと浮いた。 若鮎の群れが身をくねらせて我先に進むように大空に向かって。 上昇していく風船が、ビルの窓ガラスに映る。 赤いのや、青いのや、黄色いのや。 色とりどりの風船たちを見つめる。 いったいどれがボクなんだろう。 そう思って、初めて自分が風船であることに気がついた。 風... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第六夜)

    こんな夢を見た。 超有名な運慶が仁王像を彫るパフォやってんで、出掛けてみたらも~黒山の人だかり。 運慶ほどのプロは、そもそも木の中に埋まっている仁王を彫り出すんだってさ。 「で、どうやって仁王像埋まってる木材を見分けんの?」 運慶、木材をクンクン嗅いで、 「こいつが・・・」 (青空文庫・夏目漱石の『... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第五夜)

    こんな夢を見た。 学校に間に合わない!急ぎに急ぐがこのぶんでは遅刻だ。 そうだ。恋人が私を待っていることにしよう。 敵の武将に捕らえられ、死刑の前にひと目私に会いたいと願うイケメンの武者が。 急げ、私! あともう少し! そのとき足がもつれて転倒、顔面直撃。大の字でチャイムを聞く。 (青空文庫・夏目漱... 続きをみる

  • 箱の中

    ヘンリー神父は、ボクシングデーのために匿名の者から寄せられた箱の山を見つめて困惑していた。 これだけの量も大きさ初めてなら、立派な包装紙やリボンで飾られているのも初めてだった。 例の男から贈られた箱にちがいない。 半年前の暑いさなか、男は教会に現れた。 貧しい教区の小さな教会の説教に訪れるのは、生活... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第四夜)

    こんな夢を見た。 ステージの上で親爺がヒョロヒョロと笛を吹いている。 しかし黒布を掛けた台から蛇が現れる様子はない。 ステージから親爺がふいと立ち去ると、蛇見たさに追いかける。 柳の下を抜け、川の中へ。そのまま二度と出てこない。 赤い蛇、緑の蛇はもちろん、人間の頭部さえも。 (青空文庫・夏目漱石の『... 続きをみる

  • ザ・大掃除!

    もうじき大晦日。アパートの大掃除、やっちゃうか。 なにせ、男ヤモメのひとり暮らし。蛆がわくほどじゃないにしても、このままじゃゴミ屋敷だ。 今年の正月も特別予定なし、寝正月と決めこんでるが、快適なスペースは確保せねば。 まずは冷蔵庫、次にレンジ、換気扇、窓拭き・・・とやっているうちにエンジンが掛かって... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第三夜)

    こんな夢を見た。 暗い森を歩いていく男の背中に、俺はしがみついている。 どうやら父親らしい。だが父親のくせに、俺を捨てようなんて思ってやがる。 捨てるもなにも、百年前、文化五年の辰年に杉の下でお前は俺を殺したじゃないか。 やっと思い出したか?ほ~ら、ずっしり気が重いじゃろ? (青空文庫・夏目漱石の『... 続きをみる

  • 2012年人類滅亡?

    2012年12月25日・・・。 なんで? なんで、12月25日? マヤ暦によると、2012年12月21日~23日までの間に、人類は滅亡すんじゃなかったの? マヤ人っちゃんとやろうよ、ちゃんと~! ボクはすっかり今週がないつもりだったのにぃぃぃっ。 先週末、意中の深雪を体育館の裏に呼び出してこくった。... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第二夜)

    冷蔵庫を覗いて、 「おまえは侍であろう。侍ならば悟れぬはずがあるまい」と和尚が挑発する。 さらに、「チンが鳴るまでに悟れねばクズじゃ」とまで云う。 怒り心頭、悟りと和尚の首を引き替えにする覚悟でレンジへ入室。 チン。 和尚は、アッツアツの「無」を取り出すのに四苦八苦。 (青空文庫・夏目漱石の『夢十夜... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第一夜)

    こんな夢を見た。 「百年待っていてください」と言って妻が息をひきとる。 幾日幾晩と待ち続けているうちに百年が経っていた。 おや?埋めた土からニョキニョキ女が生えてきたじゃないか! 妻ではない。吉永小百合(百歳)。 冷たい露も滴る、楚々とした立ち姿。 まだイケそうである。 (青空文庫・夏目漱石の『夢十... 続きをみる

  • 遠距離

    何度時計を見上げただろう。その瞬間が待ち遠しくて、もどかしくて。 またしてもボクはチューニングダイヤルを微調整してしまう。 ついに午前2時00分。スピーカーに全神経を集中する。 いつものオープニング音楽。そして・・・彼女の声! 優しい囁きが耳をくすぐる。その声に癒されてボクの心は温まっていく。 どん... 続きをみる

  • 霧笛

    赤い光、白い光、そして赤い光。点滅を繰り返す灯台をアパトサウルスは見つめた。 霧は濃さを増していたが、岬の岸壁と、その突端に立つ灯台の黒い影ははっきりと見てとれた。 今年も聞こえるだろうか。あの懐かしい音が。 アパトサウルスは待った。 待ち続けた。 波打ち際の砂に立ち、首を長くして。 冷たい海のざわ... 続きをみる

  • なにがなんでもプロ野球

    練習試合から連れ帰った息子がため息をひとつ。ショゲきっている。 わたしは、特製の栄養ドリンクを渡し、息子を元気づける。 「監督は、おまえのつかい方をまったくわかっていないんだ。おまえのせいじゃない」 ゴクリと飲んで、息子はまた、ため息をついた。 「おまえの素質を見抜いていれば、レギュラーじゃなきゃお... 続きをみる

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