ショートショートのムラゴンブログ

  • エトピリカ

    「小さい二人は返してやろう。だが上の二人はわれわれがいただく」 「そんな理不尽な!四人ともうちの子どもたちだ。四人とも返すのがスジだ」 「それはそっちの理屈だろう」 プツッ・・・ツーツーツー 父親が受話器を置く。警部が部下に確認する。 「逆探知はとれたか?・・・時間が足りない?畜生!」 警部は苛立ち... 続きをみる

  • 鏡開き

    首都上空に、巨大円盤が出現した! 空を見上げた若者たちが叫ぶ。 「な、なんなんだコイツは!鏡餅にそっくりじゃん!」 それを聞いた年寄りたちは笑った。 「何を言うとるか、コイツのどこが鏡餅じゃ。日本古来の鏡餅は、こんなウ○コのような形ではないわ!」 それを聞いた若者が早速キレた。 「ジジイ、何言ってん... 続きをみる

  • 七草ルーレット

    「生徒諸君、あけましておめでとう」 「先生、まだ冬休みですよ。なんで登校させたんですか。まさか、お年玉?」 「ハ×5、正月早々冗談はヨシコさんだよ。薄給の公務員に金銭をせびってはいか~ん。今日呼んだのは他でもない。諸君に七草粥をふるまいます」 「七草粥~?野草入りのお粥でしょ?みんな、帰ろ~」 「ジ... 続きをみる

  • おみくじを引こう!

    石段をのぼっていくと、社が見えてきた。 子どもの頃から、初詣はここと決めている。 出店ひとつ立つわけでもない小さな社だが、ここの佇まいが好きだ。 ポケットから硬貨数枚を取り出して賽銭箱に投じ二礼二拍、掌を合わせた。 こうして祈っていると心の奥まで澄みわたり、静謐な気分に満たされるから不思議なものだ。... 続きをみる

  • お年玉

    「お父さ~ん、お、と、し、だ、ま!」 笑顔でお年玉をねだる娘。可愛さにほだされて私はポチ袋を渡す。 「なあ、いいかげん大人になってくれないか」 今年も言ってはみたものの、まったく効果なし。 クリスマスと正月をさんざん楽しんだ娘は今年もまた、冷凍睡眠カプセルへと戻っていく。 死のうと思っていた。 こと... 続きをみる

  • アンドロイドは初夢を見るか?(2013)

    あけましておめでとうございます。 え~昔、江戸は神田に虎蟲というカラクリ師がおりまして、アンドロイドとなかよく暮らしておりました。 さて、元旦の夜のことです。 「これ、メカ吉」 メカ吉ってぇのはアンドロイドの名前でございます。 「ヘイ、旦那様、御用デスカ?」 「お前、夢を見たことがあるかい?」 「イ... 続きをみる

  • 『笠地蔵』

    ややむかし。 いろいろあっておじいさん、雪の中、笠を手にとぼとぼ家路についておりました。 と、目の前に例のごとく、六地蔵が。 「こりゃあなんとも、さぶかろうなあ。そうじゃ、この笠をかぶりなされい」 お地蔵様に降りかかった雪を払い、笠をかぶせようとした、その時。 おじいさんの頭に、『笠地蔵』の話がよみ... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第十夜)

    こんな夢を見た。 瀕死の庄太郎が戻ってきた。 豚に誘われるままについて行った先は崖の上だったそうだ。 そこで幾万の裸女の群れに襲われたのだという。 鼻を鳴らして迫る牝豚を自慢のステッキで退けること七日六晩。 精根尽き果て杖先を舐められてしまった。 ほ~ら豚と女、置換するとこんなにエロい。 (青空文庫... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第九夜)

    こんな夢を見た。 ざわざわ胸騒ぎが治まらない。 なんだ、俺のベルトに紐が結わえてあるじゃないか。 俺の浮気癖が治るようにと、妻がお百度参りをしたせいだ。 通勤電車内を見渡すと、みんな紐がついている。 みんな一緒なら安心だ。どう?今夜も飲みに・・・。 途端、ベルトの紐をグイと引かれた。 (青空文庫・夏... 続きをみる

  • ダイブツマン最終回

    作務を辞し、安念は叉手当胸にて庫裏へと向かった。庫裏の陰、時同じく掛塔する同夏、談念は待っていた。 互いに一瞥合掌、剃頭を低頭。眉目秀麗なる安念、皆を惹きつけてやまぬのはうわべだけではない。 「安念先輩、僕は人間じゃないんだ。ダイブツマンなんだ。たまげただろう?」 「うぅん、談念が人間だろうと人間じ... 続きをみる

  • アナタ

    1956年、日本初の南極観測隊を乗せた「宗谷」が出航した。翌年、南極大陸に上陸した彼らは昭和基地の建設に取り掛かる。 そして2月。西堀副隊長以下11名の越冬隊員を残して「宗谷」は日本に向けて離岸する。 越冬は熾烈を極めた。最低気温45度、最大風速61メートル。 不用意に棟を数歩離れただけで遭難してし... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第八夜)

    こんな夢を見た。 床屋に入ると、四角の白い部屋だった。 「すみません。時計が止まってまして」 親爺が髪を切るがいっこうに短くならない。 そういえば往来のパナマ帽の男も金魚売りもぴたりと動かない。 どうやら止まったのは時間のほうらしい。 時間などもう気にする必要がないと思うと無性に嬉しい。 (青空文庫... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第七夜)

    こんな夢を見た。 巨大宇宙船に乗っている。 果てしない空間を航行しているが、いったいどこへ行くともいつ着くとも皆目わからない。 異星人ばかりの船に俺の居場所などなく、憂鬱のあまり宇宙に身を投げた。 宇宙を漂っていると腹の虫が鳴いた。 俺自身が宇宙船の腹の虫だったのかもしれない。 (青空文庫・夏目漱石... 続きをみる

  • 風船

    放たれた風船は、一斉にふわりと浮いた。 若鮎の群れが身をくねらせて我先に進むように大空に向かって。 上昇していく風船が、ビルの窓ガラスに映る。 赤いのや、青いのや、黄色いのや。 色とりどりの風船たちを見つめる。 いったいどれがボクなんだろう。 そう思って、初めて自分が風船であることに気がついた。 風... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第六夜)

    こんな夢を見た。 超有名な運慶が仁王像を彫るパフォやってんで、出掛けてみたらも~黒山の人だかり。 運慶ほどのプロは、そもそも木の中に埋まっている仁王を彫り出すんだってさ。 「で、どうやって仁王像埋まってる木材を見分けんの?」 運慶、木材をクンクン嗅いで、 「こいつが・・・」 (青空文庫・夏目漱石の『... 続きをみる

  • # ショートショート
  • やびしさんの夢十夜(第五夜)

    こんな夢を見た。 学校に間に合わない!急ぎに急ぐがこのぶんでは遅刻だ。 そうだ。恋人が私を待っていることにしよう。 敵の武将に捕らえられ、死刑の前にひと目私に会いたいと願うイケメンの武者が。 急げ、私! あともう少し! そのとき足がもつれて転倒、顔面直撃。大の字でチャイムを聞く。 (青空文庫・夏目漱... 続きをみる

  • 箱の中

    ヘンリー神父は、ボクシングデーのために匿名の者から寄せられた箱の山を見つめて困惑していた。 これだけの量も大きさ初めてなら、立派な包装紙やリボンで飾られているのも初めてだった。 例の男から贈られた箱にちがいない。 半年前の暑いさなか、男は教会に現れた。 貧しい教区の小さな教会の説教に訪れるのは、生活... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第四夜)

    こんな夢を見た。 ステージの上で親爺がヒョロヒョロと笛を吹いている。 しかし黒布を掛けた台から蛇が現れる様子はない。 ステージから親爺がふいと立ち去ると、蛇見たさに追いかける。 柳の下を抜け、川の中へ。そのまま二度と出てこない。 赤い蛇、緑の蛇はもちろん、人間の頭部さえも。 (青空文庫・夏目漱石の『... 続きをみる

  • ザ・大掃除!

    もうじき大晦日。アパートの大掃除、やっちゃうか。 なにせ、男ヤモメのひとり暮らし。蛆がわくほどじゃないにしても、このままじゃゴミ屋敷だ。 今年の正月も特別予定なし、寝正月と決めこんでるが、快適なスペースは確保せねば。 まずは冷蔵庫、次にレンジ、換気扇、窓拭き・・・とやっているうちにエンジンが掛かって... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第三夜)

    こんな夢を見た。 暗い森を歩いていく男の背中に、俺はしがみついている。 どうやら父親らしい。だが父親のくせに、俺を捨てようなんて思ってやがる。 捨てるもなにも、百年前、文化五年の辰年に杉の下でお前は俺を殺したじゃないか。 やっと思い出したか?ほ~ら、ずっしり気が重いじゃろ? (青空文庫・夏目漱石の『... 続きをみる

  • 2012年人類滅亡?

    2012年12月25日・・・。 なんで? なんで、12月25日? マヤ暦によると、2012年12月21日~23日までの間に、人類は滅亡すんじゃなかったの? マヤ人っちゃんとやろうよ、ちゃんと~! ボクはすっかり今週がないつもりだったのにぃぃぃっ。 先週末、意中の深雪を体育館の裏に呼び出してこくった。... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第二夜)

    冷蔵庫を覗いて、 「おまえは侍であろう。侍ならば悟れぬはずがあるまい」と和尚が挑発する。 さらに、「チンが鳴るまでに悟れねばクズじゃ」とまで云う。 怒り心頭、悟りと和尚の首を引き替えにする覚悟でレンジへ入室。 チン。 和尚は、アッツアツの「無」を取り出すのに四苦八苦。 (青空文庫・夏目漱石の『夢十夜... 続きをみる

  • やびしさんの夢十夜(第一夜)

    こんな夢を見た。 「百年待っていてください」と言って妻が息をひきとる。 幾日幾晩と待ち続けているうちに百年が経っていた。 おや?埋めた土からニョキニョキ女が生えてきたじゃないか! 妻ではない。吉永小百合(百歳)。 冷たい露も滴る、楚々とした立ち姿。 まだイケそうである。 (青空文庫・夏目漱石の『夢十... 続きをみる

  • 遠距離

    何度時計を見上げただろう。その瞬間が待ち遠しくて、もどかしくて。 またしてもボクはチューニングダイヤルを微調整してしまう。 ついに午前2時00分。スピーカーに全神経を集中する。 いつものオープニング音楽。そして・・・彼女の声! 優しい囁きが耳をくすぐる。その声に癒されてボクの心は温まっていく。 どん... 続きをみる

  • 霧笛

    赤い光、白い光、そして赤い光。点滅を繰り返す灯台をアパトサウルスは見つめた。 霧は濃さを増していたが、岬の岸壁と、その突端に立つ灯台の黒い影ははっきりと見てとれた。 今年も聞こえるだろうか。あの懐かしい音が。 アパトサウルスは待った。 待ち続けた。 波打ち際の砂に立ち、首を長くして。 冷たい海のざわ... 続きをみる

  • なにがなんでもプロ野球

    練習試合から連れ帰った息子がため息をひとつ。ショゲきっている。 わたしは、特製の栄養ドリンクを渡し、息子を元気づける。 「監督は、おまえのつかい方をまったくわかっていないんだ。おまえのせいじゃない」 ゴクリと飲んで、息子はまた、ため息をついた。 「おまえの素質を見抜いていれば、レギュラーじゃなきゃお... 続きをみる

  • ニットの人

    「あの、ボク、ニットのキャップ編んだんだ。これ、プレゼント」 「わあ、すご~い。ありがと~」 彼って編み物男子なんです。 自宅に編み機さえ持ってるの。あたしよりずっと上手。 ニットの帽子、ニットのマフラー、ニットのセーター、な~んでもござれ。 でもなあ、イマイチ趣味、合わないんだよなあ。 綺麗にラッ... 続きをみる

  • お歳暮、どうぞ

    お歳暮が届いた。 ただのお歳暮じゃない。依頼主欄には、不倫関係を解消したばかりの女の名前。 しかも、単身赴任先のアパート宛てに、平日の夕方の帰宅どき、時間指定の宅配で。 品名欄は未記入。やけに大きく、大きさ相当に重い。 特大の粉末洗剤?食用油セット?いったい何を送ってきたんだ? 宅配業者が上がり框に... 続きをみる

  • 投票、行きました?

    ああ、今度の衆院選、清き一票を誰に?どこの政党に? 現政権政党は内輪でウダウダやっててげっそりだし、旧政権政党はバラマキを餌に政権奪取しか考えてないし。かと言って、第三局つっても党利党略でひっつきもっつき。思想信仰はゴメンだし・・・どこに投票すりゃあいいんだあ!? おれたち国民は、長期ビジョンがもて... 続きをみる

  • 地獄めぐり

    「皆様、お待ちどおさまでした。ではこれより地獄めぐり観光バス、発車いたします」 ブッブー。 「ここは名高い流川~ 情けも篤い湯の街の~ メインストリートの大通り~ 旅館商店軒並び~ 夜は不夜城でございます~」 久しぶりだなあ、地獄めぐり。地獄めぐりといえばやっぱ亀の井観光バスだよな。 「次はその名も... 続きをみる

  • AKR47

    いや~あん時はクリビツだよ。いきなり殴ってくんだもん。 心あたり?浅野くんがいろいろ言ってんの?逆恨みだよ、んなの。 第一、あのころ浅野くん、ディレクターでしょ?プロデューサーのボクにタテツクなんてやっぱご乱心だよ。 嘘の撮影時間を教えた?衣装を変えさせた?スタジオの背景を金屏風に変えさせた?セット... 続きをみる

  • 一寸先は

    気がつくと、地下室らしき部屋で椅子に縛られていた。 今朝、後部座席に潜んでいた何者かに布切れで口と鼻を覆われて意識を失った。 これは誘拐なのか? 「気がついたようですな。驚かせてすみません」 蛍光灯の下、青白い顔が覗いた。 年配の男。見覚えはない。身にまとったシルバーのガウンには、見たこともない幾何... 続きをみる

  • シロクマのことだけは考えるな

    「なるほど。あなたは女性上司からさんざん苛められ、女性不信に陥っているのですね」 カウンセラーの男は、穏やかな目でボクを見つめた。 「そうなんです。彼女のひと言ひと言がいちいちムカつくんです。腹が立って腹が立って、家に帰ってもまた思い出して腹が立って。夜、眠れないことさえしょっちゅう」 「ずいぶん腹... 続きをみる

  • テトロドトキシン

    「ね?ふぐ刺し、食べる?」 「え?あんの?食う食う!」 週末、また『下関の女』のアパートに上がりこんでしまった。 もう終わらせたいと思ってるんだが、そう言い出すのも億劫で、ズルズル、ズルズル。 「お、うまそー!」 半透明の白身をすくいとってポン酢をつけて口に放りこむ。 このプリプリした弾力。それに、... 続きをみる

  • 三億円盗みました

    イッテ~!!後頭部を強打した。 えっと、何してたんだっけ?てか、ここどこ?俺だれ? あまりの衝撃に記憶が飛んじまった。 どうやらここはガレージの中。後ろ頭を触ると、痛!コブができてる。 室内を見回すと徐々に記憶が戻ってきた。 白く塗装した盗難バイク、逃走用車両。作業台の上には警官の制服、磁石付き発炎... 続きをみる

  • 終わらない地図

    三十半ばの頃、久しぶりに兄貴の家に遊びに行った。 勧められるまま、ビールを酌み交わしているうちに日が暮れた。 兄嫁が兄貴に心配げに耳打ちする。どうやら、甥っ子たちの帰宅が遅れているらしい。 「そのうち戻るやろ」と鷹揚に構えていた兄貴が時計を見あげた頃、玄関から兄嫁が甥っ子たちを叱責する声が聞こえてき... 続きをみる

  • 遺産相続トラブラー

    資産家、時波源一郎氏の書斎。帰省した息子と娘が源一郎に折入って話があると言う。 「おいおい、二人とも何年も実家に寄りつかなかったのに。今日いちにち、二人そろって孝行三昧、どういう風の吹き回しだ?」 兄が咳払いひとつ。 「実は父さん、父さんは一年後に亡くなるんです」 「それは急な話だな」 「そうなのよ... 続きをみる

  • 猫はしゃべりません

    「マミちゃん、マミちゃん」 だれかに呼ばれて、目がさめました。いったいだれ? 部屋の中にはだれもいません。ネコのマロン以外には。 「おかしいなあ。たしかに呼んでいたのに」 「ふふん、ボクだよ~」 え?ボクだよ~って・・・ 「マ、マロン!あなた、おしゃべりできるの?」 マロンがニヤリとわらいました。 ... 続きをみる

  • 壊れてる・・・

    某家電量販店のサービスカウンター。ドッコイショ!っとプリンタ一を置いた。 「お客様、こちらは?」 「見ればわかるだろう。この店で買ったキャプソンのプリンターだ。突然動かなくなった」 「ちょっと見せていただいてよろしいですか」 「ああ、頼む」 店員がチェックを始める。 それにしても、どうしてプリンター... 続きをみる

  • 無理矢理イブ

    バイトの片付けを終えて外に出ると、もうすっかり夜になっていた。 街じゅう、クリスマスイルミネーションとクリスマスソングと恋人たちで埋めつくされている。 そっか、今夜はイブか。どいつもこいつも、浮かれちゃって。 日本人が日本人ばなれしてしまう、一夜かぎりの勘違いワールドだよ、まったく。 コンビニでおで... 続きをみる

  • クリスマスの島

    一年じゅうクリスマスの島がありました。 他の場所がクリスマスの日以外、毎晩がクリスマスイブで、毎日がクリスマスの平和な島でした。 そんな平和な島で、ある晩、大事件がおきたのです。 なんと、泥棒が王様のお城の庭に忍び込み、島でいちばん大きなモミの木の、てっぺんの星を盗んだのです。 さあ、島は上へ下への... 続きをみる

  • 漂流者N

    気がつくと、砂浜に打ち上げられていた。 上体を起こすと、気配にシオマネキが一斉に身を隠す。ここはどこだろう?そして私は誰? 腕を見ると、朽ちた棒切れのようだ。よろよろと立ち上がり、陸地へ向かう。 潮溜りを見つけ、わが身を映した。 思っていた以上に、痩せ衰えた老人がこちらを見ている。 伸び放題の白い髭... 続きをみる

  • 夢・・・!?

    バシン。 痛~っ、ひっぱたかられて、目から火花が。ク~なんだよ、もう! 「何寝ぼけとんじゃい!夢ぇ見るのもたいがいにせい!」 目を開くと、なんと目の前にサンタクロースが。しかも、そうとう不機嫌そう。 「あの・・・ボク、今まで夢を見てたんですか?」 サンタがうなずく。 「クリスマスじゃの、サンタじゃの... 続きをみる

  • ぬるま湯

    最近、妻の料理が不味い。 ボクの健康を気づかっているからなのだろうか。 塩分ひかえめ、糖分ひかえめ、辛さひかえめ、味ひかえめ。 素材の風味を活かしてるって言やあ、そうなんだけど。 今月に入って不味い率がさらにアップしている。 かといって、面と向かって言えないし。 かといって、自分が作る!なんてできゃ... 続きをみる

  • 皇帝ダリア

    野崎健二郎さん(61歳・人間) オヤオヤ。 今朝も登校中の小学生たちが見上げてワイワイ騒いでおるわ。 つられてお隣のサラリーマン氏も見上げておる。べっぴんOLまでが立ち止まって、おくちをポカ~ン。 どうじゃ~、すごいじゃろ~!♪屋根より高い♪皇帝ダリアじゃぞ~! そびえ立つ雄姿を仰ぎ見て、その頂上へ... 続きをみる

  • 矢菱さんの今昔話

    山から帰ると、おまえの母さんが桃を食っとったんじゃ。 薄皮を剥いた果実から滴る蜜が手から肘からポタポタポタ。 唇から滴る蜜を上目づかいに手の甲で拭い、白い喉をゴクリ。 エ、エロい! わしはン十年ぶりに劣情をもよおしてのう、食っちまったのよ。 こうして生まれたのが太郎、おまえじゃ。 席を外した彼女の携... 続きをみる

  • 受験生に捧ぐ

    やばい。ホント、やばいぞ、オレ。 真夜中。この期に及んでやり残しだらけの受験問題集に目をやる。 ああ、どうしよう。 こないだの模試の判定も黄色信号だった。 「部活をやめた連中が本腰入れてくる時期だからな」 先生は焦るなというけれど、そりゃ焦るよ。 ホントにオレってA高、受かんだろか?・・・。 「ハハ... 続きをみる

  • 亀子

    ハハハ、こいつね、亀子っていうんです。 縁日の出店で買ったんですよ。ちっちゃくてね。500円玉くらい。 なんか精巧なミニチュアのフィギュアがそのまんま動いてるみたいでさあ。 そうそう。彼女が買ってくれってせがんだんです。 まだ知りあったばかりだったなあ。 鼻緒がズレて歩けなくなった彼女をおぶって帰っ... 続きをみる

  • 同時多発テロ

    地球時間0848。木星軌道ステーションからの緊急連絡。 「野々村君、落ち着いて聞いてくれたまえ。地球からの情報だ。君が搭乗しているペガサス号にはテロリストによって爆弾が仕掛けられている」 ミヤギ長官の話によると、同時多発テロ計画が実行直前に発覚、この宇宙船も標的のひとつだと判明したらしい。 「残り時... 続きをみる

  • 最終回

    秘密の地下作戦室。ビリヤード台の周囲に、黒ずくめのマフィアの大物たちが集まる。 「おい、聞こうじゃないか。秘密プランとやらを」 ベビーフェイスの赤毛の巨漢がニヤリと笑い、台の下に仕込まれたスイッチを押す。壁が反転して巨大モニタが出現した。 「諸君、では説明しよう。今回、われわれが狙う獲物はコレだ」 ... 続きをみる

  • 不倫発覚、そのとき妻は

    いつもは不倫相手を連れて行く鮨屋のカウンター席。無意識に妻の小皿に醤油を注してから、ギクリとした。 バ、バレたか? ことさらに平静を装って、先ほどまで話していた庭の花壇の話題をつなぐ。 「気温の低い時期に耕しておくのがいいんだ。週末、耕してやる」 「お忙しくないんですの?」 「まあなんとかする。堆肥... 続きをみる

  • 勤労感謝状

    今日は勤労感謝の日。遊園地は家族連れで溢れている。 そんな中に、場違いなグラサンの不審な男の姿。 俺たちが追っている容疑者だ。 「先輩、薄皮白あんぱん、も一個食っていいっすか?」 新人の早見がパンをつまんだ。 「食ってもかまわんが、牛乳ビン片手にパンを頬張るのはやめろ。張り込みがバレバレだ」 「すん... 続きをみる

  • ニューハーフ

    「ア、気がついたぞ!」 「大丈夫?タカシ君!」 目を開けると、大勢が心配そうに顔をのぞきこんでいた。 上体を起こそうとすると、医者らしき男が制する。 「急に起きちゃいかん。あれだけの事故に遭って大手術を終えたあとなんだから」 事故?大手術?いったいボクの身に何が起きたんだ? あれ?・・・さっぱり思い... 続きをみる

  • ゴルフバッグ

    死体を発見してしまった。 月曜日の朝の出勤中。川沿いの市道を運転していたら、河原に倒れている女性を見つけてしまったのだ。 道路脇に車を寄せると、小雨の落ちる車外へと出た。 自分ひとりでは不安なので、行き交う車を呼び止めようとしたが、忙しい時間帯、誰も止まってくれない。 とにかく確かめてみよう。 河原... 続きをみる

  • LOVE将棋

    「あの・・・ボク、好きな人がいるんです。職場で知り合ったいっコ先輩の女性。 なんかもう彼女しかいないって熱をあげてコクったら、あっけなくOK。 で、つきあいはじめたんだけど・・・ 気のせいかもしれないけど、なんか別の男がいるみたいな気がするんです。 問いただしてフラれるのもコワイし、気にはなるし。 ... 続きをみる

  • 水槽の脳

    鍵をかけ忘れたドアを押すと、軋んだ音を立てて開いた。 暗い室内には化学薬品のすえたにおいが充満していて、思わず顔をしかめた。 恐る恐る研究室の中へ一歩、二歩。 博士は・・・博士はいったいここで何を研究しているんだろう? そのとき、突然室内に照明が灯され目が眩んだ。 「ここで何をしている?」 背後から... 続きをみる

  • ショートショート

    広大な宇宙を航行することウン十年、未知の『星』に着陸した。 ロケットから降り立って、その極めてシンプルな景観を見渡す。 地平線とクレーターがペンで描かれているだけの単純化された白黒の景色。 まるで真鍋博か和田誠の挿絵みたいだ。 すると、目の前にいきなり宇宙人が現れた。宇宙人も単純化されていて全然怖く... 続きをみる

  • 七五三

    ♪通~りゃんせ、通りゃんせ♪こ~こはど~この細道じゃ♪ おや? 歌声に誘われて玄関ドアを開くと、真っ赤な振袖姿の女の子が立っています。 ♪天神さまの細道じゃ♪ちょ~っと通してくだしゃんせ♪ 女の子はボクの腕をするりと抜けて家の中へ。 「この子、だれ?」 ♪御用のない者、通しゃせぬ♪ 妻が玄関をのぞき... 続きをみる

  • いやいやようちえん

    ようちえんいくの、いやや。ようちえんいくの、いやや。 ようちえんいくの、いややん。 ようちえんいくの、いやや。ようちえんいくの、いやや。 もう、ようちえんいくの、いやや。 園長先生におはようのあいさつするのがいやや。 イチゴが好きやのにモモ組やからいやや。 ぼくのイスのマークがへびさんやからいやや。... 続きをみる

  • インタラクティブ童話劇場

    モグモグの森に実りの季節がやってきました。 ところが今年は様子がちがいます。異常気象のせいで、森の木々がみんな立ち枯れています。 リスは、毎年たくさん実をつけるザワザワの木を見あげました。 今年はちっとも実がならなかったようです。葉っぱがカサカサにちぢこまっています。 「リスくん、よく来たね。だが、... 続きをみる

  • 幸福の手紙

    孤島に漂着、一ヶ月。 食料どころか水さえも底をついた。乾ききった舌が異物のようだ。 虚ろな目で海を眺めていると、なにやら波間に光る物が・・・。幻覚か?・・・いや! 壜だ。壜が流されてくる! 近づいてきた壜を手繰り寄せる。透明な壜の中には手紙が入っている。 コルク栓を抜くのももどかしく、手紙を開く。え... 続きをみる

  • 漆黒の日

    誰が想像しただろう?未来が漆黒だったなんて。 窓の外に屹立するビル群はすべて真っ黒に塗られている。 高架線も、その上を走る車の列もすべて真っ黒だ。 窓の外を眺めていたボクの背中に、裸の妻が抱きつく。 「青い海の夢を見たの」 「青い海なんてどこにもないのに?」 ボクは彼女の華奢な腕をそっと撫でる。その... 続きをみる

  • 遠隔輸送機

    気がつくと、窓のない白い部屋でベッドに寝かされていた。 覚醒を感知したのか、ベッドがゆっくりと起き上がり上半身を起こす。 自動ドアがせりあがり、エンジニアたちが入ってきた。 おや?パーフィット博士も。どうしてここに? 「博士・・・まさかあなたも火星に?」 博士の顔が曇る。何か、問題でもあったんだろう... 続きをみる

  • 11月11日はポッキーの日

    11月11日はポッキーの日! 泉の精「あなたが泉に落としたポッキーは、どのポッキーですか?」 きこり「その、いちばん見すぼらしいヤツだけど」 泉の精「なんと正直な方でしょう。ポッキー三本全部さしあげます」 きこり「湿気たポッキーなんて一本たりとも御免です」 11月11日はポッキーの日! 「あなたが泉... 続きをみる

  • マトリョミン

    「大丈夫。大丈夫だからね」 分娩室に入る前、母さんが汗に濡れた髪を撫でながら励ましてくれた。 陣痛の間隔がさらに短くなる。 助産師さんたちがテキパキと準備している。 痛みがさらに増し、さらに長くなる。合間合間に喘ぐように呼吸する。 「子宮口全開、赤ちゃんの頭が見えてきましたよ」 「もっといきんでくだ... 続きをみる

  • ラ・メール

    群青の空に浮かぶ雲がモコモコの羊たちの群れみたいだ。 どこで聞き覚えたんだろう?さっきから『ラ・メール』が頭の中でリフレインしている。古いレコードのチリチリ音まで。 ボクの左手には、さっき拾った白い貝がら。 そして右手は、母さんの柔らかい手に握られている。 ボクたちが帰ろうとしている堤防が、ずっと遠... 続きをみる

  • トンネル

    出口のない長いトンネルを歩いている。 もう何日も歩き続けているが、いっこうに出口は見えない。 いつからこうしているのか、さっぱり思い出せない。 果てしなく続くトンネルなんて、何らかのメタファーなんだろうか? 人生なんてトンネルを歩いているにすぎないんだぞ、みたいな? 少なくともこんなことを「思う」わ... 続きをみる

  • 119

    「ハイ、こちら119番です。火事ですか?救急ですか?」 「あ・・・つながった」 「つながったて、あなたが119番におかけになったのでしょう?」 「かけたんだけど、まさかつながるなんて」 「まさかって、緊急通報用電話番号ですから。用事をおっしゃってください。火事?救急?」 「う~ん、火事であり救急であ... 続きをみる

  • 奥様Dの激痛

    ここは、とある郊外型ショッピングモール。近隣には新興住宅地やら昔ながらの洋館やらが点在し、なかなかの賑わいである。 今日も今日とて授乳室では、ショッピング大好きの若奥様四人が井戸端会議に花を咲かせていた。 奥様A「最近、お肌にハリがなくなっちゃって~」 奥様B「そんなことないよぉ」 奥様C「でもDさ... 続きをみる

  • ビバノンノン

    『思わずビバノンノンって言っちゃう入浴剤』~!? なんだあ、このネーミングは? 最近、こうゆうインパクト狙いのネーミングって多くない? こんなんに限ってたいしたことね~んだよ、実際。 よ~し、ひとつ買ってためしてやろう。でダメダメだったらクレームつけてやる~。 つってその晩、早速ためしてみました、入... 続きをみる

  • 金閣銀閣

    天井から吊るされた三蔵法師と猪八戒を眺め、金閣兄貴が舌なめずりをした。 「おい、銀閣。丸々した豚はお前にやるぞ。わしはこっちの坊さんだけで・・・」 「待ってくれ、兄さん。徳を積んだ坊さんほど美味い物はないと聞くぜ」 兄貴のヤツ、三蔵法師を独り占めにしようだなんて。 十代に渡って修行に勤めた三蔵法師を... 続きをみる

  • 野菜か?果物か?

    「で?まだ口を割らないのか?」 「はい。どうあっても自分は野菜側だと言い張っております」 ゴーヤー秘密警察長官は、忌ま忌ましげにハバネロ書記長に報告した。 二人は、マジックミラー越しに尋問を受けている美女を見つめた。 いい女だ。隠し部屋にまで香ってくる、このみずみずしい香り。野菜なんてありえない。 ... 続きをみる

  • スカイフォール

    日本人で初めての航空事故生還者は、相原四郎海軍大尉である。 1909年12月5日、旧制第一高等学校キャンパスにて、フランス人ル・プリウールと相原四郎海軍大尉によってグライダー実験がおこなわれた。これまでにも飛行実験を繰り返し変人扱いされていたル・プリウールが、同じ青山に住んでいた相原に初めて会ったと... 続きをみる

  • 魔のバミューダトライアングルの謎を解け!

    桶津「皆さん、皆さんは、なにゆえ今回のお話がクライブ・カッスラーの海洋冒険小説の邦題みたいなのか?と疑問に思われているでしょうな」 玖馬「そんなこと気にもしとらん。で?我々を広間に集めたということは、桶津さん、事件は解決したのかね?麻衣&亜美の行方は?」 桶津「ハッハッハッ、焦らない、焦らない。状況... 続きをみる

  • マイ・コピー

    「野々村さん、お待ちしておりました」 研究所の前で博士と助手が待っていた。 検査着に着替えるとすぐに実験室へ。 これが実験室?美容室みたいな電動シートが中央にひとつ。シンプルな部屋だ。 「お掛けください」 助手から書類を渡され、最終確認のサインをする。 天井からするするとヘルメットが下りてきた。 内... 続きをみる

  • 太平洋ひとりぼっち

    イルカたちが水しぶきをあげてジャンプしている。 艶やかに輝く、しなやかな体。まぶしく空中に飛散する水滴。 光線に目を細めながら、微動だにしないイルカたちの影を見上げた。 何年も前に見上げた時と寸分違うことのない情景。 船は近い。 確かに、水平線の彼方にポツンと小さく船影が見えている。 あそこまで歩く... 続きをみる

  • 3分間電話

    カップラーメンにお湯を注いでいたら電話がかかってきた。 最悪のタイミング。 ちょっと待っとけ。無視して内側の線ぴったりに熱湯を注ぎ、フタをする。 携帯を手にとる。オヤ、『非通知』?誰からだ? 「ハイ、もしもし」 「オレだよ」 「オレって、どなた?」 相手がため息をついた。 「オレに決まってるじゃない... 続きをみる

  • 地下鉄999

    地下鉄のショートショート333字×3つ・・・そんなわけで地下鉄999でーす。 「123号に爆弾を仕掛けた。われわれの指示に従わねば爆破する」 地下鉄に爆弾だって?地下で爆発炎上すれば、大惨事は避けられない。 「よ、要求は?」 「最大加速後、最高走行速度を5分維持するように123号に指示しろ」 それが... 続きをみる

  • 続エマニエル夫人

    第1作『エマニエル夫人』はこちら。 「ナマステ~」 「ナマステ~」 博士は胸の前で掌を合わせて会釈し、探査チーム隊員たちと挨拶を交わした。 赤道直下の陽射しの欠片が、生い繁る椰子の葉陰をぬって散り散りに降り注いでいる。 熱帯モンスーン気候による長い雨期が終わり、乾季が訪れていた。 隊長が素焼きのカッ... 続きをみる

  • ジェームズ・ボンドな男

    その男は颯爽と店を出て行った。 その背中を飽きることなくわたしは見つめたわ。 すごいカッコイイ男。モデルか俳優みたい。いや、もっと危険な感じ。 そうだ。あのスパイ映画のジェームズ・ボンドにそっくりだった。 スタイルもイケていたけど、仕立てのいいスーツを着ていたもの。 年はいくつくらいだったんだろう?... 続きをみる

  • レントゲン

    彼女を見かけた瞬間、ボクは恋に落ちた。 透けるような薄桃色の肌の上を青い血管が走っている。 野辺にたゆたう陽射しの香りがここまで届きそうで、思わず深呼吸する。 一目惚れという言葉は、この瞬間のボクのために用意されていた。 彼女がボクの眼差しに気づく。そして目を逸らす。 でも君はもうわかっているはず。... 続きをみる

  • 地底怪獣ゼミラ

    「淳ちゃん、大変よ!」 星川航空の事務所に由利子が駆け込んだ。 「ハハハ、相変わらず慌てん坊だなあ、由利ちゃんは」 「ホントなんだから。一平君!テレビつけて」 由利子に急かされてテレビをつけると、どのチャンネルも特別報道番組ばかり。 現場に押し寄せたレポーターたちはヘルメットを被り、緊張の面持ちであ... 続きをみる

  • ピーター・パン

    復活祭に近い穏やかな午後。ボクはウェンディに会いに行った。 「ボクだよ。迎えに来たよ。さあ行こう、ネヴァーランドへ」 でも、ウェンディは悲しい目でボクを見たんだ。 「ピーター、どれだけ長い間忘れちゃってるの。わたしは約束どおり待ち続けていたのに」 テラスの白い椅子に腰掛けたウェンディが、肩の毛織のシ... 続きをみる

  • エマニエル夫人

    博士は遺跡の奥に祀られた座像に目を瞠った。 「こ、これは・・・」 椅子に座し、片足をもう一方の膝上で艶やかに組んでいる。さりげなく片手を口元に添えた半裸の姿をしている。なんと神々しいお姿だろう。 「博士、これは一体?」 見覚えがあった。確か、これは・・・。 「これは、エマニエル夫人だよ」 「エマニエ... 続きをみる

  • カメラ

    アルバム編集に手間取って、遅い昼食をとっていると街に轟音が鳴り響いた。 テーブルが倒れ、食器が割れる音。客たちの悲鳴。 一瞬、身の危険を感じてひるんだが、カメラを握りしめると店の外に走り出した。 近くのビルからもうもうと煙が上がっている。逃げてくる会社員たち。ボクは走った。 ボクは写真屋だ。 プロに... 続きをみる

  • UNESCO

    「戦争は心の中で生まれるものであるから、心の中に平和のとりでを築かなければならないのです!」 UNESCO事務局長の力強い言葉が会場に響いた。 いや、ここに集う者皆の心に響いていた。事務局長は一心に見つめる聴衆の視線を確かめて、言葉をつないだ。 「互いの風習や生活を知らないことは、われわれの歴史を通... 続きをみる

  • となりの速記

    他部署との連絡会議に出ていたときのこと。 隣の同い年くらいの社員、メモ帳にひたすらペンを走らせている。その早いのなんのって。 覗き込んでみると、ミミズ文字が並んでいる。あ、これって速記文字だ。 ボクはといえば、今流行りのICチップ内蔵ボイレコで録音中。どうせ会議の要約を作らなくちゃいけない。 ボイレ... 続きをみる

  • 音姫さま

    よかった!音姫ついてるわ。じゃ早速・・・ 「ご利用ありがとうございます。流水音でよろしい方は1のボタンを・・・」 1よ!1に決まってるわ!早くしてよ! 「通常の音量レベルでよろしい方は1の・・・」 通常よ!早く~!! 「25秒でよろしい方は1の・・・」 ジャ~。 「あの娘は会社の後輩で・・・」ボクが... 続きをみる

  • ハウツー万歳

    「野々村君、今度の宴会のシメ、君にお願いするよ」 なんて、部長から頼まれちゃいました。社長も専務も出席する宴会ですよ。こいつは大役です。 「ではシメは万歳三唱で・・・」 「ン。頼んだよ」 というわけで、この大役お引受けしました。 そして当日。 「皆様、宴たけなわではございますが、これにて一旦シメとさ... 続きをみる

  • Trick or Treat?

    「Trick or Treat?」「Trick or Treat?」 な、なんでしょう、こんな晩に。子どもたちが家の外でなにやら騒いでいます。しかも、英語。 「なんじゃろう、じいさん。座敷わらしかのう」 「英語を話す座敷わらしは知らんなあ」 心配げに顔を見合わせます。 子どものいないふたりは、ずっと... 続きをみる

  • サーカスの夜

    灰色の老熊が玉乗りをする。火のついたリングを虎がのそりとまたぐ。 動物たちの荒い鼻息がここまで届く。 これがサーカスなんだ。 こんな田舎町にサーカスなんて滅多に来なかったから、職場で手に入れたチケットを父が意気揚々と見せた時は大喜びしたっけ。 でもワクワクしてたのは、サーカスの大テントを見上げてショ... 続きをみる

  • チョコレE.T.

    真夜中、皓々と降り注ぐ月明かりのもと、エリオット少年の長い影が畑に伸びています。 さっき聞こえた、不審な物音はなんだったのでしょう? 月が雲間に隠れふいに暗くなると、エリオットは身震いして歩みを止めました。 おや?何やら芳しい香りが。 香りに誘われるままに、歩み出した途端、 ブニュ・・・ 何やら柔ら... 続きをみる

  • ショートショート『石』

    きっかけ? 小五のとき。北迫の鎮守の祭りに母と出掛けた帰り道。 にぎやかな往来の端に、そいつは転がってたんだ。誰からも見向きもされずに。 それはまさに石だった。これまで見た、どんな石よりも石。 持って帰りたいと母に頼んだが、まったく取り合ってもらえなかった。 泣く泣くあきらめたんだが、その晩から石の... 続きをみる

  • ショートショート『ライト兄弟』

    「え?噺家のあっしがライト兄弟にインタビュー?へえ、生きてたんすか。長生きな兄弟もあったもんだねえ」 「バカ言っちゃいけねえ。タイムマシンを使うんだよ。1903年に行ってくんだよ」 とまあそんなわけで1903年12月17日のキティホークまで出掛けてまいりました。 砂丘を登って行くってえと、あらら見え... 続きをみる

  • ショートショート『幽霊ビデオ』

    「監督、霊が映ってます!」 先日撮影したアダルトビデオの編集中、スタッフの叫ぶ声。 営みを熱演する男女の背後に血まみれの女の顔が。 まちがいない、先週電車に飛び込んだ女優だ。 「どうしましょう監督~」 モニターに映る幽霊の顔を指さした。 「そっちのモザイクをこっちに移動しなさい」 「店長、この『本物... 続きをみる

  • ショートショート『バグダッド電池』

    瞠目したアヴィ・タイタの横顔が青白い光に浮かび上がった。 白い顎髭を伸ばした痩躯脆弱の老人だが、眼光だけは鋭い。 金属線の間に置いた指先がピリピリとするこの現象。 そして、間に繋いだ金属繊維が熱せられて光を放つこの現象を、なんと呼ぼうか? そうだ。 『電気』と名付けようじゃないか。 だが、この現象、... 続きをみる

  • ショートショート『フラフープ』

    なんだかまた最近、ブーム再燃らしいんですよ、フラフープ。 知ってます?腰をクネクネして回す、アレ。 昔、世界中で大流行したんですよ、1958年に。アメリカでブームになって同じ年には日本でも大ヒット。 売れに売れて入荷待ち状態。巷にはフラフープを回す老若男女が溢れ返って。すごかったんですから。 それが... 続きをみる

  • ショートショート『ノーベル賞のとり方』

    どうしてそんなにノーベル賞がほしいのかって? ほしいんだよ!ガキの頃から、世界最高の栄誉って憧れてきたんだから。 で、まあどうやったらとれるか、ず~っと研究してきたわけ。 まず、ノーベル賞ってのは、物理学・化学・生理学医学・文学・平和・経済学の6分野での世界的に顕著な功績のあった人物に贈られる賞なワ... 続きをみる

  • ショートショート『ハイビジョン』

    真夜中に目が覚めて、どうにも眠れずリビングのハイビジョンテレビをつけた。 こんな夜中にやってるの、ショッピングかドラマの再放送くらいかな。 と、映し出されたのは、私の顔。 え?どうなってんの?この自分撮り状態。どこかにカメラが? いやぁ、それにしてもどうだ、私の顔。 鏡みたいにしげしげと見る。 お化... 続きをみる

  • ショートショート『少年と犬、そして』

    近未来。 度重なる核戦争で、とうに廃墟と化した街。 見渡す限り、崩落した建造物の瓦礫が散乱する荒れ地を少年が歩いていた。 少年の後ろとなり前となりながら寄り添う、白い犬がいた。 そして、少年と犬の後ろに従うもうひとり・・・いや、もう一体。 ロボットである。 少年と犬、そしてロボット。 もうどれだけの... 続きをみる

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