ショートショートのムラゴンブログ

  • ショートショート『ながいもの』

    ありゃ何だ? イヤまったく最近の若いモンは。 通勤電車の車内、同僚の入山君とボクは思わず顔をしかめた。 鼻ピアスのパンク野郎が黒々としたモノを首に巻いている。 ソレは頭頂部から殿様のチョンマゲみたいに鎌首をもたげている。 趣味悪いねぇ。 どこがいいんだか。 それから日が経つに連れ、首に巻いた若者や学... 続きをみる

  • ショートショート『節分を終えて』

    先生「よい子のみんな~、豆まき、お疲れさまでした~」 よい子たち「おつかれサマンサー!」 先生「今年はよい子のみんなのために特別に鬼さんインタビューです」 よい子たち「やいの、やいの~」 先生「それでは赤鬼さん、青鬼さん、いま一度おゆうぎ室へご入場~!」(やんやの拍手) 赤鬼「赤鬼だぞう」(キャー)... 続きをみる

  • ショートショート『豆、まきました?』

    (狂言『鬼は内』より) 男「某、妻子も職を失ひ天涯孤独の身のうへなり。節分会とて祝ふ気にもなれぬ。えい鬼は内、えい鬼は内(泣)」 鬼ども「之は有り難きこと。今宵、何処も居場所なき故」 福ども「鬼どもの嬉し気なれば我らも来たり」 鬼・福ども「ちと手狭ぢや。男は外~」 社長「諸君、今や我らコンビニ業界が... 続きをみる

  • ショートショート『真冬に幽霊話』

    凍てついた道路がヘッドライトに浮かぶ。 道路端には厚い雪の壁、車輪の下で凍結した道が軋んだ音を立てている。 対向車もほとんど見かけなくなった。 「すいませんね、送ってもらっちゃって」 「いやぁ、岸田さんがいてくれて心強いくらいですよ」 本当だ。普段慣れているはずの通勤路が昨日からの吹雪ですっかり様相... 続きをみる

  • ショートショート『矢菱さんの文章リアリティ講座』

    正月元旦、初詣に行ったときのことです。 参詣者の列に混じってのろりのろりと進んでいました。 イカ焼き、とうもろこし、たこ焼きなどの露店が立ち並び、香ばしい匂いがそそります。 そんな中に、これまた定番の綿菓子屋がありました。 その店先、軒に下がった綿菓子の袋に目が吸い寄せられました。 なんだ、そりゃ。... 続きをみる

  • ショートショート『見えな~い』

    「野々村さん、最近、影薄くないですか?」 「木村君、失敬だな!」 外回りの途中、後輩のいきなりの無礼な言葉に憤慨した。木村が立ち止まりボクの足元を指さす。 はたと足を止める。薄い。確かに薄いじゃないか。 駐車場のアスファルトに木村とボクの影法師が並んでいる。 木村の濃い影とボクの薄い影と。微妙だが、... 続きをみる

  • 『すまり困、れそ』トーョシトーョシ

    。ためざ青てし出い思を分02す返り繰らかれこが分自はクボ 『すでのるけ続し生再逆を間分02らすたひが間時の中界世。すまし行逆限無、間分02が間時らか分02時01、日本。たしまし生発が故事の慮不に中験実ンシマムイタで所究研密秘学大ばつく』 。体一、だんな何 。だ者学理物な名有と臣大理総?え 。たっま始... 続きをみる

  • ショートショート『節分に向けて』

    ♪ピンポンパンポ~ン♪ 「来る二月三日、豆まき大会をおこないます。皆さんの中で、鬼の役を希望される方はふるってお申し込みください。なお、昨年同様希望者ゼロの場合は抽選で鬼を選びます。以上、鬼ケ島節分実行委員会からのお知らせでした」 「鬼だなぁ」 ♪ピンポンパンポ~ン♪ 「来る二月三日、院内豆まき大会... 続きをみる

  • ショートショート『レミング』

    いつからだろう?目覚ましが鳴る数秒前に目が覚めるようになったのは。 朝の時間は貴重だ。分刻み、いや秒刻みで歯磨き、洗顔、着替えに食事。 厳粛な儀式みたいに正確に、淡々と。 準備が完了したことを再確認。そして、ボクは職場に向かって加速した。 携帯プレイヤーをONにすると、昨日止めたところから再生が始ま... 続きをみる

  • ショートショート『ある日どこかで』

    ボクは恋をした。 食事も喉に通らないくらいの切実な思い。寝ても覚めても彼女しか考えられない。 陶磁器のように透きとおった艶やかな肌。 陽の光を詰め込んで結わえた眩しい髪。 魂が誘い出され吸い込まれていく碧眼。 口の端に笑みを浮かべた蠱惑的な口元。 ああ、そのほっそりとした指に触れることができたら。 ... 続きをみる

  • ショートショート『溶けるお父さん』

    今日は1月26日か・・・ってことは、一番風呂の日じゃん!よ~し、お父さん、一番風呂に入っちゃうぞ。 「ミコリ~ン、ミコリンも一緒に入ろ~」 「絶ッッッ対に嫌!」 こないだまで、父さんと一緒じゃなきゃ嫌だったのになぁ。いいよ、お父さんだけでいただいちゃうから。 チャポ~ン。 ハ~~、極楽、極楽。いいね... 続きをみる

  • ショートショート『催眠術』

    「え?催眠術?田中君が?」 ボクがそう問いただすと、田中君は声を落とせと唇に指を当てた。 田中君は最近うちの課に転属してきた。年も席も近いので飲みに誘ったら快諾した。 大衆居酒屋で湯割りを飲んでいたら、田中君がニヤリ、催眠術が使えると言い出したのだ。 「えー、マジで?」 田中君はうなずいて、カウンタ... 続きをみる

  • ショートショート『死刑』

    ボクが小学生の頃、午後の授業が終わったあとに反省会というのがあった。 明日の日課を連絡帳に写したり、係の連絡があったりするんだけど、 最後に必ず反省会と称して、クラスの誰かが吊るし上げられた。 有罪になった子は、バツそうじやグラウンド○周をやらされた。 司会の吉岡さんが教卓から呼びかける。 「今日の... 続きをみる

  • ショートショート『プレゼント』

    月を探査していたR国が世界に向けて発表しました。 「月でプレゼントの箱とメッセージカードを発掘!」 帰還中の探査船内の映像つきです。 無重力で宇宙飛行士の周りでフワフワ浮いているプレゼントの箱、そしてカード。 箱は、赤いリボンで結ばれてきれいにラッピングしてあります。 メッセージカードは、花柄模様で... 続きをみる

  • ショートショート『iceazukiさんからよろしく♪』

    入試会場の大学講義室はシンと静まり返っている。 鉛筆のカリカリ音と紙をめくる音にそして咳の音。 後方の席のボクは、他の受験者たちの背中をチラリと見た。 この教室だけでも五十人近い受験生がいる。しかも試験監督も十人近い。 いやはや困ったもんだ。例の携帯カンニング騒動のおかげで大学側もピリピリしている。... 続きをみる

  • # ショートショート
  • ショートショート『殺人事件書評』

    『嫉妬の典子氷弾殺人事件』 古本屋のワゴンに積まれていた本作を購入。新品同然なのになぜ?と思いつつ、題名をよく見て合点がいった。殺人事件の犯人、殺人の動機、凶器もトリックもぜ~んぶ題名に書いてあるじゃないか。というわけで読まずに古本屋に売りとばしてしまった。 『幽霊VSアンドロイド殺人事件』 幽霊や... 続きをみる

  • ショートショート『モルガンお雪』

    地球見物にやってきたモルガン星人が地球人の娘を見初めました。 娘の名を、お雪と申します。 祇園の芸妓、お雪には深く言い交わした地球人の男性、俊作がおりました。 何を望んで異形の宇宙人の求婚など受け入れられましょうか。 身請け金として、アンドロメダ星雲一個分ほどの莫大な金額を提示したのであります。 頑... 続きをみる

  • ショートショート『矢菱さんのとってもA和辞典』

    えーきゅう-きかん【A級機関】 A級人間だけで構成される秘密組織。 その存在はB級人間以下の人間の知るところではない。 エネルギー保存則・熱力学法則から存在を否定されているが、これもA級工作員の隠蔽工作による。 その存在はおろか組織名を知った者は、A級処分、つまり消される。 びー-しき『B式』 B級... 続きをみる

  • ショートショート『麦わら帽子』

    ばんごはんを食べていたら、ケイタくんのオバチャンが家に来た。 「ケイタが帰らないの。知ってるでしょう?どこで遊んだの?」 ケイタくんのオバチャンが鬼みたいな顔でボクを問い詰めた。 ボクは泣きべそをかいて、二本松の池だと言った。 父さんも母さんも鬼みたいになった。 二本松の池は、子どもだけで行ってはい... 続きをみる

  • ショートショート『臓器くじ』

    電話に出ると、若い女性の上擦った声、 「おめでとうございます!こちら、サバイバル・ロッタリーです。なんと!今年の当選者はあなたです!」 「え?当選?」 「ええ。第3宇宙コロニーで当選者はただひとり。なんて運がいいんでしょう!」 「いや、あの、サバイバルなんとかって、それ、何?」 「サバイバル・ロッタ... 続きをみる

  • ショートショート『奇跡の薬』

    「バッカだなぁ、奇跡なんてあるわけないじゃん」 「そんなことないわよ。霊のパワーで病人を本当に治しちゃう人がいるらしいのよ」 「あれはパラセボ効果ってヤツだよ。信じていると治った気になったりホントに治ったりするんだ」 「インドのサイ・ババなんて、空中から聖灰やら指輪やら時計やら出現させるのよ」 「手... 続きをみる

  • ショートショート『自殺願望』

    死にたい。 ケリをつけてしまいたい。 33階に到着、エレベーターを降りる。 ルームキーでドアを開け、部屋に入ると室内を見渡す。金属フレームの椅子が目に入る。これにしよう。 ガラス窓に向かってそれを放り投げる。ガラスが砕け、椅子が外に消える。 冷気が轟音の渦になって室内になだれ込む。 窓から顔を出すと... 続きをみる

  • ショートショート『ポルノ』

    昔々、お楽しみの大好きな王様がおりました。国中からお楽しみを集めて、毎日お楽しみです。 今日も今日とて、宮廷でお楽しみ会が開かれております。 さて次の演し物はなんでしょう。おや、なんだか科学者みたいな男が現れました。 「なんだ?おまえたちは何をするのだ?」 「王様、すごい薬を発明いたしたのでございま... 続きをみる

  • ショートショート『アリとキリギリス』(教訓つき)

    ケース1 「寒くて凍え死にそうです。入れてください」 「夏じゅう、遊んでばかりいたからですよ」 「十分反省しました。だから中へ」 「同じこと、去年も言いましたよね。その前の年も」 「覚えてません」 「なんだとぉ?」 「凍死しそうな前向性健忘のバッタなんです。気の毒でしょ?」 (教訓:バッタを信じない... 続きをみる

  • ショートショート『方向音痴』

    電車に乗ってうたた寝をしてしまい、ふと目を覚ます。 なんともいえない違和感。車内車外を見渡し、青くなる。 この電車、逆方向に走っている! 慌てて立ち上がり、窓の外を見て確かめる。 見馴れない町の景色が流れていく。ガソリンスタンド、交差点、キャッシュローンの看板・・・ どこの町にもありそうな景色だ。で... 続きをみる

  • ショートショート『ハンバーグ』

    「探偵さん・・・ですか?」 『多良福ミート』社長は、渡された名刺と毛むくじゃらの肥満漢を見比べた。 「ま、どうぞお掛けになってください」 黄色い歯を見せて笑うと、革張りソファにギュギュッと腰を下ろした。 この男が応接室に入ってから動物園のような異臭がしている。後でソファは除菌シートで拭かなくては。 ... 続きをみる

  • ショートショート『初夜』

    初夜である。 ついに本日祝言を挙げた。晴れて夫婦の身だ。そして待ちに待った初夜である。 恥ずかしながら彼女とは未だ男女の契りを結ぶに至ってはいない。 唇を重ねる以上の行為には未だ及ばず、今宵まで純潔を貫いたのである。 いや正確を期すならば、生真面目なボクには女性との性的経験そのものが欠如している。 ... 続きをみる

  • ショートショート『びっくり箱』

    ハミングしていた曲を歌い終わる。 間。 空調の音すらしない。自分の呼吸だけが耳障りに聞こえる。 あれ?ボクはなんで歌ってたんだっけ?そもそも、ここはいったいどこなんだ? 部屋を見回す。天井の高い密室の一隅にひとり、座っている。 床も壁も天井も、安っぽくて薄いカーペットに覆われている。 湿気のせいか、... 続きをみる

  • ショートショート『テレビさん』

    就職してひとり暮らしを始めて間もなく、先輩がアパートを訪ねてきた。 先輩、部屋をひとしきり見回してから尋ねた。 「なにオマエ、テレビさんは?テレビさんいないの?」 「え、テレビさん?いないけど」 「テレビさん、必要だろ。時間もてあますだろ~。いいぞ~テレビさん」 先輩が勧めるんで、テレビさんと暮らす... 続きをみる

  • ショートショート『リミット8』

    お昼前、行きつけの喫茶店でメニューを開いていると、対面の席に見知らぬサラリーマン風の男が座った。 「あんた誰なんですか」というボクの問いを無視して、黒カバンから古風な目覚まし時計を出してテーブルに置いた。 「あと8分、今日の正午で地球は消滅するんです。あなたにはひとつだけ願いをかなえるチャンスがあっ... 続きをみる

  • ショートショート『心霊写真、どっちが怖い?』

    その1 あなたは、愛人を温泉旅行に誘い、殺害を企む。 海に面した鄙びた温泉町の夕暮れ時、あなたは彼女を散歩に連れ出し、防波堤に沿った、人影のない歩道を歩く。 残照をながめようと防波堤の上へと誘い、サンダルを脱ぐのを見計らって、累々と組まれたテトラポッドに突き落とす。 短い悲鳴、固いコンクリと体のぶつ... 続きをみる

  • ショートショート『整形しました』

    熱く激しい波が過ぎ去ったあと、間接照明に浮かび上がる妻の背中の陰翳を見つめた。 まだ収まらぬ息づかいに上下する肩甲骨が艶かしい。 よかった。可奈子と別れて。 「君にはホントすまないと思っている。終わりにしたい」 唐突なボクの言葉を聞いて、可奈子は笑った。必死で平静を装って、こわばった笑顔で。 「奥さ... 続きをみる

  • ショートショート『ミサイル』

    駐車場から、うちの発射場に向かうと、子どもたちはどんどん先に駆けていった。 すっかり場所を覚えているのだ。ボクは父さんと顔を見合わせてニヤリとした。 ボクもそうだった。うちのミサイルの場所覚えてて、両親や祖父より先に駆けてったっけ。 うちがミサイルを買ったのは、もう30年も前になる。 ボクはもう眠っ... 続きをみる

  • ショートショート『鼠』

    朝、トイレでイキんだら、ウンコのかわりにネズミが出てきた。 しばし茫然。便器の溜まりでネズミがもがき泳ぐサマを見つめる。 尋常でない事態に動転し、ガッシャーンとネズミを水に流した。 ズボンを上げながら繰り返し自問した。なぜ、ネズミ? 職場に出掛けたものの、動揺は収まらなかった。 体内でネズミが繁殖し... 続きをみる

  • ショートショート『年賀状』

    元旦の朝、配達されたばかりの年賀状を炬燵の上に並べていく。 こちらからも賀状を差し上げた山。業者の初売り広告。そして、返事を書かねばならぬ山。 仔細に言えば、思わず目を止めたハガキ、家族写真やメッセージ入りも分けている。 あとで妻の頼子にも見せてやるためだ。 この仕分け作業ばかりは、パソコンでおこな... 続きをみる

  • ショートショート『初詣』

    皆さん、あけましておめでとうございま~す。 今年も秘宝館、よろしくお願いしますです。 そんなわけで皆さん、お正月を満喫していらっしゃいますか?もう済みました?初詣。 ボクは今日、初詣に行ってきたんですよ。近所の八幡様に。 いや、人多いのなんの、延々と列に並んで1時間待ちでしたよ。 お賽銭投げて、鈴を... 続きをみる

  • ショートショート『ゆくと死、くると死』

    崩落していく都市を振り返ろうともせず、夜のハイウェイを全速力で飛ばす。 追手の姿はまだ見えないが、迫り来る気配に俺は身震いした。 助手席で小刻みに震え続ける美卯。たくさんの仲間を助けたかったが、美卯だけしか救出できなかった。 衰弱し、虚ろな目をした美卯をそっと撫でる。こいつだけは俺が守る。 やがて前... 続きをみる

  • ショートショート『装置』

    午後の散歩の途中、立ち寄った喫茶店を出る。 町の尋常でない雰囲気を感じる。ぞろぞろと表に出てきた人々が、不安げに見上げ囁きあっている。 視線を追って見上げ、驚きのあまり声を上げてしまう。 中央広場いっぱいに、巨大な装置が出現している。 未だかつて見たこともない機械装置。しかも中央広場全体を覆い尽くす... 続きをみる

  • タイムマシン

    「え?タイムマシンのパイロットにボクを?」 レッグホーン司令が沈鬱な表情でうなずいた。 「もちろん、断ってかまわない。すでに3人が実験後失踪しているのは、君も知ってのとおりだ」 「どこかの時代から戻ってこれなくなっているかもしれませんね」 「それは軍の機密事項だ。詮索は許されない。どうだ、引き受けて... 続きをみる

  • A

    「学校でホストファミリー募集に登録したから」 夕食のとき、姉さんが弾んだ声で言った。 きっと姉さん、外人のボーイフレンドに憧れてたんじゃないかと思う。 数日後、ボクの家の玄関に留学生が立っていた。 父さんと母さんは笑顔で歓待した。 でも姉さんは違った。タイプじゃなかったみたい。顔面蒼白、頬をヒクヒク... 続きをみる

  • わたし、痩せます

    わたし、痩せます。 そう宣言して5カ月。ダイエットに王道なし。食事を減らして運動して、日々体重を記録して。 断固たる決意の成果、わたしはみごと目標体重に到達、ダイエットに成功した。こんな強い意志が自分にあったなんて驚きだ。 何を隠そう半年前、浜くんが異動でうちの課にやってきた。ジャニーズ系の年下の男... 続きをみる

  • シュレーディンガーの蛙

    あ~あ、クリスマス、終わっちまったよ。超くだんねー! 彼氏いる子から「先パ~イ、お願いします~!替わってもらえるの、先輩だけなんですぅ~」なんつって拝み倒されてよ~。 わかってんの?それ、どんだけ傷つくか?ま、あたしもソレ断りきれないんだけどさ。 売れ残り女が、売れ残りケーキを売ってんの、サマになん... 続きをみる

  • あくび

    「イイカゲンにやってっからあくびが出るんだ」と、バイトの先輩から小突かれてクソ面白くないってのに、 「ゴメン、今日、無理。また連絡するから」と、ミサキから約束までキャンセルされて、 チェッ、帰宅してもオレひとり、テレビをつければ将軍様死去のどうでもいいニュースばかり、 銅像の前で悲嘆にくれる泣き女た... 続きをみる

  • X'mas大作戦

    司令室に集うヒトデ型宇宙人たち。まさに今、彼らは地球侵略計画を話し合っていた! 「秘策トヤラヲ説明シタマエ」 「名ヅケテ、『X'mas大作戦』!」 「ホホウ、ナンカカッコイイナ、ソレ」 「アリガトウゴザイマス。我々ガ地球ニ到達スル日ヲ計算シタトコロ、12月25日。ツマリ、くりすますト呼バレル馬鹿騒ギ... 続きをみる

  • イヴ

    枕元の緊急電話がけたたましく鳴った。仮眠中でも覚醒するよう、音量最大に設定されているのだ。 新人看護師の慌てた声。どうやら入院患者が暴れてるらしい。やれやれ、勘弁してくれよ。 「ジアゼパム5ミリ、いや10ミリ打っとけ。すぐ行くから」 白衣を羽織ると、仮眠室を出て病棟に向かう。蛍光灯の冷たい灯に照らさ... 続きをみる

  • 妖怪ドクター

    ♪ゲッ、ゲッ、ゲッゲゲのゲ~♪ ♪オバケは死なない~(チャ~ラ~ラ~)♪病気もなんにもないっ♪ な~んて、ウソ! もうまったく『ゲゲゲの鬼太郎の歌』の歌詞なんて、オカシイっすよ。 妖怪が死ななきゃ、どうやって鬼太郎は毎週退治してるんだっちゅうことですよ。 病気もなんにもなきゃ、どうして妖怪にやられた... 続きをみる

  • ウルトラマンになった少年

    ボク、ウルトラマンになっちゃいました。 ほら、光の超人、あのウルトラマン。 嘘つけって? 嘘じゃりませんよ。ボクの周り、ウルトラ怪獣だらけですもん。 30分でやっつけられなかったゴモラでしょ、 自分でダダ言ってるダダでしょ、 中で手をつないでるっぽいペスターでしょ、 中で変な体位になってるっぽいドド... 続きをみる

  • お鍋戦隊オデンジャー

    人けのない浄水場に、悪の組織『サマー』の基地は存在した。 赤いシトロエンを自ら運転し基地へと向かう、怪人『ソウメン男』。 後部座席には、ヒロインの辛子ちゃんが亀甲縛り、エッチな苦悶の声。 「辛子ちゃん、全身にイチゴシロップや練乳をぶっかけて、一生ピリッと生きていけなくしてやる~」 猿ぐつわの辛子ちゃ... 続きをみる

  • 嘘八百昔話~ウソ太郎

    むかしむかし、お爺さんとお婆さんがおりませんでした。もちろん、ウソです。 お爺さんは山に柴刈に出かけました。ウソです。家で寝てました。 でも、お婆さんはきっちり川へ洗濯に出かけました。ウソ。家で寝てました。 真っ昼間からグ~グ~寝ておりますと、トントン、トントン、なにやら戸を叩く音がします。 「なん... 続きをみる

  • もう最悪の十万倍

    何回めになるだろう。 彼女を連れてこの海岸に来るのは。 白のサンダルを手に提げて、波と追いかけっこをしてはしゃぐ君をながめるのは。 石ころを拾って、海に向かって水切りして回数を競うのは。 正直に言おう。 何をやってもシラジラしくて全然楽しくないって。もう別れようって。 「もう最悪!ホワイトキック~!... 続きをみる

  • バルタン星人の憂鬱

    「あ、ママ!バルタン星人だよ!くさ~い」 「シッ!マー君、ダメよ」 母親がチビッ子を叱りつける。車内のサラリーマンやOLの視線が一斉に、バルタン星人に集まった。 「ホント、地下鉄乗るの、勘弁してほしいっすよ。こうバルタン臭くちゃかなわない」 「カブトガニの死骸みたくない?チョ~目にシミるし」 「人間... 続きをみる

  • 健太くん、危機一髪!

    母さんから、ダイニングテーブルのイスに座るように言われた。 聞いたことないくらいの、冷たい口調で。ボクは黙ったまま、イスに座った。 おとなりのヒロシくんを泣かしたのは悪いと思ってる。でも、ヒロシくんがボクのゲームのじゃまをしたんだ。 ヒロシくんのロボット、こわしちゃったのもわざとじゃない。 じゃまし... 続きをみる

  • すべては喝采のために

    劇場の観客の期待がステージの上まで熱気のように伝わってきた。 ショーはいよいよクライマックス。観客は知っているのだ。ショーのラストの大業、奇跡の瞬間移動がこれから始まることを。 天才マジシャン、モヘンジョ太郎が不敵に笑う。歓声と拍手がさらに高まる。 さあ、見せてくれ、本物のイリュージョンを! 「ご来... 続きをみる

  • 英雄

    宇宙船の窓から、ボクたち六名の乗組員が固い表情で覗きこんでいる。 六人の視線の先、暗黒の宇宙空間に建設中の敵宇宙要塞が浮かんでいた。巨大要塞の姿にボクは身震いした。 叩くなら今しかない。数時間で敵艦隊が戻って来れば、要塞を叩くチャンスは失われてしまう。 それは同時に、我々が援軍の到着を待つ時間もない... 続きをみる

  • 中身が出ちゃう

    白状しちゃうと、ボクは女の子のことをあんまりよく知らない。 でも、幸恵ちゃんはなんだかミステリアス。フツーじゃないよ、絶対。 つきあいはじめて、何回めかのデート。幸恵ちゃんの家に迎えに行った。 「おお、鎮太郎くんじゃないか。ちょっと待ってなさい」 幸恵ちゃんのお父さんが幸恵ちゃんを奥に呼びに行った。... 続きをみる

  • 『サンタクロースの贈り物』(教訓つき)

    仕事で疲れてるってのに、家に帰ったら早速、妻の小言が二つ、三つ。 「それに・・・わかってるの?今日が何の日だか」 鼻で大きく息をして、カバンと一緒に提げた紙袋を示した。 「わかってるさ。町中、先月からクリスマス商戦のバカ騒ぎだ」 「何買ったの?」 オレが答えると、妻が繰り返した。 「コレジャナイロボ... 続きをみる

  • 無人島

    漂流五日。 赤道直下の陽射しに全身を灼かれて舟底に横たわる。 救命ボートにボクひとり。食料どころか、水もオールも天蓋すらない。 頭の中は靄に包まれ、記憶すら曖昧だ。自分がどこの誰やら判然としない。 もう数時間ともつまい。 意識が遠のく。 ・・・ ン?どのくらい時間が経ったのだろう。気を失っている間に... 続きをみる

  • 未確認飛行物体

    「痛っ」 後頭部にガツンと一撃、まさに目の前で火花が散った。あまりの痛さに頭を抱えて声をあげた。 後ろをふりかえる。誰のしわざだ?何投げつけたんだ? 昼下がり、地方都市の郊外線のプラットフォーム。客はまばらで、背後には誰もいない。 線路に並んだ水路、けばけばしいセイタカアワダチソウが群れる草原、スコ... 続きをみる

  • 宇宙アカデミー賞

    気がつくと溝に横たわっていた。ズボンの中までグッチョリだ。何やってんだ?ボク。 「好きになった人がタカシ君だったらよかったのに。ごめんなさい。本当にごめんなさい」 助手席の美咲さんが啜りあげる。まさか、こんなリアクションが待っていようとは。 毎晩のように、電話を掛け合ったよね。いろんな話、したよね。... 続きをみる

  • 明日の元気

    ひととおりテレビのチャンネルを繰ってみたけど結局消して、リモコンを投げ出す。 つまんない、つまんない。 窓硝子が曇ってモヤモヤしてて、町並みがみ~んなくすんでいる。 花瓶の中で名前のわからない花がうつむいている。 予定は未定のまんま、カレンダーがいねむりをしている。 やっぱりカンチガイかもね。よくあ... 続きをみる

  • やあ、今日はとってもためになる、ボクの話を聞いてね。 その日、ボクは海辺を散歩してたんです。すると、 キラリン! しおだまりからまぶしい光が。近づいてみると透明なガラス壜です。 これってもしや・・・ ラベルを見ると、ほらやっぱり。 『この壜に願いごとをするとなんでも叶います。お一人様一回限り』 なる... 続きをみる

  • 背筋も凍る幽霊の話

    その晩、ボクはなかなか寝つくことができなかった。 ベッドに横たわったまま常夜灯を見つめ続ける。毛布を被っているのにゾクゾク寒気がしてたまらない。 時計が時を刻む音だけが単調に耳に響く。 妙な胸騒ぎが襲う。 こんなときに部屋の隅の暗がりを決して見てはいけない。じっとこちらを凝視する霊と目が合ってしまう... 続きをみる

  • 廃墟

    ウハハハハハハ。 『第二次炙り豚戦争』で、ボクの住んでいた町はすっかり壊滅しました。 たぶんもう、地上で暮らすことはできないでしょう。 『水連鎖爆弾』で一気に生物が消滅しちゃいましたから。生存者なんてボク以外いないんじゃないかな。この町で。 え?なんでボクひとり助かったかって? ハハハ。 たまたまな... 続きをみる

  • 幸せのためのいくつかのジンクス

    ラッキー!今日はタカシと初デート。 バイオリズムもバッチリ! 知ってる?人間はね、身体と感情と知性の周期に支配されているのよ。 バランスが崩れる要注意日に、ことを起こそうとするから失敗は起きるんだな。 おまけに、今朝は早く目が覚めちゃったんで、お散歩をしてたら目の前を猫がサッて通ったのよ、真っ白の猫... 続きをみる

  • そこに矛盾はないのか?

    『スマトラ島の熱帯雨林が減少!!』 モニターいっぱいにタイトルテロップが踊る。 『ゾウが!トラが!オランウータンが!今、絶滅の危機に!』 続いて、森林が焼け野原になった写真、倒れたゾウの母子の写真、そしてオランウータンの赤ちゃんの悲しげな表情。 悲痛な表情の女子アナがフリーライターのボクを紹介する。... 続きをみる

  • 超完全密室殺人の犯人を暴け!

    昔々、或る所に、お爺さんとお婆さんが暮らしておりました。 お爺さんは山に柴刈に、お婆さんは川に洗濯に出かけました。 お婆さんが川で洗濯をしていると、川の上流から、大きな大きなタマゴがどんぶらこ、どんぶらこと流れてきたではありませんか。 「これはなんと立派なタマゴじゃ。うちに持って帰って、お爺さんと食... 続きをみる

  • だってウルトラマンだもの

    モミクチャになって地下鉄から吐き出され、ヨレヨレのスポーツ新聞のシワを伸ばしてると、 自分がウルトラマンだってことを忘れちまいそうです。 え、ウソつけって? イエイエ、ホンモノなんですよ、ホンモノのウルトラマン。 身長40メートルもないじゃんって? 一応、人間の大きさに調節してるんです。40メートル... 続きをみる

  • 超完全密室殺人トリックを暴け!

    刑事「超完全密室殺人?害者は超完全密室で殺害されていただと?」 巡査「そうなんですよ。室内にはツイタテになったドアがあるだけ。出入口も窓も侵入脱出不可能です」 刑事「まさか害者の死因は空気砲に撃たれたものでは?」 巡査「そのとおりです」 刑事「ズバリ、犯人は猫型ロボットだ」 巡査「刑事、また超完全密... 続きをみる

  • 『本当にあった!怖い話』詰合せセット

    「真夜中、学校の図書館に。出るんですよ、女の子の幽霊。本を抱えて館内をさまよってるんです」 「えー!自殺した学生の霊が本を返しに来てるとか?」 「ベレー帽なんかかぶってて、チェックのダッフルのメガネッ娘」 「もしかしてソレ、『本と似合った学校の幽霊の話』?」 「いらっしゃいませ」 「店員さん、『本当... 続きをみる

  • たいしたもんじゃないよ

    ポポルくんは絵を描くのが大好きです。 絵を見せて、とせがまれると必ずこう言います。 「いいけど。たいしたもんじゃないよ」 すると、きっとみんな、 「いやいや、わるかないよ、これ」とか「なかなかいんじゃない」なんて言ってくれますから。 「これ、ぼくの自信作なんだ」なんて決して言いません。 そんなこと言... 続きをみる

  • 140字刑事

    巡査「御苦労様です」 探偵「今回の殺人事件の担当になった140字刑事だ。140字で事件をみごと解決。で、害者は?」 巡査「ハ、こちらです。害者は女性。自宅の居間で大の字で絶命していました。腹にステッキをのせて」 探偵「ハハ~ン。なるほど。大に棒か。犯人は『夫』だ!」 夫「バ、バレたか!」 巡査「御苦... 続きをみる

  • かく還元せり

    きつい仕事を終えて部屋に戻ってきた友人が、隅にへたりこむと溜息をつきました。 「おいおい、どうしたね?ずいぶん疲れてるようじゃないか」 「おう。聞いてくれるかい?うちの御主人、ありゃカスだね」 「カスはひどいな。御主人様だぞ」 友人がもう一度大きな溜息をつきます。 「世間にゃ立派な御主人もいるっての... 続きをみる

  • 強力わかもっと

    「え?『強力わかもっと』?ニセモノじゃないの?コレ」 ドラッグストアのカウンタ前ワゴンに積まれた薬瓶を見て、思わずアタシは声を上げた。 その声を聞きつけて、白衣の男が寄ってくる。 「名前はよく似ていますが胃腸薬ではございません。『もっと若く見える』から『わかもっと』でございますよ」 「アラ♪すごいじ... 続きをみる

  • 人魚たち

    今は昔、延喜の御代に筑後の国に賤しき漁師ありけり。 沖に出でけるに、人魚の、身の上は娘にて身の下魚なるが網にかかりければ、開きて一夜干しにしけり。 国司に奉らんとすれども箱に納まらず、身を二つに切り分けて二つの箱に納めにけり。 国司、箱開くることあたはざりけり。 帰宅すると、妻がテレビを見ている。 ... 続きをみる

  • やっぱ兄弟だなぁ

    搭乗員一名の小型宇宙船は思ったとおり狭かった。 四面の壁には計器がずらりと並び、小さな窓があるのみ。 宇宙船一体型のコンピュータが船内のコンディションを報告していくのを聞き流す。 やがて宇宙分岐ステーションとのジョイントが解除される振動が伝わってきた。いよいよ出発か。 数週間前、恰幅のいい長官がカイ... 続きをみる

  • 70億のリアリティ

    しょの1 「世界人口、70億人だってさ」 「70億?数が多すぎてまったくイメージできないなぁ」 「よく犯罪ドラマに出てくるジュラルミンケース。あれひとつに万札詰め込むと1億4千万。つまりジュラルミンケース50個分だ」 「ここで『なるほどぉ』なんて言うのはやっぱり人としていかがなものかなぁ」 しょの2... 続きをみる

  • つうのおんがえし

    アッ、女の人が倒れてるじゃありませんか。 息がありません。心臓も止まってる。こいつはヤバイ! 人工呼吸&心臓マッサージ開始です。 そうそう、心臓マッサージは『アンパンマンマーチ』を歌いながら。 ♪そ~だ、うれしいんだ、いっきるよっろっこっび~♪ ♪た~とえ、ムネのきずが、い~たんでっもっ~♪ 「ウ、... 続きをみる

  • 『猿の惑星』リミックス

    よ~し、もう猿たち追ってこないな。ひと安心、ひと安心。 まったく大変な目に遭ったもんだ。猿の惑星に来ちまうなんてさぁ。 恒星間宇宙船で数百光年離れたオリオン座ベテルギウスに訪れたものの、とある惑星の湖に不時着。 たまたま地球と同じ大気構成だったからよかったけどさぁ。 ここじゃ猿がいちばん偉くて下等な... 続きをみる

  • サンマのアジ

    イヤ~秋ですね~。 保育園の壁面デザインも秋一色、モミジやイチョウで鮮やかに飾られています。 「えっと、えっと、モモでしょ。それからブドウ!」 「そうですね。クダモノもおいしいわね。じゃ、トラビシくん。トラビシくんの好きなのはなんですか?」 先生がトラビシくんにもたずねました。 「んっとぉ、ボクはサ... 続きをみる

  • 奄美網目脈真逆蛇

    あなた、ヘビ、嫌いですか? そうですか。嫌いですか、やっぱり。 あのね、ボク、ヘビなんですよ。あなたの嫌いなヘビ。 わかります?生まれながらに忌み嫌われる気分。 つくづくヘビがイヤになりましてね。 神様にお願いすることにしたんですよ。 「神様ぁ、ヘビの神様ぁ」 「ニョロロロロ~ン、わしを呼んだかな?... 続きをみる

  • 無限遡及

    ああ、そうそう、そういえば・・・ 事務所入口の引き戸を叩く音がした。 「おい、おるんやろ。おんのはわかっとるんや。はよ出くさらんかいっ」 蹴る音が加わる。 「や、やめといて。今、開けますさかい」 引き戸の錠を開けると、ガラの悪い男が二人、事務所に乗り込んできた。 若いアンチャンが顔を目の前に近づけて... 続きをみる

  • Switch

    刑務官寄合室で休暇申請に記入していると、野崎さんが手元をニヤニヤ見ている。 左利きのボクが、ペン先を押し進めるように文字を書くのが珍しいらしい。 「仕事はきついけど、特別休暇を思えば悪くないな。俺は女房の買い物につきあわされるだけだが」 明日、刑が執行される。死刑執行に携わった刑務官には二日の特別休... 続きをみる

  • オオカミ男の夢

    母親の胎内にいる。 目が覚める。ここがオオカミの腹の中だと気がつく。 柔らかな森でまどろむうちに食われちまったらしい。どうりで体の中の夢を見たわけだ。 さて、どうしたものか。 思案しようと腕を組むが、意外に居心地がよいのでやめる。 温度具合もいい、粘液まみれの肉壁も全身になじむ。服を脱ぎ捨てて全裸に... 続きをみる

  • 漸次、減速

    運動神経のいいクラスメートが羨ましかった。体育の時間も部活の時間もみんなの中心になれて。 それで、わたしは神様にお願いした。もっと速く動けるようにしてくださいって。 そしたらみんなともっと楽しめるんじゃないか?認められるんじゃないか? 「ね、今日、なんだか早口だね」 朝の通学電車の中、マリが笑った。... 続きをみる

  • 地球外生命体接近す

    卓袱台の上に湯呑みと朝刊。朝刊を開くと、惑星探査のニュースで紙面は埋めつくされていた。 テレビをつけても惑星探査船のことばかり。どのチャンネルも興奮した口調で代り映えしない情報を繰り返す。 「あなた、ジョイスに餌をあげてくださいな」 野菜を刻む音がやんで、台所から妻の声が聞こえてきた。 うむ。生返事... 続きをみる

  • 曼珠沙華

    秋晴れの朝、カーンと澄んだ空気を吸い込んだ。 つい先々週、台風だなんだと騒いでいたのに、 見渡すかぎり秋色だ。。 職場に着くとまもなく、朝のミーティングが始まった。 「おはようございます」 快活な上司の声に顔を上げ、思わずアッと声をもらした。 「どうした?」 「い、いえ」 同僚たちが怪訝そうにボクを... 続きをみる

  • 愛することの一考察

    アパートの階段下、美紗が待っていた。 「何してるんだ。風邪ひくぞ」 タカシがコートをかけてやると美紗が鼻を鳴らした。 「タカシが遠くに行ってしまいそうで。もう二度と会えなくなっちゃいそうで」 「何言ってんだよ。ボクはずっとここにいる。ここの暮らしが好きなんだ」 暮らし、だけ?美紗が顔を上げる。涙でグ... 続きをみる

  • 自動販売機進化論

    ああ、朝すっかり寒くなってきたなぁ。もう一枚羽織って外出すればよかった。 路地をふと見ると、おや珍しい、自動販売機があるじゃないか。 缶コーヒーにコーラにスポーツ飲料にお茶。昔ながらの清涼飲料水の自販機。 お祖父ちゃんが見たら懐かしがるだろうなぁ。 硬貨を入れて、ボタンを選択する。 ゴトゴト、ゴトン... 続きをみる

  • 変わんないヤツ

    中学校の同窓会でカンヤに会った。 二枚目だった幹也は学年のモテ男だった。三十年経った今でも結構カッコイイ。 白髪まじりだが髪もバッチリ決めてるし、体形もほとんど変わってない。 「久しぶり!すっかりオヤジになっちまって!」 カンヤがニヤニヤ笑ってボクのビール腹を見下ろす。わかってるって。仕方ないじゃな... 続きをみる

  • リクルート

    今日は大切な就職試験の日だ。 就活スーツに身を包み、時間に余裕をもって颯爽と家を出た。 「お~い、助けてくれやぁ~」 おっと、家から出た途端、側溝に脱輪した軽トラが。運転していた爺さんがおろおろしている。 仕方がない。集まってきた近所の人と力を合わせて軽トラを押しあげた。 時計を見ると、まだまだ余裕... 続きをみる

  • 惚れどめ

    ドアベルの音。西日に焼けた漢方薬の陳列棚の奥からヤギのような顔立ちの店主が顔を上げた。 「いらっしゃいませ。えっと、前に見えられましたね、お客さん。どうです、効きましたかな?」 「ええ。ありがとうございます」 「そいつはよかった。で、今日いらっしゃったのは?」 「実はその、少々彼女が疎ましくなってき... 続きをみる

  • 買ってください

    「あら?お引っ越しのあいさつっておっしゃったのに、あなた、ご商売の方でしょ?」 玄関ドアを開いたマダムが不機嫌な表情にみるみる変わる。 「ええ。先週からこちらの町で営業中の布団の西八です。よろしくお願いします」 「お布団?間に合ってますわ」 「そうおっしゃらず。わたくしども、販売のみならず、クリーニ... 続きをみる

  • 死刑囚6157号

    地下1階でエレベーターを降りる。 映画館のホール入口のような重々しい観音開き扉が開かれると、紫の絨毯の広い部屋があった。 正面の祭壇には小さな阿弥陀如来像が据えられている。 刑務官が6157号を支えるようにして部屋の奥へと連行する。右側は壁面ではなくアコーディオンカーテンで仕切られている。 この部屋... 続きをみる

  • ナントカ魔神

    ただひとり、無人島に漂着してもう何日になるでしょう。ああ、腹がへったなぁ。 容赦なく照りつける日ざしの中、なにか流れ着いていないかと岩だらけの磯辺をフラフラ歩いていました。 おや?何やら光るモノがあります。近づいてみるとガラスの瓶です。お酒の一升瓶。 抱え上げてみると、残念、空瓶です。キッチリ蓋が閉... 続きをみる

  • 片付け上手

    「へ~片付いてるなぁ、おまえの部屋」 内藤のキレイ好きは知っていたが、まさかここまでとは。 壁面全体が引き戸になっており、棚の奥は見えない。 部屋には机とパソコン、背の高いドラセナの鉢。それだけ。 小物は棚の中なんだろう、一切見当たらない。モデルルームのように生活臭がない。 「片づけが趣味みたいなも... 続きをみる

  • 贋札?

    「博士、ハイ、10万円」 「すまないなぁ。2、4、6、確かに10万円。ありがたく借りるよ」 「長年ロボット開発に没頭しているとは聞いていましたが、何です?この装置?」 「うん、その、ロボットだよ」 「ロボット?このコピー機のバケモノみたいなのが?人間っぽくないなぁ」 「ハハハ、キミ、それは狭義のロボ... 続きをみる

  • 叔父の万年筆

    先日、突然、叔父が亡くなった。 叔父宅に焼香を上げにうかがうと、ひとり残された叔母が喜んでくれた。 「どうしても急ぎの用で帰ることができなくて。大変でしたね、叔父さん」 叔父夫婦は五十代半ば、盆に会ったときはあんなに元気だったのに。正直、彼らみたいな夫婦なら結婚もと憧れるほどのオシドリ夫婦だった。 ... 続きをみる

  • 信じる者は掬われる

    おい、なんだなんだ、キミ、その恰好は。 赤白のストライプの特注ジャケット?・・・ちょっと派手すぎやしないかね。 それにそのとんがり帽子・・・う~む、どう見ても「くいだおれ太郎」じゃないか。 え?風水で?赤と白がラッキーカラー?いやだからといってその服はないだろう。 朝のテレビの星占いコーナーで、ラッ... 続きをみる

  • 不死身の薬

    ヨアン・ナマラスカは死ぬのが怖かった。 子供の頃から死を恐れ憂えてきた。三十歳になった今、その思いはますます募り、怖くて怖くて死んじゃいそうだった。 そんなある日、行きつけのパブで、酩酊した、とある研究所の助手から耳寄りな情報を仕入れた。 「おい、本当か?今、不死身の研究をしているって言ったよな?」... 続きをみる

  • どうして子どもは恐竜が好きなのか?

    「わぁい、恐竜だ!本物みたいだ!」 ミンゲルが箱から恐竜のミニチュアを取り出して大喜びです。 「お兄ちゃん、それ、トリケラトプスだよね?」 妹のジュリコも目を丸くしています。 「そうさ。それからこれがステゴザウルス。それからこっちはティラノサウルス・レックスだ」 子どもたちが大はしゃぎしている姿を見... 続きをみる

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