E,霧の狐道のムラゴンブログ

  • 霧の狐道175

    俺は肘で少し体を起こし、空きベッドのある足元の方を見る。 女の子が見ている空きベッドの真ん中辺りから、黒い塊が盛り上がって来る。 “ ん・・・?” 黒い塊は徐々にベッドから高くせり上がり、やがてベッドの上に立ち上がった。 白い壁をバックに人の形の黒い影として見える。 でも、それは黒い人形だけで顔や目... 続きをみる

  • 霧の狐道174

    女の子は、田中爺の方を向いた。 「 ぐごごごごごごぉ~、ぐごごごごごごぉ~。」 田中爺のいびきが、突然再開された。 「 ・・・・・・・。 じゃ、あっちのお爺ちゃんとあそぼ。」 女の子は、ス~っと移動する。 女の子は布団を被ったままの山本爺に話し掛けた。 「 お爺ちゃん、あそぼ。」 山本爺は小さく呟き... 続きをみる

  • 霧の狐道173

    鞠は、山本爺のベッドの下に転がって行った。 「 あれっ、何処かで見たような気がする・・・。」 病室の扉の開く音がする。 “ ぎィ~っ。” 俺は、扉を見た。 「 ん・・・?」 扉の隙間から、通路の弱い光が差し込んでいる。 “ ぎィ~っ。” 誰も入っては来なかったが、扉は閉まった。 俺は、肘で体を起こし... 続きをみる

  • 霧の狐道172

    俺は扉をジッと見た。 そして、耳を澄ませる。 鞠の音は、この部屋の前をゆっくりと通過する。 “ てんてんてん、てんてんてん、てんてんてん・・・・。” 音は動いて行く。 でも、扉のスリガラスに、人影は映らなかった。 「 人影が映らないな・・・?」 俺は不思議に思いながら、動いて行く音を聞いていた。 「... 続きをみる

  • 霧の狐道171

    通路の音は、三回ついて一休憩だ。 “ 様子を見に行きたい気もするけど・・・。” 体は動かせなくも無い。 でも、ベッドから降りて、車椅子に乗って見に行くのは億劫だ。 「 まあ、ベッドで寝たまま様子を見るか・・・。 それにしても、こんな夜遅くに非常識だろ。 看護婦さんに怒られるぞォ・・・。」 音は、三回... 続きをみる

  • 霧の狐道170

    俺は天井を眺めながら二つの音をしばらく聞いていた。 「 音、大きいよな・・・。」 俺は眼を閉じた。 静かな病室に二つの音が響く。 そして、その二つの音は微妙にずれて俺の頭に響いて来る。 「 ん・・・・。」 と、そのとき、二つの音の隙間に別の音が小さくしているのが聞こえた。 “ てんてんてん・・・・・... 続きをみる

  • 霧の狐道169

    俺は仰向けのまま、布団を鼻まで引っ張り上げて天井を見た。 四角くて白い天井に俺は囲まれている。 そして、俺はさっきの夢のことを思い出しながらジッとしていた。 “ ホント、変な夢だったよな・・・。 まあ、夢だから良かったけど・・・。 それにしても、あの婆さん、ヤダなァ。 また、明日、来るとか言ってたし... 続きをみる

  • 霧の狐道168

    田中爺はかなりエネルギッシュな人だ。 俺が病室に入ってからも、ジッとしていることがない。 俺を相手に病院のことを話し捲くり、通路で他の病人とお喋りし、ナースステーションまで出張し世間話をする。 この階の病室や通路だけでなく、他の階にも出没していることが予想される。 “ ホントに、何処が悪いのだろう?... 続きをみる

  • 霧の狐道167

    病院の夜は長い。 何時間経ったのだろうか。 俺は、うるさい音に眼が開いた。 「 ぐごごごごごごぉ~、ぐごごごごごごぉ~。 くしゅ、くしゅ、ハックション、グスグス。 ズ~、ズ~、ズ~。」 眼が開いた理由は、田中爺のいびきだ。 「 う、うるさい!」 俺は布団から顔を出し、左隣のベッドに寝ている田中爺をチ... 続きをみる

  • 霧の狐道166

    俺は、一瞬、瞬きをした。 “ ハッ!!” 今度は、はっきり目覚めている。 体も動く。 俺は、病室を一通り見回した。 特に変化は無い。 病室は、廊下の明かりが扉の窓から漏れている程度で暗い。 これだけの騒ぎにもかかわらず、爺さん二人は熟睡しているようだ。 “ やっぱ、夢かな・・・・。 あのカエル見たら... 続きをみる

  • 霧の狐道165

    「 もう、今日のところは帰ってくれよ。 夜中なんだぞ。 みんな、寝てるんだぞ!」 「 しょうがないのう。 呪文を思い出せないし・・・。 それに、集中力も切れて来た・・・。 ま、今日のところは、いったん帰るかの・・・・。」 「 その方がいいと思うよ。」 「 そうじゃな。 じゃ、また、明日来るからの!」... 続きをみる

  • 霧の狐道164

    俺は一旦眼を瞑った。 “ 悪夢なら、早く覚めろよな・・・。” 俺は再び眼を開けた。 でも、状況は変わらない。 “ う~ん・・・・?” 俺はベッドに仰向けになって、右から左へ、左から右へ跳んで行くガマ太郎の白い腹を見ながら思った。 “ 何で真夜中に、こんな訳の分からない連中の相手をしなければならないん... 続きをみる

  • 霧の狐道163

    ガマ太郎は、俺をギロリと見た。 「 うわっ!」 俺は、ビックリして声を上げた。 ガマ太郎の舌がビヨ~ンと伸びて俺の顔を舐めたからだ。 “ うう、気持ち悪い・・・・。” 顔の舐められたところを手で触るとヌルヌルする。 “ うっ、くっさ~~~。” 手に付いたヌルヌルの液体の臭いを嗅ぐと妙に生臭い。 「 ... 続きをみる

  • 霧の狐道162

    俺がニヤニヤして婆さんの方を見ていると、イライラした婆さんは忌々しげに俺の顔を見ながら悪態をついた。 「 ええい、クソッ! 思い出せん!! 全部、おまえが悪いんじゃ!」 「 俺のせいじゃないぞ。 もう、諦めろよ。」 「 クソ~ッ! ダメだ。」 「 諦めろ、諦めろ、アハハハハ!」 「 う~~ん、腹立つ... 続きをみる

  • 霧の狐道161

    お揚げ婆さんは、まだ固まったまま動かない。 “ コイツ、固まってるぞ。 どうしたのかな?” 俺は我慢できずにお揚げ婆さんに訊いてみた。 「 どうしたんだよ、婆さん?」 お揚げ婆さんは、カエルの上で左斜め上に眼を遣ったまま答えた。 「 今日は・・・、ちょっと、調子が悪いのじゃ。」 「 どう、調子が悪い... 続きをみる

  • 霧の狐道160

    俺は婆さんの自信に溢れた表情を見て思った。 “ コイツ、真言密教の奥儀がどうのこうのって言っていたな・・・。 それに、普通じゃない不気味な現れ方だったし・・・。 これって、結構、ヤバイんじゃないのかな・・・。 このババア、変な超能力を持ってたりして・・・。 ヤダナ、こいつ・・・。 何とか消えてくれな... 続きをみる

  • 霧の狐道159

    話している間にも、お揚げ婆さんとカエルが近付いて来る。 「 近付いて来るなよ・・・・。」 「 ふふふ、怖がっておるな・・・・。 夢だから、どうってことないんじゃろ。」 「 怖くなんてないぞ。」 「 い~や、心の中でビビッておるハズじゃ。 あの時、せっかく、警告してやったのに、人の話を聞かないからじゃ... 続きをみる

  • 霧の狐道158

    俺はさらに強がって、お揚げ婆さんに言った。 「 これって、夢だから、どうってこと無いよ。」 「 ふふふふふ、そうかな。」 「 じゃ、夢じゃ無いのか?」 「 金縛りって知ってるかの?」 「 聞いたことあるけど・・・。」 「 レム睡眠のときに起こる現象じゃ。」 「 これのことか?」 「 ふふふふ・・・。... 続きをみる

  • 霧の狐道157

    俺はお揚げ婆さんを見上げた。 赤い円の光に照らされて弱いピンク色をしている病室を背景に、お揚げ婆さんとカエルは白く薄く光っている。 そして、お揚げ婆さんは俺を見下ろして口の両端を吊り上げニタ~っと笑った。 “ ううっ、気持ち悪いヤツ・・・・。” 俺は強がって言った。 「 婆さん、何か用かよ?」 「 ... 続きをみる

  • 霧の狐道156

    赤い円から抜け出した頭は、円の中に続くモヤモヤした煙を伴って空中に浮かんでいる。 “ ろくろ首ってこんな感じかな・・・。” それに、お揚げ婆さんの顔はこちらを向いている。 “ 気持ち悪いな・・、あの顔・・・。” 俺が横目で見ていると、煙は赤い円からモコモコ出て来て首の下にドンドン増えて来る。 そして... 続きをみる

  • 霧の狐道155

    俺は体が動かなくなっていることに初めて気が付いた。 “ 何だ、こりゃ!? 目玉を動かすことぐらいしか出来ないぞ。” 頭の中では呪文が鳴り続けている。 “ ありゃ!?” 俺の眼の端が明るい。 ベッドの右側だ。 “ 何だろ?” 俺はベッドに仰向けに寝たまま視線を右に動かし壁を見た。 “ ・・・・?” 右... 続きをみる

  • 霧の狐道154

    左右から響いて来る声は、俺の頭の上で交差して迫って来る。 “ うわっ!!” 右からやってきた呪文と左からやってきた呪文が、俺の左右の耳から同時にピタッと頭に入って来て“ピキ~~ン!!”と一致した。 “ 何だ、何だ,何だ、これは! 俺の頭の中で呪文が鳴っているぞ。” 呪文の焦点が俺の頭でピタッと合った... 続きをみる

  • 霧の狐道153

    夢を見ているのなら、特に不思議なことはない。 今日は入院した最初の日だ。 病院に入院した不安から、変な夢を見ているのだ。 夢の中なら、辻褄の合わないことだっていっぱい起こる。 “ とすると、これはヤッパリ夢だな。 ハハハハ、夢だったら驚くことも無いか。 何だ、脅かしやがって! バカヤロォ~~!” 俺... 続きをみる

  • 霧の狐道152

    俺は寝たままの状態で、頭だけ起こして田中爺と山本爺のベッドを見た。 起き上がって来る気配も無い。 田中爺と山本爺は、スヤスヤ寝ているようだ。 “ よくこの音で寝ていられるな・・・・。 これだけデカイ音なんだから、爺さんたち眼を覚ますと思うけど・・・?” でも、爺さんたちの布団の膨らみはジッとして静か... 続きをみる

  • 霧の狐道151

    俺はハッと思った。。 “ そうだ、ナースコールだ! この異常事態を看護婦さんに知らせなきゃ!” 俺は枕元を手で探った。 右手で枕の辺りをゴソゴソ探る。 でも、押しボタンにもコードにも手が当たらない。 “ な、無いぞ!” どうしたんだ、Hey Hey Baby~~♪ 俺の頭の中には、軽トラックで延々鳴... 続きをみる

  • 霧の狐道150

    小さな音は、少しずつ大きくなり、抑揚のある節と共に流れ出した。 “ これは夢・・・かな?” その節をつけた音は、やがてブツブツ言う小さな声に変化した。 『 ・・・・おんばあさらえんそわ・・・・おんばあさらえんそわ・・・・。』 “ 何か変な声のようなものが聞こえるぞ?” 『 ・・・・おんばあさらえんそ... 続きをみる

  • 霧の狐道149

    病院の夜は、暗く深く更けて行く。 数時間が経ったような気はしていた。 俺には暗い闇の中をフワフワと漂っている感覚があった。 海に浮かんだように横になったまま、物音も聞こえず、暑くも無く寒くも無く、深い闇の中をフワフワと漂っている。 そして、漂いながら朦朧とした頭で考え続けていた。 “ 俺は、今、寝て... 続きをみる

  • 霧の狐道148

    8、消灯1 消灯の時間が来た。 田中爺も山本爺もベッドに戻っている。 見回りの看護婦さんがやって来て言った。 「 消灯で~す。 消しときますね。」 “ パチッ!” 蛍光灯が消えて、病室が薄暗くなった。 “ もう、寝ているのかな?” 田中爺も山本爺も、大人しくしている。 年寄りは、夜が早い。 俺は、枕... 続きをみる

  • 霧の狐道147

    山本爺は、弁当の端にあった黄色い御新香を一切れ、サッと摘んで口に放り込んだ。 “ あらっ!? トンカツじゃなかった・・・。” 山本爺は、クルッと向きを変えて自分のベッドに向かった。 俺は唖然として、去って行く山本爺の姿を眼で追った。 “ ポリ、ポリ、ポリ、ポリ・・・。” 横から見える顎がモゴモゴ動い... 続きをみる

  • 霧の狐道146

    山本爺はジワジワと俺のベッドに接近し、ベッドの右横までやって来た。 そして、箸を持った右手を俺の方に突き出した。 箸の先が俺の方に向かって空中を漂っている。 “ ギャッ、ヤバイ! あの箸で眼でも刺されたら大変だ!” 俺は、少し身を左に引いた。 “ 来るぞ、来るぞ、来るぞ・・・・。” 山本爺はジリジリ... 続きをみる

  • 霧の狐道145

    俺は、山本爺とお話するのは、一旦、諦めた。 “ まあ、いいや・・・・。 同じ部屋だから、話す機会はいっぱいあるし・・・。 それより、腹が減ったな。 コンビニ弁当食っちゃおう!” 俺は、山本爺の相手をするのを止めてベッドに座り直し、後ろを向いてコンビニ弁当を食べることにした。 さすがに遅い夕食だ。 コ... 続きをみる

  • 霧の狐道144

    田中爺は満足そうに俺に言った。 「 うん、分かったなら、それでええわ。 あ、ションベン、行って来ォ! 説明で一生懸命やったから、行きたいの忘れてた。」 田中爺は、着物の前を閉じて、スリッパを足に引っ掛けて大急ぎで部屋を出て行った。 “ で、田中爺は一体何で入院しているのだろう? 手術の跡は治っていた... 続きをみる

  • 霧の狐道143

    俺は田中爺の腹の左側に横線があるのを見付けた。 “ 何故、真っ直ぐで終わらずにL字型なんだろ?” それで、田中爺の横線を指差して質問した。 「 その横線は?」 「 おっ!!!」 田中爺は、よく聞いてくれたと言う顔をして俺に言った。 「 これは、腸重積の跡やがな。 腸が腸の中に入って重なる病気やがな。... 続きをみる

  • 霧の狐道142

    俺は田中爺の胸と腹を見て驚いた。 “ わっ、大きな手術跡!” 俺が繁々と田中爺の腹を見ていると、俺の反応に満足した田中爺が言った。 「 ムフフフフ、どうや、スゴイやろ。」 俺はどう答えたらいいのか分からないので、取り敢えずスゴイと言うことにした。 「 ス、スゴイです・・・・。」 「 そうじゃろ、そう... 続きをみる

  • 霧の狐道141

    井上さんが病室から出て行くと、田中爺が、テッペンがハゲたごま塩頭を左右に揺すりながら、コテコテの関西弁で俺に言った。 「 若いから、そんなもん、直ぐに治るでぇ~。」 「 はァ・・・。」 俺は気の無い返事をして、一度頷いてから、山本爺の方をチラッと見た。 「 ・・・・・・・。」 山本爺は、鼻毛を抜きな... 続きをみる

  • 霧の狐道140

    俺は、爺さん二人に挨拶をした。 まず、短髪のごま塩頭でテッペンがハゲた、妙に小太りな左爺に挨拶。 「 よろしく!」 そして、生まれて数日後のヒナ鳥のように白髪がツンツン立って、痩せた鶏がらスープの右爺に挨拶。 「 よろしく!」 看護婦さんが、俺に言った。 「 田中さん、山本さんよ。」 左爺さんは名前... 続きをみる

  • 霧の狐道139

    7、病室 俺は車椅子に乗せられ、救急処置室で世話になった看護婦さんに連れられて病室に向かった。 エレベーターを4階まで上がり、通路を進む。 そして、俺の入った病室は、ズラッと並んだ病室の奥から二番目にある中部屋だった。 ベッドは、病室の入り口から通路を挟んで右に2つ、左に2つ平行に並んでおり、通路の... 続きをみる

  • 霧の狐道138

    そして、俺は車椅子に乗せられて待合室に移動した。 “ もう、この看護婦さんに、さっきの話をしても無駄だな。 それにしても、さっきは危なかったな・・・。” 俺は、待合室は救急の受付や看護婦さんがウロウロしているから、危ないことも無いだろうと思った。 そう、“危ないこと”、それは何の気なしに思った訳だが... 続きをみる

  • 霧の狐道137

    俺が、向こうのベッドを見詰めているのを見て、看護婦さんが俺に尋ねた。 「 どうしたの?」 「 そこに、足が・・。」 「 え、ここ?」 看護婦さんは、向こうのベッドを見ながら言った。 「 誰もいないわよ、もとから・・。」 「 でも、看護婦さんが様子を見に来たよ。」 「 えっ・・・、看護婦は二人だけど、... 続きをみる

  • 霧の狐道136

    隣の部屋の騒がしさは、もう収まって静かになっていた。 少し間を置いて、俺の相手をしていた中年の看護婦さんが部屋に入って来た。 “ 親が病院に来たのかな・・・? ちょっと、早い気がするけど・・・。” 俺はベッドの横まで来た看護婦さんを見上げて言った。 「 親が来たんですか?」 看護婦さんは、俺の顔を見... 続きをみる

  • 霧の狐道135

    足は薄汚れて土色をしていた。 “ やっぱり、先客がいたんだ。 寝てるんだろうな・・、動かないし・・・。” 俺は、隣のベッドの下を見た。 “ スリッパとか、置いてないな・・。 あの男の人は、裸足でベッドまで行ったのか?” 俺はしばらく汚い足を見ていた。 足はピクリとも動かない。 “ 疲れて熟睡してるん... 続きをみる

  • 霧の狐道134

    看護婦さんの横顔が見えるか見えないかの一瞬で、看護婦さんはカーテンの向こうに隠れた。 “ ナースキャップは被ってなかったな・・。” 普通、看護婦さんは髪を短くまとめてナースキャップを被っている。 それが俺の看護婦さんのイメージだった。 でも、その看護婦さんはナースキャップも無しで、髪を肩まで下ろして... 続きをみる

  • 霧の狐道133

    俺は、向こうのベッドには人がいないと今まで思い込んでいた。 でも、実際は、右のベッドはカーテンに囲まれていて、中を一度も見たことが無い。 “ 誰もいないんだったら、カーテンを閉めておく必要は無いし・・・。 普通は、開けて置くよな・・。 このベッドは、空だったしカーテンが開いていたもんな。 救急の先客... 続きをみる

  • 霧の狐道132

    俺は、しばらくは何の疑問も無く、退屈しながらそれを見ていた。 “ 隣の部屋との扉は開いているから、人の動きや通路からの空気の流れ で動いているのだろうな・・・。” そして・・・・、フッと思った。 “ どうして、波が奥から手前にやって来るんだろう・・・? 風が吹いて来るとすると、寝ている俺の頭の上にあ... 続きをみる

  • 霧の狐道131

    しばらくして、救急車のサイレンと共に隣の部屋のもう一つ向こうにある処置室が騒がしくなった。 “ 誰かが運ばれて来たんだ。” 俺は寝ている体の位置を左斜めにずらせ、首を回して右上を見た。 こうすれば、少しだけれど、隣の部屋の様子が扉の隙間や扉に嵌め込んであるガラス窓から見える。 俺は、ベッドで横になっ... 続きをみる

  • 霧の狐道130

    俺は処置室のベッドに横になって、親が来るのをひたすら待つことになった。 ベッドに横になっているだけで、特に何もすることがない。 “ 薬品の匂いだな。” 病院特有の消毒薬の臭いがする。 薬品の並んだガラスケースや壁に貼ってある医療関係のポスターは、何回見ても同じで、俺は段々退屈してきた。 “ 退屈だな... 続きをみる

  • 霧の狐道129

    俺は家に電話をして事情を話した。 電話に出た母親からは川に落ちたことをバカにされ、さらに病院が遠いとブツブツ文句を言われたが、まあ、仕方が無いので、取り敢えず急いで行くと言うことだった。 俺は受話器を置いて、横で話を聞いていた看護婦さんに言った。 「 直ぐに親が来ます。」 「 分かったわ。 でも、隣... 続きをみる

  • 霧の狐道128

    俺は疑問に思って、コードを引き摺りながら電話を持って戻って来た看護婦さんに聞いた。 「 あの~、連れて来て貰ったのは、爺さん婆さんの二人だけど・・・。」 「 あらっ、違うわ。 三人よ。 小さい女の子が一人、ついて来ていたわ。 お孫さんよね。」 「 いや、二人・・・・。」 「 三人よ。 あの女の子・・... 続きをみる

  • 霧の狐道127

    処置室の中年の看護婦さんが、俺に聞いた。 「 川に飛び込み? 若いのに、飛び込みねぇ・・・?」 看護婦さんが俺の顔色を窺っている。 どうも、自殺と疑っているようだ。 俺は右手を横に振りながら言った。 「 違う、違う、自殺じゃないよ。 転がって来た鞠を避け損なって、橋からドボン・・・。」 「 あ、事故... 続きをみる

  • 霧の狐道126

    病院 6、処置室 俺は、三時間も掛かって、隣町の大きな総合病院に、救急で入院した。 普通は、一時間で行けるところを、爺さんが山道に迷って三時間掛かってしまったからだ。 その間、爺婆のカラオケは延々と鳴り響いていた。 もちろん、“雨あがりの夜空に”一曲ではない。 他の曲も掛かっていたが、三時間の内、少... 続きをみる

  • 霧の狐道125

    爺さんと婆さんのマイクデュエットは延々と続き、山にこだましている。 運転席の屋根の上に取り付けてあるスピーカーから嵐のような大音量の歌声が鳴り響く。 ♪(´∀`)ノ゛ こんな事いつまでも 長くは続かない いい加減明日のこと 考えた方がいい♪ どうしたんだ Hey Hey Baby おまえまでそんな事... 続きをみる

  • 霧の狐道124

    爺さんが叫んだ。 「 うお~っ、調子が出て来たぞォ~! そうじゃ! 婆さん、マイク、マイク! グローブボックスの中じゃ!」 「 あいよ、爺さん!」 “ ガチャッ、ゴソゴソ・・・。” 「 あった、あった。」 「 じゃ、プラグをそこに差し込んで・・・。」 「 差し込んだよ。」 「 ほら、そこのボリューム... 続きをみる

  • 霧の狐道123

    爺さんが婆さんに言った。 「 そうじゃ、カセットテープがグローブボックスにあったの。 音楽でも掛けようかの。 婆さん、ちょっと探してくれや。」 「 あいよ、爺さん。」 “ ガチャッ、ゴソゴソ・・・。” 「 爺さん、これかの?」 「 おお、それじゃそれじゃ。 えっと、ここに放り込んで・・・・。」 “ ... 続きをみる

  • 霧の狐道122

    軽トラックはヘッドライトを点灯して疾走する。 ガタガタ道は徐々に細くなって来ている。 “ このまま進んで、大丈夫なのかな・・・・。” 俺は段々心細くなって来た。 進む先には、薄く明るさのある空をバックに真っ黒な山々が聳えている。 “ あの山に突入するのかな・・・・。 何か、ヤダなァ・・・。 もう、何... 続きをみる

  • 霧の狐道121

    爺さんは、叫んだ。 「 ワシに任せるのじゃ! 隣町の総合病院に運んでやるからのっ!」 俺は、叫んだ。 「 隣町じゃ、ないィ~~!! 駅前の近くに外科があるぅ~~~! 病院は、そっち、そっち!」 爺さんが言った。 「 そうじゃ! そっちじゃ、そっちじゃ! 急いで隣町の総合病院に連れて行ってやっからのっ... 続きをみる

  • 霧の狐道120

    軽トラックはスピードを上げて走る。 夕日に照らされた橋が段々小さくなり、道なりに右にカーブしたら橋は左の方にス~ッと見えなくなった。 橋が視界から消えて、ようやく俺はホッとした。 涼しい風が、顔に当たる。 “ ここまで来れば、もう大丈夫だ。 でも、あの女の子と男の声は何だったんだろう? それに、橋に... 続きをみる

  • 霧の狐道119

    爺さんがハンドルを握り、婆さんが助手席に乗って出発だ。 爺さんが婆さんに言った。 「 んじゃ、行くがのォ~!!」 「 おう、爺さん!!」 軽トラックは、軽快にエンジンを始動した。 “ ブルン、ブルン、ブルン・・・、ガタンッ・・・・。” そして、ゆっくり走り出し、橋を離れ始める。 “ ホントに誰も居な... 続きをみる

  • 霧の狐道118

    俺は爺さんに喚いた。 「 イデデデデデデ!! 病院、病院! 早く、早く!! 早く行かないと死んでしまう、早く早くっ!!」 「 ほんにウルサイガキじゃ。 そこで死んどれ、ボケ!」 「 うううう、死ぬぅ・・・・。」 「 ああ、分かった、分かった。」 「 病院・・・・!」 「 ウルサイ、黙れ! 連れて行っ... 続きをみる

  • 霧の狐道117

    爺さんは俺の表情を確かめながら話を続けた。 「 それがな、おかしいんじゃ。 死んでから、半日ほど経っていたようなんじゃ。」 「 ええっ、半日?」 爺さんは婆さんの方をチラッと見て言った。 「 あれって、朝早くだったよなァ、婆さん。」 「 ああ、爺さん、まだ、薄暗かったよ。」 「 畑に行くとき見つけた... 続きをみる

  • 霧の狐道116

    俺は現場である足元を見てから、爺さんに尋ねた。 「 いつ頃?」 「 最近じゃな。 それで、ここで声がしたので、またかって思ったんじゃ。」 「 行き倒れ・・。」 「 そう、行き倒れ。」 「 あの~、それって生きてた・・・?」 「 ああ、生きてたと思うたんじゃ。 声がな、聞こえた。」 「 声?」 「 う... 続きをみる

  • 霧の狐道115

    爺さんが戻って来て、俺は爺婆に引き摺られて荷台の前に立った。 「 イデ・・・・・・。」 俺は、爺さんに睨まれて我慢して黙った。 爺さんが婆さんに言った。 「 そんじゃ、乗せるかのォ~。」 「 あいよ。」 「 この前の“行き倒れ”を乗せた要領じゃ。」 「 ガッテン、爺さん!」 俺は“?”と思って、爺さ... 続きをみる

  • 霧の狐道114

    俺は川から引き摺られながら、なんとか脱出した。 「 イデデデデデデ!!」 「 もう、うるさいガキじゃ!」 そして、土手の上まで上がった。 「 イデデデデデデ!!」 「 もう、黙れ、バカチン!」 橋の手前には軽トラックが止まっていた。 「 イデ、イデ、イデ・・・・・。」 俺を支えていた爺さんが言った。... 続きをみる

  • 霧の狐道113

    爺さんの方が俺を指差して言った。 「 お~い、おまえ、落ちたのか?」 見れば分かるだろう、と思ったが質問に答えた。 「 落ちた、落ちた。 そこから落ちた。」 爺さんが婆さんの方を向いて言った。 「 やっぱり落ちたようじゃな・・・。 川に落ちるなんて、ホンに馬鹿なガキじゃのう・・。 アハハ、馬鹿じゃ、... 続きをみる

  • 霧の狐道112

    俺は目玉を見ながら、昔読んだマンガを思い出していた。 “ うっ、あの白髪とハゲ頭は・・・・・。 ま、まさか、救助隊じゃなくて・・・・。 砂掛け婆と子泣き爺・・・!? 俺を食いに来たのか、うう・・・。 長い舌でペロッと舐められるの、ヤダな・・・・。” 俺は、ゲゲゲの鬼太郎の世界にかなりビビッた。 でも... 続きをみる

  • 霧の狐道111

    俺は、上を向いて叫んだ。 「 おォ~~い! ここだァ~~! かわァ~、かわァ~! 川だァ~~~~~!!」 自動車のドアの開閉する音が聞こえた。 “ ギッ、バタン!” どうやら、聞こえたらしい。 誰かが自動車から降りて来る気配がする。 “ おっ、助かった!!” 俺は河原から上を向いて橋の欄干を見詰めた... 続きをみる

  • 霧の狐道110

    と、そのとき、突然、俺の耳に幽かな音が聞こえたのだ。 “ おやっ・・・!?” 俺は耳をそばだてた。 “ 音が聞こえるぞ・・。” 小さな音が遠くから響いて来る。 川上の方からだ。 “ パタ、パタ、・・・・・・、パタ、・・・・・・。” 音は風に吹き消されて、切れ切れだ。 “ 機械音かな・・?” 少なくと... 続きをみる

  • 霧の狐道109

    俺は、薄暗くなり始めた辺りを見回した。 この位置からは、川の両側の土手で視界は遮られ、外の景色は見えない。 川底は、人気の無い殺風景な河原が広がっているだけだ。 上には曇った空しかない。 “ ヤバイな・・・。” 俺は、このまま闇夜に吸い込まれて行くのだ。 “ もう、日が暮れる・・・・。 日が暮れたら... 続きをみる

  • 霧の狐道108

    俺は、さらに周りをキョロキョロ見回した。 そして、モロ、途方に暮れて困った。 “ うぐぐぐぐ・・・・・・。” 黙っていると怖くなって来る。 「 くそ~っ! よし、歌でも歌うぞっ!!」 俺はヤケクソになって、カラ元気をあげた。 “ 大声で歌ったら、誰かが聞き付けて来てくれるかも知れない・・・。” そし... 続きをみる

  • 霧の狐道107

    俺は辺りの様子を窺いながら思った。 “ これはとんでもないことになったぞ・・・。 あの女の子、それに、あの男の声は、何なんだ。 男は、何処に消えてしまったんだ。 あの女の子は、まだ橋の上に声を潜めて俺の様子を窺っているのだろう か・・・。” 橋を見上げても変化は無い。 “ 居ないのだな・・・・。 ・... 続きをみる

  • 霧の狐道106

    河原の雑草が風に吹かれて揺れていた。 “ でも、あの女の子は橋の上にいる筈だ。” 俺は、橋を見上げた。 しかし、誰も橋からこちらを覗き込んでいる者はいない。 汚い橋の裏側しか見えなかった。 俺は不審に思ったが、動けないので、とにかく、橋の上に向かって、もう一度大声で助けを呼んだ。 「 た・す・け・て... 続きをみる

  • 霧の狐道105

    俺は、たぶん、走り幅跳びのように空中で足を回転させて歩いていたと思う。 でも、鳥ではないから、必ず落ちる。 俺は横に回転しながらスローモーションで下に落ちて行った。 “ どすん!” 川の真ん中に俺は落ちた。 「 イデデデデデ!!」 川の水は、多くは無い。 水は川幅の半分を流れていた。 残り半分は河原... 続きをみる

  • 霧の狐道104

    俺は、再び、自転車のスピードを上げた。 “ よし、橋を渡るぞ!” 橋の幅は3メートルほど、両側に60センチほどの低い欄干がある。 “ 俺って、何をビクついているんだ・・・・。” 俺は、後ろを向いたままの女の子を左に見、背後を廻り込んで急いで橋を通過しようとした。 そのとき、突然、俺の目の前に丸い何か... 続きをみる

  • 霧の狐道103

    道の左側の土手には壁のように連なる高いセイタカアワダチ草が続いている。 俺は、黄色いセイタカアワダチ草の壁に沿って自転車を倒しながら、左にカーブを進む。 しばらく進むと、突然、セイタカアワダチ草の壁が途切れ、急に橋が現れた。 壁の陰から、急に橋の欄干が飛び出して来たように、大きく見えたのだ。 “ ん... 続きをみる

  • 霧の狐道102

    俺はアンパンマン自転車に跨って、山住神社から家へ向かった。 自転車の前カゴの底には、空になったスーパーの袋が一回結んだ状態で揺れている。 快適に自転車を走らせながら、俺はムフフフフと満足感に浸っていた。 “ これで、あのキツネから解放される・・・。” 自転車のペダルを踏む足も軽い。 “ 大ボスに会え... 続きをみる

  • 霧の狐道101

    俺は、お揚げを社の前に置いて、予定していたお願いを言った。 「 ええと、あの、家をウロウロしているキツネを何とかしてください。 勝手に、冷蔵庫のお揚げを食べたり、俺の姿で、みんなの夢に出て来 て悪さをするのです。 真っ当なキツネになるように、ご指導して下さい。 苦労の末、手に入れたお揚げを置いておき... 続きをみる

  • 霧の狐道100

    俺の目指す、山住神社の脇社のお稲荷さんは、参道の途中にある。 参道は木々に挟まれて暗く、両脇には落ち葉が積もっている。 しばらく歩いては、キョロキョロ辺りを見回す。 “ 確か、この辺りにあった筈だが・・・。” 参道沿いに低木が茂っているところを越えて右を見ると、狭い道の奥に小さな社が見えた。 「 あ... 続きをみる

  • 霧の狐道99

    5、橋 俺は、キープしたお揚げを持って山住神社に向かった。 アンパンマン自転車は、舗装されたアスファルトの道路を絶好調に走っている。 始めこそヤンキーを意識して注意して走っていたが、繁華街を抜けると、もうあの連中とは出くわすことも無いだろうと、軽く鼻歌も出て来る。 家並みを抜け、町の西を流れる当摩川... 続きをみる

  • 霧の狐道98

    山下先生が、格闘を始めた。 画面の女の子は、三回に一回はキツネに蹴っ飛ばされてプシュッと消える。 その度に、山下先生は雄叫びを上げる。 「 くそぉ~~~~っ! にゃろぉ~~~~~っ!!」 再び現れた画面のキツネは嬉しそうにピョンピョン跳ねる。 キツネは遊び相手が現れて楽しそうだ。 俺はそれを見ながら... 続きをみる

  • 霧の狐道97

    山下先生が、眉間に皺をさらに寄せて言った。 「 きっと、スゴイヤツが出てくるんだろうな・・・・。 ちょっと、不安になるな・・・・。」 でも、俺は、出て来る画面をもう知っている。 “ 稲荷の本部だ。 大ボスが出てきたら、先生、ビックリするだろうな・・・・。 でも、どうして、俺のイメージが画面に出てるん... 続きをみる

  • 霧の狐道96

    山下先生は、マニュアルと打って、エンターを押した。 画面に、駆除の流れが図解入りで出て来る。 “ウイルス・駆除ソフト・モグモグ7” ウイルス駆除のステップ 『 解説 』 各ステージをクリアーして下さい。 ただし、各ステージで、登場人物に10回蹴っ飛ばされるとあなたの負けです。 『 第1ステージ 』 ... 続きをみる

  • 霧の狐道95

    山下先生は、画面を注視した。 「 何だ、これは?」 キツネの横に、小さな木槌を持った萌え系のかわいい女の子が現れた。 キツネが女の子を指差して、こちらに合図を送っている。 「 えっ、“この女の子の木槌で僕を叩け”か・・・。 女の子の動きは、←、↑、→、↓のキーで、木槌で叩くときは、Zキー か・・・。... 続きをみる

  • 霧の狐道94

    山下先生が俺に言った。 「 おまえだな、このォ~! ウイルスに感染させやがって! パソコン、どうしてくれるんだ!」 「 いや、動かしてないですよォ~。」 「 じゃ、どうして、コイツがいるんだ?」 画面のキツネは、二カッと笑ってVサインを挙げた。 どうせ説明しても分かって貰えそうも無いので、俺はキツネ... 続きをみる

  • 霧の狐道93

    山下先生は後ろを振り返った。 画面に戻ったキツネは、二カッと笑う。 「 うわっ、パソコンにキツネがいる! 神谷、何時、パソコンを起動した?」 「 いえ、起動してないです。」 「 だったら、何で、キツネが映っているのだ!」 「 知らないですよ。」 「 惚けるな、電源を入れられるのは、おまえしかいない。... 続きをみる

  • 霧の狐道92

    山下先生が俺に聞いた。 「 どうした?」 「 いえ、何でも無いです。」 俺の声に驚いたのか、キツネが画面からサッと消えた。 「 そろそろ、3分経ったな。」 山下先生は、机からカップめんをテーブルに置き直して、俺は先生と向かい合わせに座った。 “ 何か不穏な空気が漂っているな・・・。” 山下先生が、プ... 続きをみる

  • 霧の狐道91

    パソコンのキツネは、右から出て来て左に入る、次は、左から出て来て右に入るを繰り返している。 “ 参ったなぁ。 俺が部屋から出たら、こいつ、ついて来るんじゃないかな・・・。 目的を知ったら、脇社に行くのを阻止されるかも知れないな・・・。” 俺がパソコンの画面を眺めていると山下先生が、カップめんとプラス... 続きをみる

  • 霧の狐道90

    山下先生が俺の方に向き直って言った。 「 テストの試作品を学校に持って行くのを忘れて、取りに帰って来たんだよ。 昨日、パソコンで作ってみたヤツ。 でも、もうちょっと神谷に付き合うか・・・。」 「 ハイ、そうして下さい。」 「 じゃ、腹減ったから、カップめんでも食うか?」 「 あ、それ、いいっすね!」... 続きをみる

  • 霧の狐道89

    俺は、座布団に戻った。 山下先生が俺に聞いた。 「 話の連中か?」 「 そうです。 もう、しばらく探すようです。」 「 じゃ、もう少しここにいるか?」 「 ハイ・・・・。 あ、先生、何処かお出かけですか?」 「 いや、忘れ物を取りに帰って来たんだ。」 「 じゃ、学校に戻るんですか?」 「 ああ、その... 続きをみる

  • 霧の狐道88

    原爆頭の携帯電話が繋がったようだ。 「 あ、自転車置き場にアンパンマンの自転車あったか? え、無い・・・、そう・・・。 建物の中には、居ないわ。 5階から、外眺めても、見えないし・・・。 うん、じゃ、下に降りるけど・・・。 あ~、あ~、うん、うん、・・・。 あ~、あんがちょ、後は、俺等で探すわ。 あ... 続きをみる

  • 霧の狐道87

    俺は、スーパーで先に掴んだお揚げを極道婆さんに因縁をつけられ取られそうになった話をして、それが原因で極道婆さんの孫のヤンキーに追い駆けられた話をした。 山下先生は笑いながら俺に言った。 「 そのスーパーには、当分行かない方が良さそうだなぁ。」 「 ホント、そうします。」 そのとき、マンションの通路の... 続きをみる

  • 霧の狐道86

    俺は自転車から降りて、台所へ自転車を押して行き、そこでスタンドを立てた。 そして、奥の部屋に戻った。 渡したトウモロコシは、パソコンの机に置いてある。 山下先生が、破れた座布団を俺に勧めた。 「 汚い所だけど、まあ、座れ。」 「 ホント、汚いすっね。 座布団破れてるし・・・。」 山下先生は座布団を引... 続きをみる

  • 霧の狐道85

    山下先生の声が正面奥の部屋から聞こえた。 「 おう、神谷、こっちに来い。」 俺は自転車を押して、奥の部屋に入り、部屋の中で自転車のスタンドを立てた。 そして、自転車の前カゴに一つ入っている原爆頭の投げたトウモロコシを取り出し、先生に渡した。 「 先生、お土産です。」 「 お、気が利くなぁ~。」 「 ... 続きをみる

  • 霧の狐道84

    俺は玄関扉の上にある部屋番号を見る。 “ 502号室か・・・。” 山下先生は、ポケットから鍵を出して扉を開け、部屋に入った。 俺も、先生に続いて自転車ごと急いで部屋に入る。 山下先生は、そのまま奥の部屋に入って行った。 そして、部屋に入った俺はマンションの入り口の鍵を閉める。 “ ガチャ!!” 入り... 続きをみる

  • 霧の狐道83

    エレベーターの扉がスルスル閉まり、エレベーター内が静かになった。 “ とりあえず、これはラッキー!” 引っくり返っていた山下先生が立ち上がりながら俺に言った。 「 あのなぁ~、神谷・・・。 自転車で入って来るな! バカか、おまえは!」 「 いやぁ~、会えて良かった。」 「 ぜんぜん、良くない!」 「... 続きをみる

  • 霧の狐道82

    山下先生は突っ込んで来る俺の自転車を見て、エレベーターの奥に後ずさった。 俺は自転車に乗ったまま、エレベーターに突入する。 山下先生が叫んだ。 「 うわっ!」 “ ガツンッ!!” 自転車は、エレベーターの奥の壁にぶち当たって横倒しに止まった。 そして、俺は、ぶち当たった急停車で自転車の前に投げ出され... 続きをみる

  • 霧の狐道81

    ひと筋走って、左手に大きなマンションが見える。 “ よし、あそこの裏だ!” 俺は、道路沿いのフェンスに沿って走り、道を曲がってマンションの正面が見えるところまで来た。 「 あれっ・・・・?」 マンションに向かって、歩いて行く緑色の男の後ろ姿がある。 “ あの緑色のズングリムックリの後ろ姿は・・・・。... 続きをみる

  • 霧の狐道80

    上り坂が終わって、下り坂になった。 俺の自転車のスピードが上がる。 “ 下り坂だったら、こっちの方が早いよっ!” 俺は、ドンドン二人を引き離した。 “ かなり離したな。 バッテリー切れかな? もう、振り切れるぞ!” そう思って、交差点まで来て振り返ると、遥か後ろで、カナトコ頭が携帯電話を持って何か話... 続きをみる

  • 霧の狐道79

    俺に当たらなかったトウモロコシたちは、俺の前まで飛んで行って地面に落ち、坂道をバックして転がって戻って来る。 “ コロコロコロコロ・・・。” 俺は、それらをヒョイヒョイ避ける。 原爆頭が、後ろで叫んだ。 「 うわっ!!」 “ ガッシャ~ン、カラカラカラ!” 俺は後ろを振り向いた。 坂を転がって戻って... 続きをみる

  • 霧の狐道78

    俺は、チラッと後ろを見た。 原爆頭は右手に運搬車の荷台に積んであったトウモロコシを持っていた。 “ うおっ、ヤバイぞ!” 俺は、さらに必死で立ち漕ぎでペダルを漕ぐ。 「 ぐおおおお~、坂がきつい!!!」 原爆頭がゼイゼイ言いながら、ジワジワ接近して来た。 俺は必死でペダルを漕ぐ。 “ ううううう!”... 続きをみる

  • 霧の狐道77

    俺は商店街を抜けて、大通りに入る。 道幅が広くなり上り坂になった。 上り坂はさすがにキツイ。 それに向かい風だ。 「 ウググググゥ~~!!」 俺は自転車を漕ぐ足に疲れを感じた。 「 ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・。」 スピードが緩む。 後ろをチラッと見る。 ミニサイクルに乗ったカナトコ頭はヨロヨロと遥か後... 続きをみる

  • 霧の狐道76

    俺のアンパンマン自転車は、商店街の人通りを避けながら疾走する。 突然、大きな音が後ろで聞こえた。 “ ガッシャ~ン!” 振り返ると、金髪の原爆頭が通行人とぶつかって、ミニサイクルごと八百屋に突っ込んでいる。 散乱したリンゴやミカンが商店街をゴロゴロ転がっている。 俺はチラチラと後ろの様子を窺った。 ... 続きをみる

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