• 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・28

    《第6章 自閉症の時間世界》 《要約》 【時の遠近感覚の謎】 ・自閉症者は、私たちと同じような時の遠近感覚をもっているのだろうか。 ・自閉症者は、私たちとは異なる記憶世界を生きているようである。ということは、過去・現在・未来を対照しながらつくり上げていく時間認識の世界も私たちとは異なるものとなっている可能性がある。この章では、この問題を追求してみることにする。 【昨日・今日・明日がわからない】 ・

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・27

    【質問しない子ども】 《要約》 ・健常者と自閉症者には、記憶方法に違いが見られるが、その結果、脳に貯えられる知識の世界はかなり違ったものとなるに違いない。 ・健常者は、互いに似たような対象に注目し、似たような方法で記憶していくから、知的な財産も互いに照合しやすいものとなる。自閉症者の場合は、私たちの場合とは異なる対象に注目し、彼特有の方法で記憶するから、その財産は公開しようがないのである。それらが

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・26

    【知能構造のアンバランス】 《要約》 ・自閉症児のWISCの結果から第一に言えることは、空間的な認知に係わる課題の成績が良いことである。動作性検査の中の「積木模様」「組み合わせ問題」「迷路問題」は、空間的な認知や構成力を要する課題だが、標準得点以上の結果を出している。このことは、自閉症児が空間的な枠組みに従って情報をインプットしているらしい事実と符合している。 ・第二に言えることは、空間的な課題の

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・25

    【文字言語の世界】 《要約》 ・(音声言語を獲得するためには)音と状況の同時進行的な世界を見守り、関連づけないと理解されない。これは非常にむずかしいことであり、健常な子どもでも、初期の言語発達には時間がかかるのである。自閉症児の注意の状態は、言語獲得には特に不利な面があると思われる。視線が一点にとどまることが少ない。彼らの視線は、他の人を見ないだけでなく、まわりで起きている出来事をもしつっこく追跡

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・24

    《第5章 自閉症の記憶世界》 《要約》 【視線の謎】 ・うつろな、あるいは遠くを見ているような自閉症者の視線は、いったい何を写し取っているいるのだろう。そして、何を記憶世界に送り込んでいるのだろうか。 ・本章では、自閉症者に観察される記憶の世界を訪ねてみることにする。 【時間的世界と空間的世界】 ・外部世界は、物を中心に見つめている限り、静止した空間世界だが、他の人の介入によって生じる出来事に注目

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・23

    《なぜオウム返しをするのか》 《要約》 ・自閉症児が「オウム返し」をするわけを知るには、言語の問題の中だけで考えず、行動の問題に戻って考えてみる必要がある。 ・自閉症児には行動プログラムを立てる力があまり育っていない。ゴールを自分で定め、道筋をつくっていない。彼らは、意思決定者としての自分に気づいていないのである。 ・だから、「どこに行くの?」と聞かれても、ゴールが明確となっていない。また「何を食

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・22

    【なぜ遊べないのか】 《要約》 ・自閉症児は、言葉をその意味と結びつけるうえでもトラブルを起こしやすい。このことは、自閉症児がうまく遊べないことと深く係わっている ・砂場遊びでは、砂をご飯に「見立てる」、ごっこ遊びでは、「お父さん」「お母さん」の意味。役割を「演じる」ことができなければ、遊びは成立しない。 ・自閉症児はこのような自由な発想をもちにくい。その理由は、「見立て遊び」や「ごっご遊び」が、

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・21

    【出来事の基本構造】 《要約》 ・出来事を表すのに必要な動詞や助詞の役割をうまく説明している文法理論がある。(フィルモアが提案した「格文法理論」)この理論にもとづいて、認知心理学者リンゼイとノーマンは出来事の構造を図式的に表現している。(ノーマン「情報処理心理学入門Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」サイエンス社) ◆「行為」→時(右方向)、「行為」→行為者(左方向)、「行為」→受け手(右上方向) 「行為」→対象(左上方

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1939年)再読・20

    【言語の階層構造】 《要約》 ・絵カードを使っておこなった研究の結果から言えることは、知能障害児も健常幼児も、大ざっぱなレベルでは0、文の表す内容を正しくつかんでいるらしいことである。これに対して自閉症児は名詞、動詞、助詞など、多くの単語を使うことはできても、それらが組み合わされてつくられる文全体の構造への配慮が乏しいように思われる。つまり、個々のレンガは見ていても、それらによって組み立てられてい

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・19

    【物から出来事へ】 《要約》 ・周囲の世界ががらりと変わるときがある。それは、目の前で何かが起きたときである。「ツミキ・オチチャッタ」、二歳児の口からこんな言葉が発せられることがよくある。 ・積木はまだ視界の中にあるけれども、「机の上の積木」はもうない。これは情報的には大きな意味をもつ事実である。だから、彼はその発見を大人に伝えたいのである。彼は物に執着し、それを奪い、手に入れようとする志向の強い

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・18

    【指さしから言葉へ】 《要約》 ・人の子どもは一歳から二歳までの間、いったい何をしているのだろう。その間に、もしくはそれに先立つ時期から、子どもは言葉以外のコミュニケーション手段をさかんに使うようになっている。その代表というものが指さしである。 ・他の指を心もち曲げ、ひとさし指だけを立てておこなわれる指さしが、生得的なメカニズムによって現れるのか、または、対象へと手を伸ばす動作の変形として現れるの

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・17

    《第4章 自閉症の言語世界》 《要約》 【オウム返しの謎】 ・自閉症児の言語は、彼らの行動と同じように捉えどころがない。けれども、「言語行動」という言葉があるように、言語を使うのも行動の一種なのであり、外部環境に働きかけたり取り込んだりするための手段なのである。自閉症児の言葉の問題には、行動の問題と共通した障害のメカニズムが隠されているに違いない。本章では、この問題に取り組んでみることにする。 【

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・16

    【身体に現れた症状】 《要約》 ・自閉症者は行動のプログラムの立て方に問題があり、その結果、(略)長時間固定した姿勢を保ったり、歩行を続けたりすることができなくなる。その状態が10年、20年と積み重ねられているうちには、身体を動かしたり支えてりする骨や筋肉にも異常が生じてくるはずである。 ・自閉症児は、乳幼児期を比較的おだやかに過ごす。3歳か4歳頃になって一転して多動となることが多い。突然、外に飛

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・15

    【遊べない子ども】 《要約》 ・子どもは、早くから所有欲をもち、長い期間、他者とのぶつかり合いを経験して、充分自我を育てた後、三歳を過ぎた頃から他児との歩調を合わせて共同遊びができるようになる。それは、共感の世界が芽生える時期で、「こころの理論」が新しい局面でつくられるときである。 ・しかし、共同遊びが始まる前に、子どもは長い間、一人遊びの時期を経験する。自閉症児は、この世界でも特徴ある行動を見せ

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・14

    【こころの理論】 《要約》 ・人のこころの内側を想像しながら行動することは、自閉症者にとって非常にむずかしいことなのである。 ・私たちは、たえず他人のこころの内側まで判断しながら行動している。つまり、こころの法則のようなものに気づいていて、自分なりの「こころの理論」を構成している。ところが自閉症児は、かなり知的能力が高いものでも「こころの理論」らしきものをもっていない。(ウタ・フリス「自閉症の謎を

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・13

    【カード分類テスト】 《要約》 ・自閉症児は、状況と関連させながら行動を進めることができない。一度プログラムを手にしてしまうと、それを変更しようとしない。また、微妙な感情のレベルで障害が見られる。 ・自閉症児の振る舞いを見ていると、前頭前野における発達障害を疑わせるところが非常に多いのだが、この仮説はまだ学界であまり検討されていない。 ・私は「ウィスコンシン・カード分類テスト」(このテストが前頭葉

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・12

    【大脳の三つのブロック】 《要約》 ・第1ブロックは脳幹、視床下部、大脳辺縁系を含む領域で、欲望や感情に関係するだけでなく、大脳皮質の興奮水準を調節している。第2ブロックは、大脳皮質、すなわち頭頂葉(筋肉感覚と触覚刺激の入力)、側頭葉(聴覚刺激の入力)、後頭葉(視覚刺激)からなる領域であり、情報の受容・分析・貯蔵を担当している。第3ブロックは、前頭葉からなる領域で、運動の実行や制御(運動野と運動前

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・11

    【状況・行動規制】 《要約》 ・どのようなときには何をしなければならないか。人間も含めてすべての動物の脳にはおのことについての無数のルールが組み込まれている。雨が降れば傘をさすし、部屋に入るにはドアを開ける。つまり、状況が行動を生み出す。 ・すばやく状況を認知し、行動するためのルールは、状況・行動規則と呼ばれ、「IF~THEN~」のように表される。IF以下はIF部と呼ばれ、THEN以下はTHEN部

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・10

    《第3章 自閉症の行動世界》 《要約》 【行き先についての謎】 ・自閉症者の動きは特有である。一挙手一投足がどこか私たちとは違う。違うことはわかるが、どのように違うかは実はよくわかっていない。彼らは、私たちの目の前を横切り、どこにいこうとしているのだろう。その行き先をこの章では追求してみることにする。 【異星人たち】 ・自閉症児の父親であるAさんは、息子さんにまつわる驚きの経験を話されてから「まる

  • 「自閉症からのメッセージ」(熊谷高幸・講談社新書・1993年)再読・9

    【認知の革命】 《要約》 ◆前操作期・・・2歳→6歳 ◆具体的操作期・・・6歳→12歳 ◆形式的操作期・・・12歳→  このモデルは、人間が人生の初期であればあるほど、急勾配の坂を駆け上がりながら認知構造の変革をおこなうことを示してくれている。このとき必要とされているエネルギーは、計り知れないものであるに違いない。 ・「行為はエネルギー的側面と、構造的側面とを持っている。前者は感情であり、後者は認

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