• 「町人貴族」モリエール 岩波文庫

    頭の働きは悪く、無教養だが大金持ちの町人ジュールダンは、貴族になりたくてしようがありません。貴族の真似をして、じつにさまざまな習い事に手を出します。ついには、娘も貴族でなければ、嫁にやらないと言い出しますが、ジュールダンは、貴族のしたたかさに手もなくやられてしまいます。観客はその有り様に抱腹絶倒しますが、いつの間にか、この町人に人間的な共感が湧くのを禁じ得ません。哲学の講義の際、哲学が本質的に揶揄

  • 「タルチェフ」モリエール 岩波文庫

    タルチェフは偽善者の代名詞となった劇中人物です。敬虔な宗教家を装い、金満家のオルゴン氏を夢中にさせてしまいます。他の登場人物たちは、もうすでにタルチェフの正体は、ほとんど見抜いているのですが、オルゴン氏だけは宗教的な高揚さえ、タルチェフに感じています。タルチェフはオルゴン氏一人に対しては、思いのままです。本当の偽善者というものは、そういうものなのでしょう。オルゴン氏は、他の人たちの賢い忠告には、一

  • 「人間嫌い ミザントロープ」モリエール 新潮文庫

    世慣れない純真一方の青年アルセストは、偽善だらけの社交界に強く反発し、激しく憎みますが、その社交界を体現したような男心を手玉に取るコケットなセリメーヌ未亡人に恋をしてしまいます。この皮肉な出来事が、劇に何とも言えないおかしみを生じさせますが、ついに、おかしみだけに終止することはありません。アルセストは恋に破れ、俗世間ともまったく交渉を断つことを誓い本当の人間嫌いになります。モリエールは喜劇の裏の悲