おすすめ本のムラゴンブログ

  • 「俳句はかく解しかく味わう」高浜虚子

    この書の題名には、少々不審に思う人が居るかもしれません。俳句という文芸には、解し方や味わい方まであるのか、自由に解し自由に味わえば、それで良いではないかというように。それも、もっともな考え方なのですが、俳句というのは、とても狭い道を行く文芸だということを、忘れないで欲しいと思います。虚子は、さらに論を進めて「俳句は芭蕉の文学である」とさえ言っています。論は、虚子で尽きていますから、言及しませんが、

  • 「転移の心理学」ユング

    ユングはフロイトとなにげない会話を交わしているとき、不意に、フロイトから「転移をどう思うか?」と聞かれ、ユングは「それは心理療法のアルファでありオメガです。」と応え、それに対しフロイトは「そうか、それなら、肝心なことは分かっているという訳だ。」と応じたという逸話が残っています。転移とは精神分析学の専門用語ですが、平たく言って、クライアントから心理療法家に向けられる愛情を指します。この書は、一体これ

  • 「おとなしい女」ドストエフスキー 福武文庫 

    ドストエフスキーの大小説によく見られるのですが、極限にまで紛糾したと思わせる男女間の心理のせめぎ合いが、この短編小説では、まことにコンパクトに、けれども克明に描き出されます。自分でも知らぬ間に、新妻の心を、ぎりぎりにまで追い詰めてしまった金貸しを生業とする男は、自ら命を絶った主人公のおとなしい妻の亡骸を前にして、あまりにもはげしく思考を働かせているところで、小説は、突然終わります。読者は、心理上の

  • 「連想実験」ユング みすず書房

    ユング初期の傑作論考です。連想実験とは、被験者に「赤、水、死」などの刺激語を提示し、それから自由に連想する言葉を言ってもらうことで、その被験者の心の状態を調べるというものですが、ユングは、ここで、被験者が刺激語を与えられてから、回答するまでのわずかな時間に注目します。その時間を正確に測ることで、被験者のコンプレックスの在処を正確に突き止めることができることを、発見しました。若き日のユングの精悍な姿

  • 「空飛ぶ円盤」ユング ちくま学芸文庫

    ユングはごく若い頃から、超常現象といわれているものとは親しいものだったと、自伝の中で語っています。この書はユングの最晩年に書かれました。いわゆる「UFO」を深層心理学の立場から、しごく真面目に、しかも、学究的に考察した他に類例を見ない書物です。緒言には、占星学から論究された21世紀における世界観をこの書のテーマとして提示します。それをどう取るかは、もちろん読む者の自由ですが、これほど説得力がある、

  • 「人間と象徴」ユングほか 河出書房新社

    ユング心理学への入門書です。ユングとその弟子たちによる共著という体裁を採っています。ユングの心理学はイメージの心理学とも言われますが、多くの写真や図柄が豊富に採録され、ユング心理学への格好な導きの書物になっています。ユングの弟子たちには優秀な人材が多く、それぞれでも、盛んに優れた書物を著しています。この書は、難解なユング心理学への初心者向けの本がないために、弟子たちの懇望によって出来上がったもので

  • 「二重人格」ドストエフスキー 岩波文庫

    この小説は、「貧しき人々」の直後に書かれました。傑作かどうかは、判じかねるような作品ですが、ドストエフスキー自身は「『貧しき人々』より十倍優れた作品だ」と高言しています。ドストエフスキー自身の不思議な心の有り様が全面に溢れ出た作品と言って良く、複雑怪奇な心理の糸が、肉感性を持って、二重人格の主人公を軸に、精神科医を脇役として、織られて行きます。この小説を発表した直後にドストエフスキーは政治犯として

  • 「貧しき人々」ドストエフスキー 新潮文庫

    当時のロシアの批評家ベリンスキーから絶賛された、ドストエフスキーの処女作です。著者の終生のモチーフの一つとなった虐げられた貧しい人々の秘められた美しい心情が、じつに見事に描かれます。この小説は、時間的にとても精緻に構成されていて、後年のドストエフスキーに見られる小説上の時間における革新性の萌芽を思わせます。著者は、「芋を洗うような役所の仕事に、真からうんざりし、ネヴァ河に飛び込むつもりで書いた」と

  • 「信長公記」太田牛一 新人物文庫

    織田信長についての第一級史料とされる高名な歴史書の現代語訳です。この書に拠ると、信長は頭角を現すずっと以前から、天下を取る男に違いないと見巧者たちからは見られていたそうです。太田は、徹底した事実調査と私心を廃した目とで、具に、信長の為人と事跡を書いたと言います。この書は、信長の姿をまさしく浮き彫りにして見せます。信長は、日本史上もっとも独創的な男ですが、彼を一人格としてみるとき、謎めいたことが多過

  • 「百歳の老婆」ドストエフスキー 福武文庫

    この短編小説は、いわゆるドストエフスキーらしい心理観察眼というものを、まるで感じさせないものです。作中、老婆は忽焉と息を引き取ります。天寿を全うした老婆の死は、誰にも悲しみを与えません。死ぬ直前の老婆は、しきりに自分の曾孫のコートの丈が少しばかり短いことを気にしていましたが、もう誰もそんなことを気に留める者はいません。いかにも、枯れ老いて人生を生き尽くした百歳の老婆の葬儀は、涙を流す者もなく、晴れ

  • 「哲学入門<思想と動くもの>」ベルクソン 岩波文庫

    ベルクソンは言葉による解決を放棄してから、哲学を始めたと言っています。この書は、西洋哲学を総覧した著者が、なにゆえ哲学は、さまざまな学派に分かれなければならないのかという盲点をするどく突き、言葉による概念上の分析が、そのことに深く関わっている様をあぶり出していきます。言表不可能な直観を哲学の第一義に置くとき、哲学のシステムは一つで足りるとしたベルクソンのもっとも基本的な思想が、分かり易く説かれた、

  • 「音楽家訪問」アラン 岩波文庫

    アランは二十才まで正式な音楽を聞いたことがなかったと言っています。この書は、そのアランが音楽についての造詣を深め、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを素材として、縦横に語った書物です。調についてのそれぞれの興味深い性格付けが為されていますが、アランは、調の性格付けがもっともむずかしい仕事だったと述懐しています。オーケストラの楽団員の中で、一体、何人が本当に音楽的素質を持っているだろうかというよう

  • 「道徳と宗教の二源泉」ベルクソン 岩波文庫

    ベルクソンの遺書と言える著作です。聖書に由来する神とギリシア哲学における神々とが混交してしまった西洋哲学の弱点とも言える神観念をきれいに解きほぐして行きます。ベルクソンは決して難問を一挙に解決することを望みません。着実な一歩を進め、後は後世の哲学に託そうとします。この著作の最後で「人類はまだ自分たちの将来は、自分たち次第だということを知らないでいる」という予見に満ちた言葉を残しています。ベルクソン

  • 「今年の秋」正宗白鳥 中公文庫

    日本近代の自然主義小説家正宗白鳥の最晩年の短篇集です。どの編も枯れ切った、宗教的な雰囲気さえ漂う名篇になっています。白鳥の文章は、味も素っ気もないもので、まるで活字そのものを読んでいるような気にさせられますが、そのために作品の純度は非常な高さに達するものがあります。白鳥は、若い頃キリスト教に入信しましたが、「教えを捨てる者は地獄に落ちる。」とその宗教の頑なな性格に反発し、棄教した経歴があります。白

  • 【本 決定版!】おすすめ本ブログ記事一覧 読んだ本の書評たくさん有♪♪

    読書する前にぜひ僕・村内伸弘が心込めて書き上げた書評(読書ブログ集)をご覧ください。そして本を読んでみてください。 本の読み方 - 吉田松陰「留魂録」 全訳注 古川薫 本はすばらしい! 本はうつくしい!! ▼読んだ本 禅の根本教典 六祖慧能の「六祖壇経」 生死事大、無常迅速。見性成仏。 名文!美文!感動的な発刊の言葉!「タチバナ教養文庫」発刊にあたって 即位の礼全記録 平成時代の幕開け & 天皇陛

  • 「四季をめぐる51のプロポ」アラン 岩波文庫

    ここには、日本人が感じる情感を伴った「四季」とは、まるで異なった欧米人の感じる「四季」の姿があります。われわれに寄り添い、豊かな恵みを与えてくれる「四季」ではなく、はっきりと、それに対抗し、武装する必要さえある「四季」が克明に描かれていきます。聖書の記述に見える、イエスが、季節ではないいちじくに向かって「今から、実を結ばざれ」と呪いをかけたことの弁明といって良いような書物です。われわれ日本人の季節

  • 「微生物の狩人」ポール・ド・クライフ 岩波文庫

    現在、科学でもっとも分からない分野は、微生物の世界だと言われています。一つの砂粒の中に、一億個以上いる微生物の、その無限の無限を探求する必要があるからだそうです。本書は、その微生物研究の先駆けとなった、当時最先端の顕微鏡を用い、詳細にその不思議な姿を描いて見せたレーエンフェックをはじめとして、有名な狂犬病のワクチンを開発したパストゥールやコレラ菌を発見したコッホなどの登場する、微生物学者たちの生き

  • 「ドン・キホーテ」セルバンテス 岩波文庫

    人間性とはいいますが、これほど偉大でまっさらな心情を持った作中人物は他にいないでしょう。著者のセルバンテスは、この書のために、風俗紊乱罪で投獄されています。現代の視点から見れば、滑稽なほどの法律の乱用に見えますが、著者の有名な「ドン・キホーテは私だ。」という裁判での弁明の言葉は、その後の文学の脊髄を形作る、文学者の金科玉条となりました。

  • 「アントニーとクレオパトラ」シェイクスピア 新潮文庫

    シェイクスピアの作品の中でも、もっとも爛熟し退嬰的な気配の漂う、通好みの作品です。家来や召し使いたちは主人公たちより潔く、次々と自ら命を絶っていきます。残された彼らには、背徳の影が色濃く忍び寄ります。大人同士の恋愛悲劇とは、かくあるものかと、読者は、熟れ過ぎた果実をほおばるように、その頽廃した複雑な味わいを、咬みしめることでしょう。

  • 閑話休題 妖怪流行

    軽い話をひとつ。最近、子供たちを中心に、親も巻き込んで、妖怪や怪物が大流行りである。面白いし、何か、よいことのように思えてしょうがない。 あの複雑怪奇で、大げさな形象と有り得ないような色の組み合わせは、泣く子供も多いようだが、子どもの心に、豊かな栄養分を与えるような気がしてならない。 柳田は、「妖怪談義」の中で、なぜ、昔の人には妖怪を信じる人が多くて、今は、信じる人がまるでいないか、分からなくて困

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