名無しの拙作 第2作目 第7-1話 仏壇の記憶と甘い夏
祖母は、毎朝仏壇に手を合わせる。宗教の仏さんにも手を合わせ、暫くはお経を唱える。綾香も隣で手を合わせるけれど、足が痺れて、暫くすると横座りをする。遺影のお祖父ちゃんの事は良く知らない。どうやら小さい頃に一緒に遊んだことがあるらしいが、最後に顔を見たのはお祖父ちゃんのお葬式で綾香はまだ五歳だったので殆... 続きをみる
祖母は、毎朝仏壇に手を合わせる。宗教の仏さんにも手を合わせ、暫くはお経を唱える。綾香も隣で手を合わせるけれど、足が痺れて、暫くすると横座りをする。遺影のお祖父ちゃんの事は良く知らない。どうやら小さい頃に一緒に遊んだことがあるらしいが、最後に顔を見たのはお祖父ちゃんのお葬式で綾香はまだ五歳だったので殆... 続きをみる
2026年一発目の小説は青春小説です。2026年もよろしくお願いします。 タイトル:『スマッシュ・シンクロニシティ』 第1章 最悪のダブルス結成 キュッ、と甲高い摩擦音が、体育館の空気を引き裂いた。 視界の端で、白いシャトルがスローモーションのように床へと落ちていく。 追いつけない。 俺の身体は、勢... 続きをみる
コンデジ持ってブラブラには関係ないですが、私の備忘録として掲載します。 Kさん、おはようございます。 このエッセイの感想詩とコラムを送ります。 散文詩:記憶の風が吹く町で 唐津の風は、遠い記憶をそっと撫でてくれる。 祖母の声、親戚の影、名も知らぬ少年の一瞬の滞在。 血のつながりも過ぎ去った命も、 町... 続きをみる
コンデジ持ってブラブラには関係ないですが、私の備忘録として掲載します。 Hさん、おはようございます。 散文詩:揺らぎから生まれる物語 心の奥で小さく揺れた感情が、 そっと形を変えて落ちてくる。 憧れや後悔、まだ触れたことのない未来の気配。 そのひと粒が、物語の始まりになる。 ◇◆◇ コラム:二つの道... 続きをみる
龍児は麗と、綾香に内緒で逢ったのが二週間、毎日続いた。その後は、彼が彼女を強く抱き締めたまま、耳元で「きれいだよ」「素敵だよ」「大好きだよ」と囁くと、彼女は、(このままどうなってもいい)と思えるほど幸せな気持ちになっていた。 八月の半ばに関東にある本家に行く事になった。麗としては、家で留守番して龍児... 続きをみる
Kさん、 あけましておめでとうございます。 散文詩:海の記憶が呼ぶ場所で 失われた家の記憶は、 いまも胸の奥で静かに息をしている。 歩けば海に届くあの町の風景は、 もう確かめることはできないのに、 祖母や母の思い出が そっと色を与えてくれる。 海の匂いも、夏の光も、 自分の中にだけ残る唐津の景色。 ... 続きをみる
龍児がこう言った時は、真剣に『もうちょっと一緒にいて!』と思い、麗の泣きそうな表情がおかしかったのか、龍児は彼女の深層心理まで見抜けてしまう魔術を持っていたので、ニコッと微笑むと麗の肩に手を置き笑顔が近付いた。 (えっ…?)と心の中で叫んだ麗だった。 麗にとってはファーストキスで、心の準備が出来てな... 続きをみる
タイトル:『こたつとミカンと大騒動(パニック) 〜あさひ荘のニューイヤー〜』 第1章 宣戦布告は大晦日の朝に 十二月三十一日。大晦日。 それは本来、一年間の労働と喧噪に別れを告げ、静寂の中で厳かに新年を迎えるための準備期間であるはずだ。すきま風が容赦なく吹き込む、ここシェアハウス「あさひ荘」であって... 続きをみる
Hさん、おはようございます。 散文詩:歩幅をそろえる幸せのかたち ふたりが寄り添えば、 自分たちだけでなく周囲にも 静かな光が広がる。 その願いは身勝手に見えて、 実はそっと差し出す優しさの形だ。 同じ歩幅で歩き出す背中には、 互いを思いやる温度が宿り、 その温度は波紋のように 誰かの心へ届いていく... 続きをみる
龍児は自身を名乗り麗よりも若くて小五で、東京に住んでいて、この夏休みを利用して母方の祖父母の家に遊びに来ていると説明した。 「この寺子屋、良く来るの?」と麗。 「あ、うん。だいたい毎日ね」 と龍児。 「じゃあ、また逢えるかもしれないね?」と麗。 龍児の優しい笑顔に、麗は思わず真っ赤になった。麗は帰宅... 続きをみる
毎朝、お邪魔する小説友のブログのエッセイへの散文詩による感想文とコラムです。 このブログには関係がないのですが、備忘録として公開します。 Hさん、おはようございます。 散文詩:世界線の端で祈るHさん ふたつの世界をさまようたび、 胸の奥で小さな光が揺れる。 彼と歩く未来と、彼のいない静かな未来。 ど... 続きをみる
麗(うらら)は小さい時から大人しいというか、地味で暗い子だった。 男子にモテない癖に自意識過剰なのか、男子に話し掛けられると身構えるタイプだった。 お友達に彼氏ができたとか、初体験を済ませたとか聞くと、内心は羨ましいと思いながら、 自分には縁のない世界と思っていた。 小六の夏休み。 麗は田舎のこの村... 続きをみる
毎朝、お邪魔する小説友のブログのエッセイへの散文詩による感想文とコラムです。 このブログには関係がないのですが、備忘録として公開します。 Hさん、おはようございます。 散文詩とコラムはHさんの思いをリンクさせました。 散文詩:抑えたはずの想いが灯るとき 眺めているだけで満ち足りるはずだったのに、 胸... 続きをみる
「なんだ、綾ちゃんの家と私の家は本当に近くだったんだね。五反田ボウルを左手に見て、その右側の目黒川沿いを歩いて行くと突き当りに東洋現像所があって、その横に目黒川を渡る橋があるの。相変わらず汚い川だけどね。その橋を渡ってT字路にぶつかった家が私の家で、お父さんは京浜ベーカリーっていうレストランに勤めて... 続きをみる
毎朝、お邪魔する小説友のブログのエッセイへの散文詩による感想文とコラムです。 このブログには関係がないのですが、備忘録として公開します。 散文詩の感想:答えを探す彼の胸の内で 君の言葉を読んで、胸の奥が静かに揺れた。 大事に思っている気持ちは嘘じゃないし、 君が抱えている不安も、ちゃんと伝わってる。... 続きをみる
春 第36話 銀河の蔓(つる)と、目覚める約束
春 第37話 にゃっぽん先生と、琥珀の教室
春 第38話 二億五千万の点呼と、ぺこぺこの作戦会議
春 第39話 琥珀色の外交官たちの初陣
春 第57話 銀河のささやき、光を希望に変える者
恐竜の島に会いに行こう! 宝の島続々編 第10章 真のヒーローは誰だ?…32
ジョーカーをつかまえろ!時をかける巫女…296
0163「生活改善」
すっぴんと手ぶら旅と…御手洗さんのいうことには…456
ネタバレなし感想『心臓の王国』著:竹宮ゆゆこ
ネタバレなし感想『教室が、ひとりになるまで』著:浅倉秋成
青春恋愛短編小説「書店員の胸が小さいことの証明 〜理系男子は恋を定義できない〜」
ネタバレなし感想『私を知らないで』著:白河三兎
ネタバレなし感想『魔法使いのハーブティー』著:有間カオル
ネタバレなし感想『神様ゲーム』著:麻耶雄嵩
「いずれにしてもお礼をしないといけないので、どうしたら良いかと……」と少女。 「お礼してもらいたかったら、あの場にいたのに、そんなことしてもらいたいと思ってねぇがら、いなくなったんだべ。だから気にしねくてもいいんでねぇが?」と綾香は慌てて言った。 「それはそうよね。まだウツツガワ商店で会ったら、アイ... 続きをみる
綾香は母に電話をして、氷川神社の大鳥居を潜って右側に雷が落ちて屋根に大きな穴が空いていた家があった事を聞くと、母は「あったよ」と答えた。 (龍児が言っていた事は本当だったんだ)と思い、縁側に出て龍児を呼ぶと、「何、綾香?」と塀の上に座って相変わらず足をブラブラさせて笑顔で言った。 「ママに電話して訊... 続きをみる
こんばんは。 今日は休みだったので最後の年末の買い出しに行ってきました。 30日に叔母が家に来るのでそれの準備も有ります。 本題に移ります。 「舞ります!」の一次小説、21話目になります。 今回は、深大寺美鳥の作ったウィルスで周りの皆がアンラッキーに見舞われてしまう話になります。 深大寺美鳥「は・・... 続きをみる
コンデジ持ってブラブラには関係ないですが、私の備忘録として掲載します。 Oさん、おはようございます。 いつも拝読しながら、私の感想がどこまで意図に寄り添えているのか自信が持てず、もし的外れな点がございましたらお許しくださいませ。 Oさんの作品に向き合うときは、我が師のI先生の作品と同じように自然と背... 続きをみる
「 『龍』さんと書いてあったのは、龍児のご先祖さんかな?」 「それはどうだか分からないよ。聞いた事はないし、元々俺は人間だったみたいだからさ」 「そっか、そう言う事は聞かされてないんだね」 「うん、でも他の妖怪(あやかし)は皆、龍の体なんだけど、俺だけ羽があるんだよ。だから多分、俺もそう勝手には思っ... 続きをみる
短編小説:『巳午(みうま)引継ぎ事変』 天界の最果て、十二支管理局部にある「第十二会議室」。 窓の外には、下界の喧騒が星屑のように遠く煌めいている。時刻は人間界の時間で、十二月三十一日の午後十一時三十分を回ったところだ。 会議室の空気は、冷え冷えとしていた。 「――ええ、ですから。こちらの『脱皮案件... 続きをみる
龍児が先に神様の前に行き、二礼、二拍手、(神様、姉の美奈子に必ず逢いますので見ていて下さい)と心で唱え一拍手をすると、綾香も見習って同じようにした。 「お辞儀を二回・拍手を二回・お辞儀を一回をするの?」と綾香が訊いた。 「綾香は人間なのに何も知らないんだな? 大まかに説明すると、初めの二礼は、『神様... 続きをみる
毎朝、お邪魔する小説友のブログに書いた、今日のお題は『弁当』でした。 お題を頂いて、それをエッセイにするのは、意外と学べます。 ま、私が彼女の小説の内容の中で抽出して勝手に書いたエッセイですが。 ◇◆◇◆◇ 「今日のお題:高校時代の弁当の話の第一弾」 題名:母と私と茶色い宇宙弁当 私の弁当史は幼少期... 続きをみる
その時だった龍児は暫く固まった。 「龍児、どうしたの?」と言っても彼は返事をせずに、固まっているだけだった。 「龍児、どうしたの?」と綾香が心配して。 「思い出したんだよ」と龍児。 「何を?」と綾香。 「その氷川神社の鳥居をくぐって暫く歩くと右側に雷が落ちて屋根にポッカリとまわるく穴が空いている家が... 続きをみる
小説『クリスマス・イブの風』 第一章:停滞する聖夜 オフィス街の灯りがひとつ、またひとつと消えていくなか、大手菓子メーカー「リュミエール」の営業三課だけが、蛍の光のように頼りなく点灯していた。 壁に掛けられた時計の針は、残酷にも二十三時を回ろうとしている。 十二月二十四日。世間はクリスマス・イブとい... 続きをみる
綾香は小さな声になって「龍、ちょっと待ってて」と言って部屋に入って浴衣を脱いで洋服を着ながら「お祖母ちゃん、遊んでくるね」と綾香。 「うん。行ってらっしゃい」と祖母。 綾香はそのまま玄関から外に出て、門の外で待っていた龍児に話し掛けた。 「神社って、村の入口にある、あの大きな所だよね?」と綾香。 「... 続きをみる
短編小説:『聖夜の銀河鉄道』 窓の外には、静かに雪が降り積もっている。 エレナは暖炉の前で、編みかけのマフラーを膝に置き、うとうとしていた。パチパチと爆ぜる薪の音が、心地よい子守唄のように響く。 ふと、遠くで汽笛の音が聞こえた気がした。 目を開けると、そこは一面の銀世界だった。 けれど寒いわけではな... 続きをみる
「はいよ、アイスね」 冷凍ショーケースの中にミルク味のホームランバーを見付けた綾香は取り出して「これを二本下さい」 祖母から預かった百玉を渡して八十円のお釣りをもらって店を後にした。 「暑いから食べようよ」と言って、龍児に渡すと、彼はその銀紙の包みを器用に開けて、「食べ終わったら棒に当たりがあるんだ... 続きをみる
短編小説『北風小僧と赤いマフラー』 木枯らしが吹くたびに、公園の裸木がカラカラと乾いた音を立てる。十二月中旬の午後四時。空はもう茜色に染まりかけていて、吐く息は真っ白だった。 小学五年生の里奈(りな)は、マフラーに顔を半分埋(うず)めたまま、一人でブランコを漕いでいた。 キィ、キィ、と錆びた鎖が鳴る... 続きをみる
この村に来て五日目の午後。綾香は細かいお金がないからと言った祖母から貰った百玉を持って出掛けようとしたがお店屋が分からないと気付いた。 「龍が来ないかな!?」と呟くと。 そこに龍児が、「どうした?」と言ってニッと笑いながら現れた。 「お祖母ちゃんがアイス買いなって言ってくれたんだけど、お店屋さんを知... 続きをみる
妖怪(あやかし)のとんでもない事実を知ってしまったと思っていて動揺しているのは綾香だけで当の龍児は何にも気にしていないのかサバサバとした顔をしていた。 「信じてくれて良かったよ。妖怪(あやかし)を信じない人間が増えているからさ」 「私も今の今まで、妖怪(あやかし)はいないと思っていたけど」 「流石、... 続きをみる
漢字や算数の宿題がなくても、それなら一緒にできる。いい考えだと思ったが、龍児はより怪訝な顔をした。 「あんた、美奈子じゃないんだよな?」 昨日もその名前で間違えられた。 「違うよ、綾香だって。その美奈子って人、捜しているんだっけ?」 「妖怪(あやかし)坂のことを気にしているのは、余計に美奈子っぽい。... 続きをみる
ヒロシは居間の方へと歩いていった。壁の向こうから祖母の声がする。その声を聞き、龍児が眉間に皺を寄せた。 「ここ、幸子(さちこ)の家か。あんた幸子の孫なの?」 「そうだよ。お祖母ちゃんのこと、知っているんだね」 「知っているも何も……この辺じゃ超有名だよ」 「そうだ、龍児、算数得意? 宿題一緒にやろう... 続きをみる
小説タイトル:筋肉皇子ヤマトタケルの「なんで俺だけこんな目に!?」大紀行 登場人物紹介 オウス(後のヤマトタケル):景行天皇の息子。規格外の腕力と、小鳥のような脳みそを持つ。基本いいやつだが、力の加減を知らない。口癖は「とりあえず殴ってみるか」。 景行天皇(パパ):オウスの父親。息子のあまりのパワー... 続きをみる
綾香は部屋から外に出て玄関に行くと表札を見た。 この辺は同じ名字の人が多いから、下の名前で呼び合うことが多いらしい。綾香の名字である、「雲母坂(きららざか)」は全国的には多くはない名字だけれど、現川(うつつがわ)村では珍しくないらしく、住民の三割くらいは雲母坂(きららざか)」姓だそうだ。 綾香の家系... 続きをみる
完結編:悪魔の犬(3夜目) 夜の街は、これほどまでに色彩に溢れていたのか。 俺たちは並んで走った。アスファルトを蹴る足の裏から、大地のエレルギーが直接流れ込んでくる。 俺の嗅覚は、街路樹の陰に隠れた「悪意」を正確に嗅ぎ分けていた。 路地裏で酔っ払いを狙う暴漢、空き巣に入ろうと息を潜める男、虐待の行わ... 続きをみる
翌朝、綾香は祖母の家のすぐ前にある畑を案内された。畑と言っても、広めの家庭菜園といった大きさだ。 「綾香にお願いするしごどは、このトマトどミニトマトの畑のお手入れど、ご飯の支度のお手伝い。それがらお掃除どお洗濯も手伝ってほしぇし(ほしいし)、あど(あと)ヒロシの餌ど水ね」 「ヒロシ?」 「まだ会って... 続きをみる
続・悪魔の犬(2夜目) その夜、破滅は唐突に訪れた。 いつものように21時50分を過ぎ、俺はリビングから庭のシロを監視していた。だが、今夜のシロは様子が違った。いつもなら静かにお座りをして「その時」を待つのに、今日は落ち着きなく小屋の周りをグルグルと回り、喉の奥で低く唸っている。 まるで、変身の衝動... 続きをみる
今年もあと2週間ちょっと。 で、今年買った小説は・・・、 実本もネット書籍も、1冊もなし❗️。 また、雑誌他、書籍類もまったくなし‼️。 つまり、「本」を買ってないということ。 今年買った音楽=CD、0枚。 DL(音楽ダウンロード) ↓ ↓ ↓ バド・パウエル/ベスト盤 ラジ/ベスト盤 ジョン・ロー... 続きをみる
尊敬する師匠の小説を拝読しながら、感想を書き続けてきました。まだ全体の半分にも届いていませんが、A4コピー用紙に書き連ねた感想が三百枚に達しましたので、その記念に写真を撮り、こうしてブログに残すことにしました。 私は字を小さく書くことができず、また目が悪いため、細字で書くと後で読み返す際に虫眼鏡が必... 続きをみる
名古屋の親戚や母から変わり者と訊いていた祖母を綾香は会う前から煙たがっていた。でもこの人はこんなに穏やかで優しい人だ。 不安がったり警戒したり、失礼なことをしてしまった。夕飯を食べながら内心反省した。やっぱり人は誰かの判断ではなくて自分の目で見て判断しなくてはいけないと思った。 大事な夏休みがこのド... 続きをみる
タイトル:悪魔の犬(1夜目) 我が家の犬、シロは完璧だ。 雑種だが毛並みは雪のように白く、近所の誰に会っても尻尾をちぎれんばかりに振って愛想を振りまく。郵便配達員は「こんなに賢い犬は見たことがない」と褒めそやし、散歩中に出会う小学生たちはシロの頭を撫でるために列を作る。 昼間のシロは、間違いなく「善... 続きをみる
見上げた夕暮れの空がうっすらと星と月が浮かび始めていることに気付いた綾香だった。 しまった、明るい内に村に入らないと不幸になるんだった。というより、その迷信を信じている父だったので早く行かなくてはならないと思って焦った。 綾香は舗装されていない砂利道を、全速力で走って下った。 父が言っていた通り、正... 続きをみる
探偵猫のシズ:第5話(最終話):シズ、故郷へ帰る 1.突然の「さよなら」 その朝、俺、春日野健太は、奇妙な静けさの中で目を覚ました。 いつもなら、この時間には鳩時計ならぬ「腹時計」が正確に作動したシズが、俺の腹の上にダイブして「飯を出せ」と催促してくるはずだ。 だが、今日は重みがない。 「……シズ?... 続きをみる
ふわふわの食パン、カチカチの彼女 〜俺のサンドイッチ事変〜 「この食パン、ただのパンじゃない。俺の未来を切り拓く鍵だ」 朝、俺はキッチンのテーブルに鎮座する二斤サイズの「高級食パン」を見つめながら、勝った気でいた。行列に並んで手に入れた、今話題の、耳までとろけるように柔らかいあのパンだ。甘いバターの... 続きをみる
【オリジナル曲】Code: Snowdrop - 不器用なプログラマーの聖夜へのカウントダウン【クリスマスMV】 短編小説に合わせた曲を作成してみました。良かったら聞いてください。 短編小説『聖夜へのカウントダウン』 【12月20日:あと4日】「クソッ、またエラーか…」 奏太(そうた)は、冷え切った... 続きをみる
這い上がって膝の泥を払っていると、引っ張りあげた少年が目を丸くしていた。 「あんた……美奈子か?」 「えっ?」 綾香はきょとんと少年の顔を見た。 彼は目を大きく見開いた。 「美奈子だろ!? 俺、ずっと捜して……!」 少年が口を半開きにしてカタカタと肩を震わせた。どうやら、人違いをしているようだ。 「... 続きをみる
探偵猫のシズ:第4話:密室のキャットタワー殺人未遂 1.潜入! 禁断の楽園「ニャン・キングダム」 「いいかシズ、今日我々がここに来たのは遊びじゃない。潜入捜査だ。気を引き締めろ」 俺、春日野健太は、店の前で神妙な面持ちで言った。 目の前にあるのは、駅前の一等地にオープンしたばかりの超高級猫カフェ『ニ... 続きをみる
「綾香、この先に分かれ道があるけど……」と父が、なにか言っていたようだったけれど、もう綾香の耳には届いてなかった。 数分歩いたところで突如、現れた分かれ道だった。あまり聞いていなかったが、そう言えば父は分かれ道がなんとかって言っていた。 木々の塊を挟んで右は、少し道が開けていて明るいが、左は草木が鬱... 続きをみる
探偵猫のシズ:第3話:商店街「招き猫消失」の謎 1.黄昏(たそがれ)時の商店街 俺の住む町には、時代に取り残されたような、それでいて妙に温かい場所がある。 「夕焼け商店街」。 昭和の香りが色濃く残るこのアーケードは、俺とシズの散歩コースであり、俺の生命線(主に半額惣菜的な意味で)でもある。 「おいシ... 続きをみる
その祖母というのも、綾香の憂鬱の原因だった。祖母とはもう何年も会っていないが、母や名古屋の親戚を通して噂は聞いていた。 彼女は宗教をやっていて、毎朝晩、仏さんに拝んでいるとの事で親戚一同から変わり者と見られていた。 (そんな変人のところに、小学六年生の娘をひとりで置き去りにするなんて……)と綾香はた... 続きをみる
探偵猫のシズ:第2話:呪われたルンバの怪 1.貧乏探偵とセレブな依頼 探偵にとって、最も恐ろしい怪奇現象とは何か。 それは「ポルターガイスト」でも「ドッペルゲンガー」でもない。 月末に銀行口座の残高が勝手に減っていく現象――つまり「貧困」である。 「……まずい。非常にまずいぞ、シズ」 俺、春日野健太... 続きをみる
少年は青々とした葉をつける大きな樹に登り、砂利道の上で横に突き出た枝に腰を下ろし、脚をブラブラさせながら優しかった姉を思い浮かべていた。 下には石ころがそこら中に転がっている砂利道に車体をグラグラ揺らしながら見慣れない水色の車が通って行ったのを眺めていた。 ◇◆◇ ミーンミーンとうるさい蝉の声が車内... 続きをみる
はじめに:5夜連続でお届けする、凸凹コンビの事件簿 猫は、ミステリアスな生き物です。 暗闇で光る瞳、音もなく忍び寄る足取り、そして何を考えているか分からない、あの哲学的な表情。古来より、猫は数々のミステリー小説で重要な役割を――時には探偵の相棒として、時には事件の鍵を握る存在として――担ってきました... 続きをみる
※この拙作は小説投稿サイト様に公開しております。 登場人物 龍児(りゅうじ)/龍:現川村に住む少年の姿をした妖怪〈あやかし〉。羽を持つ龍の化身で、人間社会への憧れと初恋を胸に秘める。綾香を助け、隠れ里と人間界をつなぐ存在。 綾香(あやか):東京都品川区育ちの小学六年生。夏休みに祖母の住む秋田県の村へ... 続きをみる
そして、ある夜。 店のドアの向こうから、男が顔をのぞかせた。 麻衣子は、手にしていたグラスをそっと置き、目を細めた。 「おかえりなさい」 その言葉は、思いがけず麻衣子の唇からこぼれ落ちた。 自分でも驚くほど自然に、そして柔らかく。 男は一瞬、戸惑ったように眉を寄せた。 手紙に返事がなかったから、もう... 続きをみる
一週間後、店に一通の手紙が届いた。 「何から書いていいか、わからないが、正直に書きます」 そんな書き出しで始まるその手紙には、男の過去と現在が、包み隠さず綴られていた。 日光市で生まれ、両親は早くに他界。 足の不自由な妹が今市市(現在の日光市)に嫁いでいること。 高校卒業後、東京の親類を頼って調理器... 続きをみる
タイトル:『となりの猫は半同棲』 1. 朝のチャイムは鳴らない 午前10時ジャスト。 壁掛け時計の長針が一番上を指すと同時に、リビングの掃き出し窓から「カリカリ、カリカリ」という控えめな音が響く。 「はいはい、今開けるよ」 俺が窓の鍵を外して少し開けると、白い毛並みに薄茶のブチが入った美猫が、音もな... 続きをみる
北海道の父方祖母に年末年始のお歳暮を送る為に母と出かけてきました。 送る食べ物は大体決まりましたが、高齢の祖母で性格が一寸難しいので産地のものを選ぶの時間掛かりました💦 あ、10日の水曜日は仕事無いのでショッピングモールに遊びに行ってきます✋ 本題ですが、一次小説「舞ります!」の20話を投稿します... 続きをみる
「なんでなの」 男がぽつりと訊いた。 「父がね、亡くなったばかりなの。それで……」 「父ひとり、子ひとりか」 「ええ」 「それは、つらいよな」 「家族は?」 麻衣子が問い返すと、男は少し目を伏せて言った。 「高校の頃、事故で死んだ。親父も、お袋も」 話すつもりはなかった。 けれど、気づけば麻衣子は語... 続きをみる
木造の、古びたアパート。 麻衣子の住まいだった。 「泊まっていってね」 麻衣子は、声を抑えてそう言った。 男は上着のポケットに手を入れ、煙草を取り出すと、もう片方の手で雪に濡れた前髪を乱暴に引いた。 麻衣子はそっと肩の雫を払ってやる。 男は車内でぽつりと言った。 「火あるか」 それが運転手に向けた言... 続きをみる
タイトル:「冬の小舟」:春を運ぶ水音 第一章:贖罪(しょくざい)の種まき あの「奇跡の雪解け」から三月(みつき)が過ぎた頃。 氷見の里には、数年ぶりに柔らかな日差しが降り注いでいた。雪に閉ざされていた大地は黒々とした土肌を見せ、あちこちで若草が芽吹き始めている。 だが、村の空気にはまだ少し、ぎこちな... 続きをみる
男はトイレに立ったついでにタクシーを頼み席に戻ると矢継ぎ早に言った。 「待たしてごめんなさい。名前を伺おうと思っていたんですが、なかなかきっかけがつかめなくて……」 男は、少し照れたように言った。 麻衣子は微笑を浮かべながら、そっと男の腕に自分の腕を絡めた。 「名前なんて、どうでもいいでしょう?」 ... 続きをみる
タイトル:冬の小舟 第一章:忌み子と呼ばれて 建長(けんちょう)の世、北陸の海沿いにある寒村は、かつてない厳しい冬に閉ざされていた。 空は鉛色に垂れ込め、日本海から吹き付ける風は刃(やいば)のように村人の肌を切り裂く。雪は降り止むことを知らず、藁葺きの屋根を押し潰さんばかりに積もっていた。だが、村人... 続きをみる
「市内に、今から?」 男の誘いに、麻衣子は少しだけ考え込んだ。 すぐに応じれば、軽い女と思われるかもしれない――そんな思いが胸をよぎる。 「日光のいい店でも、案内してもらおうかと思ってさ」 男が言い足すと、麻衣子は視線を伏せ、そっとうなずいた。 頬に滲む熱を隠すように、声を落として訊いた。 「洋食?... 続きをみる
ほろ酔い気分の六、七人の馴染みの地元客が折り重なるように入ってきた。 湿った重い空気を連れてきた客の群れはボックス席に陣取ると、真凛は「わぁっ」と声をあげ、拍手をしながら、そっちへ行った。 厚みのある素朴なフォルムと、手に馴染む温もりを湛えた益子焼の器。 外側は深い茶色に焼き締められ、内側には赤絵が... 続きをみる
タイトル:僕を忘れた犬 第一章:ロンドンからの帰還 ロンドンのヒースロー空港で、僕は最後の土産物をスーツケースに押し込んでいた。 安っぽいプラスチックのキーホルダーでも、免税店の高級ウィスキーでもない。それは、空港内のペットショップで見つけた、やたらと頑丈そうなゴム製の骨のおもちゃと、フリーズドライ... 続きをみる
その時、扉が半分ほど開いた。 見かけない男が肩と頭に雪を積もらせて店の入り口に立っていた。この季節に、薄手のカーデガンをはおっただけでマフラーもしていない。 「いいですか?」 と言いつつ、男は扉の中に半身を入れた。暖房を入れたばかりの時間に入ってくる一見(いちげん)客はそう多くない。 麻衣子は小さく... 続きをみる
杉木立の間を縫うように続く山道を左に折れると、視界がふいに開け、静寂に包まれた中禅寺湖が青く凍てついていた。湖畔の町並みは、降り積もった雪に覆われて、鼠色の空の下、まるで墨絵のような静謐な世界を描いていた。 麻衣子は、お寺の前の平坦な道をわざと避けて歩いた。 春から夏にかけては、野草が好き放題に伸び... 続きをみる
タイトル:湯気と恋と、甲殻機動戦 第一章:六畳一間の聖域 アパートの鉄製のドアを開けると、世界が変わった。 突き刺すような12月の寒風が、ふわりと甘く、そして濃厚な出汁の香りに上書きされる。 「ただいまー……うわ、めっちゃいい匂いする」 「おかえり、カケル。ナイスタイミング、今ちょうど白菜がくたっと... 続きをみる
書き上げたオヤジと映画の小説を見直していたら、大事な部分が、ごっそりと抜けていることに気付いた。 ええーっっ、読み直しても、んっっと違和感を感じる部分も多かったし。 ここだけ書き直して再UP? んーっっ、オヤジと映画、書き直そうかと思っているのだ。 ただ、最後まで書ききっているんだけどこれを消して入... 続きをみる
※この拙作は小説投稿サイト様に公開しております。 (あらすじ) 日光市中禅寺湖のほとり、雪に閉ざされた町でスナックを営む麻衣子は、長年の看病の末に父を亡くし、心に空洞を抱えながら日々を過ごしていた。 ある雪の夜、店に現れた一人の男。東京から来たその男は、麻衣子の心に静かに触れ、何も求めず、ただ隣にい... 続きをみる
久しぶりに長い小説が読みたくなって、曽野綾子の『神の汚れた手 上下巻』を読みました。 産婦人科医が主人公の、「生命の尊厳」がテーマの小説です。 テーマ事体は重いのですが、小説としては読みやすく、サクサク読んでしまいました。 これ、ドラマ化された事もあるそうな。 あらすじ amazonから 舞台は三浦... 続きをみる
「ノベマ!」(小説投稿サイト)で携帯小説などを即興書き・アップして遊んでます。 ここのブログ(ムラゴン)は記事管理などがやりづらい(慣れてないだけ)ので、むしろこっちがメインかも(リンク集もノベマ!のプロフィページ下部にあり)。ついでの予備だとか、お知らせ記事とかを書くために、一応はブログ(ここ、ム... 続きをみる
タイトル:嘘つきたちのマリアージュ 第一章:仮面舞踏会のエチュード 都心の五つ星ホテル、三十五階にあるラウンジ『ヴェルヴェット』。 窓の外では、梅雨入りの冷たい雨が東京の夜景を滲ませていた。 氷室 蓮(ひむろ れん)は、あくびを噛み殺すふりをして、目の前の「獲物」を観察した。 西園寺 エレナ。国内最... 続きをみる
日々の趣味や生活について綴ってきましたが、冬になるとどうしてもネタが尽きてしまい、筆が止まることもありました。 そこで、これまで個人的に書きためてきた小説を、少しずつ公開してみようと思います。 私は現代文学からライト文芸や企業・経済系、そしてエッセイ、更にはライト官能小説などを書いてきましたが、その... 続きをみる
タイトル:コタツの中の世界 第一章 冬の誘惑 12月の終わり、雪が降り始めた午後。 私の部屋はいつもより少しだけ寒かった。ストーブは点いているのに、なぜか足元が冷える。古いアパートの壁は薄くて、外の風が直接肌を撗うようだった。 そんなとき、私はコタツを引っ張り出した。 母がまだ生きていた頃に買ったと... 続きをみる
人生には転機というものがある、そして突然に訪れたりするのだ。 妻の愛華から別れたいと離婚を切り出されたとき、裕司は静かに息をついた。 驚きよりも、どこかで覚悟していた感情のほうが勝った。 「ごめんなさい、年下で、どうしても放っておけないの」 その告白に、嫉妬より先に思ったのは、 彼女はずっとこういう... 続きをみる
タイトル:星占いの現実 月曜日:予期せぬ再会 「今日の運勢:過去の縁が再び結ばれるでしょう。ラッキーアイテムは古い鍵」 朝の通勤電車で、美咲はスマホの画面をタップして鼻で笑った。 「古い鍵って何よ。そもそもそんなの持ち歩かないし」 そう思いながら、バッグの底をごそごそ探ると、指先に冷たい金属が触れた... 続きをみる
官能小説 タイトル:僕のベッドに来て(一人で読んで) 第一章 待ち焦がれる夜 夜の十一時を回った頃、部屋の明かりはオレンジの間接照明だけ。カーテンの隙間から漏れる街灯の光が、ベッドのシーツに淡い筋を描いている。エアコンの低い音と、外の遠い車の音だけが響く静かな空間。 僕はソファに座ってウイスキーを傾... 続きをみる
今日は用事が何もない。しかも夫は高血圧の薬をもらいに病院へ。 その後はスーパーによるそうです! 短いけれど、一人時間は喜しい。 まずは執筆中(偉そうですいません)のラノベを書く。 定番の婚約破棄された令嬢モノですが、今で 51,941文字(原稿用紙120枚)。 私は完結してから公開するので、まだ投稿... 続きをみる
タイトル:「あれ?」 あらすじ: 翻訳家の主人公・ケイゴは、ある朝目覚めると世界に微かな違和感を覚える。最初はほんの些細な「Huh?」から始まったその違和感は、次第に無視できない「That's weird」へと変わり、やがて世界の根幹を揺るがす「Wait...」へと変貌していく。 第一章:Huh?(... 続きをみる
タイトル:絶対零度の女王 第一章:月曜日の憂鬱と赤ペン ――チーン。 エレベーターの扉が開く音。それは、私の胃がキュッと締まる合図だった。 月曜の朝、9時5分前。 まだ眠気と憂鬱が混ざったオフィスの空気の中で、私は小さく深呼吸をしてから言う。 「おはようございます!」 明るい声を出す。でも、足取りは... 続きをみる
タイトル:あの時見た空の色を少女は覚えていた ――二十歳の夢の夜―― 第一章 二十歳の夜 二十歳の誕生日の夜、美咲はひとりでアパートの窓を開けた。 十二月の冷たい風が、カーテンをそっと持ち上げる。遠くで救急車のサイレンが鳴り、近くのコンビニからは、トラックが荷物を運びこむ音が聞こえてくる。 ここは、... 続きをみる
短編小説「雨粒の名前」 放課後の図書館は、雨の匂いがした。 窓の外では、細い雨が糸のように降り続けている。 机に頬杖をついた美月は、ぼんやりとその景色を眺めていた。 本を開いていても、ページの文字が頭に入ってこない。 今日、友達と些細なことでケンカをした。 自分の何が悪かったのか、どうして言い返して... 続きをみる
タイトル:『二つの旗のあいだで』(創作) 第一章 幼き日の別れ 春の陽は、都の大内の庭を淡く照らしていた。 桜の花びらが風に運ばれ、白い砂地の庭に小さな渦を描く。 その日、私はまだ六つだった。 父の膝に抱えられ、その温もりだけを頼りに、揺れる景色をじっと見つめていた。 「梓(あずさ)、泣くな。これは... 続きをみる
タイトル:責任は僕にある 第一章 誤送信の朝 朝一番の会議室は、いつもより空気が重かった。 城戸係長こと僕は、机に広げられた売上実績表を見つめていた。 そこには致命的な数字の間違い――前期のデータが混在している。 向かいには部下の佐伯真奈。 新卒三年目の真面目な女性だが、今日は両手を膝の上に固く置き... 続きをみる
タイトル:世界の終わりをどこで聞く 第1章: 灰色の日常 世界は、轟音と共に終わるのではなく、静かに、音もなく、その色を失っていった。空は常に灰色で、それは鉛を溶かしたような、重く、湿った色だった。太陽は、何週間も前から、その存在を忘れたかのように、分厚い雲の層に隠されていた。光は地上に届かず、すべ... 続きをみる
タイトル:北風小蔵がやって来た 第一章 北風の名前を持つ男 十一月。大学のキャンパスに吹き込む風は日ごとに鋭さを増し、木々の葉も次々と手離れていった。 その朝、私はいつものように図書館へ向かい、入口の階段でひとりの男子学生にぶつかった。彼は風のように軽く、そして妙に存在感があった。 「ごめん、大丈夫... 続きをみる
タイトル:終着駅の悪夢 序章:終電の招き 夜九時を過ぎたあたりから降り始めた雨は、午前二時の東京ではとっくに氷雨に変わっていた。 システムエンジニアの田中は、無機質なオフィスの灯りから逃れ、最終電車に飛び乗った。一週間続いたデスマーチのような残業で、彼の肉体は限界を超えていた。座席に深く身体を沈める... 続きをみる
タイトル:側溝の指輪 1章 十月の冷たい雨が、町のアスファルトをざらりと濡らしていた。 警察学校を卒業して三年目の刑事、佐伯涼(さえき りょう)は、傘を握りながら国道沿いの歩道にしゃがみ込む初老の作業員を見つめた。 「……これ、警察の人に知らせたほうがいいと思ってよ」 作業員が差し出したのは、薄く泥... 続きをみる
タイトル:君の夢を頂きます 第一章:夢の落としもの 六月の夜は、窓の外に青い影を落とす。雨上がりの湿った風がカーテンを揺らし、椎名ユウトは目を閉じたまま、夢と現実の境目に漂っていた。 ――また、ここだ。 薄明かりの廊下。遠くに誰かの足音。白い校舎の中を、一人で歩いている。床はなめらかに光り、天井の蛍... 続きをみる
私は「アクアポリス」という小説投稿サイトで執筆活動をしています。 創業25周年を記念したアニバーサリーカップに向けて、渾身の思いを込めた複数作品をエントリーしました。 ランキングは日々変動していますが、現時点で最も高い順位は20位台です。 10月第3週に投稿をしているにもかかわらず、それ以上の順位に... 続きをみる
タイトル:時代と言う地獄 第一章:透明な歯車 午前四時五十五分。 賢人の目覚まし時計は、いつだって五分早い。五時ちょうどにセットされたスマートスピーカーのアラームが鳴る前に起き上がり、彼は静かに戦いの準備を整える。ベッドの隣で眠る妻に、微かな衣擦れの音さえ立てないように。 佐藤賢人、四十八歳。大手総... 続きをみる
タイトル:僕の上と下 僕が最初に「上」を意識したのは、五歳の誕生日だった。父に肩車をしてもらって、初めて大人の視線の高さから世界を見た。いつも見上げていた街路樹の葉が目の前に広がり、遠くまで見渡せる景色に心が躍った。「上は、こんなに広いんだ」と思った。 小学校に入ると、僕の世界には明確な「上下」が生... 続きをみる
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愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?
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