• いつか薄れていくはなし

    香水を、首元にシュッとふりかける。 漂う、甘くて切ない香り。 あの人の香り。 香りというのは思い出そうとすると難しいのに、香りを嗅いだときには多くの記憶を呼び覚ます。 今も痛いくらいに鮮明に、彼と過ごした時間が思い出せる。 自分でも分かっていた、一緒に過ごす時間が、あまり長くはないことを。 だから、この一瞬を目に焼き付けようと必死だった。 ある日、 彼からメールが来なくなった。突然のことだった。

  • 記録する少年のはなし

    まだ幾分か幼い少年二人が机に座っている。 一人はなにやらビー玉を大きくしたような球体を指で弄び、もう一人は熱心になにやら紙に書き込んでいる。 「さて、そろそろだよ。」 そう言われて、球体で遊んでいた少年が顔を上げる。 僕たちには大事な仕事がある。 それは、この宇宙のデータを集め記録すること。 世界には銀の幕が落ち、カーテンに縫い付けられた星がキラキラと光っている。 「今日も綺麗な夜だ。」 相方が満

  • 終わる恋のはなし

    空が青い。 あの日の空も、こんな青だったろうか。深くて、淡いベビーブルー。 あの日と同じ空なのに、私たちはこんなにも変わってしまった。 あの日。私たちは付き合い始めた。あんなにも想い合っていた二人。じれったい恋の終わりの、この胸いっぱいの幸福感。これ以上の幸せなんてないと思えた。 それから二人は幸せだった。のに。なぜこうなってしまったのだろう。 例えるなら、擦り切れたスニーカーの靴底みたいだと思っ

  • こんばんは。

    名古屋は、風がおさまりましたが、雨が激しくなってきました。外は寒いかと思ったけど意外と生温かくて、散歩途中に思わずマフラーを外しました。手荷物が1つ増えてしまいました。明日は、早く上がるかな!♡(*^_^*)

  • こんにちは。

    今日の名古屋は朝から、どんよりとして雨も降りそうで降らなくて先ほどようやく降ってきたと思ったら、すぐにやんですごく優柔不断な天気です。まるで、僕の性格のようです。なんだか風が強くなってきました。今夜は荒れるかな。(-_-;)

  • 宮本輝『にぎやかな天地』を読んで!

     大好きな作家のひとりである宮本輝さんの作品『にぎやかな天地』を 図書館で 借りてきて 久しぶりに 読んでみました。輝さんとは 私が 23歳の時 私の親父から 薦められた短編集『幻の光』から 始まって 約30年の付き合いです。私にとって 宮本さんの作品は 常に 生きることへの勇気を 与えてくれ、人として こうあるべきだ ということが 楽しく教えてくれ 人間勉強の小説と言ってもいいくらいで いきいき

  • 「小辞譚 辞書をめぐる10の掌編小説」文月悠光 他

    お久しぶりです。 今回は「小辞譚 辞書をめぐる10の掌編小説」の感想です。タイトルにある「掌編小説」とはザックリ言うと「短篇小説より短い」という意味です。 読んでみると辞書に関する小説といっても、主に辞書を使う側視点で語られる小説でした。小説は部活青春テイストから歴史小説テイスト、ホラーコメディものまで様々でした。個人的には、藤谷文子の「引っ越し前」が一番良かったと思います。 辞書をテーマにした小

  • 「モルグ街の殺人」 エドガー・アラン・ポー

    今回はエドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」の感想です。 サン・ジェルマンの人里離れた古い屋敷に住むC・オーギュスト・デュパン(以下、デュパン)は、モルグ街で起きた猟奇殺人事件の容疑者として友人が投獄されたことを知ります。決定的な証拠もないまま投獄された友人を救うため、そして事件の真相を明らかにするため、デュパンはモルグ街へ向かうのですが..... 描写される殺害現場が凄惨かつ奇妙でホラー小説を

  • 『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』喜多川泰

    今回は喜多川泰『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』の感想です。 物語はプライドが高い熊本県の高校2年生秋月和也が見栄を張るために同学年の史弥に「ディズニーランドに行ったことがある」とウソをつくことから始まります。行ったという証拠を求められた秋月和也は、ウソを貫くために母親にもウソをつき貰ったお金でディズニーランドへ証拠写真を撮りにいきます。しかし、帰りの飛行機に乗り遅れてしまい、帰るお金もなく

  • 「パルムの僧院」スタンダール 新潮文庫&【お詫び】

    ※ブログだけは更新していますが、忙しくて、なかなか、みなさんのブログを訪問できな  いでいます。どうぞ、ご容赦のほどを。<(_ _)> 当時、見掛けだけ大げさでロマンチックな小説が持てはやされていましたが、スタンダールはそうした小説を憎み、一見平板にさえ見えるような文章を用い、本当のロマンチシズム溢れる小説を書くことに成功しました。スタンダールは、この小説を自分の膝に親類の少女を座らせて、その少女

  • 「親和力」ゲーテ 岩波文庫

    親和力は化学用語です。ある物質と他のある物質とが互いに強く引き付け合う化学反応を指します。ゲーテはここで、どうしても互いに引き合って止まない人間同士の恋に例えました。一人は妻のある中年の男、もう一人は、その男を思慕する若い女性です。道ならぬ恋に悩む女性は、ついに絶食して自ら命を絶ちます。男も同じ方法で命を絶ちます。作中、ゲーテは二人の気高い死に敬意を払って書いています。自分が理念というものに従って

  • 「変身」 カフカ

    私が読んだ本を紹介する本ブログ、記念すべき第1作目はカフカの「変身」です。 私は読む本を決めるときに必ず裏表紙の解説と冒頭2〜3ページを読むのですが、この作品ではある朝主人公グレゴールが虫になるところから物語が始まります。そのユニークな冒頭が読むきっかけとなったのですが、いざ読み切ってみると素直に喜んで良いのか悪いのか?なんとも憂鬱な気持ちになりました。 買った本にはもう一話「断食芸人」というお話

  • 「殉死」司馬遼太郎 新潮文庫

    ロシア戦役で最高司令官を務めた乃木希典を描きます。乃木は当時の論文で、「無能論」が書かれるほど戦術家としては取り柄を持たない人でしたが、松陰と同じ師によって教育されたその精神力は巨魁と言ってもいいものでした。有名な二〇三高地への攻撃命令は、まるで明日の馬の準備でもするような口振りで伝えられます。病に伏せっていた明治天皇を慮った場面は、巧まずに、読む者の微笑を誘います。生涯、一武人としての生を貫いた

  • 引っ越しの準備~

    寮を出ないといけないので 引っ越しの準備。 あぁ、やる気がでないよ...... とりあえず毎日ちょこっとずつ。 終わりが見えない。笑笑 本だけですんごい量( ̄▽ ̄;) 小説も漫画も好きなの。雑誌も読むし。 借りたくないんだよね、買いたい人。 ダンボールが足りないよ~~~ ✄--------------- キ リ ト リ ---------------✄

  • 「幻滅」バルザック 河出書房 &【お詫び】

    【にほんブログ村やmuragonの設定に不慣れなために、読んで頂いている方々には、ご不便をお掛けしております。どうぞ、ご容赦のほどを。<(_ _)>】 幾重にも織り巡らされた物語の筋が、最高潮を迎えて、一挙に一点に集中し、破局します。リアリズム作家バルザックの苦り切った顔が見えるようです。バルザックは、自分のすべての作品群を、ダンテが自分の「神曲」をコメディーと呼んだのにあやかり、「人間喜劇」と名

  • 「『絶対』の探求」バルザック 岩波文庫

    主人公のバルタザールは、科学の「絶対」に憑かれた男です。妻は足の悪い身体障害者ですが、夫のバルタザールのことを愛しきっています。バルタザールは時折、家族のことを顧みはしますが、科学の実験のために、家のほとんどの財産を蕩尽してしまいます。その間に妻は亡くなってしまいますが、見かねた娘がバルタザールに仕事を与え、家の経営を受け持ち、財政を回復させます。挿話に、この娘とある青年との純真な恋愛劇が進行しま

  • 「ウジェニー・グランデ」バルザック 河出書房

    ウジェニーの家は葡萄作りで収入を得ていて、非常な金持ちです。これはウジェニーの父が、本物の守銭奴であるためで、父は、家族全員、召使いにも爪に火をともすような暮らしを強制させます。これほど頑丈な守銭奴の性格の持ち主は、どの小説にも見られないと言っていいでしょう。妻がどうなろうと娘のウジェニーがどうなろうと知ったことではありません。実際、心の弱い妻は、夫のあまりにも過酷な性格に圧倒され、病気を得て死ん

  • とんとんとくん インタビュー

    今はもう亡くなられてしまったけど、 当時テレビで高齢の女性作家が特集されてね、 あー、こんな人生いいなぁ、と思ったの。 それが言葉になってたのね。 「こんな人生いいなぁ」って。 そしたらその時同棲してて、 一緒にテレビを見ていた今の主人がね、 えぇ、秘書をしてくれています。 いい加減な性格の私には、とても助かっているんですよ。 そしたらね彼が言ったんですよ 「ちぃちゃんは物書きになりなよ。」 もう

  • 「谷間の百合」バルザック 新潮文庫

    バルザックは51才で亡くなりましたが、創作意欲は実に逞しく膨大な量の小説を後世に残しました。この「谷間の百合」はそのバルザックの小説の中でも、「ゴリオ爺さん」と並んで、最高傑作と目されるものです。舞踏会で出会った美しいモルソフ伯爵夫人に恋をしてしまった純情な青年フェリックスは、夢がかない夫人とつきあうことができるようになりますが、その付き合いはごく折り目正しいストイックなものです。青年はその夫人と

  • それでも太陽は赤く染まる!第3回「春のぬくもり!」

    新学期のクラス表をみて一安心した等(ひとし)。緊張ほぐれ気味で肩を抜いたのもつかの間、そのとき背後に優しい香水のような香りの気配がして振り向きざま肩にぽんと手を置かれた・・・。 第3回「春のぬくもり!」 ふいに肩に手を置かれて振り向くひとし。 それはなじみのある顔、同じそろばんや習字教室でいっしょになる西園寺(さいおんじ)さやかだった。今年中学1年になりひとしと同じ中学なのだ。 おしゃれ好きのさや

1 2 3 4 5 ... 8