• 「半自叙伝」菊池寛 講談社学術文庫

    菊池寛の残した唯一の自伝ですが、題名の通り、自分の子どもの頃のしかも「万引き」をしていた自分の悪さを中心に書いた破格の半自叙伝です。作者の良いところは、まるでと言っていいくらい出て来ません。写実的に描かれた子どもの頃の悪事は、作者の鋭敏な心情をずいぶん傷付けたに違いないのですが、読者には「万引き」をした子どもだからと言って、将来性のない奴だと他のそうした子どもたちのことを思ってくれるなと言うばかり

  • 福沢諭吉「福翁自伝」 <大知識人の足跡>

    日本で最も名高い自伝ですが、世界を見渡してみても比類がないと言っていいほど、清廉で鮮やかな精神の足跡がまざまざと見えてくる自伝です。江戸期から明治期に至る日本史上、空前絶後の大変革期の時代をなんの気負いも外連味もなく正しい精神がしっかりした足取りで着実に歩を進めて行くさまを目の当たりに見ることができます。日本がこの時代、福沢諭吉という一人の全く新しい大知識人を得たことはどれほど大きなことであったか