• 「半自叙伝」菊池寛 講談社学術文庫

    菊池寛の残した唯一の自伝ですが、題名の通り、自分の子どもの頃のしかも「万引き」をしていた自分の悪さを中心に書いた破格の半自叙伝です。作者の良いところは、まるでと言っていいくらい出て来ません。写実的に描かれた子どもの頃の悪事は、作者の鋭敏な心情をずいぶん傷付けたに違いないのですが、読者には「万引き」をした子どもだからと言って、将来性のない奴だと他のそうした子どもたちのことを思ってくれるなと言うばかり

  • 菊池寛「恩讐の彼方に」 <知られざる偉人>

    菊池寛は偉人です。何がどのように偉かったか説明に困るような偉人です。文藝春秋という雑誌を創刊し、大衆小説を数多く書いた、実業家と作家を兼ねた人と言えばそれまでなのですが、それだけではどうしても菊池寛という人を掴んだことになりません。およそ、作家と言われる人はその当の人間より、書かれた文章の方が立派であることが、一般なのですが、菊池寛の場合はこれがまったく当てはまらず、書かれた文章より当の人間の方が