• 江戸川柳 色は匂へ  「た」の2 棚

    人をばおろし我が事は棚へ上げ   よくみる光景だ。そんなもんだ。  おろす=こきおろす、非難する。 女房を物さしにして棚をつり    仕事場だもんね。ご苦労さん。 大だわけ棚をねめつけ瘤へ唾    この野郎、いたのなんのって。 棚釣でわざとあたまをふって見る  大丈夫だ。 学問が棚へ上って声がはり     昔の坊やはもういない。

  • 江戸川柳 色は匂へ  「よ」の2 嫁

    御みくじで貰った嫁もにくがられ    神も仏もなんのその。 中のよい嫁はお経をよみならひ     えらかもんじゃ。結構結構。 永い日も二つとできぬ嫁の髪      ポニーテールにしたら。 湯殿から忘れた時分嫁は出る      念には念を入れますとも。 しかってもしかっても嫁うすぎなり   わかる。わかる。現役ですぞ。

  • 江戸川柳 色は匂へ  「か」の2 蚊(か)

    忍ぶ夜の蚊はたたかれてそっと死に   粋だね。えらい。 じっとして居なとひたいの蚊を殺し   強くも打たれんしなあ。 手にとまる蚊を吹きながら御看経    経を唱えながらの殺生ですぞ。 御看経(おかんき)=禅宗などで、声を出さないで経文を読むこと。声を出して経文を読むことは読経。 内陣の御神酒にしんと昼間の蚊     神妙にしてやがる。 内陣=神社の本殿や寺院の本堂で、神体または本尊を安置してある

  • 江戸川柳 色は匂へ  「わ」の2 若後家(わかごけ)

    若後家のふしゃうぶしゃうに子にまよひ   子のために生きるか、それと                      も。 若後家の剃りたいなどとむごがらせ   尼に、もったいない。 若い身で安請合の後家を立て      意地を捨てるべきか、女を捨てる                    べきか。 若後家のたよりになってやりたがり   ごもっとも、ごもっとも。

  • 江戸川柳 色は匂へ  「を・お」の2 大一座(おおいちざ)

    施主はまだ泣いてゐるのに大一座   よからぬ相談はすぐにやる。  大一座=川柳では多人数で女郎屋に登楼することをいう。葬式帰りや花見や夕涼みのくずれが多い。 町内のぎりさへすむと大一座   なにはともあれ義理とふんどしは。 大一座無理往生は数珠をもち   年寄りの冷や水、ポックリ行くかも。 その数珠はしまってくれと土手で言い  爺ちゃん、それはしまってよ。 人といふものは知れぬと大一座   集団心

  • 江戸川柳 色は匂へ  「る」の2 留 守(るす)

    憎いこと辛子すってて留守と言い   あの音は辛子味噌、さては。  辛子する=辛子をすり鉢に入れて摺るのは辛子味噌の場合である。初鰹には辛子味噌が定番。 留守たのむ人へ枕と太平記    わかるわかる。退屈だもんね。 女房がるすで流しに椀だらけ   男所帯にウジだな。

  • 江戸川柳 色は匂へ  「ぬ」の2 盗人(ぬすびと)

    盗人はせがれ同類女房なり      親の金を持ち出すのはいい方だ。 こなたまでぐるだと母は叱られる   母は甘い、だからぐれずに立ち直                                                  る。 よくしめて寝ろと言ひ言ひ盗に出   しっかり者だ、これでないと。 夜寝なぞする盗人のなまけもの    気楽な稼業ときたもんだ。 盗人のたけだけしきは袴着る   

  • 江戸川柳 色は匂へ  「り」の2 悋気(りんき)

    寝たきりでいるはきれいなりん気也    可愛いね。 りんきにも当りでのある金だらい     斧がとぶ現代は怖い。 りんきのそれ矢戸障子へあたる也     八つ当たり、ごもっとも。 それ矢=狙いからそれて他の方へ飛んでゆく矢。流れ矢。  悋気、嫉妬、やきもちなどと言う言葉が懐かしい時代になった。今は何も言わずにバットで殴られたり、斧で殴られたりする時代になった。可愛いやきもちなんて夢のまた夢。寝たき

  • 江戸川柳 色は匂へ  「ち」の2 智 恵

     後悔と連立って行く下司の知恵   絞って出した知恵に苦しむばかり。  下司(げす)の知恵=諺に下司の知恵は後から出る、あるいは後の悔やみ。  なろうならせめて文殊の無分別   三人寄っても知恵はない。  何と知恵がと悪いちえを出し    悪知恵はよく出るもんだ。  朝帰り行く時ほどの知恵は出ず   何かしでかそうとするときはねえ。

  • 江戸川柳 色は匂へ  「と」の2 遠眼鏡(とおめがね)

     こそぐってはやく受けとる遠目がね  見晴らしの良い場所では有料で筒形の遠眼鏡を貸していた。仲間の一人がよく見えると悦に入っていると連れの仲間がくすぐって交代を促す。  かいま見は尻をつめって代わりあい 美人だろう。声ひそめて交代。  成程と言って又見る遠めがね    肉眼で見てもう一度遠眼鏡で。  遠眼鏡見てゐて人に拾われる    銭が落ちていても遠眼鏡ではね。    ホームページ「遊行ライフ」

  • 江戸川柳 色は匂へ  「へ」の2 臍(へそ)

    かたいやつ臍をほしがる門から出    意志が固いのかいくじがないのか  臍を欲しがる門=雷門のこと  雷門の裏門は、吉原に通じる よい思案雷門を二度通り        よくよく考えてやっぱり 恋しさは親父の臑(すね)に母の臍   かじれるものはかじるがいい  すねをかじり、臍くりをあてにして生きた若旦那か。結構いい親父さんになっているもんだよ。

  • 江戸川柳 色は匂へ  「ほ」 棒

    棒の手を見せるが客へちそうなり   見事な麺棒さばき  家の親父さんは手打ちうどんや手打ちそばはプロ並みであった。地方公務員にしておくのはもったいない腕を持っていたが腕を生かさないままに終わった。それもいいか。 そばを打つ音もちそうの数に入り   音がちそうになるのは少ない。 棒の中めんぼくもなく酔は醒め    辻番や自身番の棒ではね。 棒ほどの事針ほどに母かばひ     棒大針小の母心、いいね。

  • 江戸川柳 色は匂へ  「に」の2 二 階

     二かいから落ちた最期のにぎやかさ   ガラガラどしん  二階から落ちて最期を迎えるのは大変な騒動の中で息を引き取ることになる。静かに湿っぽく息を引き取るのとは大違い。大変だよね。  二階から小便せぬでかどがあり    ごもっとも  吉原の遊女の部屋は二階にあるのでトイレも当然二階にあった。したがって二階で小便をして初めて一人前になると。角も取れて一人前の社会人となる。江戸の男社会の身勝手な常識に

  • 江戸川柳 色は匂へ  「は」の2 馬鹿亭主

     薪水の労をたすける馬鹿亭主  薪水(しんすい)の労=飯炊きや水汲み  今では当たり前の男の家事労働であるが、江戸時代では馬鹿呼ばわりされた。買い物のお供などしようものなら馬鹿亭主、駄目亭主と言われた時代である。 どこへでもくっついて出る馬鹿亭主   そんな雰囲気が残っている地方も                    ある。 あいつだに帰る気ならと馬鹿亭主    惚れています。 もう以後はさせや

  • 江戸川柳 色は匂へ  「い」の2 医 者

      もりあてた医者はほどなく痛み入り    もりあてる=まぐれ当たりのこと  薬の調合がまぐれ当たりで治癒した時は、感謝され礼を貰うときは痛み入るだろう。なんて思ってしまう。  よい後家が出来ると咄す医者仲間   よほどの美人だろう。ありそう。  仲人にかけては至極名医也      本職そっちのけ。まあいいか。  上手にも下手にも村の一人医者    しょうがねえ、いないよりいいよ。

  • 5・7・5アラカルト 川柳23  

     もう眠いどんな川でも渡ります   八木蛙生  ばぁちゃんが健在の時によく言っていた。 「あん馬鹿たれが、嘘八百ばかりで万に一つも本当の事がねえ。」 そのばぁちゃんは、仲人口で100組ほどの縁談をまとめた。  同じ嘘八百でも人を幸福に導くものは嘘も方便で笑って済ませる。国民の生活を苦しめる嘘八百には断固として戦わなければならない。 「生まれた土地は荒れ放題、今の世の中右も左も真っ暗闇じゃござんせん

  • 5・7・5アラカルト  川柳22

     海に生き抜いて墓みな海へ向き   渡部銀雨  学校を出て初めて赴任したところが漁師町であった。  坂のある街の斜面の上の方にこの街の墓地がある。墓はみんな海に向かって、街並みを見下ろすように海を眺めるように立っている。  夕暮れになると墓に明かりがともり、だんだんと町が暗闇の中に浮かんで、やがて消えていく。  海に生きた男たちや彼らを支えた家族たちの物語が語り継がれていく。そんな漁師町で6年間を

  • 江戸川柳 色は匂へ  「す」 摺 鉢(すりばち)

     すりばちを借りて亭主のあらを言ひ  江戸の朝は摺鉢で味噌をすることから始まる。味噌汁をつくるにも味噌和えをつくるにも江戸の庶民にとってすりこ木とすり鉢は欠くことのできない調理具である。  朝帰りの亭主との一戦にとばっちりを受けたすり鉢は壊れてしまう。隣にすり鉢を借りに行くと隣の女房も経験者、かっかしている隣の女房に男とはそんなもんだと慰める。  負けてゐなさいと摺鉢かしてやり  すりこ木とすり鉢

  • 江戸川柳 色は匂へ  「せ」 関 所(せきしょ)

     関所前女をなぶりなぶり行き 関所=箱根、今切、碓氷、栗橋のような要衝で通行人を取り締まる役所。 なぶる=からかい、ひやかす、ばかにする 「入鉄砲に出女」を警戒していた当時は、特に女性に対する身体検査は厳しかった。関所に近づくと連れの男が「なぶりなぶり」歩き始める。まさかと思いながら女は不安の表情でいっぱいになる。  実際には不審な女がいれば関所婆がいて本格的に取り調べることになる。  御妾は箱根

  • 江戸川柳 色は匂へ  「も」 申し子(もうしご)

       申し子は夢ばかりでも出来ぬなり     申し子=神仏に願って授かった子。 「ばかな。」神や仏が夢枕に立ったからといってそれだけではないよねえ。江戸っ子の健全な庶民感覚。だから、聖母マリアの処女懐胎も江戸っ子は「ばかな。」の一言で終わる。    申し子は出居衆の顔にいきうつし    (出居=寄留者、実はこれの仕業)    申子の跡で年々申さぬ子    (神に願っての後は癖がついたのかなあ。続々

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