• ふたりでいると 4

    砂糖の入った壺とティースプーンを持ち、チャニョルはベッキョンの元へ戻って来た。 ベッキョンはチャニョルの姿を目で追うことはしなかった。ただどこか一点を虚ろな目で見つめるだけだ。 チャニョルがどすんとその隣に座る。ベッキョンの体がかすかに揺れる。 スプーンを掲げてチャニョルは問う。 「何杯欲しい」 スプーン越しにチャニョルを見、ベッキョンは答える。 「…2杯」 「多くねーか?」 言いながら、チャニョ

  • ふたりでいると 3

    ほら、という言葉とともに、ベッキョンのマグカップがテーブルに置かれた。グレーのマットな質感の、下に向かってふっくらラウンドしたその中は、湯気を立てたココアがたっぷり入っている。 「ギョンスが純ココアしか買ってなかったから、砂糖入れたけど、足りないかもしんねー」 言いながら、チャニョルは再び先刻と同じ場所にどさりと腰を下ろした。 ベッキョンは右下を横にしていた体を仰向け、腰がずり落ちた格好のまま、テ

  • ふたりでいると 2

    ダイニングルームに入ると、見渡す限り誰もいないようだった。キッチンにも。 ベッキョンのあとにチャニョルが続き、ふたりは荷物や上着をソファの上に放り投げた。 その身も投げ出し、ベッキョンは放心の態でソファに体を預けた。 ニット帽を被っていた頭はぺったりとボリュームを失い、それはベッキョンの心を表したかのようだった。ベッキョンは手に持ったニット帽を自分のものがたった今山積みにされた上にまた投げ上げて、

  • ふたりでいると

    言い訳は聞きたくない。 はっきりとそう言い放ったのはさっき。 ベッキョンは歯を食いしばって怒りと哀しみを外に出さないよう堪えた。そうやって帰途に着いた。 両手をポケットに突っ込み、マフラーの下に唇を隠し、鼻の頭を染めている。 金とも銀ともつかない色の、柔らかい髪の毛が、ニット帽の端から零れふわふわ揺れる。 寒風がベッキョンの肌を撫でていく。 鼻水が垂れそうになり、強くすする。 空は夕暮れの模様を描