• クロゼット少女scene.12

    駅前広場にひとり佇む。時間は23時を回っていた。辺りにはほとんど人影が無く、駅前の店もとっくに閉まっている。かと言って、他に行くアテもない。いざとなったらここで寝ようかとも考えていた。 でも、こんな時間に一人でいると、まるで誰かに「声かけて」もらいたいと誤解されそう。 こんなところに一人でいたらいかにも「ナンパ待ち」だよ。 ヤダヤダ。私、そんなつもりは全然ない!早く他に行く場所を探さなきゃ・・・

  • クロゼット少女scene.11

    カンちゃんがいない間、勝手にトイレを使わせてもらったことや水道水を飲んだことも話した。 ついでにご飯も食べたら良かったのにと言ってくれたけど、さすがにそこまでは出来ない。 「お腹すかせてると思ってさ、さくらの飯コンビニで買ってきたよ。」 「本当?ありがとカンちゃん。」 上機嫌になった私は遠慮なくカンちゃんが買ってきたお弁当をおいしく頂いた。朝から何も食べていなかったから、当時も不味いと思っていたコ

  • クロゼット少女scene.10

    こんな状況下で、よく朝から二度寝ができるものだと思う。 当時から私は臆病で怖がりだったけど、なんだかんだ言って神経が図太いのかも知れない。 目が覚めるとあたりは真っ暗。そうか、ここはクロゼットの中だった。 隙間から部屋を覗く。耳をすまして誰もいないことを確認してからクロゼットのドアをゆっくり開けた。 部屋の時計を見ると、お昼近くなっていた。 友達とは言え他人様の家に無断で泊まったわけで、唯一の救い

  • クロゼット少女scene.9

      眠りについた私は、翌朝のことなど全く考えていなかった。   「さくら、起きろ!さくら!」 誰かが私の体をゆする。朝の弱い私は寝覚めも悪かった。 「ぅ~ん、、なぁに?」 目の前にいるカンちゃんを見てハッとわれに返った。 ああそっか。昨日はカンちゃんと遊んで、その後ここに泊まったんだ。。 カンちゃんは「なぁにじゃないよ。俺仕事だから。お前今日どうする?」とマイペースな私をせかした。自分が仕事に行く

  • クロゼット少女scene.8

    部屋の光がクロゼットのドアの隙間から差し込む中、私はひっそりと息を潜めた。呼吸すら止めていた。 手の平が汗ばみ、私の鼓動がクロゼットの中の暗闇に響くように感じた。 誰かの足音がカンちゃんの部屋に近づいてくる。 どうしよう、この部屋の中に入ってきたら。。。 そう言えば私の靴とバッグ!!まだ部屋の中にあった、、カンちゃんは隠してくれただろうか。 そんな大切なことに気づいたとき、部屋のドアが開く音がした

  • クロゼット少女scene.7

    今ふと思い出したのだけど、高校に進学しないで中学卒業後はすぐに就職した子が一人だけいた。 同じクラスではなかったけど、その子のクラスの担任が私のクラスの授業の時、「高校に行かないで就職して家計を助けるっていう生徒がいるんですよ。驚きました。みなさんは間違ってもそうはならないように」と話しながら鼻で笑っていたのを覚えてる。  何がおかしかったのだろう。 笑える部分はどこにある?   別に私にとってそ

  • クロゼット少女scene.6

    「いいか、俺が先に部屋に入るからここで待ってて。」 家の前に着くと、カンちゃんはそう言って、自分の家に入っていった。路上で取り残された私は凄く緊張していて、何度も辺りをキョロキョロと見渡した。 本当に大丈夫なんだろうか・・・。もしバレたら・・・。  カンちゃん家は電気が消えていて、ご両親は既に寝ている様子。そりゃそうだ、カンちゃんの家はどちらかと言えば「お堅い」仕事をしているのだから、まさか自宅に

  • クロゼット少女scene.5

    季節は夏。街は賑やかでも、一歩繁華街を離れると、信じられないくらいの静寂が広がってる。夜は少し肌寒くて、それが余計に寂しさを強調しているみたいだった。 「電話一本くらいしておいたら?ケータイ貸すから。」 カンちゃんは私のことを心配しているのか、それとも私のことが迷惑なのか・・・。 多分、どっちもだろう。 「別に電話なんかしなくてもいい!私帰る、じゃあね!」 なんて身勝手だろう。散々今日一日世話にな

  • クロゼット少女scene.4

    罪悪感がグルグルと心の中を巡りながら、約束の5時がくる。 ・・・たぶん、カンちゃんなら許してくれるよ、きっと。 多少焦りながらも自分に言い聞かせて、カンちゃんの働く現場へ。 「カンちゃんお疲れ~。」ニコニコしながら声をかける。 「あれ?何その格好めっちゃかわいい。てか制服は?」 ・・・ヤバイ。 「え、あの・・・コインロッカーに入れてきた。」 「そか。」 どうしよう、、お金のことを切り出すのが怖い。

  • クロゼット少女scene.3

    それはそうと制服のまま街をぶらつくのもちょっと。。。補導されても困るし、夜遊ぶならなおさら制服では目立ちすぎる。どうにかしないと、と思いながら、カンちゃんのお財布の中身を見てみると1万ちょっと入っていた。 いくらこれで「暇つぶししとけ」と言われても、さすがにカンちゃんも「服を買え」とは言っていない。 でも、服を買うのも「暇つぶし」のひとつだよね。ねぇ、そうだよね?とそこにいないカンちゃんの了承を勝

  • クロゼット少女scene.2

    カンちゃんも大清水も同じ16歳。 2人とも高校には行っていない。私達3人は同い年生まれだった。 私はこの2人にナンパされたわけだけど、その日のうちに「身の上」話を聞いてもらって以来、3人は大の仲良しになった。 職場へサプライズ訪問した私に、カンちゃんは出会ったその頃と変わらない、軽い口調で聞いてきた。 「お前、学校は?」 「そんなのサボリに決まってんじゃん。わかりきってること聞かないでよ。」 「ふ

  • クロゼット少女scene.1

      「きゃぁああああっっ!!!」 ガタッとクロゼットのドアが開くと、真っ暗闇の私の眠りの中に、鋭利な光が差しこんだ。 それと同時に女性の奇声が耳をつんざく。 ああ、もう眩しいなぁ、朝っぱらからいったい何? 目を細めながら光の方向に視線を向けると、覆い被さるような影が小刻みに震えている。 それがうつつだと理解するまで、少し時間がかかったけど、間違いなくそこに誰かが立っていた・・・。 「あ、あなた誰な